俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第27話 終わった後







 「第一階級アインス探索者、トウヤよ、前へ」


 重苦しい声が響き、しかし俺は臆さず前へと進んだ。
 礼儀に関しては心得ているため、俺は自然な動作で、セミル王様の前までくる。


 一度戦いをした仲とはいえ、現在は立場的なものがある。俺は下手な態度を取らなかった。


 「トウヤよ、貴殿は此度の騒動において、多大な働きをした。それによって、異例の事態であったにも関わらず、探索者と冒険者から数十人の死者が出ただけに留めた。この功績は、十分に褒め称えるべきことである」
 「お褒めに預かり光栄です、陛下」


 俺は顔を上げずに答える。


 現在は俺とセミルの他に、宰相らしき人物とギルドマスターが居るのみで、意外にも貴族や王妃などはいなかった。
 どうやら、セミルは俺の意図を読み取ってくれたようだ。


 「よって、その功績に報いて、貴殿に褒美を授けようと思うのだが……トウヤよ、褒美として欲しいものはあるか?」
 「お言葉ですが陛下、わたくしはそのようなものは必要と致しません」
 「ほう、王家の褒美では不服と申すか?」


 鋭い眼光が俺の頭上から浴びせられるが、俺はその場で横に首を振る。


 「滅相もございません。ただ、私は褒美を得るために他の者を救った訳では無いのです。故に、褒美を貰う訳にもいかないのです」
 「しかし、街を救った貴殿に何も報いないとなれば、我ら王家の底が知れてしまうというもの。なんでもいい、欲しいものは無いのか?」


 打ち合わせ通り〃〃〃〃〃〃〃の展開に、俺は顔色を変えずに、考える時間すら無しに答える。


 「でしたら、この街の復興に全力を注いでいただきたい。私が望むものは、それで構いません」
 「なんと、己の欲よりも他者の幸福を優先すると申すか!」


 真に迫ったセミルの言葉に、俺は危うく吹き出しかけた。
 そう、これは全て打ち合わせ通りの展開なのだ。俺がこう返すことも、セミルが俺に感心したように示すのも。


 だが、演技がうまいというかなんというか。俺は自然に振る舞うだけだが、セミルはまさに迫真の演技というべきものだった。


 「……相分かった。そなたの望み、このセミル・イグゼ・ルートバーンがしかと聞き届けた。その功績に応え、我ら王家は街の復興に全力を尽くすことを誓おう! ナバル、良いな?」
 「はい。すぐに全騎士を動員し、一刻も早い復興を実現できるよう、尽力致します」
 「ありがたき幸せでございます」


 俺は簡潔に答えた。あまり長い会話では、素が出てしまうという心配をした、のではなく、セミルの対応に少し引き気味だっただけだ。






 「お疲れ様」
 「どうもです。確かに疲れましたね」


 式典、というのだろうか。それが終わり、ポンと俺の肩を叩いたのはギルドマスターだった。


 「緊張はしていなさそうだったけど、やっぱり疲労が溜まってるのかな」
 「まぁ、それもあるのかもしれません。なんだかんだ言って、結構走り回りましたからね」


 純粋に心配してくれているらしいギルドマスターに、俺は肩を回して疲れたというアピールをしながら答えた。


 「……ごめんね、事後処理まで付き合わせてしまって。今回君がした功績は無視できるものじゃなかったからね、形式だけでもやらなきゃ行けなかったんだ」
 「別に気にしてませんよ。というか、ギルドマスターのせいじゃありませんから」
 「そう言ってくれると、助かるよ」


 そう、本当にギルドマスターのせいではない。なんせ今回の事柄は、自身から誘導したことなのだから。
 でなければ、あんな大勢の前で力を見せびらかすような真似はしない。


 「それにしても、この後会議があると思うと、私も胃がキリキリとしてくるなぁ……」
 「頑張ってください。俺はまだまだやらなきゃいけない事がありますから」
 「君が持ってきた情報のせいなんだけどなぁ……ま、今回はほとんどトウヤ君のお陰だし、別にいいけどね」


