俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

幕間 卒業式



 ちょっと本編の執筆が全然間に合わないので、代わりに七章と八章の間に投稿しようと思ってた幕間を投稿。

 本編より幕間の方が何故か書けますからね……本編も急ぎ書きあげますので、どうか!





 
 「制服、準備完了! どう?」
 「……あぁ、似合ってる。さぁ、さっさと制服以外の支度もしろー」
 「ありがと、刀哉にぃ」

 姿見の前でスカートを翻しながらクルッと回って、こちらに向かって前かがみになった金光に、俺はとりあえずそう声をかけた。

 黙々と準備を進めていたクーファはいつでも行けるようだし、俺も学ランを持てばそれだけだ。

 荷物の用意をしていないのは金光だけであるのだが、金光には都合のいい部分しか聞こえなかったようだ。
 上目遣いに少し生唾を飲み込みつつ、それを表情に出さないように、ジト目でカバーした。

 「あぁ、どういたしまして。それで、さっさと支度をだな」
 「大丈夫大丈夫、今日荷物少ないから」
 「んじゃ先行ってるか」
 「わわ、わかったよぉ。直ぐに準備するから待ってて」

 片手を上げて玄関へと進もうとすると、ようやく金光は動き出した。既に一年も着ている制服、今更俺に改めて見せる意味などないだろうに。
 可愛いからまぁいいが。

 「そう言えばクーファ、一年は何時に終わりなんだ?」
 「ん? えっと、片付けとかがあって一時ぐらい?」
 「ふーん、意外と三年と変わらないんだな……」

 こっちの予定下校時刻は十二時半のため、ほとんど同じと言って問題ない。

 「じゃあ、一緒に帰れるかもな」
 「うん」

 はにかんだ様子で頷くクーファ。

 「嬉しいのか?」
 「うん、兄さんと一緒に帰れるから」
 「クーファ。世間一般では、そういうのを"ブラコン"と言うの、知ってるか?」
 「うん」

 そうか……知ってるのか………知ってて言ってるのか。
 なお悪いぞ、と素直に思えないのは、どこかでニヤついてしまっている俺がいるからだろう。

 「刀哉にぃ、クーファちゃんお待たせー……どしたの?」
 「帰りの時間が同じで一緒に帰れるかもってことが嬉しいらしい」
 「おぉ! 刀哉にぃと一緒に帰れるの? やったね!」

 うむ、こいつに『ブラコンって知ってるか』などとは聞くまい。金光の方がそういう知識はクーファより豊富だし、クーファがしってるのなら金光が知らないはずない。

 喜ぶ金光に、俺はどう反応したらいいか少し迷った挙句に、結局特に反応しなかった。

 「あ、刀哉にぃ寝癖あるっ!」
 「いや、これは天パ……じゃないな。多分寝癖だ」

 流石にこれは寝癖だろう。いつも通りの言葉で返そうとして鏡を見たら、重力に逆らっている髪の毛があった。

 「ほらねぇ! じゃあ私が───」
 「兄さん、私が直してあげる」
 「お、おう」

 早速とばかりに霧吹きを取りに行った金光を押しのけて、クーファが霧吹きを持ってきた。

 「頭貸して」
 「クーファちゃん横入りなしぃ!」
 「霧吹きは私が先に持ってきたの。姉さんじゃなくて私がやってもいいでしょ?」
 「むむむ?」
 「………」

 唸る金光と、負けんとばかりに睨むクーファ。妹達が俺の寝癖で争っていらっしゃる。

 兄冥利に尽きるなぁとなごみつつ、結局クーファがにらめっこを早期離脱し俺のところに来たため、素直に頭を下げる。

 「あーずるいぃ」
 「ん……直ったよ兄さん」

 金光の抗議の声をクーファは華麗にスルーした。何度か霧吹きがかけられ、髪を整えられる。

 「あぁ、ありが────何してるんだ?」

 礼を言ってあげようとした頭は、クーファに掴まれて引き寄せられる。
 まるで俺の頭を抱え込むような体勢だ……"まるで"ではなく、実際にその体勢なのだが。

 「兄さんの頭を抱きしめてる?」
 「何故疑問形……これ割と体勢が辛い」
 「じゃあ、こうする」
 
 顔の向きが変えられ、ふにゅんとした微かな柔らかさが押し付けられるが、これはこれで息ができない。

 どういう体勢なのか、俺が頭で再確認する前に、ガバッと俺の体はクーファから引き剥がされる。
 金光が俺とクーファの間に割って入ったのだ。

 「クーファちゃんお触り厳禁!」
 「顔だからセーフ?」
 「アウトだよ!」

 うむ、当たってたのがどこかなのかはわかるが、顔ならばセーフというのは意味がわからない。
 先程の感触を脳裏に残しつつ、結局少しぐしゃっとなってしまった髪の毛を再度整える。
 
 妹の胸に心地良さを感じてしまうというのはとても複雑なもので、しかしいたって平静を装って、そのまま俺はとても軽い鞄を片手に玄関へと手をかけた。

 「ほら、置いてくぞ~」
 「あ、待って」
 「刀哉にぃ待ってよ!」

 お互いの主張を収め、慌てて靴を履いてる2人を見ながら、俺は扉を開いた。


 

 ◆◇◆


 3月15日。今日は卒業式である。
 中三の俺はとうとう卒業……そんな実感は全くない。知り合いは基本的に同じ高校に進むようだし、残りも携帯で連絡取れる。樹達なんかも全員が同じ高校だからな。
 先生と特別仲がいい訳でもなかったし、別れというものは感じないな。

