Re-start 異世界生活って結構自分に合っている件

ロミにゃん

28 思い出される現実とナターシャの未来

ぎゅーと抱きしめるとバニラはむくりと顔をあげ、私の首の後ろに腕を回し顔を近づけてきた

「ちょっと!?」

またキスされる!?そう思った時
ガランガラン!と、勢いよく店のドアが開き、上城さんが出てきた!

「ふぅー飲み過ぎたぁ。あ!わ!ご、ごめん!邪魔しちゃった?」

「チッ」

バニラ、舌打ちしてるぅ!
椅子に座る私の上に覆いかぶさったまま降りてくれない。

「え、あ、2人ってそういう関係なの????」
「そうだ」
「いいえ」

ほぼ同時に返答をすると、バニラが私を睨んだ。
もう可愛いなバニラ!

私が頭をわしゃわしゃと撫でると照れて猫の姿に戻ってしまった。
「このお邪魔虫め!盆暗ガンナー野郎!」

と捨て台詞を吐いてどこかに行っちゃった。

「ぼ、盆暗ガンナー野郎・・・ご、ごめん、本当に邪魔しちゃって・・・」
「いえ、本当にバニラの悪ふざけなんで」
「あれはどう見てもバニラが君のことを・・・いや、なんでもない忘れて」
「??」

しばらく沈黙した後、上城さんが、隣のテーブルの席に座った。

「ごめんね、そんなに強くないのにちょっとお酒飲みすぎちゃって酔い冷まそうと思ってね。ロミーさんは月光浴だよね」
「はい。バニラが月光浴の時間を教えてくれたんです」

「そっか・・・あのさ・・・」

なんだか上城さん何か言いたそうだけど、ハッキリしない感じだ。

「ロミーさん、ずっと聞きたかった事があるんだ。あの日、この世界に来た日、会社での事なんだけど・・・」
「・・・」
「お昼休憩の時、隠れてたでしょデスクの下に」

唐突に思い出される現実。
忌々しい記憶。忘れたかった会社での出来事。

「聞こえてたんだ。君の声」
「!?・・・やっぱりぃ聞こえてましたかぁ、あはははは」
「ロミーさん、係長からパワハラを受けてたよね?」

核心をついた問いに、私は、固まってしまった。

「あの社内メール読んだのはロミーさん達が休憩に入った後だから、後で気がついたけど、あのメールのも含めて、そのせいで会社を辞めちゃうんじゃないかと思って、それで、帰りに声をかけたんだ」

「あ・・・断って帰ったやつ・・・あの時はすみませんでした。桜子さんとカラオケに早く行きたかったのもあってつい・・・」
「いや、何となく、朽田係長が部下達への態度がよくないと言う噂は耳に入ってたんだよ。何人か会社を辞めたり部署を異動しただろ?止めたかったし、助けたかったんだ・・・でも何も出来なくって・・・」
「・・・」
「それで、一つ今の気持ちを。もし、もしもだよ、こっちに朽田係長が飛ばされてて、一緒に冒険をするって言ったらどうする?」

せっかくストレスから解放されたのにこっちあの人がいるなんて!考えたくもない!
そんなの決まってる答えは一つしかない!
私は大きくため息をついてから答えた。

「そんなの、死んでも嫌です」
「・・・」
「たとえ、知り合いだとしても私のストレスの元凶と一緒に旅をするとか考えられません。みんなが、あのババアを仲間にすると言うのなら私は一人で旅にでます。」
「"ババア"・・・やっぱりそうだったんだね。あの時も、キメラへの攻撃を跳ね返した時、あれは係長の事を言っていたんだね」
「はい。私がどんなに嫌な奴と思われてもかまいません。あのクソババだけは絶対に顔も見たくありません。私、あの日、本気で仕事辞める決意をしたんです。これ以上理不尽なイジメに耐えられなかったので。毎日毎日ネチネチネチネチと精神的に追い詰められちゃて、会社に行くのも嫌で生きてる事が辛いって思う瞬間が増えたし、それに、以前、突然辞めた女性社員いましたよね?・・・っつ」


