七大罪のバトルロワイヤル〜強欲として欲望のままに奪い尽くす〜

ぼろっこりー

謎の自称神



俺はいつだって強欲だった。
親から5000円のお小遣いをもらった時に、感謝の念より先にもっと、という気持ちが湧いて来たし、ソシャゲのガチャでいいキャラが出たのにも関わらずリセマラを繰り返し、結局疲れ辞めたことも一度や二度ではない。

それでも人と比較して物欲が強いだけで、俺より強い奴なんて数え切れないほどいるだろう。
中学の同級生の田中くんなんて、お腹がいっぱいでも、手に入れれるなら、と給食の余りを賭けたじゃんけんに参加していたほどだ。俺より欲が強いに違いない。

それなのに俺は、神とやらに強欲という称号を押し付けられ、異世界に転生されようとしていた。


周りを見渡せば、俺と同じように何かの称号を押し付けられたであろう人影が6人。
それぞれが思い思いに言葉を発しているようだ。

その声は、まるで水の中で話しているかのように俺には聞こえない上に、人型のシルエットすらはっきりと見えないほどぼやぼやしている。
それでも、突然こんな意味不明な所に連れ去られ、頭が悪いのかイっちゃってるのかは定かではないが、自身を神と名乗る者に謎の称号を押し付けられ、これから異世界に転生してもらう、という謎の宣言を受けた者が発する言葉なんて、侮辱の言葉ぐらいだろう。


「はいはい、静かに静かに。時間は有限、そんなくだらない罵倒なんかに時間使っちゃってるようじゃ、君達生き残れないよー?」


侮辱の言葉を吐いていたであろう人達を小馬鹿にするように発言したこの、少年のような容姿の声の主が、自身を神と名乗る変人だ。
高台から見下ろしている上に、その口に浮かべている嘲笑が、更に皆の怒りに油を注いでいる。

しかし、生き残れない、とはどういうことだろうか。仮に声の主が言っている事が本当だとして、転生後の世界はそんな危険なんだろうか。


「おー、いいねー!強欲ちゃん!君みたいにちゃんと話しを聞いてくれる子がいて、僕は嬉しいよー」

先程の嘲笑とは打って変わって、子供のような笑みを浮かべているこの子は、本当に喜んでいるらしい。
そして、さりげなく心のうちを読まれていた事に驚く間も無く、彼は続けた。


「これから君達にしてもらうことを説明しよう!危険なのは確かだけど、君達には与えた力があるから、生き残れないって程じゃーない。では、何故生き残れないって言ったって?そんな気になるなら教えてあげようっ!」


パッ、と手を大きく広げ。


「君達には、生き残りをかけたバトルロワイヤルをしてもらいまーす!」

パッパカパー!、そんな音が聞こえて来そうなほど、おめでたいことを言った、という雰囲気で、彼は告げた。

「報酬は元の世界に戻れる権利と、なんでも一つ、願いを叶えれる権利!」

「ルールはなし!騙し討ち?犯罪行為?大いに結構!生き残った者が正義、そんな自由度100%で!グラフィック鮮度抜群で!緊張感のある!そんな楽しい、楽しいゲーム!」

当人は本当に楽しいのだろう。
満面の笑みを浮かべ、一言一言はっきりと、目を見開いて吼える。

「どうぞ、お楽しみあれ!」

その言葉と共に目に映る全てのものが弾け、眩い閃光となって駆け巡る。

「ただ、リスポーンはないけどね」

何も捉えれない視界情報と何が起こっているか分からないという、状況下に置かれ混乱している中、囁くような声で彼はそう告げた。







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