作成中止
19 アレンの正体
夜、サヤカは宿の屋上で街を眺めていた。
こうして街とか国を見渡すと、王宮からのオリビア王国の景色を思い出す━。
「なーにたそがれてるの、サヤカ様」
「なあに、嫌がらせでもしに来たの?」
サヤカは振り返らず、声の主アレンに返す。
「悪い悪い。や、ちょっとね。俺はずいぶん、お前に信用されてないみたいで」
「……宿でのあたしとミヅキの会話きいてたの?やな趣味ねーえ」
サヤカはくすりと笑う。
「信頼しろとは言わん。俺もロクなことしてきてないからな」
アレンがサヤカの隣の柵に寄っかかる。
「5つも石を持ってるのはただ者じゃない…そう言ったわよね?」
「一気に扱えるのはせいぜい3つ。それに、長年旅してりゃ、珍しくもないだろ?」
「私も10年旅してる。それにあのシキの元にいたのよ。それでも、3つも扱えるなんて…いなかったそんな人」
「そ。じゃあ俺はずいぶん優秀らしいな」
アレンがあくびしながら言う。
(何者なの、アレンさんは)
「まあ俺の失ってきたものはお前ら2人より少ないかもしれないからなぁ」
ミヅキもサヤカも、親や兄弟、居場所を失ってきた。
「俺は親も兄弟も戦争がない限り早死にはしなそうだ」
「え?どういうこと??」
サヤカはアレンを振り返って見る。
「お前も俺も俺も、シキの犬に追われる身だ」
「え……?シキの犬って、シキ軍の」
シキ軍は“ルチャルド一族”という、傭兵一族で成り立っている。
ルチャルド一族は本家のルチャルドを中心に隊を組み、代々王族に仕えている。
「ルチャルド一族…、アレンさんが?!じゃあ、兄2人を殺したフウレン…シキ軍の軍隊長とは顔見知りなのね」
サヤカはなんとも言えない顔をした。
アレンがルチャルド一族ならば、戦闘慣れしているのも、石を5つ持ち、3つを一気に扱えるのも納得いく。
「……俺は、ルチャルド本家の人間」
「…………!!」
アレンの目が冷たい。
「フウレンは、俺の父だ」
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