スキル盗んで何が悪い!

大都督

第11話


 街へと入る門を過ぎると街の中央へと向かって歩き始めた。
 最初は宿や住宅地が続く道、暫くする出店が並ぶ活気溢れる場所へと景色を変えていく。
 そして、歩くと目的の冒険者ギルドへと到着した。


「ここが、冒険者ギルドニャ」

「結構大っきいですね、建物としてもしっかりしてるし」

「村にあった家見たいのを想像してたニャ?」

「まぁ」

 中に入ると正に冒険者ギルドの言葉が似合う場所だった。広く大きなカウンターには受付の人達、掲示板前には依頼を相談しながら見る冒険者、臨時メンバーを募集する人、中へと入った自分を見てヒソヒソと話出す人。

 正にテンプレの様な風景そのままだった。


「あっ! あっちのカウンターが開いたニャ」

 プルンの指差す方には冒険者と会話が終わったのか、丁度空きができたのだろう。プルンは直ぐにそちらへと歩き出した。

「すみません、冒険者登録をお願いしたいんですけど」

「いらっしゃいませ、ようこそライアングル冒険者ギルドへ」

「ナヅキ、登録をしてくれニャ」

 プルンがナヅキと呼んだ女性。
 白のシャツに黒のスーツを着て金髪の髪がよく似合うセミロングの美人女性だ。


「あら、プルン? あなたもう依頼済ませて帰ってきたの?」

「いや、まだニャ……。あと少しで終わるニャ」

「期限に余裕がある依頼でも早めに片付けた方があなたのためよ」

「解ってるニャ」

「あの〜登録をお願いしても」

「あら、失礼しました。では、コチラの方にご記入をお願いします」

(おっと、この世界の文字なんて知らないぞ……。どうしようか……)

《ミツ、記入した文字は全て自動修正されます、普通に書いて頂いて問題ありません》

「ははっ、そりゃ便利な事で……」

「はい?」

「あっ……いや、何でもありません」

「ミツさんは旅人ニャ、冒険者カードあった方が旅には便利ニャ」

「なるほど、確かに冒険者カードがあれば色々と不都合はいたしませんからね。では、こちらには名前と歳、後は今のジョブをご記入下さい」

 指定された場所に日本語で書いていく。
 自動修正とは凄い物だ、でも自分が書いた紙を見直すと、氏名、年齢、ジョブと日本語に見えているのだが……。
 ナヅキは自分の書いた紙を受け取ると、フムフムと頷きながら確認している。
 彼女には一体どう見えてるのだろうか? やはりユイシスの言った通り自動でこの世界の文字に見えているのか。


「はい、ではこちらで受付させて頂きます。これより冒険者登録の為、担当者がミツさんの実力検査を行います。右手階段下りた先にある訓練所でお待ち下さい」

「ミツさん、頑張るニャ!」

「はい」


∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵


 ナヅキの案内に階段を降り、その先には闘技場の様な場所に出た。
 地下なのに明るいし、数百人が観戦出るほどの客席も並んでいる。

 中に入ると入り口近くに立っている女性がこちらを見て近づいてきた。


「等ギルドの試験官を務めるエンリエッタです、よろしく」

「よろしくお願いします!」

 見た目はセールスレディー。
 綺麗な顔は白く美しく、プレートアーマーの鎧を着てるのでスタイルは解らないが緑のロングヘアー、眼鏡もかけてるせいかザマス言葉を使ったら似合いそうだ。

「随分と礼儀正しい子ね? 冒険者には珍しいわ」

「いえいえ、そんな事ありませんよ」

「それでは始めます、あなた【アーチャー】だったわね。では、使うのは支給する弓と矢のこちらを使って頂きます」

「頑張るニャ〜!」

「観戦者はお静かに」

「おっ……すっすまんニャ」

 プルンの応援の声にキリッとしせんを送るエンリエッタ。
 プルン応援ありがとう、ちゃんと頑張るよと思い、ヒラヒラと手を軽く振ってニコリと笑顔だけ返しといた。


「あの的を狙っていただきます」

「はい! あっ、スキルは使用してもよろしいですか?」

「問題ありません、スキル込みであなたの実力をこちらは審査いたします」

「解りました」

「では、始め!」

 開始の声と同時に一点集中のスキルで的を射抜く。

 バシュ、バシュ、バシュ

 バン! バン! バン!