 ギルドマスターはそう言うと、会議室がある方へと向かっていった。
 俺への誠意を表しているのだろうが、そんなものを受け取らなくても、ギルドマスターがこれ以上ないくらいに俺に感謝しているのは知っている。
 むしろこちらが感謝しなければならないほどだ。そう易々と出しはしないが、ギルドマスターには心から感謝していた。


 さてと、取り敢えずはこっちもこっちで、色々とやることを消化しなくては。ギルドマスターに会議が待っているように、こちらにもやることが残っている。


 俺は一度宿屋へ戻りつつ、さてどれから解消していこうかと考えた。




 ◆◇◆




 一連の騒動に終止符を打った俺は、あの後すぐにギルドに戻り、ギルドマスターに事の顛末を報告をしていた。


 「……迷宮の最深部には魔族がいて、ダンジョンマスターの真似事をしていた、と」
 「えぇ。魔族の目的は、生きたまま勇者を捕らえて、何かの実験だか儀式だかに使用することのようでした。残念ながら、詳細は知れませんでしたが」
 「それは構わないよ。正直言って、魔族側の事情を知るよりも、魔族に対抗できる手段を探す方が急がれる」
 「そうですか。ただ、魔族側は"魂"や"精神"といったところに関して、人間側よりも深く知りえているようです。事実俺が殺した魔族は、一度死んでも復活するという魔法を付与されていました」


 ギルドマスターは、魔族を直に見た事のある唯一の人だ。故に、話すならギルドマスターがいいと思ったが、俺の言葉に声を失ったように、口をあんぐりと開ける。


 「……死んでも復活する? なんの冗談だよ、本当に………そんな魔法が使える相手に、敵うわけないじゃないか」
 「幸い、と言えるかどうかはわかりませんが、どうやら復活魔法を使えて、それを他者へと付与できるのは、魔族の中でも最上位に位置する者ぐらいのようです」


 これも魔族の記憶から知ったことだ。あの男の知識では、そういうこととなっていた。これが間違っていることはあるまい。


 「それでも、確かに魔族全体は魔法に秀でています。俺が戦ったのは、魔族の中でも中位に位置する半端者。ギルドマスターなら倒せるとは思いますが、それでも第一階級アインス探索者程度の実力はあるでしょう」
 「私が以前戦ったのは、恐らく上位の魔族。あんなのがこられたら……あぁもう! 問題は解決したと思ったのに、これじゃあ薮をつついたら蛇がでてきたみたいなものじゃないか!」


 喚くギルドマスターに、俺は近づいてポンポンと肩を叩く。


 「そう悲観しないでください。気休めにしかならないかもしれませんが……もし何かあったら、俺を頼ってくれて構いませんから」
 「え?」


 すると、俺の言葉が意外だったのか、ギルドマスターがポカンと俺を見つめる。


 「……なんですかその顔。俺がこんなことを言うのは意外ですか?」
 「いや、意外というかなんというか………『だったら早く勇者を育成すればいいじゃないですか』とか『俺が悪く聞こえるので止めてくれませんか』とか返されると思ったから」
 「貴女は俺をなんだと思ってるんですか」


 確かに、今までの感じだとそう返しそうな気もするが。


 「今回は流石にやばいと思っただけです。ギルドマスターには色々と迷惑をかけてしまいましたし、それも兼ねてのことですよ」
 「迷惑って、どちらかと言えば私が君に頼ってる方が多いよ」
 「それは気まぐれなので。何でもかんでも引き受けるわけじゃないです」


 俺は結局、本当に受けたくないものは何がなんでも断るのだから。受けたということは、そこまで嫌でもないという事だ。


 「それに、もし新しい魔族が来た時、対抗できますか?」
 「……確証はないね。私が出ればある程度はいけると思うけど」
 「だったら、素直に頷いておけばいいんです」


 俺がそう言うと、ギルドマスターは少し考えたあと、頷いた。


 「じゃあそうするよ。君の力が借りれるのは、何よりも有難いことだ」
 「そう過度な期待はしないでくださいね。俺にもできないことはありますから」


 もちろん、大抵の事はできるだろう。だがそれでも、無理なものは出てくる。


 「そうだね、でもそのうち君はなんでも出来るようになる気がするんだ」
 「冗談はよしてくださいよ」


 だからギルドマスターのそんな言葉も、俺は聞き流した。
 

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