リトルシスターズ!

四宮カイト

第10話 (実際ものすごい嫌われています……)

 4月、桜が満開に咲き誰もが胸踊る時期。
 今日から俺、小鳥遊歩は高校2年生に進級した。
 校門をくぐり、ある掲示板の前に立つ。
 そこには新たなクラスが記された紙がはられていた。
 春の最初の大きなイベントといえばクラス替えだ。
 田舎では一クラスしかなくクラス替えがないらしいが俺はつくづくもったいないなと思う。


 「俺は2年3組か……それで」


 自分の名前を探してからある人の名前を探した。


 (よっしゃーーー!あった、美奈ちゃんの名前!)


 もう一度自分の名前を確かめると一つ下に同じ名字があった。


 俺の喜びも束の間だった。


 小鳥遊冬香、うちの長女にして第2学年の女王、……じゃなくてアイドル。
 兄である俺よりスペックが高く、最近はよく顎で使われている。
 そしてよくよく見ると『冬香親衛隊』のハゲ、デコ、モヒカンまでもがいた。
 俺の高校生活に暗雲がたちこめる。
 暗く沈んでいるところに女神が現れた。


 「おはよう、歩くん。せっかくのクラス発表なのに浮かない顔してるけど、どうかした?」

 「!?……波江さん、久しぶり。いやそのクラス発表にガッカリしてるとこ」

 「どれどれ、あぁ〜〜、なるほど。確かに歩くんにとって良いとは言えないね……」


 俺の気持ちを察しながら美奈ちゃんは掲示板を見た。
 さらに最悪な奴が後ろから声をかけてきた。。


 「兄さんも2年3組ですか、同じクラスになれて嬉しい……っ」


 冬香が突然現れたかと思うと、口をつぐんだ。
 冬香は美奈ちゃんに気づくと、俺の後ろに隠れた。


 (背中越しでも、ものすごい敵意が伝わってくる……)


 美奈ちゃんも第2学年のアイドル、いつもはメガネをかけているが、それをとると冬香以上の美貌が現れる。
 二人とも成績優秀で、運動神経も男子に引けを取らない。
 だけど唯一美奈ちゃんが勝っているとすれば、性格だ。
 自分に対しても、他人に対しても厳しくツンツンな冬香に比べ、美奈ちゃんは人あたりがよく誰とでも仲良くなる。
 俺から見れば、美奈ちゃんは冬香の上位互換といっても過言じゃない。


 (冬香からすれば、ライバルなんだよな……、たぶん)


 美奈ちゃんが妹に挨拶した。


 「おはよう、冬香さん。これから一年よろしくね」


 「はい、こちらこそよろしくお願いします。兄さん、私は生徒会の集まりがあるのでこれで……」


 それだけ言い残して、校舎の中に入っていった。
 俺と美奈ちゃんはキョトンとしながら立ち尽くした。


 「あはは……、私って冬香さんに嫌われてるのかな……?」


 「そんなことはないよ……たぶん」


 (実際ものすごい嫌われてます……)


 俺はあそこまで敵意丸出しの冬香はあまり見たことがない。
 
 
 

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