 動かない的ならスキル使えば確実に当たるから楽な試験だ。


「ほぉ……」

「どうでしょう」

「よろしい、基本は大丈夫そうね、次に行きます」

「はい!」

「次は少し難しいですよ。今から向こうにいるスタッフが魔法で泡を出して行きます、動く的になりますので割った数が評価となりますよ」

「お願いします!」

 今度は動く的に当てる試験。まるでクレー射撃にも思ったが泡の大きさが毎回違うし、クレーと違って浮遊する泡はクレー射撃より難しいかもしれない。だがこれも同じく一点集中でなんとか乗り切れた。


《経験により〈一点集中Lv2〉となりました》


(あっ、モンスター相手じゃなくても上がるんだ)

《スキルは使用回数によってレベルが上がります》


「よろしいでしょう、技量もありそうですね」

「ありがとうございます」

「次です、この一本の矢を的に当ててください」

「それだけですか?」

「はい。しかし、的はとても硬いので刺さらないと評価にはなりません。そこは注意して下さい」

「はい」

 せっかくなので本気の居抜きをやってみよう。
 持ってる弓に関するスキル全てをイメージして指定された的に矢を放つ。

 バシュ!

 放たれた矢は今まで一番の速さと威力を乗せて的へ向かって飛んでいった。


 バン!

 音と共に的に矢が刺さる。
 いや、よく見ると威力が高すぎたのか、的を完全に貫いてしまった。


「!」

「凄いニャ……」

「……よろしい。最後は模擬戦をやってもらいます」

「はい、どなたとでしょうか?」

「私です」

「わかりました」

 そう言いながらエンリエッタは大きな盾を前に突き出しそう答えてきた。


「ちょ! いつもの模擬戦担当者に何でやらせないニャ!」

「観客はお静かにと言いましたが!?」

「うっ……」

 エンリエッタは先程よりも少し声を高く上げプルンを注意する。

「失礼しました。ミツさん、うちの模擬戦は担当がいます。しかし、貴方では評価する前に終わってしまうのが目に見えています、特別に私が担当することにします」

「既に評価されてるみたいですね。構いません、よろしくお願いします」

「結構……。私は攻撃は行いません、どの様な攻撃でも構いませんので私に一太刀入れてください」

「いいんですか?」

「怪我ならご心配なく、医療班を待機してますので怪我は直ぐ治せますよ」

 エンリエッタがフッと頬を少しだけ上げ入り口の方に手をやるのを見ると、一人のギルドスタッフがそこには立っていた。

「では、よろしいですか!」

「はい!」

 試験管直々か、強いんだろうと思いながら先ずはエンリエッタを鑑定してみることにした。



名前  『エンリエッタ・リッエース』
            
        ハーフエルフ族/117歳

クルセイダーLv9。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

シールドチャージ___:Lv8/10。

シールドブーメラン_:Lv8/10。

スラッシュ_________:Lv4/10。

パニッシュ_________:Lv3/10。

祝福の盾___________:Lv8/10。

ヒール_____________:Lv9/10。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 流石試験管。ステータスを見て驚いたけどハーフエルフって人間族じゃなかったのか。確にエンリエッタは人にしては綺麗すぎる顔してる。


「さぁ、立ってるだけじゃ合格にはなりませんよ!」

 エンリエッタの言葉でボーッとして見惚れてるのがバレたのか少し焦った。
 そして言葉の後エンリエッタの体化少し光った気がした。武器を構えと同時に何かスキルを発動したのか?

(何をしたんだろう……攻撃して来ないと言っても、無策に突っ込むのは危ないな……)

《対象者エンリエッタはスキル〈祝福の盾〉を発動してます。スキル発動3分間はスキルレベル分受けるダメージを減らすことができます》

(そうなんだ、教えてくれて助かるよ)

 エンリエッタが自身の防御にスキルを発動してくれた、これなら少し変わった戦法で行こう。


「行きます!」

 先ずは射的で距離を取りながらガードに集中させる。
 連射スキルの連続発動。


 シュ! シュ! シュ! シュ! 

