スキル盗んで何が悪い!

大都督

第16話


 プルンと自分は昨日引き渡したオーガの報酬を受け取りに朝早くから冒険者ギルドへと向かっていた。


「おはようニャ!」

「おはようございます」

「おっ、来た来た」

「うわ! もう先に来てたニャ」

「おはよう、この三人結構前から来てたのよ」

 カウンターにいるナヅキが挨拶を返す前に、長椅子に座っていたリックが声をかけてきた。
 椅子を立ち上がるともう二人も立ち上がったその二人は弟妹のリッケとリッコ、三人とも服装は一般人と変わらないラフな服装だ。


「リックが早く行こうって急かしますから」

「本当よ、まだ眠いのに無理やり起こしてきたのよ」

「眠そうだね」

「……寝癖は無いわよ、ちゃんと準備はしてきたもの」

 冒険者でも女の子である、街娘にも見えるシンプルてしっかりと身だしなみは街で見かけたら冒険者とは気付かないだろう。
 リックとリッケは二人揃って寝癖ついてるので後で指摘しとこう。


「そうだね、今日は冒険者って感じゃないね、今の服も似合ってるよ」

「うん、ありがとう……」

「厶ュフフ」

「なによ!」

「べつに〜、ニャんでもニャいニャ〜」

「皆様、別室に起こしください。エンリエッタさんがお待ちです、どうぞ此方へ」

 話しているとナヅキが案内にやってきた。


「お〜、なんか偉くなった気分だぜ!」

「個々で渡すんじゃないんですね」

「う〜、場違いな服装できちゃったかも」

「ムフフフニャ」

「プルン、笑い方キモいよ」

「ニャニャ!」

 普通ならウッドランクの冒険者が2階の客室を使うことは先ず無い。
 ここに入るだけでも他の冒険者に疑われるのでは無いだろうかと思ったのだが、事前に他の冒険者にも昨日のオーガの話を聞く為に案内されていたようだ。
 これで自分たちが案内されていてもオーガの要件で質問されただけと思われるそうだ。


「失礼します、皆様をお連れいたしました」

「いらっしゃい、皆体は大丈夫かい?」

 中に入るとネーザンとエンリエッタが共に椅子に座り待っていた。
 ネーザンは労いの言葉から始まり、皆の緊張を解しながら会話を始めだした。
 部屋に入る皆がカチカチに緊張している気持ちは解る。
 学校であろうと、会社であろうと、目上の人に呼ばれると緊張で話がうまくできないからね。


「はい、怪我という怪我もしてません」

「無傷ニャ!」

 プルンだけがいつも通り緊張も無い対応だった。

「俺は少し傷ついたけど、もう平気です、リッケに治してもらったから」

「僕も大丈夫です」

「私は驚いて転んだ程度かな」

「それは良かったわ。早速だけどこれがオーガの特別討伐報酬と素材代の金貨30枚よ」

 テーブルの上に置かれた皮袋。
 中が見えるように開けて置かれている、中には金貨がギッシリと詰まっており、皆の視線は皮袋に釘付けとなった。

「凄え! こんなにかよ!」

「金貨! 僕初めて見ました!」

「ヤッタ! 30枚なら一人6枚よね!?」

「金貨だニャ! ピッカピッカニャ」

「皆、頑張ったもんね」

 目の前に出された金に皆興奮しているが、自分はまだ金貨一枚が一万円の価値があると認識できてないのだろう、皆ほどテンションは上がっていない気がする。

「さて……。これを皆に渡す前に一つ約束をして欲しいことがあってね」

 報酬となる金貨の入った袋を前に興奮する皆を見ながらネーザンは真剣な顔でこちらを伺っていた。
 そして報酬を受け取るための条件を告げてきた。
 その表情は真剣なために、皆は背筋を伸ばし座り直した。

「何ニャ?」

「何でしょうか?」

「昨日もいったが、今回の討伐は一切誰にも言わないことだね」

「問題になるからですよね」

「……はぁ〜、既に問題になってるのよ」

「え?」

 エンリエッタの言葉で皆の表情が固まった。
 やはり報酬を横取りされて黙ってる人なんかいないよね。

「昨日討伐に集まってくれた冒険者に保証金を渡した時問題があったみたいでね」

「案の定、誰が倒したかって聞かれたわ」

「げっ!」

「「……」」

「ニャニャ……」

「考えたらこんな大っきな報酬が出る依頼を横取りした感じなんですからね」

「でも、あの時やらなきゃ皆どうなってたか!」

「そうニャ、仕方ニャかったニャ」

 確に、あの時の判断は間違ってはいない。
 現にオーガに見つかっていたし、あのまま逃げたりしたら最悪誰かが死んでいたかもしれない。
 リック達の助けもあって、ユイシスの作戦が成功したのだ。