ドックン・・・


話をしていると突然眼球が熱く脈打ち、その衝撃で、フラついた

「ロミーさん?」

ドックン、

「大丈夫?」

ドックン、

熱い。痛い。何これ?あまりの激痛で私は椅子から落ちうずくまる。

ドックン、ドックン、ドックン、

バニラが走って戻ってきて、私の顔をのぞきこんだ。

「大丈夫かっ!何をしていた!?こいつの心がひどく動揺してるぞ!!!極度のストレスを受けてたのか!!!!?」
「え!?あ、僕がロミーさんに嫌な事を思い出させてしまってその話をしていたら急に!!」
「ロミーは今、普通なら耐えられるようなストレスでも呪いのせいですぐに不安定になっちまうんだ、わかってたはずだぞ!」

ドックン、ドックン、ドックン、

痛みのあまり身体が仰け反り手足をばたつかせてとても危険な状況だ。
バニラが人型になり、ロミーのお腹の上にまたがって腕を抑えた。

「足を抑えろ!!!」
「あがっ、あぁぁぁ!」

痛みに歪む顔を見て上城が何度も謝っている。

「ロミーさん、ごめん、ごめん!僕が嫌な事を思い出させたせいで!!!!」

ドックンドックンドックンドックンドッドッドッドドドドドドド!!!

「まずい!このままじゃ心臓が破裂しちまう!!!魔力吸収が追いつかない!!」
「がっ、はぁ、ぁぁあっグギィィァァァア」
「ど、どうにかならないの??バニラ!!!」
「何度か試そうとしたがこいつが嫌がってたから寸止めしてた方法なら・・・仕方がない、輝、お前、妬くなよっ」

「え?・・・なっ!!!!」

バニラがロミーに口づけをした。
最初は暴れていたロミーだったが、直接魔力を吸い取っている為、数十秒ほどで暴れていた体は大人しくなった

「もう少しだな(ニヤリ)」

そういうと、今度は濃厚なキスを・・・

「ちょっ、絶対それ必要ないよね!?」
「あ?俺の勝手だろ。いつもおあずけ食らってたんだ、少しくらい大目にみろ。」
「や、やめろって、もうロミーさんは落ち着いてるんだろ!」
「・・・ちゅ、はぁ、ちゅ(にやり)なんだぁ、あーきーらー、お前妬いてんのかぁ?」
「ちょ、こんな時に冗談はやめろよバニラ!しかも音!いやらしいから!」

突然私は目を覚ました。

「はっ!!!カツ丼じゃなくて牛丼頼んだんですけど!!!」

上にバニラが乗っかっている光景にパニクる。

「ちょ!バニラ!なに!まさか!私を襲うきだな!離せ!」
「いや、もういただいたんだけどな。ごちそうさまぁ」

そう言って猫の姿に戻り、毛づくろいをはじめた

「もう!乙女の大切な身体になにすんのさ!」

上城さんをみると顔が真っ赤だった。
なんで???

「もう、月光浴はいいんじゃないか?そろそろ店に戻るぞ」
「ん?たしかにスッキリしてる。まぁいいか。もどりましょー上城さん」
「あ、う、うん(赤面)」


レストランに戻ると、店の中の異様な光景に驚いた。
ベロベロの支部長は服を脱ごうとしているところを受付の2人に止められていて、
キースさんとアカギは上半身裸で筋肉の自慢をし合っていて、
それの横では赤い月とソルトがカナナンと白バラとネコッチを口説いていて、
桜子さんは酔いつぶれていてそれを、わんわんがとジャックが介抱している。



