俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

幕間 ストーカー退治





 「こっちとこっち、どっちがいいかしら?」
 「俺はこの水色だな。クールっぽいし、美咲に合ってる」
 「……そう? 私ってそんなクールかしら?」


 あの話のあと、俺と美咲は至って普通に水着選びをしていた。
 もう、俺も美咲も先ほどのことは気にしていない。言わば、現在での結論は出たも同然なのだ。


 "現状維持"。それが今出された結論で、最も安全にこの関係が続けられる策だ。
 俺は樹の恋を応援して、適度に手助けをして、美咲と拓磨が呆れたように見て、叶恵は天然っぷりで気付かない───そんな関係が一番いいのだ。


 「でも私的にはこのエメラルドも捨てがたいのよね……」
 「エメラルドグリーンは落ち着いてるって感じだからな……美咲はクール系と、落ち着いた系だとどっちがいいんだ?」
 「そうね……あまり目立つのも嫌だし、じゃあエメラルドグリーンにしようかしら」


 だから今は〃〃、美咲もさっきの話を蒸し返さない。内に秘めておくだけに留めておくのだ。
 そして俺もまた、気配りができて、たまに冗談を言い、男に対してふざけ、女の子に対して優しくて、ここぞという時に鈍感な『夜栄刀哉』を演じることに専念をする。
 それが最善手だと、俺は思っているから。 


 「なら試着室に行こうか。どうせだから似合ってるか客観的に判断してやるよ」
 「さりげなく促そうとするところが少しアレよね。別にいいけど」


 ジト目を向けてくる美咲をスルーして、叶恵達とは真逆〃〃の方向の試着室へと足を向ける。
 それに関して、美咲は何も言わない。流石にそこまで察することは出来なかったのだろう。俺の何気ない行動の真意に、美咲は気づいていないはずだ。
 俺の場合、自覚があるのがタチが悪いけどな。俺が美咲の立場だったら、流石に俺も気づかないだろうが。


 そして、移動中というか、水着を選んでいる最中もだが、俺と美咲は若干視線を受けていた。
 それもそのはずで、美咲は控えめに見ても美少女だ。同性からも羨むものは出てくるだろうよ。
 それが俺みたいな地味男子と歩いているのだ。まぁ俺もルックスは悪くは無いと思うのだが、拓磨なんかと比べると数段劣るのは否めない。


 なかにはカップルで来ているようなお熱いリア充の彼氏の方が美咲を見ていて、それを彼女が肘で攻撃するという光景が見えるが、リア充は滅ぶべし。
 というか、彼女の方が俺のことを見て、彼氏に肘で攻撃されるのは無いのか? 男は目移りが激しいが、女はそうでもないのだろうか。
 妬ましい、実に妬ましい。


 「じゃあ着替えるから、覗かないでよね」
 「当たり前だろうが。ゆっくり待ってるから、慌てず着替えろ」


 試着室はカーテンではなく扉のついた個室タイプ。美咲は俺に釘をさしてから中へと入るが、心配せずともやるつもりは無い。
 いや、ちょっとだけハプニングを望んだかもしれないが、そこまでじゃない


 中から布が擦れるような音が聞こえ、バサッと何かが落ちる音がする。
 まぁ言わずもがな着替えの音なわけだが、音だけで色々と想像させられるのは何故なのか。相手が美咲だと分かっていても、色々と考えてしまう罠よ。


 少し気恥ずかしくなったので、頭の中で最近お気に入りの歌を歌って待つ。その間にも音は聞こえてきたが、気を紛らわすことには成功したために、そこまで気になることは無かった。




 『い、いいわよ』


 待つこと大体5分ほど。
 曲が歌い終わってしまったので、何となく『美咲が紐縛れなくて手伝って~ってならないかな』と酷くどうでもいいことを考えていると、中から声がかかった。


 女子にしては着替えが早い、と思うようになった俺は、多分手遅れなのだろう。


 どことなく緊張したような声なのは、海でもないのに水着になるからか。だが、良いよと言っているのだから、あまり躊躇っていては逆に困るだろう。
 俺は意を決して、扉を開いた。


