俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第32話 突然の来訪



 昨日はすいません、急遽投稿を延期してしまって。
 改めて、投稿致しました。





 
 「────ちょ、貴方たちっ!?」

 全然先生帰ってこないなぁと、隣のリーゼロッテの髪から漂う甘い香りのせいで、思考が止まってきている俺は、ただぼーっと過していたのだが。
 遠くから聞こえてきた困惑したような声で、その香りの呪縛から抜け出した。

 「今の、ミリア先生かな?」
 「…………」

 ここに来ても今だ黙りか。だが、なんだか焦ってるようにも聞こえた声に、俺は一度立ち上がって様子を見に行くことにする。
 リーゼロッテは特に気にならないのか座ったままだが、わざわざ連れていこうとも思わないし、また無言で過ごされても困るので、一人で行くことに。
    
 何人かは先生の声が聞こえて気になったのか、俺が動く前に既に移動していた生徒もいる。その顔は心配と言うよりは、何かを求めているような顔だ。

 何を期待しているかは聞かないが、そういう心情で動いてるといつか痛い目にあうぞと、俺は心の中で忠告しておく。
 好奇心だけで姿を変えて学校に入ってる俺が言うのもなんだが。

 どうやら演習場の入口部分で、ミリア先生と数人の者が揉めているようだった。

 ミリア先生の後ろには先に来ていた生徒達が着いていて、その顔には少し険がある。だが、ミリア先生に言われたのか、どうやら渋々戻ってきているようだ。
 そして対する方は…………って、アイツは!

 (マルコ・ギュスターヴ……)

 ミリア先生と相対する数人の中には、見覚えのある者がいた。
 以前拓磨達と問題を起こした貴族、マルコ・ギュスターヴ公爵だ。まさか同じ場所にいるとはな。

 残りは、前回居た腰巾着達とは違うな。この学校にいるということは、マルコじゃ先生ということは無いだろうし、どこかのクラスで、そのクラスメイトってところか。
 パッと見、戦力的にも全体的に高いことから、クラスの中でも熟練者を持ってきたのだろう。その内の一人が、比較は出来ないが、飛び抜けている。

 それにしても、アイツらはまだこっちに気づいてないが、一体なんの用だ?
 
 「演習場は敷地的にも広い。別に俺達数人が使っても、なんら問題はないだろう? ミリア先生」
 「演習場を使用していいのは一度に1つのクラスだけよ? 危険でもあるし、融通は出来ないわ」
 「そう言われても、俺達もこの時間は暇だからな。生徒が暇を持て余すのはあまり宜しくないだろ?」
 「公爵の名でアルミラ先生を買収して、勝手に授業を抜け出してきただけでしょっ!」
 「人聞きの悪い。ちゃんと正当な話で許可を貰ってきたさ」

 笑いのひとつもなくマルコは言ってのける。あくまで淡々と。
 一応『先生』という敬称は付けているが、アイツはミリア先生を見下しているのだろう。話を聞く限りじゃ、担任も買収したらしいし。

 この学校の先生なのだから実力はあるはずだが、権力に屈したということは、それだけマルコの家の力が強いか、マルコの味方に、そのアルミラ先生という人よりも強い人間が居るか。
 ミリア先生の口ぶりじゃ、一度だけのことでもないようだし、あの理事長の下でそれが出来るということは、黙認されているか、気づかれていないのか。後者は可能性的に低いが、話の出処を権力で潰して回れば、できない訳では無い。

 そしてその場合、ミリア先生もまた口封じされているということになる。

 「それで、どうするんだ先生?」
 「当然拒否させてもらうわ。クラス対抗が控えている以上、他クラスの生徒に、下手に手の内を見せたくもないもの」
 「そうか、賢明な判断だが……」

 (うお、マジか)
 
 言葉を区切った瞬間、マルコの目が俺を射抜いた。
 バレないように遠くから見ていたのだが、どうやらマルコは俺の存在を知っていたらしい。
 俺の容姿は遠くからでもわかるぐらい奇特だが、それでも陰に隠れていればそうバレるものでもない。それを遠くから見抜いたということは、やはりマルコ自身もある程度は実力があるということか。

