俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第35話 唐突な二回戦



 はい、正直修正に手がつかないので、いっそのこともう後回しにして、本編に集中しようということになりました。
 取り敢えず投稿です。









 「リーゼロッテ、でいいのかな。大丈夫?」
 「え、あ……」

 俺は、腕の中に抱えたリーゼロッテに、安否を問う。もちろん、怪我なんてしていないのは、直前で助けた俺がいちばんよくわかっているが、それでも聞かずにはいられない。

 ただ、突然のことにまだ驚いているのか、困惑しているリーゼロッテは、上手く言葉を紡げていない。
 
 まぁ仕方ない。観客から突然当事者に変わってしまったのだ。状況の把握が出来ないのも無理はないだろう。

 「イブ君、避けてっ!!」

 再度、先生の声が飛んだ。グリムガルがまた『転移テレポート』をしてきたのだ。
 一応気配と魔力の反応からわかっていた俺だが、叫んだ先生がグリムガルと俺の間に入って来て、その大きく振りかぶった腕に、巨大な戦斧をぶつけて攻撃を逸らしてくれたので、わざわざ回避行動を取る必要もなかった。

 「────大丈夫!?」
 「えぇ、平気です。それより、厄介な状況になりましたね」

 攻撃を防がれたグリムガルは、またしても『転移テレポート』で離脱する。ヒットアンドアウェイ、当てて逃げてを繰り返すような行動だ。
 一撃でも喰らえば致命的。魔物の『転移テレポート』は本当にタチが悪い。

 (それに、あの黒い瘴気……懐かしいな)

 グリムガルの体を覆う黒い瘴気。あれは『纏う』というよりは、『覆われている』という方が正確だろう。
 あのグリムガルの力ではない。どちらかと言えば、魔道具とかそっち系に近い、外部からの力。

 それによって、『魔の申し子ディスガスト・テラー』のように、高度な魔法を淀みなく扱えている。俺の『絶対零度アブソリュートゼロ』を壊したのもその瘴気の仕業だろう。

 あの瘴気……以前、ルサイアの迷宮でオーガキングを覆っていたものにそっくり、というよりは、全く同じものだろう。
 そして、それより効果が高いようにも見える。

 「イブ君、あなたは下がってて! なんだかよく分からないけど、ここは教師として私が────」
 
 ミリア先生が斧を構え、迎撃に徹しようとする。だがそれではダメだ。相手はこの中の誰でも狙えて、そんな状態じゃあ負傷者が先に出る。

 「いえ、ここは俺がやりますよ」
 「イブ君?」
 
 先生には悪いが、ここは俺に任せてもらおう。
 ミリア先生が一歩前を行く俺を見る。

 「まだ、勝負がついてないので。ミリア先生はリーゼロッテをお願いします」
 「え、ちょ、イブ君!?」

 言葉少なに、俺はグリムガルへと向かっていく。

 おっと、周囲に状況を広めることも忘れちゃいけないな。

 「みんな、俺の試合はまだ終わっちゃいない。そして、俺も負けるつもりは無い。だから、安心して観客に努めててくれ」

 大声を出した訳では無い。それでも、演習場の隅にまで行き渡っただろう。

 武器を構えて臨戦態勢になっていたクラスメイト達は、俺の言葉に段々と戦意を収めていく。
 ひんやりとした空気。無粋かもしれないが、この場所であるからこそ思考が冷静になれるのかもしれない。

 「イブ、勝てよ!!」

 あぁ、そんな言葉を発してくれる人も居るのか。
 レオンが、そんな熱い言葉をかけてくれる。

 「そうだ、イブ頑張れ!!」
 「お前なら勝てる!!」
 「イブ君頑張ってぇ!」

 一人が発すると、周りの奴も便乗して応援してくれる。それは勇者組も例外ではない。

 前には、唯一俺と関係のある、4人組。

 「行かせない……っていう雰囲気じゃないね」
 「当然だ。お前を応援に来たに決まっているだろう」

 そら嬉しいな。拓磨に笑い返す。
 若干ぎこちないが、笑みを浮かべてくれているのが、既に心を開き始めてくれているとわかる。拓磨は普段仏頂面だが、早く心を開いてくれたのは、俺が拓磨との付き合い方を知っているからだろうか。
 隣を向けば、樹。

