SIRIUS ~fast story~

千年の秋

第三話 歌声と過去


次の日、澪は優乃が通う中学校に訪れていた
優乃の担任の先生と教頭の二人と話していた

「…………と言うことです」
「なるほどね」
「なので妹と引っ越すことになってしまいまして。一様、区役所には話は通してはあるのですが‥‥‥」
「分かりました。家の事情ですもんね」
「急ですみません。父がまさかこんなに早く亡くなるとは思っておりませんでしたので」
「生活は大丈夫なんですか?」
「はい。仕事場は決まっているので」
「……そうですか。きついときは奨学金でも児童施設でも使って下さいね?」
「はい」
担任の先生が優乃に声をかけた
優乃は泣くまいと涙を堪えている
「優乃ちゃん。色々と悲しかったよね?それでもよく堪えられたね。会いたかったらいつでも来なさい。歓迎するから」
「先生………。はい!」

「優乃が転校するまではどうかよろしくお願いします」
「分かりました。瑞羽さん」

その後は今後についての話をしたのだった
 






顔合わせの時刻が迫った
澪と優乃は電車に乗って東京の中心部へと向かった
事務所の中に入ると女の人が一人と男の人が三人待っていた

「あっ!瑞羽 澪さんですか?」
「えっ?はい」
「私はマネージャーを勤めることとなった伊月 綾佳りんかです」
「マネージャー。こいつがセンターなのか?」
「はい。そうです」
「なら、瑞羽 澪。早速、俺たちの目の前で歌え」
「はぁ?」
「お前が本当の天才か見分けてやる」
「何に急に………」
「歌えないのか?」
「名前も聞いていないのに歌えって………」
「はぁ……。下手くそな奴に教えてやれる名前もねえよ」
澪はその男の隣に立つ男を見た
そいつは冷たく笑っていた
「………」
「………。お兄ちゃん」
「やっぱり俺の言った通りじゃん。もう、歌えねえて知ってるのに………」 
するとマネージャーの隣にいる男が口を開いた
「瑞羽くんは歌えないんだ」
「はぁ?」
大椿おおつばさん。そんな嘘は聞けないよ?」
「正確にはあまりの過酷な人生過ぎて歌う声を失ったんだ」
「それはアイドル業界では通じないって知ってますよね?」
「ただ、天才なのは確かだ」
「どうしてわかんだよ?」
「彼の父は瑞羽プロダクションを開いてた。その彼が澪を百年に一人の逸材て言ったんだ」
「それは親の溺愛の故の………」
「もちろん、それもあり得る。だから下手くそだったら即切る。それだけだよ」 
「お兄ちゃん………」
すると奥の扉が開いた
「随分と直球に言うね。幸夜くん」
「………社長」
「澪くん。来月までには歌えるようにしてね。探すのにも時間がかかるし。この子達にも申し訳ないしさ」
「分かりました」
「うん。それでこそ瑞羽 誠人の息子だよ」
マネージャーは社長に近づいた
「パパ!あまりにも冷た過ぎるわ!」
「綾佳。アイドルて言うのはそういう世界なんだよ」
「だとしても追い出されたら二人は………」
「………マネージャーてとことん甘いんですね。それじゃぁ、やって行けないですよ?」
「だとしても!澪さんの過去はあまりにも………」
「だから甘いんですよ。それくらいの差別なら小さいときから慣れてます」
「お兄ちゃん………」
「社長。もう、帰っていいですか?バイト探さないとだし。荷造りも早く済ませたいんで」
「分かった。じゃぁね。澪くん」 

澪は優乃をつれて帰ってた




 
「社長!」
「そんなに澪くんを救いたいの?綾佳は?」
「もちろんです」
「ならヒントをあげるよ」
「ヒントですか?」
「うん。彼の声を戻すヒントは彼の義母と向き合わせることだ。彼はそれ以降から歌えなくなっている。それが綾佳の大仕事」
「私からもヒントを差し上げます。彼をよく知る人は彼の妹  優乃さんです。彼女から聞くといいと思います。彼の父から一部始終を聞いているでしょうし」
「澪くんは秘密が多い人だからね。彼を知るいい機会だと思うよ」
「分かりました!」






澪と優乃は街中を歩いていた
「お兄ちゃん。大丈夫?」
「………優乃。………大丈夫だよ」
「でも………」
「………なんとかするから安心しろ。な?」
「お兄ちゃんは私のたった一人の家族なんだから辛いときは言ってね?」
「………あぁ」



それから澪は寮に移りバイトと歌レッスンやダンスレッスンを受ける日々を過ごした
約束の日が近づいていた
だが、澪は歌えずにいた



そんなとき澪にとある電話がきた

「はい。瑞羽です。どちら様でしょうか?」
衣鷺  瑠璃子いさぎ  るりこよ』
「何であんたが………」
『一様、血は繋がっているんだもの電話くらいかけてもいいでしょ?』
「それで何の用?」
『ちょとした話があるだけよ』
「内容は?」
『ここでは話せないわ。今日の午後十時に大清水公園で待っているわ』
「はぁ……。分かった」


それから所定の時刻となった
澪は瑠璃子の車の中にいた

「それで何の用?」
「口封じよ。最近、帰ってきたて聞いたから今のうちにしておこうと思ってね」
「そうか」
「あなたが私の子だと言わないを条件にあなたがあの病気だったことを私達は一切、言わないわ」
「分かった。引き受ける」
澪は瑠璃子が出した書類にサインして印鑑を押した
そして瑠璃子は自分が書いた書類を澪に渡した
「バレないようには頑張るよ。管理が薄いからバレてしまったときは申し訳ない」
「いいわ。それくらい。私達があなたの病気について言わなければいいことよ」
「それじゃぁ、俺は帰る」
「ええ」
澪は瑠璃子の車から出た
澪はその後、思い出の場所である南港公園を目指した







