俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

幕間 水着選び





 「刀哉君に樹君、おっはー!」
 「おっはー叶恵」
 「お、おっはー!」




 少しすればやってきた叶恵。何故その挨拶の仕方なのかの疑問はさておき、普通に俺は対処する。
 つか、樹が動揺しているのは何故なのか。


 「おはよう刀哉君、樹君。今日は付き合わせちゃってごめんなさい」


 続いてそう言ってくるのは、申し訳なさそうな顔をした美咲だ。


 「別に付き合わされたなんて思ってないさ。割と俺達も楽しみにしてたしな」
 「だな」
 「そう言ってもらえると嬉しいわ。ありがとう」


 はにかんだ笑みは悩殺もの。サイドテールがぴょこんと跳ねるのもまた何というか。
 可愛いと素直にいえば、怒られるだろうか?
 今までは確か……怒られたり嬉しがられたりの半々でしたね。良く分からん。


 「じゃあ早速行くか。色々と見たいだろうし、時間は有限だ」
 「うん! 行こうよ!」


 俺が出発を催促すれば、叶恵が隣に並んでくる。元気があるのはいいことだが、些か距離が近いのはいつもの事か。
 友人からの怨嗟の視線はどうにかやり過ごして、意気揚々と俺達はバス停へと向かった




 ◆◇◆




 エオンモール


 様々な店が並ぶこの場所は、当然女子たちのショッピングの標的となることが多い。
 映画にゲーセン、アニメイトなんかもあるから、高校生の男が来ることも多いだろう。


 そして、今回の水着ショッピングの目的地もここである。


 「水着って、どの階に売ってるんだ?」
 「確か2階のあっちの方だった気がするよ」


 広すぎるこの場所では、どこにどの店があるまで正確には把握していない
 ゲーセン、本屋、アニメイト、映画館、食品売り場、金光達と良く行く服屋ぐらいしか分からないからな。それ以外はまず店に入ったことがない。
 流石の叶恵は分かるらしく、指を指してその方向へとズンズン進んでいく。それについて行けば、確かにあった水着売り場。


 「おー、水着売り場なんて来たことないから新鮮だなぁ」
 「え? いつもはどうしてたんだ?」
 「親父のお古ってやつだ。ただいい機会だし、今日は自分の買ってこうと思ってな」


 色とりどりに並ぶ、女性用水着。男性用水着は一つ隣だが、やはり女性用水着の方が目立つのは仕方ないことだろう。
 今までは親父の可もなく不可もなくといった見た目の水着を履いていたんだがな、この際にお気に入りを買っていきたい。


 「叶恵、美咲、取り敢えず俺らササッと選んでくるから、先にそっちも選んでてくれ。こっちは多分すぐ終わるから」
 「わかったわ」
 「うん、分かったよ! ねぇ美咲ちゃん、これなんかどう?」
 「え、これはちょっと露出が……」


 早速とばかりに選び始めた2人を尻目に、俺は樹と男性用水着売り場へ。
 そして早速見つけた樹に似合いそうな水着を手に取って、樹に渡す


 「じゃあ樹はこれな。ホイ」
 「ん? 選んでくれたのか───って、これブーメランじゃねぇかよ!!」
 「静かにしろよ。他のお客さんに迷惑だろ」
 「誰のせいだ、誰の!!」


 うるさいヤツだなぁ。ブーメラン似合うと思うのにな、履いてくれればいいのに。
 さり気なく試着室に目をやれば、樹はジト目で俺を睨んでくる。意図を理解したなら乗ってくれてもいいと思います。
 ため息をつきながら商品を戻す樹。そんなことしたら店員さんに迷惑だろうが、なんて冗談を言いつつ、新たに水着を見つける


 「……お、これなんかいいんじゃないか?」
 「今度はブーメランじゃないだろうな? あ、確かにいいなこれ」


 あったのは、ボードショーツと書かれている水着で、ここにあるのはどうやらブランド物らしい。
 水着の種類なんてブーメランしか分からんが、全体的に見た目がカッコイイので、取り敢えずこれ一択だな。


 「刀哉はどれにする?」
 「柄のことか?」
 「そそ。俺はこの青と水色のボーダーかな」
 「んじゃ俺この黒にワンポイント入ったやつ」
 「黒好きなのか?」
 「割とな」


 何ものにも染まらないただ唯一の色、だから俺は好きだ……なんてセリフは置いといて、なんとなくカッコイイから。
 長袖やら普通の服はともかく、上着なんかは基本黒系統しか着ないからな。流石に今日は明るめの色にしてますが。


 「どれどれ値段は……ちょ、高っ!? 7000ってよ……」
 「あ、ホントだ。高いなぁ。流石ブランド物」
 「俺はちょっと買えないかなぁ……あっちに安くてこれと似たようなのあるし、それでいいか」
 「このぐらいなら奢るけど?」
 「金銭感覚狂いそうなんで遠慮しとく。それに友達に金借りるとか嫌だしな」


 別に遠慮しなくていいのに。そんな貸しに思ったりしないしよ。
 樹は一旦その水着を置いて、少し離れたところにある3000円程度の水着を持ってくる。それだって高校生のお小遣いじゃキツイ気がするが、本人がいいと思っている以上、俺が何か言うことじゃない。


 「試着しなくていいのか?」
 「めんどいからいいや」


 ということで試着することなくそのまま購入することに。
 7000という数字に驚かなくなってきた俺は手遅れかなぁと思いつつ、俺は二人がいる女性用水着売り場へ。


 「あれ、樹来ないの?」
 「いや、いざ目の前にしたら、あそこに男が入るのは勇気がいるなってさ……」


 女性用水着売り場を前に尻込みする樹は、何故か冷や汗を垂らしている。そんなに躊躇することか?
 まぁ確かに男1人で入ったらアレだが、叶恵と美咲がいるんだし、気にする事はないと思うんだが。


