水魔法は最弱!?いえ使うのは液体魔法です

S・R

4話 初めまして!異世界!

 .......知らない天井だ。
 このセリフは言わないとダメだよな。

 俺は知らない部屋で目覚めたあと、異世界に行ったら言ってみたい言葉を言った。
 まぁ、言葉には出来なかったのだが。

「おぎゃあぁぁ!おぎゃあぁぁ!」

 赤ん坊が泣いているな.......早く泣き止ませろよ。
 可哀想だろうが。

 そんなことを思っていると、めちゃくちゃ美人なお姉さんが、木で造られた扉を開いて中へ入ってきた。

「あらあら.......ヒロトちゃん、どうしたんでちゅかー?そうでちゅかー!お腹が空いたんでちゅか。ほら、ママのおっぱいでちゅよー」

 .......さっきから泣いてんのは俺か。
 つか、おっぱいとか.......最高じゃねぇかよ!

 この後、めちゃくちゃ吸いました。
 しかし、全く欲情せずに黙々と乳の飲むことになっただけで、何とも思わんかった。
 母親だからかな?

 そして、この後は父親がやって来た。
 もの凄くガタイが良くて、めちゃくちゃイカつい。
 性格がガサツで声がうるさいのだ。
 赤ん坊の耳では聞いていると痛くなる。

 ちなみに、父の名前がガルで母の名前はリーナだ。

 どちらも美形だから、俺も整った顔で生まれたのではないだろうか。

『見た目は前と変わらんぞ。肉体の時間を巻き戻して、そのまま転生させたからな』

 なんか、ノワールの声が聞こえてきた。
 つか、普通に話しかけられんのかよ。

『なんか、神様ってデタラメだな』
『ふふん!当たり前であろう!その中でも、余は特に強くて美しい存在であるからな!貴様はそんな凄い神の使徒になれたのだ』

 こんな感じで、俺たちは頭の中で会話をしていた。
 事前に念話で話しかけてくることがあるとは説明があったので、そこまで驚かない。
 しかし、思っていたよりも簡単に話しかけられるみたいだから、少し戸惑った。

『異世界人が優れているのは魂だけではない。特に肉体が強いのだ.......まぁ、精神力は弱い者が多いのだがな』

 そりゃあ、戦争が全く無い国に生まれたんだから、命のやり取りをしてる人たちなどよりは、メンタルは弱いだろうよ。
 ちなみに、自慢じゃないが、俺のメンタルは豆腐よりも柔らかいぜっ!

「さすが俺の息子だ!いい面してやがるぜ!」

 なんかドヤッてるな.......取り敢えず、声くらいは出してみるか。
 さて.......親子初の会話だ!

「.......ばぶばぶ」

 はい.......分かってましたよ。
 生まれたばかりの赤ん坊が、言葉を発せるわけないもんな。

「きゃー!可愛い!さすが私のお股から生まれた子ねっ!」

 こら、お股から生まれたんだとか言うな。
 股間がムズムズするだろうがよ.......あ、俺って赤ん坊だからムズムズムラムラしねぇわ.......なんてこったい!

「ふっ.......だな。さすが俺の子種から生まれた子だ」

 だから、やめい。
 さっきから、あんたらの会話が下品だぞ。

『なぁ、ノワール』

 この中学生男子がするような下品な会話から抜け出したく、我が主である魔神様に話しかけた。

『.......』

 反応が無いな.......いつでも出れるって訳じゃねぇのか?
 はぁ.......まぁ、仕方ないか。
 適当に時間を潰してよう。

 しかし、赤ん坊の俺には暇潰しをすることが出来なかった。
 .......だって、俺って生後1日だぜ?目を開いて声を聞くのがやっとだわ。

 これを数年間続けなきゃならないと思うと、鬱になりそうだ。

「なんか、退屈そうね」
「あぁ.......俺の可愛い息子が退屈そうな顔をしてやがる」

 当たり前だろ。
 つか、自分の親の下ネタ連発会話なんて聞きたくないわ。

「あ、そうだわ!」

 母上が何か思い付いたのか、「ふっふっふ」と笑みを浮かべながら、どこからともなく30センチほどの細い杖を取り出した。
 .......もしかして魔法!?

「ばぶばぶ!」

 俺はキャッキャッと、はしゃいだ。

「ママが凄い魔法を見せてあげるからねっ!」

 そして、リーナは杖を軽く振る。
 その直後、周りの景色が一変した。
 何故か、ガルに抱かれながら、雲の上にいたのだ。

「ばぶ!?」

 やべっ.......少しチビった。
 ん?そのくらいで情けない?だって高いとこが怖いんだからしょうがないじゃん!

「グルォォォオ!」

 アレはドラゴンっすね......それも、かなりの巨体です。
 .......またチビったぜ.......悪ぃなガル。
 高そうな服に小便を引っ掛けてしまったのだが、ガルはニカッ!と真っ白な歯が見えるほどの良い笑顔を見せてきた。
 こら、親指立てるな。

 .......まさか!?そんな趣味があるのか!?ちょっと、降りたくなった。
 まぁ、降りたら死ぬんだけどさ。

 こうして、異世界での生活一日目が終了したのだった。
 つか、初日から濃すぎだろ!

 ちなみに、ドラゴンが火を吹いて来た瞬間、母上が二度目の転移を使って、家に帰宅しました。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品