 「……」
 「ど、どう? 変じゃない、かしら?」


 扉を開いた先には、まぁ美咲がいる訳だが。
 エメラルドグリーンのホルターネック。決して小さくはない胸が、圧迫されることで恐るべきインパクトを出している。
 巨乳、ではないのだ。そこまでデカい訳では無い。
 だが小さい訳でも無い。美乳よりは大きい気がする。
 一つ言えるのは、素晴らしいということだけ。


 そして、ほっそりとした体が余すことなく表れ、傷一つない白い肌が眩しい……。
 谷間も強調されててグッド。


 脚もスラリとしていて、何時までも見ていられるというか。曲線が良いね。


 ……俺は変態なんでしょうか。


 「あぁ、凄くエ……似合ってるな」
 「そ、そう? ありが───まって、その前なんて言おうとしたの? 『エ』の次はなんて言おうとしたのよ?」
 「いやなに、エクセレントって言おうとしたんだが、場違いかなって思って言い直したんだよ」
 「……まぁいいわ。何はともあれ、褒め言葉として受け取っておく」


 危ない危ない、あやうく本心が漏れるところだった。
 全く隙のない笑みを向けてやると、美咲は俺から悟ることを無駄だと思ったのか、少しジト目でこちらを見てから、これみよがしにため息をついた。


 「じゃあこれで決定か? それとも、この際だし他のも着てみるか?」
 「そうね……ええ、着てみるわ。審査の方よろしくね」
 「おっと、これはまた難しいことを任されたな。まぁ、ご期待に添えるよう頑張らせてもらうよ」
 「同じ言葉はダメよ? ちゃんと、言葉は複数用意して、二言程度ね」


 いや難易度上げてくんな!
 早速、美咲が俺に色々水着を持ってくるよう言ってくるが、俺は早くもため息を吐きそうだった。


 自分から提案しておいてなんだが、要求が厳しすぎるな。


 「……ま、できるだけやってみるかな」


 それでも、最初から諦めることはしない。相手は美咲であるし、先程少し難しい雰囲気にしてしまったこともある。
 ここはせめてもの償いとして、頑張るしかない。


 取り敢えずと複数の水着を用意して、俺は美咲に手渡した。
 選んでいる最中から、言葉を既に考え始めていたので、多少は出来そうだ。


 あとは、美咲の期待に添えるかどうか……。


 俺の腕の見せどころだな。




 ◆◇◆






 その後、水着購入はつつがなく行われ、昼食を食べたあと、明日のことも考えて早めの解散となった。


 「───今日はありがとう。とても楽しかったわ」
 「ありがとね! 良い水着買えたし、良かったよ」
 「こっちこそ、楽しかった。な、樹?」
 「あぁ、勿論。少し大変でもあったが……」


 なるほど、そっちでもこっちと同じようなイベントに合ったのか。


 ちなみに俺は、美咲の難題に応えることが出来たようで、最後は満足そうに、一番最初に着たエメラルドのホルターネックを購入して行った。
 あれは『エロい』と言いかけたのだと美咲も理解していたはずだが、それで良かったのだろうか。


 まぁ、本人が良さそうにしているので、聞きはしなかったが。薮蛇だろうしな。


 「異性と買い物ってあまりしないけど、刀哉君とならいくらでも良さそうね」
 「ちょ、美咲さん俺は?」
 「樹君はオドオドしちゃうでしょ? 周りの目が恥ずかしいわよ」


 美咲が苦笑いしながら告げた内容に、樹がガックリと肩を落とす。
 まぁ、今日はまさにそんな状態だったようだし、反論は出来ないわな。頑張れと心の中で応援しておく。


 「でも、叶恵も楽しめたみたいだし、樹君はもう少し頑張ればいいかもね」
 「……精進させて頂きます」
 「頑張りたまえ。俺を見習えよ?」
 「お前は慣れすぎだ!」


 やっぱ身内に歳の近い女の子がいると慣れるんだよなこういうの。
 変にオドオドしなくて済むのはホント有難い。妹達と叶恵に感謝だ。


 「っと、じゃ、今日はこの辺でな。ゆっくり休んでくれよ。明日は8時に交叉駅に集合で」
 「分かったわ」
 「オッケー」
 「了解だ」
 「樹は楽しみだからって、夜寝れないなんてことにならないようにな」
 「俺は子供か!」