 このタイミングで見たということは、俺を場に出したいのか。

 とはいえ、結局はバレてしまったので、仕方なくそちらへと歩いていく。ミリア先生もまた俺の存在に気づいていたようだが、マルコと知り合いだったことは予想できなかっただろう。

 「───これは、偶然ですねマルコ殿。同じ育成機関に属しているとは」
 「チッ、やっぱりお前か」

 俺の姿を見て、舌打ちをするマルコ。言葉とは裏腹に、俺が居たことは確信していただろうに。
 下から睨みあげるような視線に気付かないふりをして、俺はミリア先生の隣に立つ。

 「イブ君、彼と知り合いなの?」
 「いえ、知り合いではありませんよ。昨日少し揉め事がありまして、その時に」

 耳打ちしてくるミリア先生に、苦笑い気味に返す。ホント、偶然というものは重なるのだな。

 マルコもまた、自身の背後にいる、この中では飛び抜けて実力のありそうな、細目長身の男に、そちらを見ずに小声で何かを伝えていた。
 そいつの強さは、少なくとも拓磨より。別にまだ成長しきっていない勇者の拓磨より強いというのは驚くことではないが、その強さの比較が、拓磨よりは軽く〃〃上、ということなのだ。
 拓磨が3人いても叶うかどうか。最悪、ギルドマスターや理事長クラスか。

 だが、今はそちらよりも、目の前の男だ。

 「それで、私になにかご用ですか?」
 「その前に、その喋り方をやめろ。ふざけてんのか?」

 何故俺をこの場に出したのか、それを聞こうとしたのだが、マルコはドスの効いた声で俺を威圧する。
 演技は完璧だと思うのだが、敬語はお気に召さなかったようだ。

 やれやれのポーズをした俺は、一度咳払いをしてから。

 「これでいいかな、マルコ・ギュスターヴ?」
 「はんっ。今は同じ学生同士だから敬称は付けないってことか。つくづくうざい野郎だ」

 前回俺の介入によって引き下がらざるを得なかったことを根に持っているのか、忌々しげに吐き捨てるマルコ。

 「転入早々、派手にやったようだな。勇者を模擬戦で倒したか」
 「耳が早いね。あそこには俺達のクラスしかいなかったはずだけど」
 「さてな。それで今度は、『グリムガル』相手に解体ショーか? 目立つのが好きな野郎だ」
 
 グリムガル、というのが、あの檻の中の魔物を指しているのは聞かなくても予想がついた。残念ながら聞いたことは無いがな。
 拓磨との模擬戦についても、誰かから聞き及んだのだろう。クロウ教官が漏らしたとは考えにくいため、クロウ教官が他の教師に話して、その教師から聞いたか、うちのクラスの奴が喋ってたのをどこかで小耳に挟んだか。

 分からないのは、こいつが何故檻の中身を知っていたのか、ということだ。外側からは見れないし、魔力を通さないから内側に魔法を発動して視覚を飛ばすことも、難しい。

 となれば、正規の手段で中身を見たか、誰かから教えてもらったか……同じことを思ったのか、隣からミリア先生がマルコを睨んだ。

 「檻の中身は生徒は知らないはずだけど、なんで知ってるのかしら?」
 「そんなのどうでもいいだろう? 別に知られて困るものでもないし、他にも知ってる奴なんて山ほどいるさ。それよりミリア先生、ここは一つ、取引といこうじゃないか」
 「取引には応じないわ。これ以上権力に屈してたまるものですか」
 「そうじゃない。どうせだからそいつが魔物と戦っているところを見せて欲しいだけだ。それが見れれば、俺達は帰る。他の奴の手の内も盗み見たりはしない。どうだ?」

 やはり、ミリア先生もマルコと何かしら取引をしている。俺はそれが、マルコがこうやって自由にすることの黙認についてだと考えているが、ともかく、取引に応じること自体は先生も不本意であるということか。
 そっち側の人間じゃなくてほんとよかったよ。そういうだけで印象が悪くなるからな。

 特に俺は、この世界に来て最初の契約の時に嫌な思い出があるから余計だ。契約内容に不備はないはずで、未だに何故契約がきちんと作動しなかったのかが理解できないのだから。

