Re-start 異世界生活って結構自分に合っている件
18 月明かりあびて
バニラが私の前をトコトコ歩いている。
「何してたんですか?」
「読書をちょっとね。一度読み終えた古いのしか入ってないけどね」
ジャックさんは本を読むんだぁ。
なんか、本を読む姿、様になってたなぁ・・・むふふ。
私、活字苦手で最後まで読みきった事ないんだよねぇ、読んでみたいラノベがあっても漫画化されるの待つくらいだから。あはは。
しばらく歩いて噴水広場に出た。
月明かりが噴水の中央の女神像を照らしてキラキラしてとても綺麗だった。
噴水の前に座って空を眺める事にした。
「・・・もしアレなら私は読書してるから帰りたくなったら教えて」
「あ、すみませんありがとうございます」
ジャックさんは、直ぐそばのベンチに座って読書を始めた。
私は月光浴と言っても退屈で噴水の周りをゆっくり歩きながら天体観測。
こっちの世界の月はとっても大きい。
鼻歌を歌いながら噴水の周りをゆーっくりと何周か歩いた。
これは心の休息にも目の休息にも丁度良いのかもしれない。
何周か歩いた後は噴水のへりに寝そべり、鼻歌を歌いながら星を眺めると、バニラがすぐに私のお腹の上に飛び乗った。
「ぐえっ」
バニラは私の魔力を吸い上げているのが感じ取れる。
バニラの頭をなでなでしながら星をぼーっと眺めるのも悪くないなぁ、向こうじゃ暇さえあれば、ゲームしてたからなぁ、笑。
なんか良いなこーゆー時間。
満点の星空と月明かりを浴びながらぼーっとするって言う、何でもない時間。
ゆっくり星を眺める事って本当に無かったからなぁ。
いや、一度誰かと見に行ったようなぁ・・・誰と行ったんだっけ?
満天の星、ヒンヤリとした綺麗な空気・・・あの空も綺麗だったけど、ココも凄く綺麗。
静かに流れる時間って物凄く癒される。
しかも、向こうの世界はまだまだ夜は寒かったけど、こっちの気候はちょうど良い
星座を確認しようにも星が多すぎて全くわからない。
「月の光が濁りを無くしてるお陰で、ものすごく滑らかな味わいだ」
「魔力って味あんの?」
「全然違うな。吸い取る部位によっても違うぞ」
そう言うとバニラは私の顔をじっと見つめ突然、耳たぶにカプリと噛み付いた!
痛っ!!おぉう、吸ってる???
「うん。舌触りも違うな」
もうやめてよぉ!!
恥ずかしい!両手で顔を覆った!!
顔が真っ赤になるのがわかるほど顔が熱い!
バニラがニヤリとして言った。
でも、月光浴をしながら魔力も食べてもらって、身体が楽になった気がする。
特に目の辺りがモヤモヤしてた感じが消えてる。
私は身体を大きく伸ばしてあくびをした。
「気持ち良さそうだね」
「あ、すみません(照)」
気がつくとジャックが頭の上に座っていた。
「君はこれからどうするか考えてるかい?」
「うーん、そうですねぇ」
私がこの世界に呼ばれた可能性がある。だから、私はここで、何故呼ばれたのか知る必要がある。
だから、進むしかない。でも手がかりがない以上、この世界を学ぶ事から始めるしかない。
「無理せず少しずつこの世界を知っていけばいいんじゃないかな?」
「・・・ありがとうございます。私も同じ事考えてました。"メインストーリー"的な目的が見つかるまでは、この世界を楽しもうと思います」
「うん、それがいいね。私にも手伝わせてくれないかい」
「はい!是非お願いします」
スマホの時計を見ると2:50だった。
「あ、こんな時間まで!すみません、流石に寝たほうがいいですよね、宿に帰りましょう」
バニラがまた私の前をトコトコ歩いてくれている。
宿に戻った時には3時過ぎていて、私達は静かに、部屋に入った。
「ロミーさんの上使って本当に大丈夫?(小声)」
「どうぞどうぞ(小声)」
それぞれのベッドに入りカーテンを閉めて私達は眠りについた。
小窓から差し込む陽射しが暖かい。
目が醒めると見慣れない部屋の光景に一瞬戸惑った。
枕元に置いたスマフォの時計を見ると9:40。
ふわぁぁぁぁあ。と大あくびをした。
「起きました?朝食できてますよ」
ナターシャがお迎えに来ていて、みんなはもう先に起きて食事中らしい。また私は一番最後のようだ・・・
むにゃむにゃと寝ぼけ眼で昨日買ったマスクを顔につけ、ナターシャに手を引かれながら下に向かった
「ロミちゃーんおはよー」
みんなに挨拶されて私も挨拶を返し、ナターシャに席に座らされると目の前にパンとスープと目玉焼きが出てきた。
眼の調子も良くアイマスクしてても見えるようになっていて、これならもう一人でも大丈夫そう。
「いただきまーす。むにゃむにゃ」
「ロミーさん、朝弱いんだね」
「そうよーロミちゃんの朝はいつもこんな感じなのよねぇ。すみませーんスープのおかわり貰えますか」
「ロミー、こぼしますよ!」
「もう少し寝るぅぅう」
「食べながら寝ちゃうの?ロミーさんは」
「これは、お世話してあげたくなるなぁ(ニコニコ)」
5分ほど経って私は覚醒し、むくりと起き上がった。
「ロミちゃんのこの行動を"二度寝からの華麗なる生還"と呼んでるわ」
「みなさん、おはようございます」
「おはようロミーさん(ニコニコ)」
「いただきまーす。もぐもぐ」
私の隣に座って俺にもくれと、催促しているバニラは今日も可愛い。
「バニラくんスープ飲むかい?」
「おう!ぺろぺろ」
ジャックがスープを取り分けてくれて、バニラが待ちきれなくて、慌ててる様子が可愛い。
「今から朝風呂にみんなと行ってくるけど、ロミちゃんどーする?」
「あー夜入ったから、やめときます」
「オッケーじゃー後でね」
もぐもぐ、
「上城くんは朝風呂は?」
「僕は大丈夫です」
「では私はお風呂に行こうかな。また後で」
 
ナターシャがハンター協会まで案内してくれるみたいで、アカギさん達男性四人は朝食を済ませて、街を散策してから向かうらしい。
私も本当は早く行きたいけど、睡魔には勝てなくてつい、ね。あっははー
スマホを取り出して、ステータスを確認した。
パーティだけかと思ってたけど、友達登録してれば、友達のステータスも確認できるのはとても便利。
そうだ、ナターシャの件を聞こうかな?ナターシャは今いないね、マリアさんがカウンターにいる!よし!
