作成中止

はうたゆしか

48 願った幸せ


「…す、少しはやるじゃない…モテそうには見えないけど?」

「あんったに言われたくないわよ雪女」

サヤカはべっと舌を出し、剣を壁にもたれかかる雪女に突きつける。

「戦い方はわかっているようね。さすが王族だけあって英才教育ね」

「…………」

何が言いたいの、とサヤカは呟く。

「あなた、サヤカ王女でしょう?シキ様の実の娘」

ガツン!!!

サヤカは雪女がもたれかかる壁に剣を突き刺した。

「怒らないで。私を覚えてないかしら?私よ、トノメ」

「トノメ……」

幼少期の記憶。

サヤカの記憶の中のトノメという女は、サヤカと同い歳くらいで王宮で働いていた…。

「生意気なとこは変わってないみたいね」

「サヤカこそ、気の強いとこは変わってないのね」

トノメはすかさず、サヤカの頭上から大量の雪を落とす。

サヤカはさっとそれをかわす。

トノメが右手で空を切ると、静かに降っていた雪が吹雪になる。

強い風と雪で、サヤカの視界も狭まる。

「ここで大人しく待ってて」

雪女はサヤカを雪の壁で囲い、笑う。

サヤカの手元に剣はない。

「待ってて??」

サヤカは静かに拳を強く握る。

「のんびりしてたら、シキのせいで不幸な人が増える」

「あなたは裕福だったじゃない、サヤカ様。王女だから、何でも手に入った」

トノメのその言葉に、サヤカの脳裏では死んでしまった兄の姿がよぎる。

なにもいらない。

宝石も洋服もお金もいらない。

サヤカにとっての幸せが━━欲しい。

「私の“幸せ”は!私の大好きな人たちが!!」

自分の言葉で脳裏によぎるのは、兄の姿。

ミヅキたち旅の仲間の姿。

リタや今まで出会った国民たち。

トノメの姿。

「幸せに生きることよ!!!」

サヤカは雪の壁ごとトノメを殴る。

透視の力でトノメの位置を見破る。

その時・・・がくるまで私は戦うのよ!」

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