俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第23話 注目の的


 うにゅ、お眠ですよ。






 「よおイブ、やっぱり来たか」
 「やっぱりってことは、もしかして予想されてたのかな?」
 「昨日含んだ言い方だったからな。もしかしてって思えば、直ぐに予想はつくさ」

 席に着けば、隣に居た樹がそんなことを言ってきた。
 ちなみに、俺は樹が予想するということを予測〃〃していたがな。ふんす。

 ……負けず嫌いなんですよ。単純に。

 「やっほーイブ君」
 「こんにちは、昨日ぶりね」

 すると、その奥から身を乗り出して、叶恵がこちらに手を振ってきた。

 「やぁ叶恵、美咲、確かに昨日ぶりだね」
 「昨日ぶりー。それにしても、樹君が予想した通りホントに学校に来たんだね!」
 「まあね。ただ、行動を予想されちゃうなんて、俺もまだまだだなぁ」
 「イブ、お前は何を目指しているのだ……」
 「さて、なんだろうね」

 世界全てを手玉に取る奇術師かな。
 もしくは、頭脳バトル系の物語に出てくるような、何十手も先を読む天才化物主人公とか。

 俺の物言いに拓磨は苦笑いを返した。

 

 ◆◇◆


 ホームルームが終わると、次は一時限目となる訳だが。

 「今日は何をやるんだ?」
 「今日は午前が対人実技、午後は魔法訓練だぜ」
 「勉強とかはしないの?」
 「あー、明日は勉強だな、めんどい事にさ」
 「実技と勉強は日で分けられてるの。イブ君はどっち派? やっぱり、見た目からすると勉強の方が得意?」
 「特に得意不得意は無いかな。このクラスだと誰が勉強が得意で、誰が強いんだ?」
 「あー、勇者のイツキ君はやっぱ頭良いんだよねー! まだ入ったばっかりなのに私達より全然授業がわかってるし。先生からよく指名されてるよ」
 「戦闘だったらタクマだな。俺だって結構強い方だと思うのに、タクマには勝てないや。勇者っていうのはやっぱスゲーな」

 俺の周りには人だかりができていた。転入生初日の恒例ってやつだな。
 とはいえ、わからないことは多いため、この時間に俺はそうやってみんなに質問させてもらっていた。幸いにも誰がどんなことを喋っているかを聞き分けるのは簡単だからな。

 すると、ある女子生徒が興味ありげに手を上げる。

 「はいはい、イブ君ってレベル幾つなの? やっぱ80とか?」
 「うーんどうだろう。あまりステータスを見る機会がなかったからなぁ。多少は上がってると思うけど。このクラスの平均って?」
 「あ、この学校には各クラスにステータスプレートがあるから、今確認できるよ! で、クラスの平均は大体75で、勇者達なんかは全員80、90だったりするよ!」
 「お、そうなんだ。じゃあ、ちょっと確認してこようかな。勇者に負けないようにしないと」
 「お、頑張れよぉ! 勇者は頼もしいけど、やっぱ勇者と比肩するような強さを持つ奴も欲しいからな」

 やはり強さの目安としてレベルは測りやすいのだろう。また、この学校は思ったよりもハイレベルであることが明らかになった。
 なんせ、平均が75と言うのだ。グレイさんと近いレベルだ。成長速度や成長力には大きな個人差があるため、一概には言えないが、十分すぎる。

 勇者をここで教育させようという方針も頷けるような強さだ。

 ちなみに勇者は勇者で固まっている。日本人だからか、少し遠慮気味なところがあるようで、落ち着いたら俺に声をかけようと思っているのだろう。
 拓磨や叶恵達も、遠くから見ている。

