リトルシスターズ!

四宮カイト

第14話 「ミスコンエントリー男女一人ずつ、と」

 
 放課後、俺は美奈ちゃんと一緒に会議室に向かった。
 クラス委員同士の挨拶とこれからの活動計画について生徒会から話があるらしい。 
 

 「たぶん文化祭の話だよね、今日の集まりって」
 

 「……」
 

 俺は後方からついてくるクラスメイトの圧が気になって美奈ちゃんの問いかけに答えられなかった。
 

 「ねえ聞こえてる、歩くん?」
 

 「ご、ごめん。ちょっと緊張してて」


 「確かに初めての会議だもんね、私も去年の自己紹介はテンパっちゃったから、わかるよその気持ち」


 俺の心配事は別にあるけど、相づちを打ちながら会話して気を紛らわした。
 この学校には教室棟が3つ並び、生徒会室と会議室は第3号棟の3階、2年3組の教室は第2号棟の3階。
 一回降りてから、別の教室棟に行き、また階段を登るので他学年の人ともすれ違う。
 そのたびに視線が美奈ちゃんに集まり、再度彼女の人気がどれくらいのものか思いしる。
 
 そんなことを考えてる間に会議室についた。
 
 中に入るとすでに他のクラス委員は着席しており、俺達が最後だった。
 空いてる席に座ると、現生徒会長が立った。

 見た目は爽やかイケメン。
 去年の選挙でも生徒会長立候補者の中で得票数が一番多く、全校生徒の9割にも昇った。
 
 「今日は集まってくれてありがとう。これからの活動計画について話し合いたい。まあその前に知らない人たちも多いから自己紹介から始めようか」
 
 彼の指示で3年生から順番に自己紹介がおこなわれた。
 
 前の人のたどたどしい挨拶が終わり、美奈ちゃんのばんになった。


 「私は2年3組波江美奈です。去年もクラス委員で仕事をしていたので、皆さんの活動の役に立てるように頑張ります。よろしくおねがいします」


 周囲の盛大な拍手に包まれる。


 (いいお手本の後か……、先に挨拶しておけばよかった……)


 俺は立ち上がり、挨拶する。


 「小鳥遊歩です。はじめてなので失敗することがあるかもしれませんが、失敗しないよう努力するので、温かい目で見守ってくれるとうれしい……」


 そこまで言いかけたところで固まる。
 男子共の視線が鋭い。
 学園のアイドルと1年間活動するのだから仕方ない。


 (視線が刺さる!)


 心配そうに肘でつついてくる美奈ちゃん。


 「どうしたの急に固まって?」


 「っ、これから1年間よろしくおねがいします」


 雑な締めくくりに反応が遅れたのか、俺が座ってからまばらに拍手がおこる。
 その後も普通に自己紹介は進んだ。
 

 「一通り自己紹介も終わったことだし、手短にこれからの活動方針について話そうと思う」


 生徒会長の説明は言葉通り数分で終わったが、活動内容はよく理解できた。
 

 「やることは出し物決めとミスコンエントリー、男女一人ずつ、と」


 美奈ちゃんはメモを確認しながらため息をつく。


 「波江さん、どうしたの?」


 「え、あ、いや。なんでもないよ……」


 「そ、そう」
 

 それ以上何も言わず廊下を進んだ。
 
 

 

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