Re-start 異世界生活って結構自分に合っている件

ロミにゃん

54 儀式の前

ー?????ー


「おーい、ロミー?どう?楽しんでる?」

「え?誰?」

「嫌だなぁ。忘れちゃったの?あ、そうか、忘れてって自分で言ったの忘れてた。あはははは」

誰だろ?懐かしい感じがする。

「男っ気の全くなかったロミーが、毎日イケメンに囲まれるってどんな気分???」

???

「ふふふ、まぁいいや、今日、面白い事をするから楽しみにしててよ、じゃーね、ロミー」


あれ?声が出ない、体も動かない???


さっきの人、誰だったんだろう???






ー朝 宿屋ー

ピピピピピピピピピ・・・

目覚ましの音で目を覚ますと、お腹の上に重い物がのっかていることに気がついた。

「お、重い。バニラ・・・」

「ふぁぁぁぁぁあ」

バニラは大きなあくびをして私のお腹からおりて布団の中にもぐって行った。

ピピピピピピピピピ・・・

上城さんまだ起きてない?

「上城さーん?朝ですよー?」

ベッドのカーテンをそっと開け覗くと上城さんは居なかった。
とりあえず、アラームを止めバニラにお風呂に行く事を伝え、部屋を出た。





ー20分後ー

さっぱりした私はお風呂場の外のベンチに腰掛け頭を乾かしていると、男湯から声がきこえてきた。

「それじゃ昨日は大変だったんですね」
「本当に参ったよ、リオン君の酒癖の悪さには」

あ、ジャック、夜中のうちにこっちにもどってたのかな?

「あ、おはようロミーさん」
「おはよう(ニコニコ)」
「おはようございます。二人とも先に起きてたんですね。」
「ロミー、リオン君の事はもう大丈夫だよ。アレはもう悪さはしないと思うよ」

「そうですか、まぁあのチャラさは治らないだろうけど」



私達は部屋に戻り、昨日のリオンの事を少し聞いた。

「少し彼は焦りすぎてしまったんだよ。それで選択を誤った。かなり反省してたよ。フィオナを守りたい一心に、あんな事をしてしまったみたいだし、許してあげて、ね?」

「ジャックがそういうなら・・・私は別に構いません」

「うんうん、これでおじさんは一安心だよ。昨日の夜、彼の酒癖の悪さには驚いたがね・・・」

うわー、ジャックの顔死んでる。
そうとうリオンは酒癖悪いんだぁ

部屋をあとにし宿を出ようとしたとき、ナターシャが声をかけてきた

「待ってくださーい!これ持って行ってください!」
「ナターシャ、おはよう。何これお弁当!?」
「トルル焼です!良かったら皆さんで食べてください」
「ありがとー!ナターシャ!」

ぎゅーーーっとハグして、私達はキャタルスシティのリオン邸に向かった。









ーキャタルスシティ リオン邸ー

「ロミー様達は来てくださるでしょうか」

「・・・わからぬ」


ポータルを使って、移動すると、ちょうどリオンの目の前に出た。

「なっ!ロミー!きてくれたのかっっ!!!」

わ!リオン顔が近い!!!

「ちょ、どこ触ってんの!?」

リオンの手が私の腰に回され左手で顎くいされた

「愛しのロミー・・・」

またキスされる!?
ってか、いつから"愛しの"になったんだ!
私は顔を手で覆った。

「すまない、きてくれると思わなくて、つい嬉しくて君の嫌がる事をしてしまったな。」

そういうと、リオンは私からスッと離れた。

キスされるものだと思って身構えたけどアッサリやめた?
なんか拍子抜け???

「皆さま、馬車の中でフィオナ様がお待ちですので、どうぞお乗りください」

「はーい。フィン、おはよー」

馬車の中に入り、私はソファに腰掛けた。


「おはようございます。皆様。本日もよろしくお願いいたします。」

「本日の日程を僕から説明させていただきます。到着が遅れた影響で少し、日程が変わりましたが、これより月の神殿へ向かいます。その後、神殿内の祭壇にて、国王と謁見の後、フィオナ様は清めの儀に入られます。地下にある部屋に夕刻までこもられますので、扉の前で交代で待機していただきます。」

「国王や騎士団の者はいつも儀式の前からフィオナの体に妄りに触れようとする。何があっても近づけてはならない。清めの儀の最中は何があっても奴等を部屋に通してはならない。」

「基本的に『清めの儀』から『Serenade Selene』が終わるまでは、私は無防備になります。なので、親衛隊の皆様にわたくしを守っていただきたいのです。」

ふむふむ、流れはわかった。
たくさん説明を聞いて少し疲れた。

「そういえば、この世界の敬礼ってどーやるの?」

私が質問するとフィンが教えてくれた。

「片膝をつき、心臓、ちょうどエンブレムを付けてるあたりに拳を当てて頭を下げる。これが最敬礼です。」

「こうかな?」

私は言われた通り、片膝をついて、右手をエンブレムに当てた。

「えーと、司祭様の仰せのままに。・・・こんな感じ?」

「はい!念のために、僕が皆様と一緒に付いていきますので、大事な場面でどう振る舞えばいいのか常にお教えいたします。」

「心強い!国王とか騎士団とか、緊張するし!!!」

基本的にリオンが話をつけてくれるみたいで、私達は立っていれば何とかなるみたい。
うまくいくといいけど。。。

馬車の中で、とりあえずの流れを教えてもらい、敬礼の仕方やタイミングなど、国王の前で失礼のないようにだけはしておかないと。


この後、神殿までの20分の道のりでメチャメチャ練習した。







しばらく走ると、街は騒がしくなっていた。窓の外を見るとお祭り騒ぎ?

