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はうたゆしか

1 旅立ち

30年前、王座を巡っての争いは10年続いた。

「なんで!どうしてこんなことするんだよ!!」

自分の村が炎に飲まれていくのを1人の少年はただ泣き叫び、眺めるしかなかった。

「生き残りはお前らか」

村の丘に逃げてきた少年を含む数人の前に火を放ったシキ軍の隊長が殺気を帯びた目を向ける。

「お前らだけは…お前らだけは許せねえ!!!」

少年はその男に向かって走りだす。

「君、やめなさい!」

村人が止めるも、少年はきかなかった。

「弱き少年…悔しくばいつか、シキ王を倒してみろ。できなければお前たちに良い未来はもうない」

男は片手で少年の頭を掴み、そう言った。

その少年の目は男より殺気を持っていた。

ートト王国。

「っし、やれることは全部やった!」

あの日から12年、16歳になった少年はあの男に言われたように強くなった。

「ミヅキ、最後にこれをお前にわたす」

「ん?なんだよじいちゃん」

ミヅキ、それが少年の名。

唯一生き残ったミヅキの家族であり、12年間修行をつけた祖父ホウヅキがミヅキに何かを手渡す。

「ん?じいちゃん、俺はネックレスなんていらねぇぞ?」

ミヅキの手のなかには赤い石がチェーンで通されたネックレス。

「お前にそれを託す。お前も存在は知っておるだろ」

ミヅキはまじまじと赤い石を見た。

「ナタストーン…?いや、まさか。もう手に入るようなもんじゃないし、ましてやじいちゃんが持ってるなんて」

ミヅキはホウヅキの顔とネックレスを交互に見る。

「あれだろ、その辺の石に色塗ったみたいな?だってじいちゃんが持ってるわけn」

「バカもん、これでも昔はこのトト王国の軍隊長じゃぞ!」

ナタストーンは、シキが王になってからというもの、シキがかき集めてしまったため30年前は入手困難というわけでもなく、修行すれば誰でも使えたが、今じゃすっかりその数を減らしていた。

「お前にはじゅうぶん、その石を使える力がある」

トト王国の出入口の門が開く。

「じいちゃん、サンキュ」

「…絶対、帰ってくるのじゃぞ。ミヅキ」

「約束する」

ミヅキはトト王国から踏み出す。

(みていやがれ、ガリョウテンセイ・シキ)

ぎゅっと、もらったばかりのナタストーン
を握りしめながら。

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