「エンリエッタさん、自分らはどうしたらいいですか?」

「何もしなくていいわよ」

「えっ?」

 恐る恐ると質問したがエンリエッタの返答は淡白な物だった。


「むしろね、何もしないことが一番なのよ」

「……なるほど。下手に動いたらバレると」

「そうよ」

「皆にはこれからも普通に依頼も受けてもらうし、これと言って制限もかけないから心配しないで」

 確に下手に依頼を控えたり、いつもと違う事をしていたら感づく冒険者が居るかもしれない。
 日常生活を変わらず過ごすのが正しいのだ。


「ふ〜、ビビった〜」

「そうですね、ランクアップが無くなるかと思ってしまいましたよ」

「本当よ」

「ニャ?」

「ランクアップ?」

 エンリエッタの説明後大きくため息をする三人。
 しかし、ランクアップってなんぞや?

「そうそう、三人は昨日の依頼でブロンズランクに昇格条件が達成したのよね」

「継いでだ、個々でカードを更新しとくかね」

「「「はい、よろしくお願いします」」」

 リック達は首につけていた木札のギルドカードをナヅキに渡し、何やら手続きのための書類みたいな物を渡され書き始めた。


「ランクアップってどうすればできるニャ?」

「「「えっ」」」

「プルン、お前さん……」

 プルンの言葉にその場の空気が凍りつくように止まったのが解った。

「お前……。ギルドに入るとき説明受けなかったのか?」

「いや、自分はギルドの説明はプルンから聞いたけど、その話は聞いてないね」

 皆の視線がプルンに向けられる。
 確に考えてみたらランクの上がり方を考えもしてなかった自分も悪いかな。


「えーと、ミツ君とプルンさんは今何回目の依頼を達成されましたか?」

「自分は昨日が初だよ」

「ウチはまだ4回くらいニャ」

「初の依頼であの強さかよ……」

「はははぁ、えーと、ランクアップには内容も必要ですがウッドランクの場合ですが、依頼数30を超えることが条件です。その際、依頼の失敗や問題が無ければ問題なくブロンズランクへと昇格になります。また、ブロンズランクからは討伐と護衛任務が追加されます」