フィオナの似顔絵が描かれた横断幕やTシャツやグッズなどが売られていた

「わーフィオナ大人気だねー」
「お恥ずかしい限りです」
「この街の連中はフィオナの命によって守られている事など、微塵も感じていない」

・・・知る者はごく僅かな上の者だけ。

「フィオナの命と引き換えの事をどこまでの人が知ってるの?」

リオン達の表情は曇る。

「私にも詳しくわからないが、国王と側近の大臣達の数名だろうな。」

上手いことクーデターとか起こって勝手に滅びればいいのになぁ
あ、いかんいかん、ゲーム的感覚でふざけてる場合じゃなかった!

「フィオナのグッズちょっと欲しいな。チラッと見えたタペストリー可愛かったな」
「君はこんな時までマイペースだねぇおじさん、緊張がほぐれたよ」

あ、しまった。心の声がまた出てしまった

「はは、ロミーやはり君は面白い。ますます手放したく無くなるではないか」

リオンの言っている意味がよくわからない

「僕も後でグッズ見てみたいかも。くすくす」




月の神殿に到着して、まず最初にリオンがおりると、黄色い声援が聞こえた。
リオンはそこそこに人気があるらしい。
次にフィオナがおりると大歓声が聞こえた。
地面が揺れるほどの大歓声だ。

フィオナが観衆に手を振っている、続いて私達もおり、フィオナを囲むように神殿の階段を登っていく。
階段を登った先には国家騎士団がズラリと整列しており、歓声に続き圧倒される。
階段を登り終えるとフィオナが広場の方に振り返り深々と頭を下げて手を振ると、また歓声が上がった。
ライブ見に行って好きなバンドが出てきた瞬間みたいなそんな心臓の高鳴りに似てる。
大歓声の中、神殿へ入り、大きな扉が閉められると、外の声は不思議と聞こえなかった。

ステンドグラスから朝日が差し込み、床がカラフルに輝いている。
祭壇の向かって左側に如何にも国王らしい人物が大きな椅子に腰掛けていてその周りに騎士団の人が立っていた。
私達は祭壇から向かって右側にある大きな椅子にフィオナが腰掛け、その横についた。

「フィオナ、ここまで大変だったろう、よく来てくれたね」

「神父様、ご無沙汰しております」

「今や君の方が私より立場は上だ、そんなにかしこまらなくてもいいんだよ」

「いえ、わたくしは神父様に育てていただいた身。その御恩は忘れません」

神父はフィオナの育ての親のようだ。

「ありがとう、フィオナ。それでは、始めようか」




ベルの音が鳴り響いた。

すると、一斉に騎士団の者達が敬礼をした。

馬車の中で教えてもらった、立ったままの敬礼を思い出し、私達も敬礼する。

フィオナが立ち上がると国王も立ち上がり、国王が話し始めた。

「早いものでもう、この時期がやってきた。我が国の繁栄の為、フィオナには祈りを捧げてもらう。『Serenade Selene』は今回で6回目だ。これからもフィオナにはこの国のために祈りを捧げてもらう。キャタルス王国繁栄のために!」

『キャタルス王国繁栄の為に!!!』

その場にいた私達以外のキャタルス王国の者が全員声を揃え、何度か繰り返しその言葉を口にした。

『つーか、こいつら胡散臭ぇ』

バニラがテレパシーで話しかけてきた。

『見ろよ、あの国王、野心の塊だぜぇ、ありゃそのうち喰われるぞ』

バニラに言われ国王をよ〜く見てみると、体からドス黒いオーラのような物が出ているのが見えた。

うわぁアレ何?取り憑かれてるの?

『あぁ、ありゃ低俗な悪魔に魂をかじられてる証拠だ』

マジかぁ
アレ何とかしたら、国王がフィオナに強要しなくなるかな??

『どうだろうなぁあの国王元々今の座を得るために先代の国王を毒殺したって噂もある。案外国王になる以前から取り憑かれてたかもな』

マジかぁ・・・

バニラと話をしているうちにフィオナが地下にある部屋に向かう事になっていた。

私は上城さんの後ろをついていこうとした時、祭壇の後ろの女神像の肩の上に、人影が見え立ち止まった。

赤い髪の人物がそこにはいた。

3階くらいの高さのある場所にどうやって乗ったのだろうか、その人物は国王の方をじっと見つめている。

『ロミー、置いてくぞー』

あ!ごめん!

私は慌ててその場を後にした。



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