 子供ではあるだろう。未成年という意味で。


 「アハハ、私が寝れないかも」
 「おう、女の子はそれでいいと思う」
 「あっ、てめぇ、手のひら返しやがって!」
 「美咲も楽しみで寝れないのはいいが、隈は作ってこないようになー」
 「……作らないわよ、子供じゃないんだし」


 寝れないことは否定しないらしい。もちろんツッコミは入れないが。




 ◆◇◆




 朝の集合場所は俺ん家だったが、帰りは各自自分の家に帰る。
 家の位置関係上、帰りは必然的に、俺と叶恵で帰ることにはなったが。


 「樹はちゃんと褒められたか?」
 「うん! 刀哉君とは違って顔を赤くするから、面白かった!」
 「いや、樹で遊ぶなよ……」


 俺は、叶恵に違和感のない自然な笑みを向けることが出来ている。
 今更意識しなくても出来ることだ。あんな話があったからとはいえ、動揺を出すほど、未熟じゃない。


 普段通りに、付き合えばいい。


 「はぁー、明日楽しみだなぁー」
 「さっきも言ったが、寝られなくてもいいが、当日寝落ちないようにと、隈作らないようにな」
 「わかってる分かってるー」


 本当に分かっているのか怪しい。が、言っても無駄だろう。
 明日が楽しみというのは理解できるし、叶恵がそういうのを考えず落ち着いて寝れるのは難しいとも理解できる。


 せいぜい、注意しておくのが精一杯だろうな。


 「………ん?」
 「どうしたの?」


 突然怪訝な声を出して後ろを振り返った俺に、叶恵が聞いてくる。
 視界には何も映っていないが、俺にはハッキリと見えていた。


 「いや、なんでもない。さっさと帰るぞ」
 「あ、うん!」


 俺は叶恵を急かして、少し移動を早くする。
 叶恵が置いてかれまいと急ぎ足になったのを確認して、再度違和感の場所へ目を向ける。


 (確証はないが、注意しておくか)


 エオンモールを出てから、ずっと付いてきている人がいる。
 服を毎回変えるという鮮やかな手口をしているが、わからないとでも思っているのだろうか。


 叶恵がストーキングをされたのは、一度や二度のことじゃない。
 ストーカーホイホイと俺が陰で呼んでしまうくらいには割と高頻度でストーキングされている。


 その度に釘を刺しに行かなきゃならない俺の気持ちを誰か考えてくれないものかね。


 背後の人物は結構尾行に慣れているようだ。俺に姿を見せない。
 その時点で犯罪臭漂うが、俺も伊達に幾度となくストーカーを返り討ちにしている訳じゃない。


 ちなみに何で気づいたかと言うと、足音だ。
 反射神経や動体視力がとても良い俺だが、基本的に五感全てがとても鋭いのだ。
 足音なら、数十メートル離れている程度では、消そうとしても聞こえてくる。


 俺達が歩くのにあわせ足音がし、何気なく振り返ると音がなくなる。


 それを繰り返されれば、背後に人がいるということは明白になるのだ。


 それに、何度か俺はスマホで背後を確認している。


 俺はどうやら尾行され慣れているようだが、まぁ防犯対策としてなので犯罪臭はないだろう。
 スマホを見るふりをして、内カメラを作動させて背後を覗き見るのだ。


 すると2回に1回の確率で人影が映るわ。


 ただ、俺が今ここでストーカーを問いたださないのは、まずは本当にストーカーなのか確証がないからだ。
 単純にこっち方面に用があると言われれば、頷かざるを得ない。


 そしてもうひとつ、叶恵にストーカーが居ること悟られないようにする為だ。


 これは絶対だ。自分がストーカーされていたなど怖いだろうから、いつも知らない場所でやっているのだ。
 過保護だって? 仲のいい幼馴染みがストーカー被害に遭いそうになったら、誰だってするはずだ。