「こなせる仕事の幅が増えるってことだな」

「護衛任務は何も無ければブロンズランクじゃ一番楽な仕事って言われてるわ」

「ま〜、ほぼ確実にモンスターと出くわしますけどね」

「へー、そうなんだ」

「ニャるほど」

「プルン、私ちゃんと説明したでしょ」

 リック達から冒険者ランクの説明を受けていると、プルンは後ろから聞こえたナヅキの声で尻尾がピンと逆だっていた、その辺はなんか猫っぽい。


「ニャ! ナヅキの話長いから後半覚えてなかったニャ」

「もう……。はぁ〜」

 頭を抱えてはいるが顔は笑っている。
 仕事上プルンみたいに内容を忘れてしまう人は多々いるだろうからナヅキも慣れているのだろう。

「まぁまぁ。プルン、頑張って依頼数こなそうよ」

「そうニャ」

「ふむ……。恐らくあんたは早めに昇格するよ」

「えっ?」

「ニャ!」

 ネーザンの言葉にプルンと声を合わせて疑問の声を出したが。
 他の人達を見ても誰も驚きはしていない。

「は〜、だろうな」

「彼ならありえますね……」

「そ〜よね〜」

 リック達三人はため息まじりにネーザンの言葉に納得していた。


「二人とも驚いてるけど、普通に考えて見なさい、特にミツ君はね」

 何故だろう皆の視線が突き刺さってる気がする。


「?」

「君の力は既にアイアンの冒険者に近いのよ」

「あー」

「ニャるほど。確にミツの戦いを見るとそれは納得ニャ」

「でも君は力はあってもまだ経験が足りてないわ」

「経験を積んでいけば昇格は早いよ」

 ネーザンとエンリエッタ、優しく微笑む二人の言葉を忘れずに依頼をこなして行こう。


「はい」

「ネーザン、ちなみにウチもニャ?」

「プルン、あんたの事は昔から見てるけど、あんた自体はそれほど強くないからね……」

「……ニャ〜」

「でもね、近くに強者がいれば、必ずその人の影響は受けるもんだよ。自分自身を強くしたいなら、ミツの戦いを見て強くなりな」

「ニャ!」

「暫く二人でペアで組んでみなさい。勿論、昨日みたいにパーティーで行くのも問題ないわ」

「ギルドマスター達が太鼓判おしてるんだから大丈夫よプルン」

「失礼します。おまたせしました、これがブロンズランク用のカードになります」

 ナヅキが部屋の入り口で他の受付嬢からトレイを受け取り。
 上に乗ったリック達へのギルドカードを三人に渡していった。

 見た目はウッドランクとは別物で、使い捨ての木札みたいなのでは無く、紐で結ばれた青銅の札であった。木札同様焼印が入っておりドッグタグのようにも見える


「ニャ? 木札から銅の札になっただけかニャ?」

「でも、これ木札より立派な感じはするよ」

「ブロンズランク昇格おめでとう。新人から半人前になったのよ」

「半人前か〜」

「リック、それでも立派なことだよ」

「そうよ、これで私達も先輩冒険者よ」

「おめでとうニャ!」

「おめでとう、三人とも」

 ウッドランクからのランクアップは難しいことではない。しかし、報酬が少ない分生活が苦しくなり、新人だからこそ起きる事故で冒険者を辞める人もいる。
 昇格のための依頼30回は多いと思ったのだが、新人冒険者を育てるには、最低でもこれくらいの依頼をこなさないと見に付かないこともあるし、その冒険者が依頼に対するギルドの信頼も得る為でもある。


「ありがとうな! 二人とも早く昇格して来いよ!」

「また一緒に戦いましょうね」

「もたもたしてると先に行っちゃうよ」

「直ぐにウチらも昇格するニャ!」

「そうだね、また皆でパーティーやってみたいもんね」


 オーガに対する報酬と今後の注意、またリック達も要件は終わったので帰ることにした。


∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴


「プルン、武器屋って何処にあるかな?」

「武器屋やニャ? 弓を変えるにゃ?」

「いや、マーサさんから貰った弓はまだ全然使えるけど、接近戦の時に使うナックルが欲しいんだよ」

 思ったのだ、今使っている装備は貰い物やスティールでモンスターから盗んだものだ。
 特にオークから盗んだナックルはオーガを殴りすぎてボロボロになってしまっていた。


「……取り敢えず今の言葉は、普通アーチャーの言う事じゃニャいニャ」

「まぁまぁ、プルンも同じナックル使うし。おすすめのお店とかあるかな?」

「ん〜、あるっちゃ、あるニャ」

「じゃ、そこ行こうよ」

「でもニャー、多分欲しくても買えニャいニャ」

「高いの?」

「行けばわかるニャ」

 プルンの意味深なセリフが気になったが案内を任せ、街の入り口近くにある商店方面へと向かうことになった。

 ついた場所は外見は店と言うより看板も出てないので普通の家と言う感じだ。
 作りは鍛冶屋らしく外壁は全て石でできているようだ。


「爺〜! いるかニャ!」

 プルンが中にいる人を呼ぶためにと大きな声を出し始めた、周囲を歩いてる通行人の視線が恥ずかしい。

「爺ー! 死んだんかニャー!」

「ニャーニャーうるせえぇぞ!」

 呼び声に出てきたのはプルンの肩程度の身長、ガッチリとした筋肉に、口の周りは髭が伸びきっていた、それはまさにドワーフだった。

「いたニャ、久しぶりだニャ爺」

「ん? やっぱりプルンじゃねーか、久しぶりだな。元気してたか!」

「この通りニャ」

「そうか! ガッハハハ!」

「ニャハハハハ!」

 店の入り口で共に高笑いする二人、ますます周囲の視線が増えた。
 少しこの二人から離れたくなったよ……。

「で? 今日はどうした?」

「実は仲間に武器を作って欲しいニャ」

「んっ……。これか」

 ドワーフがこちらを少し見たあと、プルンに茶化すように小指を立てている。
 一瞬にして顔が真っ赤になるプルン、そういった言葉の免疫が無いのだろう、可愛いの物だ。
 直ぐにドスッと鈍い音が聞こえたと思えばプルンの拳をドワーフが軽々と受け止めていた

