俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第5話 以前にも似たようなことがあった気がする



 ようやく学院の門を叩きます。






 ルナとミレディを休ませ(と言ってもベッドで喋っているのだろうが)、俺は宿から出た。

 なお、この宿にはラウラちゃんのような子はいない。あの子は本当に人懐っこかったなぁと思いつつアシュバラと比べても大差ない人数が行き交う大通りを見る。

 ただ、アシュバラよりも圧倒的に他種族の姿が多く、むしろ普通の人の方が探すのが難しそうだ。

 「流石は、多種族が入り乱れる国、という所かな」

 エルフに獣人、ドワーフ、その辺が大半だが、獣人は更に細分化されるため、実際には多岐に渡るだろう。

 一種族の人数は人間が一番多いだろうが、人間とそれ以外の種族で分けると、3:7ほどだろう。
 ほとんどの人間以外の種族は、この国にいると思っていいのだろうか。

 街並みは、統一された建物が並ぶアシュバラと違い、様々な形、高さ、大きさの家々が乱れている。恐らく、種族ごとに適した形があるのではないかと俺は考えるが、真相は定かではない。
 見た目的には整っているようには見えないが、それでもしっかりと、建物は整列している。

 「さて、まずは目的の場所へと向かいますか」

 街の観光もいいが、それより先にやっておかなければならないことがある。
 この世界に来てから、俺はあまり自分の好きなことをやってない気がするが……いや、気の所為だろうか。

 まぁ、俺の中での目的にそってのことなので、それは俺の好きなことに該当するのだろう、正確には、俺の意思、であるが。
 いつかまったりと、この世界を純粋に観光し、生活してみたいものだ。

 そんな平和的な思考を他所に、人の往来が激しい大通りを進んでいく。土魔法……大地魔法で僅かに地面に振動を起こし、歩いている人の歩行方向の傾向を少しずらすことで、人一人が通れる程度の隙間を作り上げ、そこに身を滑り込ませたのだ。
 非常に難しい計算を頭の中でしているように思えて、実際にはそこまで難しいものでは無い。

 感覚で何となくわかるのだ。流石に全員の移動を脳内で計算しつつ行っている訳では無い。
 まぁ、頭で考えないで出来るというのは、頭で考えなければいけない、というよりも凄いことなのかもしれないが。

 スルスルと素早く俺は街の中心地に近い場所へと進んでいく。この街は屋根の高さが揃ってないから、走るのには向いていない。
 それもそのはずで、本来屋根は走るものでは無い……当たり前のことなのだが、それを一瞬でも忘れていた俺は、相当毒されている。

 幾つか巨大な建物が近づいてくると、その中でも特別大きく、作りがしっかりとしている建物へと向かっていく。

 言わずもがな、それらが冒険者育成機関なるもので、『学校』だ。その中で一番大きいのが、勇者も受け入れるらしい、優秀な人材の揃った第一冒険者育成機関。

 ついでに言うと、俺が通おうかと思っている場所でもある。無論、正規の手続きを踏むつもりはないが。
 こういうのは何事も特殊性が重要なのだ。そういう方が、面白い〃〃〃
 
 

 「すいません、ここの責任者に会いたいのですが」
 「理事長に、ですか? 失礼ですが、お名前は?」
 
 敷地を囲むのは塀。中に入るためには門を通る必要があり、そこの守衛さんに俺は話しかけた。
 
 が、名前か……前回はそのまま本名だったが、今なら咄嗟にでも反応できるだろうしな。
 本名を使うとバレるだろうし、偽名を使うか。

 「イブ〃〃です」
 「イブさんですね? ご要件をお伺いしても?」

 名前を告げると、そう聞き返される。
 なお、『イブ』というのは、アダムとイブのイブではなく、『イブニング』からとったイブである。
 夜栄の夜から取っただけの簡単なものだが、地球では良くゲームのキャラの名前として使っていた。

 イブニングでは長いため、イブとして縮めたが……女性名だよな、これ。
 まぁ、特に気にはしないが。

 「この学校に編入したくてですね。面会を希望したいのですが」
 「大変申し訳ないのですが、理事長は多忙の身でして、面会の予約もない方を突然会わせるのは大変難しく……」
 「あぁ、一応、これ持ってます」

 申し訳なさそうな、実際そう思ってるだろう顔をする守衛さんに、俺は探索者カードを渡す。
 正直、通用するかは不安なのだが……。

 「はい? ───え!? あ、第一階級アインス探索者?」
 「とりあえず、これでどうにかなりませんか?」
 「しょ、少々お待ちくださいね!」

 どうやら、ヴァルンバ以外でもある程度は使えるようだ。走り去っていく守衛さんを見ながら、俺はほっと胸をなで下ろした。

 ギルドマスターは有名という訳では無いだろうからな。知り合いであるという理事長以外には、あまり通用しないと思ったため、手紙は渡さなかった。

 


