あの日、最後に笑ったのは君でした。

カボチャコロッケ

第1章 始まりのはじまり

暖かな風を感じ、重たい瞼をゆっくり開けると、どこまでも続いているようなだだっ広い草原の中に私一人が立っていた。

「な、なんじゃこりゃーー!!」

いやいやいや・・・こういうのって漫画とか小説とか、私異世界に飛ばされました、的な感じでよく見るけど、普通こういう状況って気を失って倒れてて目が覚めたら…な感じなんじゃないの?

私普通に立ってるし!!

てかもうこの時点で普通じゃないですからね、なんかフラグ立ってるでしょ。

私は顔を上げて真っ青な綺麗な空を見上げた。

えっと、とりあえず考えよう。
今までの記憶は私の中に確かに残ってる。
ということは消されていないという事だ。

いや、消されるも何も冷静になって考えてみれば、そもそも現実に異空間に飛ぶとかあり得ない。

そう、そうだよ。だって私さっきまで

ゲームひたすらやってたんですから!!


 私、小宮 紬(こみや つむぎ)はそこそこ年のいった34歳。

まあまあ待遇のいい会社で事務の仕事をして、家に帰れば結婚10年になる旦那と2人の子供のいる普通の家庭の母親だ。

小さい頃からゲームは大好きで、町を作ったりするシュミレーション系も数多くこなし、その中でもRPGに関しては、超有名作品の新作が出る度に即買いしては寝る時間も惜しむことなくコンプやらカンストやらを目指してひたすらにやり続けた。

ゲーマーというかオタクというか、とにかくゲームが大好きだった。

この事は結婚するにあたって旦那には話してある、というのもコソコソ隠れてやるのは長年隠し通せる自信がなかったわけで。

子供が寝静まった頃から約2時間くらい布団に潜ってゲームをする。
これが私にとっての至福の時間だった。

そう、さっきまで同じように布団に入って、素材集めのクエストを進めていて…って、

あれ?もしかして寝落ちした!?

そう、そうだよ!私寝落ちしたんだ!

そんでよく聞く話だと、寝る寸前まで見ていた映画とかの印象が強ければ、そのまま夢になって出てくる的なやつ?

そっか・・・なんだ、これは夢なんだ。
夢だと分かれば少しくらいRPGの世界でも楽しんでもいいかなあ・・・

ってダメだー!ダメだよ!

本体の電源落ちちゃうよ!!

ちょっと待って、私が寝落ちしてからどのくらい時間経ったわけ?

2時間くらいだったら本体もフル充電だったしギリセーブ出来るぐらいなら生きてるはず!

あー!もう!やっと苦労して素材集めたのにやり直しとか絶対やだ!もう1回やることになったら心折れるし!

あ、てかどこで寝落ちした!?
場所によっては敵に教われて死んでるって可能性も!?

え、やだ!経験値減るしへたすりゃレベルも下がるじゃんか!

・・・

絶っ対今すぐ戻ってセーブしてやる!!

私は拳に力を込めた。

って夢から覚めて戻るにはどうしたらいいんだ。通常のRPGだと町の宿に行って1泊したら画面が真っ暗なって次の日~みたいになってるからそんな感じでいいのかな?

仮にモンスターに倒されて気絶して倒れても画面切り替わるし、戻れる可能性も0ではないかもしれないけど・・・。

うん、とりあえず夢でも死にたくない。

きっと私の体力的なHPが0になると倒れるわけだから、それだけは回避したい。

うーん、何かこう、自分の詳細っていうか、ステータスが分かるようなコマンドでも出てこないかな。

そんな事を思っていると目の前にクリアな掲示板のような物が現れた。

き、きたきたー!これよ、これ!
RPG必須のステータス!

私は現れたステータスを食い入るように見る。

・・・あ、あれ?

私は二度見する。

おかしいな、名前が???になってる。
それに職業も。

画像、っていうか顔写真的なのも真っ暗だし・・・まだ登録されてないって事なのかな?

いや、登録されてないにしてもこの数値の高さは異常なんじゃ?

長年RPGをやり続けていたら分かる。
スタート時のステータスなんてのは、スライム2匹に囲まれてしまえば、へたすりゃ死んでしまうようなペラペラなものだ。

なのに私のHP260、MP370って
まじ何なんこの数値。

え?何?バグ?

いやいや、夢だしバグなんかあるか。

きっと私の都合の良いように作られているに違いない。

うん、夢だしきっとそう。
めっちゃ気になるけど気にしないようにしよう。。

そして私は下の項目へと目をやる。

あ、夢のくせに一丁前にスキルとか技とかもあるんだ。でもまあ、ここも文字伏せなってよく分からないけど。

んー、とりあえずこれで分かった事は、まだ登録されていない冒険者で、アイテムもなければお金もなく、道もまったく分からない、って感じか。

って!
せめて夢なら何か持たせようよ!

剣とか回復する的なやつとかさ、袋に入っていてもいいんじゃないの!?

てか袋すらないし!?

つかここ草原のど真ん中じゃん!?
敵に見つかればアウトじゃん!?

あー、もう。
どこ行けばいいのか分かんないし、地図かマップか手元にあれば…。

すると先程のステータスの掲示板よりも少し小さめの物が目の前に現れた。

お、何よ何よ。
出るじゃん、あるじゃん!

私は自分の位置に指を置いてスマホの様に操作してみる。

えっと、今向いている私の方向がこっちだから、西かな?そっちに町っぽいのがある!

とりあえず今何時か分からないし、いつ日が落ちるかも分からない。
危なくなる前に町へ入ろう。

そしてさっさと宿屋を見つけてここからおさらばし、早く本体の充電をせねば!

私は大きく息を吐き、気合いを入れて走り出した。

まあ、振り返ればこれが私の始まりのはじまりだったのかもしれない。。

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