「違うニャ!!」

「ガッハハハ! お〜痛え〜、中々良いパンチ出すようになったな!」

「もう、爺の悪い癖ニャ」

「ハッハッハ! すまんすまん。さて、坊主名前は?」

 二人のいつものやり取りなのか、笑いすました表情のまま此方に声をかけてきた。


「初めまして、自分はミツです」

「そうか、ミツか。オレはこの店で武器作ってるガンガってんだ。お前さんジョブは何やってんだ?」

「一応今はアーチャーをやってます」

「一応?」

「ミツはおかしな奴ニャ。アーチャーのジョブニャのに接近戦もできるニャ」

「ほう、接近戦をか……」

「そうですね、接近戦での剣は駄目ですけどね。オークに相手にする時はがむしゃらで振り回してた感じもします」

「オーク? お前が倒したのか?」

「はい」

「……」

 そう答えると少し沈黙したガンガは踵を返し、背中を向けて店の中に引き返そうとしていた。


「……プルン、すまねえが寝言言う奴は面倒くさいから連れて帰れ」

「爺ー! 待つニャ! 嘘じゃニャいニャ!」

「ええぃ! 離さんか!」

 ガンガの帰れと言う言葉にプルンが焦り、咄嗟にガンガの体をガッシっと掴んだ。

「離したら爺武器作ってくれないにゃ!」

「アーチャーの癖に接近戦でオーク倒す奴に何作れってんだ!」

「ナックル! ナックル作って欲しいニャ!」

「じゃーな」

「待つニャ待つニャ!」

「剣の話したと思ったら作って欲しいのはナックルだ!? 何がしたいのか何が欲しいのか意味わからんわ!」

「だから! ナックルを作って欲しいニャ!」

 店に入ろうとするガンガを無理やり引き止めるプルン。自分の説明の仕方も間違えたかな、順番を追って話すべきだった……。
 取り敢えず通行人の視線がやっぱり恥ずかしい。


「ぜぇぜぇ……。プルン……、力つけたな……」

「ニャ……。ニャ……。じっ、爺が力落ちてきただけニャ」

「あのー。基本は弓で戦ってますけど、短剣とナックル使い分けて戦って行こうかと思ってますので。プルンがさっき言ったように、ナックルをお願いしてもよろしいでしょうか」

「そうかい、確に戦闘時で色んな攻撃ができることは戦略的にもメリットだ……」

「そうニャそうニャ」

「わかった……。オメェにナックルを作ってやるよ」

「やったニャ!」

「ありがとうございます」

「じゃ、これ材料な」

「えっ?」

 ガンガは紙の代わりと近くにあった木材に何かを書き手渡してきた。


「わかったニャ!」

「プルン? どう言うこと?」

「爺は金だけじゃ武器は作らニャいニャ。その武器の材料を渡せば安値で作ってくれるニャ!」

「わかったならさっさと取ってこい」

「期日の制限が無いから少しづつ集めるニャ」

「なるほどね……。では、集まったらすぐ来ます!」

「ガッハハハ! 頑張ってこいや!」

 そう言ってガンガは店の中へと戻っていった。
 自分たちも買い物の続きをするためにその場を離れる。

「行くニャ!」

「うん! プルン、ちなみにナックルの材料は何?」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
デルデル魚
沼に住む魔物。
魔力が高く、木に止まった鳥などに魔法を放ち、落としたのを食す。

エイバルの甲羅
湿地に住む魔物。
自身の重さと甲羅の硬さで身を守る、物理攻撃は効きにくい。

ジャーマンスネークの革
森に住む魔物。
口は大きく4本の牙には猛毒がある
鱗は硬く一枚一枚が鋭く武器にもなる。
物理攻撃を軽減とするので天敵も少ないが繁殖力も少ないために見かけることも少ない。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「あの糞爺ニャ!」