 「り、理事長がお会いになるとのことです」
 「そうですか、良かったです」

 断られた場合のことも考えていたが、どうやら通ったようだ。走って帰ってきた守衛さんにそう返す。
 
 その後ろにはもう一人いて、どうやら交代の人員のようだ。その人が門につき、守衛さんが俺を連れて行ってくれる様子。

 最初に目に入るのは、遠目からも見えていたとても大きい建物。それこそ、俺の通っていた高校とは比較にならないだろう。
 恐らく、内部に訓練場なんかを内包しているために、大きいのだろう。他にも部屋数は多いだろうしな。

 それ以外にも、敷地内には校舎以外にもう三棟建物があり、一つは校舎と廊下で繋がっている二回りほど小さい建物で、もう二つは見るからに『寮』という感じの建物だ。
 その内の片方は厳重に高い塀で囲まれているのを見るに、そちらが女子寮なのだろう。男子寮よりも幾分か大きい気もする。
 さらに言えば、塀には以前マグノギアンに潜入した時に見た、魔力を弾くバリアのようなものがある。それよりは精度は低いだろうが、厳重なセキュリティと言えるだろう。

 (女子の方がそういう面で優遇されてるのは、お約束か)

 それに対し、俺は特に不満はない。むしろ、当たり前だなと思う程だ。
 まぁ、些か厳重すぎると思わないこともないが、この世界だからこそだろう。使えるものはなかなか居ないと思うが、魔法で覗きや忍び込みが出来ない訳でもないからな。

 厳重にしてあたりまえか。

 校舎の中へと案内され、靴はそのまま階段を上る。天井が高く、細長く連続して並ぶ窓から光が射す廊下は、日本の学校ではなかなかお目にかかれず、どこか高級という印象を抱く。

 「ここが理事長室です」

 五階まで登る(一階一階の天井か高いため、思っているよりも階段が長かった)と、その廊下の途中にある両開きの扉の前で守衛さんは止まった。
 天井の高さに合わせているのか、扉も中々に巨大。見栄っ張りなのか、とまだ会ったことも無い理事長(そもそも理事長がこの学校を作ったのか知らないが)に失礼な思考をする。

 守衛さんが、申し訳なさそうな顔をして横にずれた。つまり、俺が扉を開けと?

 そうとしか考えられないので、俺はその扉に手を触れる。どちらに開くのかと疑問には思わない。扉の作りを見ればそれは分かるものだからだ。
 予想通り内側へと開いていく扉は、大きさに反して思った以上に軽い。そういう素材が使われているのだろうな。

 そうして開いていく扉。その隙間から、俺へと向けて刃先を潰したナイフが数本、高速で投擲される。

 「いや、なんというかなぁ……」

 何故守衛さんが申し訳なさそうな顔をしていたのか、俺に扉を開かせることに関してかと思っていたが、恐らくこれが理由なのだろう。中から敵意のない殺気、とでも言うような気配がしていたので、まさかとは思っていたのだか。

 当たっても打撲以上の怪我はしないだろうそれを、俺は避けるのではなく、指の間に全て挟み取り、その勢いが完全に殺される前に、手首の返しだけで全く同じ軌道に投擲し返す。

 流石にこれには少し動揺したようで、少し驚いたような気配がするが、その時には扉も開き切っていた。

 中には一人の男性が、興味深げな笑顔を浮かべながら、椅子に座って待っていた。その手には、俺が投擲し返したナイフがしっかりと握られている。


 ────さて、以前にも似たような体験をしていた俺は、どう反応するのが正解かな。


 向けられる探るような視線を仮面ポーカーフェイスで防ぎつつ、最初の言葉を考えた。
 

 




 さてさて、ここから学校へと入るわけですが……どんなふうにしようかなぁ。

 次回は明日いつもの時間です。忘れないうちに投稿出来て良かった。


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コメント

  • ノベルバユーザー307032

    上から言えることじゃないけど、体調に気お付けて頑張ってくださいね。

    5
  • イミティ

    同じ学生さんとは……ありがとうございます。ならば、これからも頑張って書いていかなきゃですねっ

    9
  • ノベルバユーザー307032

    良い意味だよー 俺も同じ学生だし書き方教えて欲しいくらい上手いと思うよー

    4
  • イミティ

    真面目に学生です。良い意味で言われてるのか、少し不安ですよ……

    2
  • ノベルバユーザー307032

    本当に学生さんですか?

    3
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