 「イブ、気をつけてくれよ」
 「樹は心配症だなぁ。俺は遅れをとるような奴じゃない。分かるだろ?」
 「……そうだな。おうよ、頑張ってこい!」

 何か言いたげな表情をしていた。そんな言葉で誤魔化しているようだが、少なくとも今になにか言おうというわけでは無さそうだ。
 俺もまた、今聞こうとは思わなかった。素直に頷く。

 「あ、そうそうイブ君、ちょっと動かないで?」
 「叶恵?」

 すると、叶恵がトテトテと近づいてきて、俺の体に手を向けた。
 なんだと首を傾げるが、それは直ぐにわかった。

 「『痛いの痛いの飛んでけーヒール』!」
 「……俺は怪我してないよ」
 「私はなんか、回復させると強くできるみたいだから。イブ君も強くなってくれてるといいんだけど」

 そう言えば、そんな能力もあったな。回復させた相手にバフをかける……【聖女セイクリッド】だったか。そのための回復か。
 体が軽くなった……気がするな。叶恵のお陰と思っておこうか、ここは。

 「……美咲は何も言ってくれないの?」
 「いえ、なんだか、拓磨と樹君が応援しちゃったし、叶恵はサポートするしで、言うことが無くなっちゃった気がするのよ」
 「変に考えなくていいのに。普通に『頑張れ』でいいよ」
 「そう? じゃあイブ君、頑張って。グリムガルあっちもそんなに待ってくれないみたいだし」
 「そうだね。ササッと行ってこよう」

 チラッと美咲が視線を向けたのは、今にも動き出しそうなグリムガル。律儀に待っているのが、獲物を見定めている時間か、それとも別か。

 拓磨の横を通り過ぎようとして、耳元で声をかけられる。
 
 「───イブ、手助けはいいんだな?」
 「いらないよ。心配なら、いつでも動けるように準備してたらいいんじゃないかな」

 拓磨の肩を叩く。すると拓磨もまた、お返しというようにポンと俺の肩に手を置いて、肩を竦める

 「いや、いい。自分に何度も〃〃〃勝った〃〃〃相手を心配するなど、おかしな話でもあるしな」
 「……なんの事やら。さっぱり分からんぞ」

 意味深な発言をした拓磨に、俺はつい口調が戻りながらも、そう答えた。
 拓磨は『なんでもない、忘れてくれ』と苦笑気味に告げ、肩から手を離すと、次の瞬間には俺と拓磨達の間に、障壁が出現していた。

 こっちが疑問を挟む余地もなしか……良いけど。それにしても、背を向けた瞬間にこれとは、演出っていうのがわかっているな。

 拓磨が障壁を出現させると同時に、他の部分でも、先程までと同じように、改めて障壁が張り直される。
 俺の意思をみんな尊重してくれているんだろう。結託力のあるクラスだよホント。俺がしくったら危険なのにな。

 歩きながら、ふと、こんな中でも表情を崩さず、元の位置から一歩も動いていないマルコに、俺は視線を向けた。

 『お前にアレが倒せるのか?』

 そんな声が聞こえてきそうだ。マルコはこの状況においても、俺の戦力を見極めようとしている。
 事実、そう考えているのだろう。
 もしかしたら、この騒動もマルコが起こしたものなのかもしれない。まだ〃〃確証はないが、そう思えるような発言もしていたし。

 だからという訳でもないが、俺は、相手に伝わると確信した上で、不敵な笑みを返した。

 『余裕に決まってる』

 面白くなさそうに、マルコが鼻を鳴らした。別にいい。俺はお前を、『敵』として見なしていない。
 せいぜい俺の強さをその目に焼き付けてくれ。

 視線を戻すと、俺の雰囲気が一変したことを感じ取ったのか、グリムガルの動きが硬直していた。
 魔物は強者をかぎわける。魔物に限らず、本能に忠実に従う動物は、皆そうだ。

 今はさっきとは違う。周りの空気に当てられ、やる気になっている。
 『魔の申し子ディスガスト・テラー』と同程度と考えれば、多少は手加減を解いてもいいはず。あの黒い瘴気は、問答無用で魔物を強化するのだろうし。

 そんな俺を不遜だと思ったか、はたまた恐怖でも感じとったか、グリムガルは悠々と歩く俺へ向けて、魔法を放った。
 美麗さも何も無い、巨大な氷の塊が、12個、高速で射出される。

 一つ一つが人間以上の大きさだ。表面積は、敷き詰めれば俺が5人は入る程もある。
 周囲の冷気もあって、ここでは氷系統の水魔法の威力が高くなっている。元々の氷の硬度に速度が相まって、当ったらひとたまりもないだろう。