「プルンどうしたの?」

「必要材料の最後のジャーマンスネークは高ランクモンスターだニャ!」

「そうなんだ」

「あの爺め! 絶対わざとニャ!」

「倒せるくらい強くなれって事じゃない?」

「ニャ〜」

「取り敢えず集めれそうなら集めてみようよ」

「……わかったニャ。じゃ〜次は普通のお店に行くニャ!」

 ガンガの店での要件は終わったので次の武器屋に案内してもらう事に。
 最初から普通の武器屋で良かったんだけど……。
 いや、自分がオススメを聞いたんだった。

 次に案内されたお店はこの街で1番の大きさのお店だそうだ。
 確に看板は大きく剣と杖の絵が書かれていて武器屋である事が解りやすいくらいだ。

「こんにちは〜」

「へいっ! いらっしゃい!」

 店に入るとガテン系の店の人が声をかけてきた。


「すみませんナックル見せてください」

「おうおう! ナックルだな、ウチにあるのはこっちの3種類だぜ」

「結構するニャ」

「でも、買えないことはないよ」

 店の人に案内され、目の前に出されたのは3点のナックルだった。

「どれにするかい?」

「説明お願いしても良いですか?」

「いいとも。先ずは初心者用の〔ビックフットグローブ〕まだ拳の出来上がってない初心者でもしっかりと敵にダメージを与えれる品物でお値段安めだ」

「これはウチが持ってる奴より弱いニャ」

「そうなんだ」

「次は中級者向け〔ドルクスアナックル〕さっきのより小さめだけど威力はバツグンだ。ただグローブと違って扱いが難しいから扱いには気をつけな。値段はそれなりにするけど壊れにくいから打撃武器としてはオススメだ」

「これはウチの持ってるのより強いニャ!」

「小さな棘も結構ついてるね、これで殴ったらダメージも凄そうだ」

「次のやつ、これはお客さんにはまだ早いかもしれないな〔ドラングブロー〕ナックルとしてはうちの店では一番の作りだ。値段も結構するから背伸びせずに手の届く武器を選ぶといい」

「うわー、凄いニャ」

「このギザギザはモンスターの爪が使われてるのかな? しっかりとした作りだね」

「どれにするかい?」

「どれにするニャ?」

「んー、さっきガンガさんの言ってた材料が揃ったらそっちを使うと思うから、無理に高いのは良いかな」

「ウチ、ミツは武器より防具を先に買うべきと思うニャ」

「ははっ、確かに。今の見た目普通の服だもんね」

 プルンの言うとおり、未だに自分の防具は初期に装備していた村人の服っぽい格好である。


「後で買いに行くニャ」

「じゃ、このドルクスアを下さい」

「まいど、金額は金貨1枚と銀貨5枚だよ、大丈夫か?」

「はい、これで」

「ミツ、後でウチにも使わせて欲しいニャ」

「いいよ、モンクの本職の感想も欲しいからね」

「猫のお嬢ちゃんはモンクだったのかい、お嬢ちゃんも何かいるかい?」

「ウチは付添にゃ、また今度お願いするニャ」

「おまたせ、こちらが商品だよ。メンテナンスもうちの店はやってるからな、気になったら持ってきてくれよ」

「ありがとうごさいます」

「ありがとニャ、ミツ次は防具ニャ」

「まいど!」

 防具はこの店の向かい側にあった、この辺はお店が固まってるので移動には助かる。

「ミツは防具に希望はあるかニャ?」

「そうだね、一番は動きやすいのかな」

「そうニャ、ミツの戦い方だとフルアーマーやローブ系は不向きニャ」

「軽装備でいいよ」

「それなら早く決まるニャ」

「いらっしゃいませ、防具をお探しですか?」

 お店に入るとお店の人と思われる人に声をかけられた。
 それは、先程の武器屋のガテン系とは反対に、ヒョロっとした体型のモヤシ系と言うべきか。
 いや、気にするのは体型とかではなくその人だ。
 髪をギトギトに固めた頭、顔は化粧をしチョビ髭を生やした人だった。


