あの日、最後に笑ったのは君でした。

カボチャコロッケ

第13章 お前スライムかよ!

初めての戦闘後、私はスキルを獲得していた。

(「鎮魂」〈たましずめ〉)
(逝くモノたちを導く)

つまりレクイエムみたいなものだよね?

私は木の棒を集めながら考え込む。

それってそもそも何したらいいわけ?

ステータスを開いてスキルを確認してみたが、レベルが上がるようなものではなかった。

んー、分かんないな、全然思い付かない。

言葉の意味としては、あのゲームのような異界送り的な感じなんだろうけど。

最後の棒を集め、収集は完了した。

よしっと。
残りはスライム討伐か。

先程の戦闘から他の敵には出会ってない。

でもここで戦う事から逃げてたらダメだよね。

両手を腰にあて、大きく息をはいた。

私はサーチスキルを使ってマップを確認する。

出てきたモニターには、赤と青のアイコンが点滅している。

青が1に対して、赤は数が多い。

多分青が私で赤が敵なんだろう。

私はとりあえず一番近くに居る敵まで行ってみることにした。



いたいた、スライムか。

サーチでは敵の居場所が分かるが、それが何の敵なのかは判明しないようだ。

小さく息をはいて短剣をとる。

そして一直線に走っていき、背後からスライムを切る。

攻撃力が高いからか、一撃で何とか倒せている。

すると先程と同じようにスライムが光に包まれて消えていった。

ここまではさっきと一緒なんだよなあ。

どうやって鎮魂するんだか・・・、と。

キラキラと消えたスライムの所に何やら小さな塊が落ちている。

ドロップアイテムかな?

よく見てみると塊の中心が円を描くように橙色の渦を巻いていた。

(「燈火」〈とうか〉)
(  実在した証)

あー・・・。
わかった、これか。

私は手に取った塊をじっと見る。

やり方とかよく分からないけど。

塊を両手で包む。

すると塊が段々と熱をおび、ゆっくりキラキラと消えていった。

うまく、いった、のかな…?

私自身も先程感じていたモヤモヤが少し軽くなったような気がする。

フッと、肩の荷が下りたように少し疲れを感じた。

ちょっとあそこの木で休もうかな。

少し先に大きな木がある。
木陰にもなってるし休むには丁度いい。


ドスン、と腰を下ろす。

時計を確認するともうすぐ2時になりそうだ。

この後残りのスライムを倒して町に戻って…となると3時過ぎかな。

遅いお昼ご飯というか、夕方近いからそれとも早い夕ご飯になるのか…。

と考えているとブブブと音が聞こえてくる。

お?なんだ?

時計を見ると丁度2時になっている。

アラームかな?

しかしモニターを触ってみても振動はない。

ん?これじゃないのか。
じゃ携帯のバイブ…って携帯ないか。

じゃこれは何の音なん・・・。

と、ふと上を見上げると蜂が3匹頭上を飛び回っていた。

うおおおーー!!

しまった!
サーチで確認しておくべきだった!

あの時ふと目についた3つ赤いアイコンはこれだったのか!

つーか、でけえこいつら!
蜂じゃねえだろ!
A3用紙くらい大きいぞ!

てかあたし蜂ダメなんだよ!
あの音嫌いなんだよ!

前にリアルで刺された事もあり、大の苦手なのだ。

次刺されたらアナ・・・何とかショックなってしまうやんか!

なるべく音を立てないようにここから離れよう・・・。

蜂の動きに注意しながら、ゆっくりと立ち上がる。

よしよし、このまま後ずさりをして…。

すると1匹の蜂と目が合った。



・・・・やべ。

と思った瞬間3匹が猛烈な勢いでこちらに飛んでくる。

ぎゃーーー!!

私は直ぐに立ち上がり全力で走り出す。

こんなパターンばっかりやん!!

とりあえず少し木から離れ短剣をとる。

走るのを止めて振り返ると、3匹が横一列になってこちらの様子を伺っている。

おお!
この図はまさにあのゲームの戦闘画面。

この戦闘パターンだと攻撃は1匹ずつだけど…。

と連携プレイの様に2匹同時に飛んでくる。

ですよね!そうですよね!
そううまくいかないですよね!

私は飛んできた1匹の攻撃をかわし、振り向き様に剣を振って攻撃する。

上手く当たったのかその蜂は地面に落ちた。

よし、これで残り2匹っと。

その後も攻撃をかわしつつ、もう1匹も倒した。

残りは1匹だけである。

この調子でいけば全部倒せそう。

そう思っていると蜂が勢いよく羽を動かしブブブと大きい音を出し始めた。

なんだ?威嚇?
ってこの音イヤって言ったじゃん!
うー、体が身震いする。

(ビーは仲間を呼んだ)




・・・は?

すると逃げてきた木の所から勢いよく蜂が2匹飛んできた。

まじかよ!
お前スライムかよ!
合体とかしてキングとかになるんじゃねえぞ!!

私は叫びながら攻防を続け、なんとか蜂を倒したのだった。


・・・はあ、はあ・・・。

その後また2匹倒したかと思うと仲間を呼び…とキリがなかったので、木から離れることにしたのだ。

多分あれは範囲内だったら仲間を呼べるようになっていた。

なのでその範囲外まで蜂を連れ出し、今ようやく全滅させたところである。

思わぬ、体力を、使ってしまっ、た…。

大きく息をはいて呼吸を整える。

戦闘した後には燈火が落ちている。

・・・8・・・9。

そんなに倒したのか。
どおりで疲れるはずだ。

私が燈火を手に取ると光に包まれて消えていった。

燈火の近くに蜂蜜も落ちていた。

ドロップしたんか。

手に取ってみる。

丸いガラスの瓶にキラキラした蜂蜜が入っている。

敵倒した後のドロップアイテムってどんなんなってるのかと思ったら、ちゃんとこうして物になって出てくるんだもんな。

さっきの蜂からこれが出てくるとは思えん。

ましてやこれを持って戦っていたとは到底思えんのだが…。

と、システムの事を勘ぐっていてもしょうがない。

とりあえずこういうもんなんだろう、と
思うことにした。

そしてポシェットに入れて確認してみる。

お、蜂蜜6個になってる!

これだと先に受けていたクエストをクリアして、さっきの蜂蜜クエストも同時クリア出来そうじゃん。

そして一緒にステータスも確認してみる。

レベルも3に上がってる!

さっきの蜂、結構強かったから経験値も多かったのかも。

ついでに時計も出してみると2時半になろうとしていた。

あー、もう3時なっちゃうじゃん。

私は出していたモニターを全部消し、サーチスキルでマップを出す。

うお、もう3匹沸いてる!

先程の木の場所を見てみると、赤いアイコンが3つピカピカと動いていた。

なるほど、蜂は再ポップが早いとみた。

あ、さっきも言ったけどポップはPOPで出現、沸きって意味ですよ。

えっと、群れをなしてるのが蜂だとすると、単品で動いてるのがスライムかな。

マップで敵の位置を確認する。

うん、じゃあ東に3匹いるからそっちに行ってみよう。

私は風吹く草原を歩き出した。

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