Re-start 異世界生活って結構自分に合っている件

ロミにゃん

81 "見える者" シルバーズ兄弟とフィオナ後編

え!?
リオンが私を誘うと周りにいた女性達から溜息が聞こえた。
みんなリオンと踊りたがっていたから、誘ってもらえなくて散り散りになった。

「ここで、踊らないと私は恥をかいてしまいますので、どうかお願いです」

リオンってメッチャ優しい喋り方だったんだ。

「わ、私、踊った事ないし・・・」
「それならご安心ください、僕がエスコートしますので・・・」

そう言うと、私の手を掴み中央へ急ぎ足で向かうと、クイッと腰に手を回され静止した。

「背筋を伸ばして前を向いて、後は僕に任せてください。深呼吸して」

あわわわわ、もう!どうにでもなれ!
深呼吸すると、オーケストラの生演奏が始まり、リオンのエスコートでフワリとドレスのスカートが舞った。

小声でリオンがステップをカウントしている

「1.2.3.1.2.3・・・そう、その調子」

出だしこそもたついたけど、初めて踊ったのにすぐにリズムに合わせて踊ることができて、嬉しくてつい、口元が緩んだ。

「くすっ、申し訳ありません、突然お誘いて。この宮殿にいる女性達は皆私に声をかけてくださりましたが、貴女だけは、全く私の事を見ていなかったので、声をかけてしまいました。」

いや、メッチャ見てたけどね!ずっと見てたけどね!

「いや、そんな事・・・」
「本当は逃げる口実が欲しかったんです。でも必ず踊らなければならなくて・・・」

「あんだけ沢山の女性に声をかけられて1人ずつ傷つかないように馬鹿丁寧に断って、ストレスにならないの?疲れるでしょ?」
「・・・」

あ、しまった。つい、いらん事を・・・
あれ?リオンなんか顔赤い?

「そんな風に仰って下さる人は初めてです」
「え?」
「僕の事、心配してくださるんなんて・・・」

あぁまぁ、ねぇ。
ってか、なんかちょっとリオンが可愛く見えてきた。
こんな美少年の照れた顔を間近で見れるなんて、ちょっとご馳走さまって感じです。
神様ありがとう。
この世界のオブザーバーさんの事じゃないよ。

「私のことをリオンと呼ぶ人は、家族以外では貴女が初めてです」
「え?」
「兄さんと・・・母だけです」
「あ、馴れ馴れしく呼んで、ご、ごめんなさいっ」
「いえ、何だかんだ久しぶりに名を呼んでもらえたので嬉しかったんです」

私達は踊りながら沢山話をした。

「良ろしければ、もう少しだけ!貴女と話をしたいのですが、大丈夫でしょうか?」
「え、あ、はい」

返事しちゃったけど大丈夫かな?

2曲程踊って、リオンに手を引かれホールを後にした。
ホールの外の階段を駆け上がり、ある部屋の前で止まると、リオンは呼吸を整えノックした。

中から聞き覚えのある声に招かれ部屋に入ると、そこにはフィオナとレオが居た。

「おい、その女は誰だ」

早速不機嫌そうなレオに私は睨まれた。

「いや、ちょっと困ってたところをこちらの女性に救われて・・・」

レオは私の事を追い返せと言わんばかりの圧でこちらを見ている・・・

「そうでしたか、エミリオンを助けていただき感謝いたします」

私は場違い感半端なくてフィオナが優しく微笑んでくれて、ちょっと安心した。
レオはずっと睨んでるけど・・・

「エミリオンと踊って下さってありがとうございました」
「え、いや、とんでもないです」
「フィオナ、見ていたのか!?」
「あぁ、フィオナがホールを出た事にも気がつかないほど女達に囲まれていたもんなぁ」

レオはリオンの頭を強めにわしゃわしゃして、それをみてフィオナはくすくすと笑っていた。

「こんなに仲良いのに何でレオはリオンに辛く当たるのかな?」
「なに?おい、女、今何と?俺の事をレオと言ったか?」

あ、しまった・・・心の声が漏れてしまった・・・ガッデム。
顔こわぁーい!レオキレてるよね??

