俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第28話 後片付け







 その後俺はギルドマスターに城に連れていかれ、事態を把握していたセミルの元、十数分程度の打ち合わせをして、即席の授与式があったのだった。


 このタイミングで早々に授与式を行ったのは、俺がギルドマスターに『そろそろ俺はここを離れますから』と零したのが原因のようだ。
 ギルドマスターに『頼ってくれて構わない』と伝えた後、それに補足する形で付け加えたのだが……俺がそうそうに移動する前に済ませてしまおうと考えたらしい。


 そしてその考えをセミルと共有し、了承を得たのだろう。恐らくセミルの元にも、俺の働きは伝わっているはずだ。探索者や冒険者の中に、王家の騎士が紛れ込んでいてもおかしくはない。
 そして、セミルは俺と一度喧嘩のようなものをしているために、実力を信じる一押しとなり、それに加えて信頼しているギルドマスターの言葉だ。


 俺としても早いうちに済ませたかったし、構わなかった。打ち合わせの時に褒美を断ったら、それはそれで驚かれたが、『聖剣を超えるものを出せるなら貰っておく』というほぼ無理難題な言葉に、潔く身を引いた。


 その後、代わりの望みとして街の復興に全力を注いで欲しいということを言うと、セミルはやはり驚愕の眼差しで俺を見たあと、喜色の笑みを浮かべて頷いた。


 俺の人となりに関しては、恐らくお人好しということで収まっただろう。別に欲しいものは何もないし、探索者ギルドを通して沢山の金を貰っているから、これ以上受け取るのは心苦しかったのだ。


 会議に向かったギルドマスターは、俺が話した魔族に関しての内容を伝えるはずだ。その内容を吟味し、これからどうしていくのかという所だろう。


 そうして帰ろうとした俺のところへ、セミルがやってきた。何事かと思うが、セミルは俺の横を通り過ぎていく。


 「───夜、我の部屋まで来い」


 小声で、本来なら聞き取れるかもわからないような声量で、通り過ぎる間際、そう俺へとセミルは零した。
 それを確認するために振り返ると、既にセミルは廊下の角を曲がってしまったあとだった。










 ◆◇◆






 夕暮れ時。街は、あんな騒動があった割には、予想以上に原型を保っていた。
 中央部分は魔物が暴れたり、攻撃に巻き込まれたりで、建物はほとんど崩壊しているが、それ以外の場所はそこまでではない。


 特筆すべきは、避難していた市民が既に戻ってきていて、復興に力を割くなり、店を再開させるなりしていたことだろうか。中には、普段通りの生活を送っているものすらいる。


 その証拠として、中心部にどちらかと言えば近い場所に位置する『泊まり木の宿』も、既に営業を再開していた。
 いや、この店は少々特殊だろう。なんせ、俺が事前に『構成固定フィケイション』の魔法をかけていたのだから、壊れるはずがない。


 なんら支障がなかったのだから、あとは店の従業員、つまりラウラちゃんや女将さん達が戻ってくれば、営業を再開するのは当たり前といえる。


 外からでも感じる騒がしさ。俺は宿の扉を開け放った。


 「お帰りなさいませ、ご主人様♪」
 「ただいまラウラちゃん。それ、他の人にやると勘違いされちゃうよ」
 「私はトウヤさんだけのメイドですから、安心してくださいっ!」


 すると、まるで待ち構えていたかのように、ラウラちゃんが俺に頭を下げる。半ば、俺が来ることを確信していたようにすら思える。
 だが、言葉が少しエスカレートしているように思えるのだが。いつから君は俺のメイドになったんだ。


 「やたら騒がしいね。何かやってるの?」
 「はい! 探索者さん達が、祝勝会を兼ねて宴会を開いているんです。トウヤさんも行きましょう!」
 「いや、悪いけど俺はまだやることがあるからね。遠慮しておくよ」


 すると、ラウラちゃんは残念そうに顔を俯かせる。ここで宴会なんかに混ざれば、なかなか抜け出せそうにないからな。悪いけど今回は見送らせてもらおう。


 「そうですか、残念です。主役が来れば皆さん大盛り上がりなのに」
 「主役って……」
 「トウヤさんのこと、皆さん『英雄様』って呼んで慕ってましたよ。今回の主役はトウヤさんしか居ませんっ」


 そう言われると断るのがとても辛いが、それでも仕方ないことだ。
 まぁ、確かに今回はほとんどの人を助けてきた。それでいて、特に容姿も隠していないのだ。噂はすぐに広がるだろう。