 背後に注意しつつ、そいつは結局叶恵の家の前まで来ても、どこかへ行く気配はなかった。
 普通にどこかへ行けば、俺も何もしなかったというのに。


 「じゃ、刀哉君じゃあねー」
 「おう。鍵はしっかり閉めとけよー」
 「今日はお姉ちゃん居るから平気だよ!」
 「念の為だってーの。ストーカーが居たらどうするんだ?」
 「もう、心配性だなぁ。分かったよ」


 冗談っぽく言っておいたが、恐らく叶恵は鍵をちゃんと閉めるだろう。
 そういう習慣を付けさせている、というと語弊があるが、似たようなものか。


 「さてと、じゃあやっておきますか」


 叶恵と別れて、俺は1人そう呟く。


 本当に、明日は楽しい旅行だってのに、直前で面倒くさいことをやってくるな。
 俺の身にもなれっつーの。


 携帯片手に、俺は叶恵の家の周りの道をぐるりと一周して、そいつの背後についた。
 ストーカーとはいっても、今のままではストーカー行為には該当しない。だから、警察に知らせても、あまり意味が無い。
 逆に言えば、ストーカー行為をした瞬間を撮影してしまえば、あとは警察を呼び、万事解決という流れだ。


 俺個人による注意よりも、警察からの注意の方がよっぽど堪えるだろうからな。




 ◆◇◆




 叶恵の家の前での張り込みは意外に長く、直ぐに行動に移さないことから、そいつがストーカー行為に慣れていることは明確となった。
 尾行ではなく、ストーカー行為。
 家の扉や壁に耳をつけ、中の音を聞き出したところでようやく警察を呼べた。何度この場で叩き潰そうと思ったことか。


 「一応アレには結構な注意をしておいたけど……」
 「すいません伽耶かやさん、いつもお手数おかけします」


 最早顔見知りとなっている警察の伽耶さんが、とぼとぼと帰っていくストーカーを指さした。
 それに対し謝罪(お礼ではない)を俺がすると、伽耶さんは大きくため息を吐いた。


 「はぁ~……ホントだよ少年。これで何回目だい?」
 「今回で今年に〃〃〃入って〃〃〃から7回目ぐらいですかね?」
 「あのねぇ、私達も暇じゃないんだけどぉ!?」
 「いや、別にお遊びで呼んでるわけじゃ無いんですが」
 「尚悪い! しかも君は被害者じゃないしさぁ……」


 頭が痛い、というのを表しているのか、額に手を当てる伽耶さんに、俺は一切表情を変えずに続けた。


 「だから毎回証拠をきっちり撮影してから連絡してるんでしょ。門前払いされないように」
 「それがまた拍車をかけて悪いんだって!! 毎回呼び出されるこっちの身にもなってみろ! 私しか来てないんだぞ? この件専門になってるんだ! もうここの常連だよ!」


 んな理不尽な、と思わなくもないが、まぁ言い分としては理解できる。
 どうやらこの街の警察署では、俺から電話があった場合伽耶さんを出動させる定例があるらしい。
 俺があまりにも呼ぶからだろう。そして、門前払いされないのは、毎度の如くしっかり証拠を撮影しているのと、これでストーカーが減れば上々と考えているからか。


 伽耶さんがここに来るのも結構な頻度であり、周りからは『また刀哉が呼んだのか~』みたいな、一種の名物になっている。


 「俺としては知ってる人の方が事情説明とか楽ですし、伽耶さん相手だとすぐ終わるんで」
 「私は今日非番だったんだ! 上司から電話がかかってきた時直ぐに理解したよ、また君がやったと!!」
 「人聞きの悪い。というかあんまし大声出さないでください。俺が悪いみたいになるじゃないですか」
 「君が悪いだろ!」
 「俺悪くないですよ」


 むしろストーカーを一人またマークできて良かったじゃないですか、と言えば更なる言葉が来るだろう。
 俺はそれを言わなかった。理解していたから。


 「はぁ、被害者に事情説明でも聞ければまだ……」
 「本人は全く知らないですから聞いても無駄ですよ」
 「君がすぐ通報しちゃうせいでね!」
 「放置しろって言うんですか?」
 「そうは言わないけど!」