「僕の事もリオンと呼んだんです。懐かしくて嬉しくなってしまったんです」
「おい、女!どう言う事か説明しろ!」
「えぇと・・・」
「この女、怪しいぞ!何故俺達家族だけの呼び名を知っている!?おい!女!答えろ!」
「もう!女、女ってね!私にだって、ロミーという名前があるんじゃい!!」

大声を出すと、シーンと静まり返った。
もう!何で、干渉しちゃってるのー!これ大丈夫かな?フィオナは干渉しちゃいけないとか言ってたし、これって本当にただの記録なのかな?

すると、突然フィオナが苦しみだし、その場に膝をつき、リオンとレオが駆け寄った。

「フィオナ!大丈夫か!先日の儀式の所為でかなり弱っているんだ、無理をするな!」

『Serenade Selene』はフィオナ自身の生命力を削り行う儀式だったから、この時代のフィオナは生命力を奪われ続けている。

かなり辛そう、顔色も悪いし。

「おい、リオン、そのおんなっ、ロミーを帰らせろ!」
「あ、でも兄さん、」

私は何も考えず、フィオナの元に歩み寄り、フィオナに魔力を供給した。

「おい、何している!?」
「こんなあたたかい光は初めだ・・・君は一体・・・」

苦痛に歪むフィオナ表情が徐々に和らいでいくのをみて、2人は何も言わなくなった。




フィオナをソファに寝かせて、ウィンドウを開きフィオナのステータスを確認した。

「うん、これで大丈夫。でも、よく生きな永らえていたな・・・このままだったら、次の『Serenade Selene』まで、保たなかったんじゃ・・・」
「!?」
「いっ、痛っ」

レオが私の腕を力一杯掴んだ。

「それは、本当か!?何故お前は『Serenade Selene』の事や俺達の名前をしたっていたんだ・・・」
「そうだよ、ロミー、本当に君は一体、何者なんだい?」


答えようとした時、フィルムがカラカラと回る音が聞こえた。
恐らく、この時間から追い出されるのだろう。
ここでの私の行動が未来に反映されるかわからないけど、私は一か八か、残された時間でヒントを2人に残そうと頭をフル回転させた。

「ご、ごめん、時間がないから、質問全てに答えてられないんだ。リオン、女遊びは貴族の嗜みなんでしょ?多分、今のまま良い子を続けてたら絶対潰れるよ」
「貴族の嗜みって・・・そうか、他の貴族達を欺くには遊んでいるフリをするのも良いかもしれない」
「レオ、その剣、あってないと思う。もっと細い、槍の様に鋭く突くスタイルの方が、いい気がする。剣に振り回されているから、動きを絞って見た方が、レオのスタイルにあっていると思う。」
「・・・確かにずっと何か違うと感じていた・・・いや、待て、誰にも言ってないのに、何故それを知っている!?」
「後、フィオナに伝えて、アミュレットのおかげで、私は助かったって。」

2人はとても不思議そうな顔をしている。

「あ!最後に、リオン!いきなりキスするのやめてよね!」
「え???キス!?」
「レオ、あんまり怒んないでよね!顔怖い!!2人ともイケメン台無しな行動取りすぎないでね!」

最後に言葉を発した直後、フィルムに絡みとられ私はこの時代から追い出された。

「き、消えた・・・?」
「彼女は一体何だったんだ・・・」
「でも、兄さん、僕は彼女の言う通り、遊び人を演じるよ!使えない奴と思わせて、裏で目一杯動けるように!」
「俺は・・・助言通り、剣から槍へ持ち替えてみようと思う・・・だが、ロミー・・・一体何者だったんだ・・・」
「またお会いしたいですね、兄さん」






気がつくと、女の子が居る、アーカイブスと呼ばれる場所に戻ってきていた。

「おわ、戻れた?」

女の子が私の方へ手を伸ばしている。

「これじゃないの」

見せたかったのはこれじゃないってこと???
女の子の手を取ると、別の記録の詰まった光の方へ連れていかれた。

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