 高校生になる、というのも同じように実感湧かないが。

 『卒業証書、授与』

 厳かな雰囲気の中進行役の先生が放つと、早速A組(なお、ABCの三組がある)の一番が壇上に登った。

 『卒業証書。赤城あかぎ俊輔しゅんすけ。中学校の全課程を修了したことを証する。平成✕✕年三月三十一日、○○市立○○中学校長、野部貴裕。第二千百五号』

 校長先生が卒業証書を渡す。それと同時に、曲が流れ始めて、続々と名前を呼ばれ、壇上で卒業証書を受け取っていく。

 俺はB組の35番のため、半分よりは後ろだ。

 『柳井美咲』
 「はい!」

 凛とした声が響く。美咲は運動系の女子、と言うと少し失礼だが、そういう系統だからな。
 剣道部であったことからか、それとも元からか、礼儀や姿勢というのは美咲は人一倍できている。
 容姿だけで判断するなら、綺麗なバラには刺がある、だろうか? いや、猫と表現した方が妥当か。
 近寄り難い雰囲気はあるが、仲のいい相手にはおどけたり冗談も言ったりする。ただ、対応を間違えれば反撃を食らうだけで。

 美咲はA組の最後のため、それからはB組となる。


 『神崎叶恵』
 「はいっ!」

 周囲が────それこそ、来賓や保護者も含めた者が少しどよめく。いや、ざわめく。
 叶恵は控えめに言って美少女。芸能人と比べても劣ることすらなく、むしろ優るほどの容姿は、この厳かな卒業式という雰囲気の中でも思わず声を出したくなるほどなのだろう。

 証書を渡す校長先生も、どこか叶恵を前に鼻の下を伸ばしている気がする……あの人には確か既に釘をさしてたから、犯罪を起こすことは無いだろう。


 『城処拓磨』
 「はい!」

 流石は拓磨、他の奴らより声の響きが違う。堂々としているというか、威厳があるというか。
 流石は生徒会長、と言うべきか。中学とはいえ、この学校は珍しい受験性。ただでさえ中学から受験を受けるような積極性のある生徒達をまとめる立場であるため、生徒会長も普通の中学よりは仕事がある。
 それを完璧にこなしていたのだから、自然と対応力も上がって、全く緊張を感じていないようだ。
 
 
 『如月樹』
 「はい」

 他と比べると、少し小さめの声。まぁ、性格こそあれだが、あいつは元々小心者、とまでは行かないが、そこまで注目を集めるのが好きなタイプじゃない。
 少しい気張っているという印象が見受けられるのは、若干表情が硬いからか。
 
 
 そんなことを考えていると、俺の番も直ぐにやってくる。
 壇上までの道のり。来賓と先生達に一度ずつ礼をして、前の人が卒業証書を受け取るのを待つ。

 (……ん?)

 壇上に立って、会場(なお、言うまでもないが体育館である)の入口の方を見ていると、視界に少し動く存在が入る。
 それは、金光とクーファだった。二人ともクラスが違うため別々の場所ではあるが、金光は周囲の目を気にせず俺へと手を振り、クーファも控えめながら、こちらに向けて手を振っている。

 何事かと近くに座っている一年が反応し、少しざわめきが。それに伴い、先生や保護者もそちらへ目を向けるが、特に咎める声は出ない。

 さて、どうしたものかと思う。練習通りに行うならば、このままこの雰囲気をキープするために無視するべきだろうが……。

 「……目立つっつーの」

 苦笑いで愚痴りながらも、俺は壇上で手を振り返した。視界に入りやすい俺の行動は、ほぼ全員に見えているために、誰に手を振っているのかと、三年は後ろを振り返って確認しようとする。
 まぁ、あまり大袈裟に振り向くことは出来ないため、俺が誰に手を振っているのか確認できたのはほとんど居ないだろう。眼下の職員席から少し視線が飛んでくるが、俺は無視した。

 そもそも、俺は少々先生達からは特別視(多分色々な意味で)されているため、そう咎められることは無い。

 振り返した先で、黄色い声援が上がりそうな程の笑みを金光がする。クーファに至っては、普段外では冷静なキャラだからか、周囲がさらにざわめく程の笑顔を向けてくれる。
 きっと、これで周囲に人目がなかったら、さらにすごい笑みを向けていてくれたことだろう……それこそ、実の兄に向けるものとしては過剰なものを。

 『夜栄刀哉』
 「はい!」

 そんな思考に左右されず、若干同様の残る声で読み上げた担任に、俺はしっかりとした返事をする。
 
 俺と金光、クーファが血縁関係であるのを教師は知っている……だからこそ、この"ブラコン"と"シスコン"としか表せない行動に動揺してしまうのであろう。

 とはいえ、学校では普段会わない(ようにしている)から、俺と金光達がそこまで仲がいいことを知る生徒は、本人と仲がいいものでない限りは知らないだろう。
 また、俺も妹がいることはほぼ誰にも言っていない。変に勘ぐられるのが嫌なのだ。

 こちらもどこか動揺というか困惑している校長先生から卒業証書を受け取り、俺は席へと戻る。

 さて、もしかしたら後で小言の一言でも言われるかもしれないが、その時はしっかりと聞き流すとしよう。







 次回……明日……の予定……(この弱々しさよ)

 ちなみにこの幕間は複数構成です。次回がこの幕間の続きとなるか、それとも本編となるかは分かりません。

 

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コメント

  • イミティ

    そう言われちゃあ、頑張るしかないな

    0
  • ネコネコ(ФωФ)

    頑張ってください!ご主人様!(笑)

    1
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