 どっちなんだと内心でツッコミを入れつつ、そろそろ引き上げるかと考えた。


 「伽耶さん、これ以上話してると貴方も疲れるでしょうし、もうお帰りになったらどうですか? 早く休みたいでしょ?」
 「はいはい分かったよ帰りますぅ! 本当に、本当にもう呼ばないでよ!」
 「伽耶さんがこの街にいる潜在的ストーカーを全員捕まえればいけますよ」
 「無理に決まってるでしょ!」


 伽耶さんは疲れてきたのか息を荒らげている。大人の女性が子供に大声を上げているのはなんとも見るに堪えない光景だろうな。


 「伽耶さん、大声出すと余計疲れますよ」
 「誰のせいだと思ってるの!?」
 「もしかして……分からないんですか?」
 「私、君のそういうとこが大っ嫌いだよ!!」
 「そうなんですか。でも、俺は伽耶さんのこと好きですよ?」
 「また君はそうやって大人をからかって───」


 伽耶さんがどこか赤い顔でそう言うのを、俺はスッと距離を詰めて、言葉を遮った。


 「からかってなんかいませんよ。本心です」
 「え、えぇ? ほ、ほんし……いや、だ、騙されないよ?」


 伽耶さんは強がっているのか、俺の言葉に目を逸らしながらもそう答えるが、俺はさらに顔を近づける。
 位置関係によってはキスをしているとも取れるような距離だ。


 「俺、伽耶さんのことが好きです。良ければプライベートでもお付き合い〃〃〃〃〃したいと思ってます」
 「ま、待って、ホントに……わ、私警察官だし……未成年とは……」
 「普段から警察官といれば、ストーカー達を警戒させられますからね」
 「だからそういうのは……え?」


 俺の言葉のニュアンスの違いを感じ取ったのか、伽耶さんは突然疑問の声を上げた。


 「ん? どうしました? あぁ、勘違いさせてしまったかもしれませんが、お付き合いとはそういう意味じゃなくて、単純に仲良くしたいって話ですよ? ここの家の人叶恵と出かける時に、伽耶さんも一緒にいれば、ストーカーも来ないかなと」
 「で、でもだって、私の事好きだって……」
 「はい。事情聴取もすぐに終わりますし、ストーカーへ怒るのも凄い慣れてますし、なんだかんだいって毎回駆けつけてくれるので、俺としては楽にすみますから」
 「……じゃあ、好きっていうのは」
 「警察官として好ましいってことですね」


 1秒、2秒、3秒と、俺が発言してから沈黙の時間が過ぎる。
 わなわなと震える伽耶さんは、どうやら勘違いをしていたことが相当恥ずかしかったのか、顔が真っ赤だ。


 「よいしょっと……んじゃ、俺は帰ります。またストーカーが出たら、その時はよろしくお願いしますね」
 「……ない」
 「ん?」
 「ぜ、絶対もう来ないから!! 君なんか……君なんか、大大大っ嫌いだよッ!!!」


 若干涙目になりながら小学生のようなことを叫んだ伽耶さんは、そのまま車に乱暴に乗り込むと、急発進でこの場を去っていってしまった。


 「………ちとやりすぎたかな」


 その光景に、項を抑えつつ俺は呟いた。あの人はついつい反応が面白くてからかってしまうんだが……。
 叶恵云々の話があった後にこうしてしまうのは、平常心をしっかり保てていると見るか、俺がただの軽い男であると見るか。


 まぁ、取り敢えず今回も無事に終わってよかったなと。2回目は基本的に無いが、もし再犯した場合は俺も容赦はしないので、その時はその時だ。


 とはいっても、叶恵は基本的に誰かがついているから、問題ないとは思う。家では叶恵のお姉さんである桃華さんが居るし。


 それにしても、伽耶さんの反応を見て多少は回復したが、やっぱり割と疲れたな。


 張り込みのせいで今はもう夕方だ。今日はもう大丈夫だろうし、さっさと帰って寝てしまおうか。


 俺は叶恵の家を一度見て、ゆっくりと家へと戻った。




    


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