私は食べ終わった食器をカウンターに運びマリアさんに話しかけた。
「マリアさん、ナターシャについて聞いてもいいですか」
「あぁ聞いたよ。枷を外すって言ってくれたんだってね」
「あ、はい・・・失礼だったみたいで、すみません」
「そんな事ないよ!あの子ひどい事言ったんじゃない?すまないねぇ、でもあの子はあれで喜んでたよ。あの子はねうちのキースが仕事で寄った村で餓死寸前の状態で、道端に倒れていたのを見つけ連れて帰ってきたんだよ。前のあの子の主人はロクに食事も与えなかったみたいでね」
ナターシャの前の主人は子供のナターシャに大人と同じように労働させていたようで、食事も調理もしない生の物や傷んだ食材しかもらえなかったらしく、ここに連れて帰ってきた時、食事も噛む事すら出来無かったらしい。
流動食を少しずつ食べさせて、普通に歩けるようになったのは1ヶ月も後だったとか。
それから、助けてもらった恩を返すためだけにキース夫妻に尽くしているんだとか・・・
マリアさんとキースさんはナターシャを本当の娘のように可愛がっていて、あの足枷がある限り、ナターシャの心もずっと囚われたまま。だから、心を開いてもらえず、ここへ来て、9年になるそうだけど、未だに納屋の二階のハンモックで寝てるそうだ。部屋を用意してあげても、なにをあげても『私は奴隷ですから』って言って何も受け取らないらしい。
「キースがナターシャに言ったのは貴方達が市場でお買い物する手伝いだけなのに、あの子、いつもなら、それ以上はしないのよ。よほど、ロミーの事が気に入ったみたいで、昨日の夜も嬉しそうに貴女にジュースを買ってもらった事も話してくれたのよ。あの子が他の話を自分からする事なんて無かったから本当に嬉しかったわ。ロミーありがとう」
「え?私は何もしてません」
マリアさん目がちょっと潤んでる?要するに、ナターシャは私に心をほんのちょこっと許してくれてるって事でいいかな???
うんうん、足枷を外してあげられれば、キース夫妻の本当の娘になれるって事だよね!?よし、俄然やる気でた。
「上城さん、私の今後の目標、1つ決まりました」
「ナターシャの足枷を何がなんでも外してキース夫妻と本当の親子以上の幸せになってもらいます!」
「うん。僕も手伝うよ!」
私達は部屋に戻り2人が帰ってくるのを待った。
「目の調子はどう?」
「もう抜群です!アイマスクしててもほぼほぼ見えるようになりました」
「それはよかった!昨日の司祭様の魔法のおかげかな?」
「はい!あれのおかげてすっかり見えるようになったんで、上城さんの表情もバッチリ見えてますよ!」
「それはそれで、何か照れるな・・・」
外から女性達のキャッキャする声が聞こえてきて、桜子さん達が帰ってきたのがわかった。
ガチャっと部屋の戸があき最初にジャックさんが入ってきた。
もう昨日揃えた装備に着替え終わってる。
「おかえりなさい」
「ただいま。」
ニコッと笑ってただいまって言う姿、素敵です。
私、ほんとに初老の紳士とかダンディなおじ様に目がない・・・
「ただいまーそろそろ時間かな?」
時計を見ると10:50だった。
「まだ早いけどみんな揃ったし行こうか」
ゾロゾロと階段を降りるとナターシャが待っていた。
私が笑顔でナターシャに手を振ると、照れくさそうにお辞儀をしてくれた。
うーんガードが固い!でも頑張る!
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
26950
-
-
1512
-
-
75
-
-
32
-
-
1978
-
-
4
-
-
0
-
-
59
-
-
17
コメント