「アーチャーが使いやすい軽装備は無いかニャ?」

「御座いますとも〜、アーチャーどころか、うちの店は。あの冒険者ギルド副ギルマスターが使っている、フルアーマーまで用意してますからね」

「いや、今日は軽装備でいいニャ」

「では、これはいかがでしょうか? 何と矢筒が大量に持てる様になる防具ですよ。これで矢を切らせる事も無いので狩りも安全になります」

 紹介された装備は防具と矢筒がくっついた感じの品物だ。
 確に矢は沢山持てるだろうけど……。


「そんなに矢筒持って無くなるまで撃つアーチャーはアーチャー辞めた方がいいニャ」

「そうだね……。弓での攻撃だと当たれば致命傷おわせれるし。あっ、でも連射する時は便利かも……」

「ミツはアイテムボックス持ちニャ、あんなガチャガチャと矢の入った矢筒なんか持ってたら動きが鈍るニャよ」

「そうだった。必要になればすぐ出せばいいし、これはいらないね」

「では、こちらはどうでしょう。頭の上から足の先まで緑色に染められたこの装備、森での……」

「いらないニャ」

「いらないね」

「基本的に森でしか使えないニャ」

「そうだね、ここまで色が濃いと草原とかじゃ逆に目立つね」

 迷彩服としても使う場所を間違えれば自分が的になってしまう。


「それに、弓のジョブは基本的に隠れるスキル持ってるニャ」

「確に」

「でしたら、こちらはどうでしょう!」

「もういいニャ、普通のくれニャ」

「はい……。では、こちらです、胸当と肘膝の守りに、手甲装備」

「ミツ手にはナックル付けるから手甲はいらないニャ、その分の安くしてニャ」

「ナックルをですか……。解りました。では、こちらのカモフラージュ帽をつけましょう、なんと頭の上に草が生えてるので草影に隠れて……」

「ミツ、別の店行くニャ」

 定員の説明も聞かずにプルンは店を出るために踵を返しスタスタと店の外へと出ていこうとしていた。
 
「冗談ですよ、お客さんも解ってるでしょ」

「本気に感じたニャ」

「うん、目が本気で言ってたよね」

「では、手甲分は矢と交換でいかがでしょう」

「あっ、それでお願いします」

「ありがとうございます、合計銀貨8枚です」

「そこそこするニャ」

「どの道買うつもりだったからね。すみません銀貨2枚分矢筒追加お願いします」

「かしこまりました。では、合計金貨1枚になります」

「はい、これで」

「矢筒にカラーリングなどサービスしますか」

「いえ、普通に下さい」

「矢筒なんて入れ物ニャ、そんなところ誰も見ないニャ」

「かしこまりました。では、こちらが商品の防具と矢筒になります。こちらはサービスですどうぞ」

「何ニャ?」

「間もなく始まります武道大会のチラシです」

「広告かニャ! 何処がサービスニャ!」

「いえいえ、情報提供と言う立派なサービスでございます。はい」

「は〜疲れたニャ。ミツ帰るニャ」

「うん、ありがとうございました」

「またのお越しをお待ちしております」

「ふ〜、最後のお店が一番疲れたニャ」

 プルンの言ったことに納得する気持ちがある。
 前世では服の買い物は基本、店の人に声をかけられるのが嫌だったからな。
 お店に入ってマネキンの着てる服見て買ってたし。
 セールストークもあそこまで行くとお客を疲れさせるんだよね。

 自分は目的の武器と防具を手に入れたのでひとまず安心だ。


「付き合ってくれてありがとうね、おかげで助かったよ」

「お礼は食べ物でいいニャよ」

「そうだね〜。せっかくだし何か買って帰ろうか、シスターたちも喜ぶよ」

「そうニャ! ウチも稼げたからニャ、チビ達に肉でも買っていくニャ」

 雑貨の商店街から市場へ移動。
 プルンの足取りが先程より軽く見えるのは気のせいかな?

 目的の精肉店に到着。
 しかし、肉のブロックが見当たらないのは何故だろう?


「えっ! 肉が無い?」

「すまねぇな、大口のお客さんが着て殆どの肉買って行っちまってな。ま〜店としては嬉しいことだから感謝はするども文句を言うことじゃねーし」

「どうしようか?」

「ゔっ〜、肉を食べるつもりだったから、食べれニャいと解ると辛いニャ……」

「あ〜、口の中が肉モードになってるんだね。オークの肉は全部食べちゃったし」

「細切れなら残ってるけどどうする?」

「ウチは今分厚い肉が食いたいニャ!」

「あれ? 弟さん達に買っていくためじゃ?」

「それも含めてニャ!」

「ま〜、今日はこれで我慢しとこうよ、細切れでも皆きっと喜ぶよ」

「そうにゃ……。オヤジすまんニャ、それくれニャ」

「いや、こっちこそ来てもらったのにすまんな、ちょっとサービスするから簡便してくれよな。なっ」

「また広告のチラシとかじゃニャいかニャ?」

「なんのことだい?」

「いえ、気にしないでください」

 肉の細切れを買い、プルンは両手に抱える程の肉を見ながらホクホク顔で帰ることができた。


「あのオヤジ良い奴ニャ〜。肉がかなり入ってたニャ!」

「お店も儲かってたから、あのおじさんも機嫌よかったみたいだし良かったね」

「早く帰るニャ!」

「そうだね」

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