七大罪のバトルロワイヤル〜強欲として欲望のままに奪い尽くす〜
転生
アベル・エリューという男が当主を務める貴族、そこに一人の男児が生まれた。
貴族としては低い権力しか持っていない男爵で田舎といえる程の領地しか治めていないが、その分住民達との仲は良く、その日は盛大に祭りが行われた。
皆が祝う、新しく生まれた男児に祝福あれ、と。
皆が祈る、その子が立派に育ちますように、と。
皆がいう、彼、マモン・エリューが生まれて来てくれて良かった、と。
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俺、マモン・エリューが生まれて、一ヶ月が経った。
赤ん坊の成長の早さに驚かされる毎日である。その毎日の中で分かったことの中で、特筆すべきことを並べていこう。
まず、あの少年が言っていた、異世界に転生する、という言葉が本当だった、という事。勿論、なんの根拠もなしに言っているわけではない。
明らかに文明の遅れが見れるここでは、紙おむつではなく、衛生上問題のある、布おむつが使われている。
布おむつは洗う事で何回も使い回すわけだが、初めて粗相をしてしまった際、俺の世話をしてくれている、恐らくメイドという職業に就いているである女性が、一度おむつを脱がせ、何かをした後、洗うわけでもなく、そのまま俺に履かせてきた。
勿論、俺は抵抗の限りを尽くしたわけだが、生まれてすぐの力では成すすべもなく、あっさりと抵抗を突破されてしまった。
なんだこのクソメイド、いつか糞付きのパンツ履かせてやるからな。
そういう思いを全力で込めてメイドを睨んでいる時に、ある事に気づく。
俺が出したはずのブツが、消えているのだ。それに、不快感もなく、洗いたてのような履き心地だった。
それから、毎回粗相をする度にメイドが何をしているかを見ていたわけだが、一切分からない。
ただ、おむつに手をかざし、清掃とだけ唱えるだけ。
その時点で、「あっここ、本当に地球じゃねぇな」そう思ったわけである。
そして少年の言っていた、異世界転生とやらが本当だった以上、恐らくバトルロワイヤルというのも本当なのだろう。
俺と同じように称号を渡された、合計7人の人達での殺し合い。
全然気が乗らない上に、大して元の世界に未練があるわけでもない。
つまり、参加する理由がないわけだが、それは他の人達に当てはまるかどうか。
恐らく、7人全員、俺のように元の世界に未練のない人ではないと思う。
なんならそっちの方が少数派だろう。
そして一人でも未練のある人がいるとすれば、俺を殺しに来る可能性があるという事。参加は不可避。
考えただけで憂鬱になるが、俺と同じように転生しているのであれば、まだみんな子供で、殺しに来るのも当分先のはず。
おいおい何か対策を考えていこう。
二つ目。
それはこの世界には自分の能力をスキルとして、人物の説明を称号として表示してくれる物、所詮ステータスという物があるということ。
16歳の長男のカラン・エリュー。
9歳の長女のサラ・エリュー
6歳の次男のビル・エリュー。
それに続き俺、0歳のマモン・エリューと順に生まれている。
成人しているカラン(この世界では15歳が成人らしい)は別として、まだまだ遊びたい盛りの次男、ビル。
そんな彼は毎日のように村中を駆け回り、友達と遊びまくっているようで、その最中に手に入れたスキルを自慢げに見せて来るのだ。
その時にステータスというものを知った。
自己詳細開示、そう唱えるだけで、ビルの目の前に光の板が展開されたのだ。
当人は疾走のレベルが上がった!と誇らし気にしていたが、俺としてはそれどころじゃない。
なんの変哲も無い6歳児であるビルが使えている以上、自己詳細開示という能力は、恐らく俺でも使えるものなのだろう。
そう胸を高鳴らせ、その能力を使おうと思ったのだが、どうも言葉を発しないと開かないようで、まだうめき声程度しか出せない俺では使うことができない。
とりあえず、今は健康に育つ事が第一のようだ。
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