「どうしました! いくら矢を打ち続けても私には効きませんよ!」

 ガン! ガン! ガン! ガン!

 勿論撃った矢は全てエンリエッタの持つ盾に塞がれてダメージは与えれていない。

「でしょうね……」

 ラスト1本をわざとエンリエッタと違う方へ撃つ。

 バシュ!

「あらあら、狙いがそれましたか?」

 それでいい、ほんの少しだけ視線を外してくれるだけで使える作戦、ハイディングスキル!

 直ぐに弓と柄の矢筒をおいて姿を消す。

「ニャ!」

「えっ! どっ、何処に!」

 ほんの一瞬目を離したら自分がいない。
 プルンの視線を見てもエンリエッタは自分を見つけられない。

 盾のガードが緩んだその隙を自分は狙っていた。
 エンリエッタの懐に潜り込んで直ぐに攻撃態勢を取る。

「なっ! いつの間に!」

 がら空きのお腹に向かって攻撃を仕掛ける。
 渾身の一撃! 崩拳スキルを乗せた拳は見事に決まった!

 バシン!

「ぐっ!」

 本来女性に攻撃なんてしたくないがエンリエッタは祝福の盾スキルを使用してくれている。
 そのスキルレベルも高いおかげでそれ程ダメージは入らないと思う。
 むしろ素手で鎧を殴った自分の拳が痛いくらいだよ。

 エンリエッタに一撃入れたと同時に高らかに試合を止める声が響いてきた。

「そこまで!」

「ぎっ、ギルド長……コホッ……ゴホッゴボ」

「エンリエッタさん! 大丈夫ですか? すみません、急所は外して撃ったつもりなんですけど」

「大丈夫よ、少しむせただけ」

 観客席から降りてきた一人の女性、その女性は随分とご年配の様だ。


「エンリ、随分とあっさり終わったね」

「ネーザンさんが止めたからですよ!」

「止めなきゃあんたもっと怪我してたよ」

「それは……わかってます」

「いえいえ、そんな怪我だなんて。一撃いれたらそれで終わるつもりでしたよ」

「ほう……。お主が新しい新人かい」

「はい、名前はミツです、よろしくお願いします!」

「おやおや、こんな野蛮なところに礼儀正しい奴が来たね。ワタシはこのギルド長をやってるネーザンって言うんだ、よろしくね」

 ネーザンと名乗った人はギルド長だったのか。
 ボサボサの茶色い髪の毛に、ダボダボのジャージっぽい服。
 見た目その辺に居そうな叔母さんって感じだ。


「ミツさん、試験は合格よ」

「ありがとうございます! 早速なんですがモンスターの素材がありまして、こちらで売却をお願いしたいんですけど大丈夫でしょうか?」

「なら、受付に先に渡しときな。登録カードと一緒に素材代も渡してあげるよ」

「じゃ、それでよろしくお願いします。プリンさん行きましょう」

 プルンを呼んだら何やら隠れて此方を見ている感じだった。


「……解ったニャ」

「おやプルン、あんたいたのかい」

「いちゃ、悪いかニャ!」

「相変わらずだね、挨拶もできないのかねの子は」

「べーだニャ」

「やれやれ」

「お二人はお知り合いですか?」

「……さっき言った冒険者ギルドの知り合いニャ」

「この子の親は私の友人でね、生まれた時から知ってるんだよ」

「ウチの親より口うるさいニャ」

「生きてるうちは友の娘を見守るのが当たり前だろう!」

「子供扱いは止めろニャ!」

「フンッ! いくつになってもあんたは子供だよ」

 話を聞く限りじゃネーザンは別にプルンを嫌ってる訳じゃなさそうだけど。
 プルンにしては口煩い叔母さんって感じなんだろうな。

「ネーザンの歳から見たら、ウチの親まで子供になるニャ!」

「まぁまぁ、お二人とも、落ち着いてくださいよ」

「もうここに用事はないニャ、上に行こうニャ!」

「はい、では失礼します!」


 プルンを宥め終わったので早速ギルドカードを貰いに行くことにした。



「エンリ、凄い子が来たじゃないか」

「はい、期待して良いと思いますよ」

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