あの日、最後に笑ったのは君でした。

カボチャコロッケ

第8章 まるであのポケットの様だ

先程のやり取りで試着の仕方を覚えた私は、帽子屋と靴屋へと向かった。

帽子も頭のサイズにピッタリはまるし、楽しくなって靴も沢山試してみた。

しかも靴はショートブーツからロングロングへ、またその逆へも変更出来る。

それに有料オプションでグリップという滑り止めの機能も付けられる。

そこで新たに覚えたのは、防具は武器と違って装備出来る物が職業によって違うということ。

興味本位で兜の試着を試そうとしたら職業が違うとモニターが出てきた。

そりゃそうだ、モンクが鎧なんか着てたら何の職業か分からないし紛らわしい。

そこの部分は私のゲーマー知識を安定させてくれるので助かる。

そして私は鞄屋へ入る。

鞄屋。
ポシェットを専門に扱っているお店だ。

今私が付けている物は支給された物であって、リアルの1000円均一のワゴンセールで売られているような茶色い物だ。

ま、貰えるものだし文句は言わないが、せめてもう少しお洒落な物が欲しいところだ。

そう思いながら店内を物色する。

おー、色々置いてある。

ポシェット自体の大きさは固定されてるのか皆同じ大きさである。

ただ、種類がジッパータイプの物とマグネットタイプの物と2つあるようだ。

戦闘時、直ぐに物を出したり出来る実用性タイプはマグネットなのかな。

そんな事を思いながらマグネットタイプを開けたり閉めたりと繰り返した。

お。

レジでポシェットをお買い上げしている冒険者が目についた。

いいなぁ、あの冒険者はジッパータイプの物を買ったんだ。

と、羨ましく思いながらやり取りを見ていると、購入したポシェットを腰に下げたまでは全然普通で問題ないのだが、なんと今まで使用していた同じ大きさのポシェットを購入したポシェットにスッと入れたのだ。

は?
いやいやいや、ちょっとまて。

同じ大きさのポシェットがスッと入るわけないでしょう。

大抵、無理矢理ギューギューに突っ込んで、うわチャック閉まらん!とかっていうパターンでしょうよ。

それが、あの有名掃除機のように吸い込まれるように中に入っていったのだ。

すると買い物を終えた冒険者が店を出ようとこちらへ歩いてくる。

おっと、やば。
ジロジロ見てたら変に思われるかもしれない。

私は視線を下に落とす。

カラン、とドアのベルが鳴った。
お店から出ていったようだ。

私は視線を元に戻し、近くにいる店員さんに声をかけてみた。

「すみません、どのポシェットがいいか迷ってるんですが。」

これできっと色々説明してくれるはず。

いいですよ、と店員さんが奥の棚まで案内してくれる。

「ポシェットには、ジッパータイプとマグネットタイプがございます。」

実物を奥から持ってきてくれ私に見せてくれる。

どこの店員さんも丁寧で親切である。

私は相づちをうつ。

「大きさは全て統一されてまして、どのタイプを使用されましても最大容量の99は変わりありませんのでご安心下さい。」

は?

ちょっとまて。

ニコニコ説明してくれてるけどちょっと待ってくれ。

今なんて言った?
最大容量99?

ポカンとしているのが顔に出てしまったのか店員さんが首を傾げた。

「あ、えっと、もしかして容量変わると思っておりました?」

え?
あ、そっちね。

でもどうしよう。
思ったよりもこのポシェット何かありそうだなあ。

私が思っているポシェットとは何か違うような気がする。

んー、ダメだ。
ここはしらばっくれないでちゃんと説明を聞いた方が良さそうだ。

「すみません使い方から教えて下さい。」

小さく頭を下げると、直ぐにいい返事が貰えた。

「では簡単にご説明させて頂きますね。まずは…そうですね、こちらのポシェットをお客様のポシェットに入れてみてください。」

と、店員さんが説明で使っていたマグネットタイプのポシェットを差し出してきた。

こ、これは万引きにはならないよね?
店員さんが入れてもいいよって言ってくれたんだし。

私はポシェットを受け取る。

国から支給されたポシェットはジッパータイプの物だ。

ゆっくりと口を開けて、受け取ったポシェットを入れようとする。

すると入れたと同時に手元からスッと無くなるような感覚があった。

え?なに?
まじで吸い込まれた。

思わずポシェットの中を覗いて確認してみるが、ポシェットが入っているどころか空っぽのままだった。

「ご安心下さい。中は特別な空間になっておりまして、他で管理されております。」

お、おお、そういうこと。
つまりマイルームの洗濯機やゴミ箱のような感じってことね。

聞いておいて良かったわー!
無くなったかと思って正直焦った。。

「中に入っている物はアイテムモニターで確認出来るようになっております。」

なるほど、そういうシステム。

私は心の中で「アイテム」と言ってみる。
すると直ぐにモニターが現れた。

「どうですか?モニターの中にポシェットが追加されてるのが分かりますか?」

と言われ見てみると確かに表示されている。

「あ、はい、あります。」

なるほど。
モニターの本体は他人にも見えるけど、表示されてる内容は見えないようになっているのか。

そう、実はちょっと気になっていた。

出したモニターが他の人も見れるような仕様になっているのかどうか。

良かった、プライバシーはちゃんと守られているようだ。

「先程も言いましたが、そのポシェットに入れられる容量は99までとなっております。また同じカテゴリーの物は同じくして99までストック可能です。」

なるほど、そこはゲームっぽいね。

「また、取り出す際は、頭の中で取り出したいアイテムを思いながらポシェットに手を入れて掴んでみてください。」

そう言われ再度ポシェットに手を入れる。

えっと、ポシェット…。

すると何かが手に当たった感触がする。

お、これかな?

私はそれを掴んでポシェットから取り出してみると、先程しまったマグネットのポシェットだった。

うおー!出たー!
テッテレー。
思わずどこからか音楽が流れてきそうだ。

気分的にネコ型ロボットのアレみたいやん。

「使い方は大丈夫そうですね。」

私は店員さんにポシェットを返した。

「では次にタイプですが、どれがおすすめか、という物はありません。皆様の使いやすいタイプで選んで頂いてます。」

ふむ、好みの問題ってことね。

「後は常に中に何が入っているか把握しておくといいでしょう。緊急時にアイテムモニターを出して探して…となりますと大変でしょうから。」

確かに言われてみればそうかも。

ゲームではアイテム欄開いてどれにしようかなー、とか選べるけど、ここでは常に時間が動いてるわけだからね。

仮に戦闘しててHP減ってきて、うわ回復しなきゃー!ってアイテムモニター出して選んで…てな間に攻撃されるわな。

パニックにならない為にも練習しておいた方がいいのかも。

私は店員さんにお礼を言って店を出た。

ポシェットのこと聞けて良かったな。
私は鞄屋の看板を見ながらそんなことを思った。

よっし、最後に道具屋でも見て商業区は終わりにしよう。

そして私は隣の道具屋へ入った。 

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