Re-start 異世界生活って結構自分に合っている件

ロミにゃん

68 パステルカラーって可愛い



キャタルスシティの市場は街中を流れる川沿いにテントが並んでいて、シルバーシティとは違った雰囲気、歩いている人達は親子連れやカップル多い印象かな。
若者も多く、デートスポットって感じ。

露店のテントはパステルカラーで統一されていて、可愛い!

「桜子さん!折角だしみんなで写真撮ろうよっ!!」
「良いわね!」

この世界に来てチョコチョコ写真を撮ってたけど風景写真ばかりで初めてみんなと写真を撮った。

「旅行気分でいいね。後で皆にも写真送るねー」
「僕のでも一枚撮ってもいいかな?」

上城さんのスマホをベンチの上に置いてみんなと一緒撮影しようとした時、男性が声をかけてきた。

「まさか、こんなところで、スマホ使う人と会うなんて!良かった!俺だけじゃなかったんだ!」

もしかして、こっちの世界に一緒に来た人かな?

「良かった!頼む!俺を連れて行ってくれないか!!頼むよ!」

突然、男性は何かを思い出したかのように、焦り出し、すぐ近くにいたアカギの腕にしがみつき、辺りをキョロキョロと見ている。

「な、なんだ、いきなり、俺達も確かにこの世界に連れてこられたわけだが、養えって言う気か?」
「違う!違うんだ、アイツに見つかったらまたつきまとわれる!もう限界なんだよアイツが嫌で仕事も辞めたのに、異世界に来てまでアイツに悩まされるなんて死ねって言われてるのと同じだ!!!」

男性は取り乱している。
ちょうど私がいる位置からは男性の後ろ姿しか見えていない。

突然チクリと目の痛みを感じた。

「俺、役に立つんだぜ!ランクだってゴールドの星4つだし、損はしないはずだ!連れて行ってくれ!」

私は眉間に指を当てたグリグリしていると、後ろからジャックが肩を揉んでくれた

「大丈夫?」
「あ、はい。ちょっとチクチクするだけです」

アイマスクを外し、瞬きをして眼球を動かし目のストレッチをした。
男性が私の顔に気づいて、こちらに走ってきた


「橘!?もしかして、橘だよな!?」

ん?

「お前もこっちに来てたのか!?俺だよ!」

え?誰だっけ???

「覚えてないのか!?何回か一緒に飲みに行ったり、飯行ったろ?」

肩を揉むジャックの手に若干の力が入ったような気がしたけど、今は目の前の男性を思い出そうと脳をフル回転させた。

「お前の家にも行ったことあるんだぜ?」

また、グッと肩を掴むジャックの手に力が増した。
ジャックの顔の方を見上げると、ニコニコしてるけど、目が笑ってない。

「あ!家に来たって言うか、アパートの下まで送ってもらっただけだよね?確か・・・谷口くんだっけ?」

「そう!タクシーで方向が同じ部長と一緒に帰った時な!でも知り合いがいて良かったー」

そう言うと私に抱きついて来た。
私の腕を引っぱりその場を2周ほど谷口くんと踊るように周った。

え?え?どう言うテンション?
ジャックは呆気に取られている

「上城さん!この人谷口くんですよ!」
「え!?部長もいるのか!?」
「本当だ、谷口じゃないか!」

私の手を握ったまま、谷口くんが、突然歩き出した。

「え!?ちょっと、谷口くんどこ行くんですか!!」
「移動しよう!ここじゃアイツに見つかる!また嫌味を言われる!」

チクリ

「谷口待て、どう言うことか説明をしてくれないか」

チクチク、ズキン

痛みが増してきて、耐えられずまたアイマスクをつけた。

「何それ?橘、なんかの冗談?」
「うるさいなぁ!これが無いと眼を開けてられないんだよ!ぎゃっ!」

突然後ろから肩を掴まれ驚いて叫んでしまった!!

「悪いね、谷口くんと言ったかな?ロミーの手を離してもらえないか」
「あ!すみません・・・なに?橘、彼氏?」
「あぁ、そうだ。私のロミーに気安く触れないでもらえるかな」
「!?ジャック!?」

ちょっ!何言ってるの!?
しかも、谷口くんにしか聞こえないようにわざと小声で言ったし!

「お前、年上がタイプだって言ってたもんな。すみません」

私が誤解だと説明しようとした時ジャックに口を塞がれた。

「もがっ」

ジャックはニコニコしてる!
怖い!目が怖い!
谷口くんは上城さんの方へ行き、話を始めた。

「もう!ジャック!意地悪しないでください!」
「意地悪は君の方だろ?リオンと2人きりで食事するなんて言うからだよ(ニコニコ)」
「そ、それは・・・」

気がつくと街路樹に背中がぴったりとくっついていた。ご、これは逃げ場がない・・・

「言っただろう?絶対行かせないよ?」

顔が近い!!!ど、どうしよう!
何!?ジャック、なんかいつもと違う!