その頃、優乃は焦っていた
時刻はもう一時を回ろうとしてた

「綾佳さん!どうしよう!お兄ちゃんが帰ってこない!」
「どうしたの?」
「お兄ちゃん。もしかして追い詰めて自殺とか……」
「自殺?!」
「今朝、そんなこと言ってたし」 
「言ってたの!?」
「うん」
「なら探さないと」
すると大椿が綾佳に声をかけた
「どうにかしたのですか?」
「その……」
「お兄ちゃんが帰ってこないの!」
「女性と二人きりでいるのでは?」
「多分、自殺しようとしてるかも。今朝、『死んだら楽なのかな』て呟いてたし」
「自殺!?」
「どうすれば………」
大椿は澪に何度か電話をかけた
出なかった
「優乃ちゃん。澪さんが行きそうなところ知ってる?」
「んー?知らない。お兄ちゃんは大抵、家にいたから」
「こうなったらGPSを使いましょう」
「でも電源を切ってたら」
「切ってても前の着けていた記録から分かるかもしれません」
「あっ!そっか」
大椿はパソコンを取り出した
そしてアプリを開き澪の電話番号、メールアドレスを入力した
すると所在地が出てきた
場所は南港公園だった
車で急いでも三十分ほどかかる場所だ
「早く行きましょう!大椿さん!」
「ええ!」

三人は車に乗った
大椿は運転席に座った
二人は後部席に座った
大椿は車を飛ばした

「優乃ちゃん。こんな時に聞くのは申し訳ないけど聞いていい?」
「なに?」
「澪さんはどうして歌えなくなったの?詳しく教えてくれないかな?」
「お母さんが事故にあってから歌えなくなったみたいだよ」
「お母さんの事故?」
「うん。十一年前の話みたい。お兄ちゃんとお母さんが買い物に出掛けたんだって。そのときにお兄ちゃんが勝手に道路を突ききろうとしてたの。そしたらトラックが来てて、それでお兄ちゃんを庇ってお母さんが事故にあったんだって」
「そんなことが………」
「そのときにお兄ちゃんは嬉しそうにきらきら星を歌ってたみたい。それ以来、歌うと思い出してしまうみたいで歌えなくなったらしいよ」
「………そうなんだ」
「それにお兄ちゃんは病気のせいでいじめられてたり奇異の目で見られたり。お父さんたちが多額の借金を抱えてしまったみたい。だからそのせいもあると思うんだ」
「………」
「多分、お兄ちゃんは逃げてるのかも。辛いことを受け止めずにいて、どんどんそれを貯めて行っているんだと思うんだ」
「……うん」
「だからお兄ちゃんの声を取り戻すのにはそれを受け止めさせないといけないんだ。多分、そうしないと声も戻らないし自殺を何度も繰り返すと思うんだ」
「………分かったよ。ありがとう。優乃ちゃん」
綾佳は優乃を撫でた


それから暫くして南港公園に着いた
するとガレージの所に一人の背が高い男の人がたっていた
優乃は叫んだ
「お兄ちゃんー!!!」
その人は振り向いた
優乃はその男の人の方へ走ってた
綾佳や大椿もそれに続く
「お兄ちゃん」
「優乃。どうしてここに?」
「お兄ちゃん。自殺するかもしれないて思って」
「バカだな優乃は。優乃を残して死ねないだろ?」
「でも………」
「心配してくれたんだな。ありがとう」
澪は優乃を撫でた
「………澪さん」
「マネージャー、大椿さん。すみません。言わずに出てってしまって」 
「………なるほど。ここはもしかして実福みさきさんと一緒によく歩いた場所ですか?一度、社長と歩いたときに幼い澪さんと実福さんを見かけたことがあります」
澪は海を見た
「………そうです」

暫く沈黙が流れた
「………澪さん。どうして澪さんが歌えないのかやっと分かりました」
「歌えない理由?」
「澪さんは実福さんを殺したて思っているのではないのですか?」
「っ!?」
「自分があんな行動をしなければよかったのにって。でも、澪さん。過去は変えられないんです。それを受け止めてください!澪さんがアイドルになるて決めたのも誠人まさとさんが過労で亡くなったのも過去のことなんです!変えられないんです!どうか前に突き進んで下さい!!」
「でもどう償えば………」
「お兄ちゃん。お父さんが言ってたよ。お母さんはとってもお兄ちゃんの歌が好きだったて。お父さんも好きだって。だからお兄ちゃんの声で天国にいる二人を喜ばせて!」
優乃は頭を横に降った
そして前を向いた
「それだけじゃないよね。お兄ちゃんの声でお兄ちゃんのように苦しんでいる人に元気を与えて!お兄ちゃんの歌声はそのためにあるんでしょ?だから歌って!過去を受け止めて前に突き進んで!お兄ちゃんの歌を聞きたい人が沢山、待ってるんだから!!」
澪は少しだけよろめいた
「そうか。今になってやっと分かったよ。どうして歌えなかったのか」
「お兄ちゃん!」
「歌えるか分からない。でも歌うよ。父さんや義母さん、優乃のために。そして皆のために」


「現代ドラマ」の人気作品

コメント

コメントを書く