あの日、最後に笑ったのは君でした。

カボチャコロッケ

第17章 男の勝負

じゃんじゃん持ってこい!

のイオの言葉通り、コーラが人数分テーブルの上に運ばれてきた。

「・・・どうすんのこれ」

ジオが指でグラスをはじく。

「いや、悪い、まじでこうなると思ってなくて」

少しばつが悪そうにイオが話す。

「…こうなったらアレやるしかないね」

急にテオがやる気を出した。

「やっちゃう?久々にやっちゃう?」

ジオもかなり乗る気だ。

なんだろう?

「よし、やるか!」

ナオの声に皆グラスを手に取る。

え?何するの?

そして4人は前のめりになって話始めた。

「何にする?」
「明後日の買い出し休む権利」
「それもすてがたい」

真剣になって何かを決めていた。

「じゃ、来週の祭りでナツと一緒に回れる権利」
「のった!」
「俺も!」
「えー」

えーってなんですかジオさん。
顔に出てますよ。
そして声にも出てますよ。

「あの、何するんですか?」

聞いてみるとイオが答えてくれた。

「ああ、俺らで決めた男の勝負だ」

「明日の掃除当番代われる権利とか」

「それよくやったよね、俺はよく誰かさんに代わってもらってたけど」

ジオがニヤッとナオを見る。

「お前らの飲み方が尋常じゃねえんだよ!てか炭酸キツいんだよ!」

そう言ってナオが大きく息をはく。

「・・・いいか、お前ら。」

ナオが気合いを入れる。

「いいぜ」
「いつでも」
「おっけー」

そして皆で頷き、4人同時に立ち上がる。

すると回りに居たお客さんもそれに気づいて歓声を上げる。

「お、あれやるのか!」
「やれやれー!」
「イオー!今日は負けんなよー!」

どうやらこの勝負は頻繁に行われているようで、酒場の名物になっているらしい。

てかイケメンってグラス持ってるだけでも絵になるわ。

「ナツ、合図頼む」

私はナオから合図を頼まれた。

「で、ではいきますよ!」

テーブル内の空気が変わる。

皆少し下を向き、グラスに口をつける。

「・・・よーい、どんっ!」

ぶっ!!と4人同時に吹き出した。

「おい!なんだそのへっぽこ合図は!」
「ちょっと!ちゃんとやってよ!」
「ナツ!お前しっかりやれ!」
「よーいどん・・・って、くっくっく」

あ、あれー!?

どうやら私が思っていた合図と違ったらしい。

「なんだ、お前知らねえのか?」

ポカーンとしていた私に気付きイオが話かけてくる。

「あ、はい、これじゃないんです、ね」

チラッとジオを見るとお腹を抱えて悶えていた。

・・・。

「じゃ、誰かにお願いしよう。」

テオが回りを見回すとお客さんたちがやってくれることになった。

「じゃ、今度こそいくぜ」

ナオの言葉に、また皆下を向いてグラスを口に当てる。

するとお客さん達が声を合わせ始めた。

「せーの!」

「己の限界突き破れ!!」

・・・は?

「己の根性見せてやれ!!」

・・・何?

「己の全てで勝ち取れや!!!」

・・・なんですって?

て、なんだこの合図は!
つかこっちの方が恥ずかしくね!?

「・・・それっ!!」

の言葉と同時に4人がコーラを飲み始める。

回りからも応援が飛び交う。

「いけー!」
「負けんなテオー!」
「飲めー!」

うお、結構回りも盛り上がってる。

するとプハッと4人同時に飲み終えた。

「まじかー?」
「誰だ誰だー?」
「どっちだよ?」

歓声の声が響く。

「はぁ・・・ナツ・・・」

ナオが苦しそうに私を見ながら話しかけてくる。

うっは、イケメンの苦しい表情頂きました!

「・・・はあ、誰・・・」

テオも私を見る。

「・・・ナツ・・・」

「・・誰だよ・・・」

うおー!
イケメンの上目遣い祭りや!!

「みんな同時だなー!」

と声が飛び交う。

「・・・まじかよ」

4人椅子に座ってもたれ掛かる。

「えっと、同時の場合はどうしたら…」

私が話しかけるとナオがゆっくり体勢を起こす。

「・・・第2ラウンドだ」

「え?まさかまたやるんですか?」

少し心配になって4人を見る。

「いや、別」

テオも起き上がる。

「こっからが勝負、ってか?」

イオが大きく息を吐く。

「じゃ、恨みっこなしで」

ジオの言葉に4人はまた同時に立ち上がる。

うお、ビックリした!

「じゃ、いくぜ!」

ナオが大きく手を振りかぶる。

「せーっの!!」


「じゃんけん!ぽん!」

・・・。

「あいこで、しょっ!」

「しょっ!」

なんだそれ、可愛いな、おい。


「うおー!負けたー!!」

始めに負けたのはイオだった。

「はは、ざまあ」
「よし、次」
「いくぞ!」

と、勝負は続き。

ナオが負け、
テオとジオの勝負になったのだが。

「ジオの勝ち!」

最後はジオがチョキを出して勝った。

「えー!?」

自分の出したチョキを見て落ち込む。

「えー」

そして私を見てさらに落ち込んだ。

おい。


「ジオ!イヤなら俺と代われ!」

こらこら、そこで別にいいよ、とかなんて言われたらへこむし。

「えーでも勝負だし勝ち取ったしなあ」

チラッと私を見た。

「ま、しょうがねえの」

と何だかんだ言いながらも一緒にお祭りに行くことになった。


「あーでも久々の熱い戦いだった!」

ドスンとイオが椅子に座る。

「同感」

テオが静かに座る。

「あー、喉がビリビリする」

喉を押さえてナオが椅子に座る。

「あ、ビール追加しよ」

ジオが手をあげる。

「めっちゃ冷えてるやつな!」


・・・まだ飲むんですかあなたたち。

「あ、ナツもやってみるか?さっきのやつ」


は?

「いいんじゃない?面白そう」

テオも賛成している。

いやいや。

「じゃまたコーラ頼むか。ハンデとしてナツはお茶な」

こらこらこら。

「あ、俺はさっき勝ったから審判やる」

なんて言っていたがジオがコーラはもういいし・・・と顔に出ていた。

「じゃ、なにやる?」

テオが先程よりも楽しそうにしている。

「やっぱあれだろ、脱いでくやつ」

イオがくくっと笑う。

「お前、何杯飲まないといけないか分かってんのか」

呆れるようにナオが言うが。

こらこら、脱ぐやつには誰も何も突っ込まないんですか。

なんでその話が通っているんですか。
止めましょうよ。

「じゃ自分の体の弱い所を言う」

テオが少し悪い顔になった。

「のった!」
「やるぞ!」

ははは・・・。


こうなってしまっては酔っ払いは後には引かないものだ。

よし。

「やりましょう!こう見えて私負けず嫌いなんで!」

と一番に立ち上がる。

「そうこなくっちゃ!」

続いてイオが立ち上がる。

「本気でいくよ」

テオも立ち上がる。

「手加減なしだぜ」

ナオも立ち上がる。

また勝負が始まると知りお客さんがざわめく。

「お、2回戦やんのか!?」
「姉ちゃん頑張れよー!」

と応援の声が聞こえる。

「じゃグラス持てよー」

ジオが声を掛ける。

私たちは下を向いてグラスをあてる。

「いくぞー」

「よーいどん」

ぶっ!!とまた3人が吹き出す。

その間に私はスタートダッシュをきったのだった。








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