 だが、俺に感謝してくれている探索者達に何も反応を示さないのはいささか気が引ける。


 「そうだな……じゃあさ、このお金を宴会の費用に回してくれないかな」
 「え!? ちょ、金貨なんて、トウヤさん宴会に出ないんですよね?」
 「うん。まぁ羽振りがいい方が、何かと印象も良くなるかなって。『英雄の奢りだ』とでも言って好きなだけ頼ませてあげてよ」
 「は、はぁ。まぁ、トウヤさんがそう言うなら」
 「それに、今回は報奨金を沢山貰ったからね。金貨なら数百枚は出せるよ」
 「す、数百枚!?」


 日本円に換算して凡そ数千万。本来なら白金貨数枚だったのだが、使いにくそうなので金貨にバラしてもらった。
 これは王家からではなく探索者ギルドからの、言わばギルドマスターからの報奨金だ。今朝、魔物を殲滅してきてとお願いされた時に、取り敢えずお金を貰うことにしていたから、それと合わせたのだろう。


 「ということで、お願いね」
 「は、はい。分かりました」


 驚きに固まりながらも返事をしたラウラちゃんは、受け取った金貨を置きに行った。
 それにしても、そろそろ金銭感覚が狂ってきたか。地球の方ではどうにか親に預けていたから預金管理が楽だったが、こちらでは預ける先がない。


 まぁ、散財しないように気をつけよう。今回のは必要経費で。




 2階へと上がり、俺の部屋へと戻ってくる。あんなことがあった後だが、ここは相変わらず俺が借りていることになっている。


 鍵は渡されていないが、恐らく中に既に人がいるのだろうなと思いつつ、部屋の扉を開けた。


 「あ、ご主人様!」


 開けて直ぐにパタパタと小走りで近づいてきたのは、ルナだった。ただ、その走りは途中でフラフラとした頼りないものになっていく。


 「おっと、無理はしなくていいよ」
 「わっ、こ、この程度無理にならないって」


 スッと近づいて肩を支えてやると、ルナは弾かれたように離れる。いや、そんなに嫌か?
 と思うのもつかの間、恥ずかしがっているのは明白だった。まぁ普通に考えたら、肩を支えるほど近くにこられたら驚くよな。


 「無理に入るだろ。ルナは昨日まであまり良い環境に居なかったんだから、本来より体力がなくてもおかしくない」
 「そ、それは……まぁそうかもだけど」
 「今はゆっくり休んでおきな」


 そう言いつつ、俺はルナをベッドに座らせる。その隣にはクロエちゃんが居て、ミレディは疲れているのか、また眠っていた。


 「お疲れ様です、トウヤさん」


 ふと、隣から静かに声をかけられた。クロエちゃんはゆったりとした動作で俺に頭を下げる。
 『お帰りなさい』ではなく『お疲れ様』なのは、特に大した意味は無いだろう。もしかしたら、帰ってくるのは当然、と無意識にでも思ってくれていたのかもしれない。


 「まぁ、程々かな。さっき君のお父さんに会ってきたから、それもあって多少はね」
 「っ!? そ、それは、その、えっと……」


 すると、クロエちゃんは反応に困っていた。俺に知られているとは思わなかったのだろう。
 そもそも、俺が言っているのが、本当に自分の父親のことなのかもわからないはずだ。しかし、ここで確認をとる訳にも行かない。
 とはいえ、俺も少しからかってみたかっただけなので、今この場で掘り返すことはしない。


 「冗談だよ。会ったのは本当だし疲れもしてるけど、大したことじゃない」
 「は、はぁ……」


 俺の言葉にどう反応すべきか定まらないのか、曖昧な返事が零れる。


 「それで、大事な話があるってことだったけど」
 「あ、それは……」


 返事が欲しかった訳では無いので、俺はそれを言ったあと、取り敢えず本題を切り出すことにした。
 クロエちゃんが反応を渋る。目はルナ達に向けられていた。


 その話題が出た途端、ルナの目が俺を射抜く。


 「じゃあ隣の部屋を使おうか。今は多分誰もいないだろうからね。鍵取ってくるよ」
 「わ、分かりました」


 大事な話と言うだけあって、緊張するクロエちゃん。俺の言葉とその反応が相まって、ルナの視線が鋭くなる。


 「多分、そういう話じゃないと思うよ」
 「ふん、どうだか」


 気休めにしかならなかったが、まぁ大丈夫だろう。話される内容は何となくわかっているのだから。
 誤解を解くにしては少ない発言数だったが、その少なさが時には幸を成すこともある。


 言葉をつらつらと重ねることは、それだけ必死になっていると捉えることも出来る。それよりは、心に余裕を持って、たった一言で伝えた方がいいと考えている。


 もちろん、場合によりけりではあるが。







「俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く