 「さて、と……」

 それで、俺のレベルだったな。ステータスプレートはホワイトボードの横に備え付けられており、俺は『見ないで欲しい』と周りに断ってからそこへと行く。

 ステータスは個人情報とも言えるからな、見ないでくれという俺の要望を聞き入れないやつはいなかった。

 さて、別にステータスプレートを使うまでもなく俺は自身のステータスをしっかりと把握しているため、わざわざ使う必要は無い。

 あとはこの後どうするかだ。変に『〇〇レベルだった』と言えば、今後その強さに限定されてしまう。
 となると、判断のしにくい、曖昧な言い方が良さそうだが……。

 俺はステータスプレートに手を触れ、内容を確認したように見せてから輪へと戻る。

 「あ、どうだった?」
 「気になる気になる!」
 「んーとね、思ってたよりも上がっててさ……強さを見てからのお楽しみ、かな?」
 「えぇー? 何それ?」

 もったいぶって告げると、不満そうに声を上げる。最初から馴れ馴れしいが、それがこの女子生徒の特色なのだろう。
 いや、この学校に来てる時点で、ある程度は積極性がありそうだ。

 「実際に目で見た方が驚くでしょ? この後実技があるみたいだし、その時に多少はね。驚いてもらいたいし」
 「勿体ぶるなよー、俺のレベル教えるからよ? な? な?」
 「誰もアンタのレベルなんか聞いてないっての。ね~イブ君~」
 「ひっで!!」

 男子生徒に肘で小突かれ、苦笑いを浮かべていると、先程の女子生徒が一刀両断。
 更にはこちらに甘えるようにそう声を出すものだから、扱いにも困る。会ってまもない男子生徒のため、女子生徒に乗る訳にも行かず、結局苦笑いでやり過ごすしかない。

 すると、まるでこの場にはもう居られないとばかりに、教室の扉が開き、そこから一人の生徒が静かに出ていった。
 俺以外の者は気にしていないか、気づいていないようだが。この中一人で先に行くということは、ぼっちなのだろうか。

 (こういう時って、主人公が声をかけるもんだよな……)

 とはいえ、この輪の中から抜け出すことは非常に難しい。たとえ抜け出せる状況だったとしても、実際に声をかけたかは不明だが。

 結局その後、ミリア先生が再度やってきて一喝するまで、俺はその輪から抜け出せずにいた。



 ◆◇◆



 俺は何かと訓練場に縁があるのか、と今更ながら考える。
 ルサイア、ヴァルンバ、そしてここ。全てにおいて訓練場を使用している。

 理事長と戦ったのは屋内だったが、ここは広大な広さを誇る大訓練場。
 その広さは、以前何度も足を運んでいた、探索者ギルドの訓練場と比べてみるとざっと数倍はありそうだ。

 ここなら、ある程度広範囲の魔法を使っても問題ないと思える。

 「それで、対人実技って何をやるのかな?」

 どうすればいいのだろうか、と隣に居た樹に聞く。さりげなく樹達の近くにいるが、見た感じでは勇者は勇者、それ以外はそれ以外でまとまっているように見える。
 仲が悪いようには見えないため、単純に最も仲がいい者同士で集まった結果なのだろう。その証拠に、勇者もひとまとまりでは無く、拓磨達グループ以外に三つある。それぞれ国が違う、ということだろうか。

 「クロウ教官が多分説明してくれるけど、そんな難しいことじゃないぞ」
 「クロウ教官?」
 「対人実技担当の教師のことだ。ほら、あそこにいる大柄の先生……一応教官って呼んだ方がいいぞ」
 「あぁ、あの人か」

 指された場所には、丁度訓練場に入ってきた大柄の男が居た。
 イメージ、クロウというのは細身なのだが。いや本当にイメージでしかないが。
 見た目は怖そうだが、果たして。

 クロウ先生、もとい教官が来ると、みんな喋るのを止める。そのメリハリが、余計厳格な先生であるという印象を俺にうえつける。

 「よし、集まっているな。確か、4組は転入生が入ったという事だが……」
 「はい、俺です。イブと言います、クロウ教官」
 「そうか、イブだな。知っているようだが、俺は対人実技担当のクロウだ。授業中は『教官』と呼ぶように。授業以外ならば先生でも構わない」
 「了解です」
 「うむ。ではそうだな……イツキ、イブに対人実技の授業について説明してやれ」
 「………あ、え? 俺っすか?」
 「お前だ。早くしろ」
 「あぁはいっ!」