ダメだこりゃ。













あれから宿屋に戻ってきたのは0時過ぎ、みんな酔っ払っていて部屋まで運ぶのが本当に、本当に、大変だった。


私は一人でお風呂に行くことにした。
酔っ払い達はみんな眠っているから静かなもので、お風呂も貸切!
と思ったら脱衣所に誰かの服が置いてあった。

中に入るとナターシャが身体を流しているのがみえた。

「あ!すみません!この時間は誰も入らないので利用してたんです!すぐに上がりますね!」
「なんで?」
「なんで、ってお客様が利用中は従業員は入れないので、それに」

ナターシャは足枷を気にしていた。

「私が勝手に入ってきたんだから気にしないの!一緒に入ろうよー大丈夫大丈夫。あ、お風呂あがりにオレンジジュース作ってあげるよ」
「ご一緒させてください!!!」

あはは。一瞬で態度が変わった!
頭と身体を洗いサッパリして、二人で湯船に浸かり、一息つくと、ナターシャが遠慮してふちっこにいる。

「ふぅー、今日も疲れたなぁ。いつもはシャワーだけだったけど、お風呂って気持ちいいんだなぁ。みんな疲れ取れたかなぁ?ナターシャはお風呂好き?」
「ロミー、私といる時は無理に気を使わないでください。」
「あはは、無理してるってほどではないんだけどなぁ。私は純粋にナターシャとおしゃべりがしたいだけだよ?」
「ロミーは凄いです。どんなに辛い目にあっても、人のことを気にかけてくれるし、私にだって優しくしてくれる」

そんな人の事ばっかり気にかけてるかな?結構自分勝手だと思ってるけど・・・
褒められるとちょっと照れる・・・

「ロミー、」
「んー?」
「私の足枷、本当に外せるんですか」
「うーん、一度、足枷を触らせてもらえれば、わかると思う」
「・・・怖いんです。本当に外せたとして、私のこれまでが、無くなってしまう気がして、キースさんやマリアさんとどう接したらいいのか、全部が怖いんです」

「無くならないよ、始まるんだよ。明るい未来が待ってるんだよ。恋だってして良いんだよ。好きなもの買って良いんだよ!誰にも命令されないよ!自分の意思で好きな事していいんだよ!嫌なことは全部嫌って言って良いんだよ!奉仕なんてクソ喰らえだよ!」
「・・・私、ロミー達と一緒に並んで歩きたいです」
「うん。嬉しいな。ナターシャの気持ち聞けて」

私はナターシャの足枷に触れ、詳細を見た。

"奴隷の足枷 強度100%  "

情報少ない!まぁ何とかなるかな?
私は意識を足枷に集中させた。

「ど、どうですか???」

うーん!ガチャッと外れろ!はっ!


ガチャ、

ナターシャ「!?」

湯の中で足枷が外れ落ちた。

「ふぅ、何とかなったよ。ぎゃ、ぶくぶくぶく」

抱きつかれ、その拍子に私は沈んだ。

「わ!ロミーごめんなさい!大丈夫ですか!」
「ブクブク、ごほ、ごほ、だ、大丈夫、大丈夫。これでナターシャは自由だ!」

ナターシャが足枷が付いていたところをマジマジとみている。
今までの人生を思い返しているのだろうか・・・
しばらくして涙を流しながら笑って言った。

「こ、こんな簡単に・・・ありがとう、ありがとうございます」
「よすよす(にこにこ)」

ナターシャの頭をなでなで

「これから沢山の楽しい事が待っているよ」





お風呂を上がって外のベンチに座り、料理人スキルを使って、特産オレンジジュースを作った。
魔法の為、道具などは一切いらない。
目の前にオレンジジュースが現れた。
念のため味見を・・・
こっちの世界では初めて作ったから、ね。

「ごくん。おいしぃ!!はい、ナターシャの分」
「・・・」
「もう許可無くても自分の意思で飲んだ良いんだよ」
「そ、そっ、そうですね!ゴクゴクゴク!ぷはぁ!!おいひーれふぅ♡」

でたぁ!天使みたいに可愛いナターシャスマイル♡

「これからは、いつでも好きな時に飲んで良いんだよー」
「じゃ、じゃー、私の為にまた作ってください!」
「うん!もちろん!!そうだ、やってみたいことを紙に書いてみるといいよ!一つずつ叶えていくんだよ!」

ナターシャの瞳が希望に満ち溢れている。
月に照らされるナターシャはまさに天使みたいに可愛かった。


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