「ヒュー♪」

アカギの口笛が聞こえ、ジャックが我に返って一歩後ろに下がった。

「ほーんと、大胆だよなー真昼間から」
「・・・いや、ロミーの反応がとても面白くてね、ちょっと意地悪したくなってね(ニコニコ)」
「やだー!ジャックって女の敵だわー!ロミちゃん行こっ!あんまりロミちゃんに近づかないでよね!」

桜子さんに手を引っ張られ歩き始めた。
顔が熱い!

「ロミちゃん大丈夫?ジャックもヤキモチ妬いたのねー目の前で突然男の人に抱きつかれたり手を握って走り出したり、そんなの見たら、焦るわよ」

ジャックはどうしてそこまで怒るのかなぁ・・・まるで保護者みたいだ。

「でもあそこまで余裕のないジャックは初めて見たわねぇ。エミリオンさんのプロポーズと言い、相当焦ってるのね」
「ジャックがどうして焦るの?全然わかんない」
「・・・ふぅ、ロミちゃん、本当に鈍感すぎよ。ジャックはロミちゃんの事がそれだけ、す・・・心配なのよ。自分の事を忘れられて、ショック受けない人なんていないでしょ。だから必死なんじゃないかしら」
「でも、意地悪しなくてもいいじゃん。反応に困る事されて、なんて答えればいいの???」
「逆に意地悪してみたら?抱きつくとか、思わせぶりな態度で仕返しとか?」

無理です!

「いや、でもそれって、好きな相手に振り向いてもらうためにする事じゃないの??」
「・・・(むこうはそのつもりなんだけどね)くすくす、ロミちゃんってほーんとに可愛いぃぃい!!!」
「えぇぇぇぇぇ?」

桜子さんにぎゅーっと抱きしめられ、頭をなでられた。

上城さんと谷口くんが歩きながら話をしているため、とりあえずみんなと少し離れたところからついていった。





「それは・・・ロミーさんにはなんて伝えたら・・・」

「アイツの事だから絶対、橘にも嫌味を言いますよ。職場でもないのに俺に命令してくる様なやつですからね、どこか店に入れませんか?外だとアイツに見つかりそうで落ち着かないんですよ」

「うん、そうだな。三日月!ちょっといいかな」

「ロミちゃん、ちょっと待っててね」

上城さんの所に桜子さんが言ってしまったので、私は川を眺めていた。

川を挟んで反対側にも露店が沢山あって、人もいっぱい歩いるのがみえる。
雪はいつの間にか止んでいるけど空気は冷たく、吐く息も白い。

はぁーーーーー!
っと。息を吐いて白さを確かめると、みんなも、手すりに身を乗り出して、真似をして息をはいている。
隣をみるとジャックが居て、寒さで鼻の頭を赤くして、川の向こう側の露店を眺めていた。
みんなは、寒い!と盛り上がっている。

「ロミー、さっきはすまない。あんな事するつもりなかったんだ」

ジャックが話をしている最中、向こう側に知っている人を見たような気がして目を凝らすと、またズキン、と痛みを感じた。

「ロミちゃん、ちょっといいかな?」

桜子さんの声にも気がつかず、もう一度人混みの中を目を凝らし探すと、知っている後ろ姿を見つけた瞬間に私は心臓がギュッと掴まれたような痛みに襲われ、その場にしゃがみ込んだ。

「ロミー!?どうした!?」
「ロミちゃん、大丈夫!?」

はぁ、はぁ、はぁ、
あの後ろ姿、私は知ってる、あれは・・・

「また過呼吸になってる!ゆっくり、ゆっくり呼吸するんだ!」

はぁ、はぁ、はぁ・・・
意識が飛びそう・・・
心臓も痛い・・・

「ゆっくり吸って、ゆっくりはきましょう。そう。手、痺れてないですか?リラックスしましょう」

看護師をしているネコッチが肩や腕をマッサージしてくれている。
ゆっくり呼吸をしようと意識してみるけど、中々うまくいかない。
落ち着け・・・落ち着け・・・

みんなの声が遠くに感じる・・・

意識が途切れそう、だ・・・





「・・・な!・・・ばな!橘!・・・"berceuse"〈子守唄〉・・・これで、少しは落ち着くよな?」

谷口くんが魔法を使って、私を眠らせた。

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