 どうやら予想は外れた様子で、指名された樹は俺の隣で慌てて立ち上がった。
 これは、俺の隣にいたのが樹だからか、元々樹を指すつもりだったのか……話を聞いていた感じでは、後者なのだろうな。

 「えぇと、対人実技は、同じ人間同士の諍いの際、武力行使をやむ得ない状況になった場合、早急に場を収めるために如何に相手に怪我を与えず無力化できるか、を主軸に置いた授業です……えっと、特に冒険者はそういった諍いに巻き込まれやすいことから、魔物戦闘の次に重要視されています。また、次点で、通常のように武力を競うための、純粋な戦闘技能を教えられます」

 おぉ、と俺は隣で流石樹と感心する。普通なら簡潔にどんなことをやるか話すだけだろうに、授業目的から入るとは、レベルが高い。

 「そうだ。では、タクマ、その授業内容は?」
 「はい。先程樹が前述したように、"如何に相手に怪我をさせずに無力化するか"ということが重要視されているため、基本的には相手の攻撃は全ていなし、素手、もしくは殺傷性のない武器によって相手を制圧するために、生徒は2人1組になり、攻守の役割を決めて、守備側は相手に怪我をさせずに制圧させる、という授業を行います。
 それらが終了すれば、次は純粋に勝つための練習となり、自分と実力が拮抗した生徒同士で組んで、模擬戦を行います。生徒の中に自身と同じ程度の実力者が居ない場合、教官が相手となるか、他者に指導することを許可されます」
 
 次いで指名された拓磨もまた、樹のように淀みなく答えていく。上手く引き継ぎ、突然指されたにも関わらず、動揺がない。

 それにしても、意外だ。てっきりルサイアでの訓練と似たようなものになるかと思っていたのだが、意外にも俺としてもいい練習になりそうなのだ。
 簡潔にいえば手加減ということだろうし、今の実力を把握する意味でも、しっかりと訓練しておきたい。

 「よし、いいだろう。それでだが、まずはイブの実力を測りたい。構わないな?」
 「あぁはい、大丈夫です」
 「そうか。武器は持っていないようだから、あそこに置いてあるものの中から好きなのを選べ。こちらはお前の対戦相手を決めておく」
 「分かりました」

 対戦相手を決めておくって……正直誰が相手でも同じなのだが。
 ただ自分から進言したところで、それが真実であってもただの嫌味な奴と捉えられそうなので、俺は諦めて武器をさっさと取りに行く。

 更に言うと、言うまでもなく、武器も持っているのだが……と、どこかやりづらさを感じつつ、2本のロングソードを掴み取る。

 「二刀流……いやでも、魔法使うのに片手は空いてた方がいいか」

 だが、そんな結論に至ってしまい、結局片方は戻す。別に魔法を使うのにあたって片手が空いている必要は無いが、見栄え的にどうなのかなと考えてしまったのだ。

 見栄え、大事。ハンマーを持った明らかな脳筋キャラが、無詠唱で魔法も使ったら、違和感しかないだろう。
 それとも、それは日本人だけなのだろうか。使う武器と魔法の練度はこの世界じゃ関係ないし。

 そこら辺の認識はまた後で修正していくとして、俺はクロウ教官の元へと走り寄る。

 「お待たせしました」
 「こちらも丁度対戦相手が決まったところだ……お前の相手は、勇者のタクマだ」

 教官の言葉に合わせて、拓磨が一歩前に出た。胸を張ったその姿は軍人のような印象で、俺は拓磨が相手であることに、意外感と納得感の両方を感じた。

 「イブ、よろしく頼む」
 「あぁ、こちらこそ、お手柔らかに」
 
 




 次回、拓磨との戦闘。なお、拓磨目線でお送りします。
 ギルドマスターほど白熱した戦闘にはなりませんけどね。

 予定的には、明日か明後日のどちらかです。


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