 だが、生憎とそれは悪手だ。

 「俺に魔法が効くはずないだろ」

 俺は、笑う。ただその魔法達に目を向ける。
 焦点すら合わせていない。高速で迫り来る氷塊を、視界に入れただけ。

 一瞬だけ、視界に突然魔法陣が浮かんだ。そして、氷塊にスパークが走る。

 「『改変の魔眼』」
 『RAAA!?』

 たったそれだけ。たったそれだけで、それらの魔法は、氷塊から突然火球〃〃になり、その速度のままグリムガルの方へと反転した。

 【魔眼】。その派生能力、[改変の魔眼]による、魔法の構成の書き換え。
 魔力の精密操作も必要ない。問答無用で魔法を書き換え、自分のものにする能力ちから

 グリムガルが『転移テレポート』を発動しようとするが、その『転移テレポート』すら俺は構成を"改変"し、転移先の座標を元いた場所と同じにする。

 グリムガルが一瞬だけ消え、すぐに同じ場所に現れる。それに対して、困惑のような声を上げた。
 自身が放った氷塊────それが今は火球となって、グリムガルに降り注ぐ。

 追加された『爆発』の構成が、グリムガルに触れることによって起動する。大きな爆発は『十字爆発クロスプロージョン』のように似ていて、それが12、全て命中した。

 『────GUAAAAAAAAAAAAA!!』
 「声がうるさいな」

 爆発によって起こった黒煙が、グリムガルの咆哮で一気に吹き飛ばされる。
 元からの防御力が高いのもあるだろうが、なにより魔法に対する抵抗力が並外れている。『十字爆発クロスプロージョン』並の爆発だったが、怪我を負った様子はない。

 しかし、それは以前オーガキングに『重力檻グラビティプリズン』を破られたことからも予想はできていた。

 「少しは学べよ」

 先程失敗したばかりの『転移テレポート』を再度発動するあたり、そこまで知能はないのか、さっきのはたまたまだとたかを括っているのか。
 ならばと今回は敢えて介入はせず、代わりに転移先に先回りをする。

 「せーのっ」

 グリムガルが出現したその瞬間に合わせて、俺はグリムガルを蹴り上げた。
 勢いだけで、射線上の氷に亀裂が入り、足先がグリムガルを捉える。

 『GUUUUUU!?』

 何十トン、下手したらさらに桁が上がるかもしれない質量を持つグリムガルの巨体が、その力によって浮き上がった。
 俺は腹の下を蹴り上げただけだ。魔法すら使っていない。本来なら浮くどころか、ビクとも動かないだろう。
 だが、そこに込められた力が異常だった。

 「意外と行けるもんだな」

 地面から数メートル離れたグリムガル。パラメータの数値はここまで影響するのか。本気でやれば普通に飛んでいきそうだ。
 もしくは叶恵のバフが効いているのか。両方だろうか。

 「っと、その体勢から『転移テレポート』かよ」

 グリムガルもグリムガルで、吹き飛ばされた体勢から『転移テレポート』で移動し、俺の背後に出現する。

 それでも、不意をつくには至らない。

 上げきった脚を、振り返る勢いで回し蹴りに移行させる。

 「ゴメン、そっちに飛ぶ」
 「え!? こ、ここ強化してくれ!」

 大質量を蹴った感触ではない。もっと軽い物を蹴ったような。
 そんな感触が返ってくる俺とは裏腹に、グリムガルは今度は横に吹っ飛んでいく。

 障壁にぶつかるのを見越して、俺は蹴った直後に注意を入れる。さっきよりも強く蹴ったからな、障壁が耐えられるか。

 だが、俺の声を聞いていた誰かが咄嗟に声を周りにかけたため、お陰でその部分の障壁をみんなで一点強化。どうにか、グリムガルの巨体を防ぎきった。

    







 今日から通常運転にします。修正は暇な時にやればいいや。
 次回投稿は明後日辺り。あぁ、これ言うのも久しぶりだなぁ。

 大変長いことお待たせしました。なんか本編書くのが急にまた楽になり始めたのでね。


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コメント

  • イミティ

    >>舞京
    ありがとうございます。返信遅れたので、今日も更新です

    0
  • 舞京

    やっと更新キタ━(゚∀゚)━!

    1
  • イミティ

    >>竹傘
    間違いはよくありますよね。うんうん(他人事)
    ……直しときましょう

    0
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