取り扱い説明書

増田朋美

評価が自分を作る

前回、自分を持たないほうが勝利と書きました。人生を生き抜くには、自分よりも、もっと大事なそして、人生のキーワードになるものがあります。其れは評価です。
もっと具体的に言えば、学校の成績です。人生はそれによって作られると言っても過言ではありません。学校の成績は名札と同じです。身分と同じです。学校の成績が良いと、自由が得られますが、悪いとそれが得られません。学校の成績が良いと、自分のやりたいこともできますが、悪ければ其れさえもさせてもらえません。学校の成績は、関所の手形と同じようなものだと思ってください。
今の時代、基本的に衣食住は確保できます。それだけでも十分すごいことなのかもしれませんが、残念ながらそれがわかる人は、ほんの一握りです。そして、親になれば子供をとおして、夢を見ます。其れで、子どもにどこの学校にいっていい顔をしたいと、大人は夢を見るのです。其れは誰でもそうです。
ですから、どこの世界でも話題にすることは、だれだれはどこの学校に行った、どの会社に入った、だからいい、だからダメ、と評価するのです。これで低評価の人は大体がつらい人生を送っている人たちです。大人の偏見というのはそういう恐ろしいものがあり、若い人はそれに従って、にこやかでいたり、恥ずかしい顔をして居たりしなければならないのです。これは、日本にいる限り、消えることはない姿です。
なので、若いうちは、大人の高評価をたくさんもらっておかなければ生きていけません。少なくとも、学校でよい成績を取っていれば、大人から良い子としてみなされることができますし、悪いやつとレッテルを張られることもないでしょう。それに、学校を選ぶ選択肢も広がりますし、職業選択の自由も得られます。ちょっと江戸時代の言葉を真似したようですが、成績さえよければ、学生ほど気楽なものはないのです。学生は、死なぬように、生きぬように生きる事。これが大切なのです。成績がよければ、家族も円満に過ごせて、周囲とトラブルを起こすこともなく、幸せな人生が送れます。要は学校は管理社会です。それに上手に乗って生きるというのが、一番幸せになれる近道なのです。
もし、やりたいこと、極めたいことを持っていたとしても、それは一度保留しておくべきです。親が生きているうちは、学校に、仕事に、そっちの方に一生懸命やって、高評価をもらっておく方が幸せになれます。やりたいことを返上して、家族のために生きるのが美しいという環境は、日本社会に居ればどこにでもある事ですし。特に男性はそれが求められるでしょうから。それを一生懸命やっていくこと、高評価を得る事。これが将来の幸せを得るためにつながっていくのです。
事実、冠婚葬祭などで人が集まると、大体その人たちが話すのは、子どもの評価と社会への悪口です。その対象になってしまうと、本当に苦しいのです。私は、よくそういう事を言われてさらし者になったことが何回もあります。みな、あの家よりはましだという概念を持ってしまうと、みんなバカにするようになります。そうなったら、わたしだけではなく私の家族も迷惑が掛かってしまいます。
そして、出来る限り、家庭を持つまでは、家族と暮らすのはやめましょう。それをしているだけでも罵声の対象になります。
一人で頑張っている。一人で頑張っているが家族にお金を送っている。こういう姿勢が日本では理想の子供として、喜ばれるのです。
学校でいい成績をとって、さらに上の学校に行く。そして、社会から認められている世のため人のためになる仕事をする。そして、そのお金を家族の下へ送る。
これが若い人に求められる理想なのです。
この中にも自分というものは必要ありません。
こうなることが、円滑に生きていくために必要なことなのです。
若いうちはそれだけがすべてです。
若いうちは、上の評価だけ気にしていればいいのです。其れさえあれば、逆に心配はいりません。
逆に、若いうちから自分のすきなものを持つことは、この社会ではあまり許されていないような気がします。そうすると、本人だけではなく、家族まで攻撃されてしまうのが日本です。
すきなことをやっている本人を攻撃するだけでないのが、恐ろしいところですが、日本では個という単位より家族という単位でものを見る人が多く、家族を執拗に攻撃してきます。
そうなってしまわないためにも、他人からどう見られているか、を、いつも気にかけておくことが肝要です。
それが、将来への平和、安寧をもたらしてくれるからです。
要は、この世界、それさえやっていれば十分に生きられます。衣食住はほとんど賄えるのですかッら。あとは、態度と、どれだけ社会のためになることをしているか、がすべてでしょう。先ほども言いましたが、若いうちは、死なぬように生きぬように生きなければなりません。
生きるというのは、そういう事なのです。


「取り扱い説明書」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「エッセイ」の人気作品

コメント

コメントを書く