 マルコが、昔を思い出して少しだけ苦い顔をした俺を指しながら示した内容に、ミリア先生は躊躇せず首を横に振った。
 
 「却下よ。こっちにメリットがないし、私がここで貴方たちを追い返せば済む話だわ。それに、貴方が約束を本当に守るかもわからない」
 「いいや、俺はさっき言った内容を遵守する。ただ、アンタが同意をしなければ俺達は退かない。ここで押し問答を続けていれば、授業の時間はなくなり、アンタが見たがってたそいつの魔物解体ショーも見れなくなる……さて、本当にメリットはないか?」
 「………」

 しかし、今度は押し黙る。俺と魔物の戦闘とマルコの要求を秤にかけてる顔だ。
 いや、魔物との戦闘なんて沢山見てきたでしょ。今更俺のにこだわる必要は無いって。

 それにしても、マルコはミリア先生が俺と魔物の戦闘を見たいと早々に当ててきた。となると、ミリア先生の為人ひととなりを元々知っていたか、一部始終が聞かれていたか、ということになる。
 少なくとも、俺は盗聴されていることに気づかなかった訳だが、その場合なんらかの魔道具マジックアイテムが使用されていた可能性があるな。

 俺の思案をよそに、ミリア先生は本気で悩んでいる様子だ。別にどっちでもいいですよ? 見られて対策を取られたところで、どうしようもないのが俺ですから。

 「……いいわ。イブ君の見学だけなら。ただし、さっきのに加えて、今後貴方がちょっかいをかけてこないことが条件よ」
 「ククク、賢明な判断だ」

 そんな俺の願いが届いたのか、ミリア先生は決断してくれた。
 口約束なんて反故にされて終わるのがオチだが、元々俺はこいつの約束なんて信用しないから、結局変わらない。書面に記されても公爵の権力がどこまで及ぶのかわからない以上、都合のいいように改変された時が怖いし、[契約]のスキルがある訳でも無い。

 『ククク』なんていう現実に聞いたのは初めてな笑いをしたマルコは、許可は得たとばかりに無遠慮に演習場へと足を踏み入れ、その後に残りの奴らも続いていく。

 「………」

 途中、細目長身男が俺の方を横目で伺ってきたが、気付かないふりをしてやりすごした。

 鑑定系のスキルを使われたと直感で理解したが、俺の[偽装]を看破できるとは思えないし、出来たとしても、今度は全ての項目が塗りつぶされ、隠蔽されたステータスが見えるだけだ。
 それすらも突破して俺のステータスを覗いたのなら、あんな平静にしていられるはずもないし。

 「……イブ君ゴメンね? 先生の力がないばかりに、初日からちょっと変なことになっちゃって」
 
 向こうにマルコ達が行くと、小声で、しかし聞こえるようにミリア先生は謝ってきた。
 眉尻を下げて、申し訳なさそうに目を伏せるミリア先生だが、俺は笑顔で、気休めだとわかっていながら首を横に振る。

 「いいえ、先生のせいではありませんよ。無理矢理踏み込んできたマルコ達に非があります」
 「……そう言ってもらえると助かるわ」
 
 少し微笑んだミリア先生は、今度は一転してきゅっと顔を引きしめる。

 「イブ君、マルコ君は腹の底が見えない危険な子よ。あなたは権力に屈するような人じゃないとは思うけれど、彼がわざわざこのタイミングでここに来たということは、貴方が目当てだったんだと思うの……私はマルコ君達に目を光らせるけど、一応イブ君も、気をつけておいてね」
 「……分かりました。注意はしておきます」






 ここでマルコの再利用。でもまだどういう展開にするかは定まってないです。
 次回は、明後日辺り。


「俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • ベル

    そういえば、結構前に見つけた魔剣使うんですか?(もしかしたら別のシリーズかも)

    3
  • イミティ

    >>いっちゃん
    ありがとうございます。これでも10時に、早い時は8~9時に寝る良い子なんですけどね……だからむしろ眠いのか?

    0
  • 舞京

    待ってますね!

    2
コメントを書く