 「別に2人の付き添いだから、そんな緊張することねぇだろ」
 「こう、男子禁制の場所っていうの? そんな雰囲気がしちゃってよ。ほら、下着売り場みたいな」
 「そんなに気にすることか? 別に普通だと思うけどな」
 「……お前、普段からそんな場所に行ってるんじゃないだろうな?」
 「付き添いだ付き添い。俺が好き好んで入ってるみたいな言い方はやめてくれ」


 妹とか叶恵とか、女性関連の付き添いで行ったことがあるだけに決まってるだろうに。流石に好き好んで入るほど変態ではない。


 ───ちなみにこの時の俺は、下着売り場に付き添いするということ自体がおかしいのだ、ということに気が付かなかったし、樹もジト目を向けてきただけだった。


 「まぁ慣れだろ慣れ。お前も彼女が出来たら付き合うことになるかもしれないんだから、今のうちに慣れとけよ。おっと、彼女候補が丁度ここに居るのか」
 「黙れよ。そしてあんましそのネタで弄んな」
 「分かってるって」


 軽口を叩きながら女性用水着売り場へ入れば、カラフルな店内にカラフルな水着達。
 競泳用水着やスクール水着もあるが、やっぱりビキニは多いらしい。


 「くそぉ、目に毒だ」
 「目の保養目的はどこいったよ」
 「あのなぁ、普通こんな所に堂々と入れるわけないからな? お前が異常なんだろ。目の保養とか気にする前に、周りの視線を気にするわ」


 ソワソワとして落ち着かない様子の樹は、カラフルな色に惑わされているのか、半ば目を回している状態。
 一体全体何がそんなに気になるというのか。他人の視線なんざ、男だけならまだしも女の連れなら割といるだろうにな。
 ……あ、今は叶恵達とは一緒に居ないのか。


 「さっさと二人を見つけるぞ。地味に広くて探しにくい」
 「あ、一人にしてくなよ! マジでここで一人になるのは俺の精神的に無理!」
 「キモイから離れててくれ」


 辛辣な一言を浴びせつつ、背伸びしたりして店内を見回す。店内には割と女性が───もちろんカップルリア充も───いるから、やっぱりみんな海目的かなと思う。
 そんな中、ようやく二人を発見。そろそろ隣の樹が目を回して気絶しそうだったから見つかってよかった。


 「よし、見つけた。叶恵、美咲」
 「あ、刀哉君」
 「そっちは終わったの?」
 「あぁ。男だし、選ぶ物も少ないからな、迷わなくて済む」


 手に持った買い物袋を見せつつ、俺は2人が見ている水着を伺う。
 樹はようやく一息ついた感じで息を吐いているので、今はそっとしておこう。


 「三角ビキニ……どっちの柄かで迷ってるのか?」
 「迷ってるのは叶恵だけよ。私はどっちかっていうとホルターネックの方がいいから……」


 顔を逸らしつつ答えるのは、気恥ずかしさを覚えているからか。確かに男にそういうのを答えるのは、恥ずかしいという感情があっても仕方ないか。
 にしてもホルターネックね……胸が強調されるとかなんとか。叶恵より大きいんだし、むしろ叶恵がホルターネックの方がいいと思うんだが。
 一方の叶恵は「ムムム」と唸りながら、水色の水玉のビキニとピンクの水玉のビキニを交互に見ている。


 「さっきからこの二つで悩んでるみたいでね……」
 「へぇ……なぁ、樹はどっちがいいと思う?」
 「あ? 俺?」


 俺は仕方なく、落ち着きのない樹に話題を持っていくことに。あの調子だと、いつものように自然な感じで会話に参加することはできなさそうだったからな。


 「うーん、そうだな……俺は叶恵さんなら、ピンクの方が似合うと思う……かな」
 「え? そうかな?」
 「ああ、俺も樹と同じでピンクがいいと思うぞ。水色はクールとかの印象もあるから、お前には似合わん」
 「えぇ!? それ酷くない刀哉君!」
 「まあまあ、それにピンクは優しいとか可愛らしいとかのイメージがあるし、そっちの方が似合うと思ったのも事実だ。多分樹はそう思ったんだろうな。な?」
 「あ、ああ、勿論。叶恵さんのイメージだとピンクがぴったりだから」
 「そ、そうかな……えへへ」


 樹の色に合わせて俺も同意をする。それに加えて、それっぽい理由をあげた後に樹に同意させれば、叶恵も満更でもないように笑う。
 露骨に可愛いとか言うのは人によってはマイナスかもしれないが、叶恵の場合直接言った方が効果が高い。
 だからこそ、それに樹も同意させることで、多少なりとも叶恵の樹への好感度を上げさせるのだ。
 本当なら樹に理由まで直接述べて欲しかったが、このヘタレには無理だと理解していたために、仕方なく俺が言っておいた。


 ちなみに、もし樹が「水色の方がいい」と言っていた場合には、「ピンクが子供っぽく見えるのに対して、水色はこの季節の人気色で、爽やかとか瑞々しいとかのイメージだから、美人に見えて良いんじゃないか?」的な感じで、片方下げてもう片方を相対的に上げるつもりではあった。


 「うーん……うん! じゃあこのピンクにするね!」
 「あぁ、早速試着してこいよ。樹、叶恵に付いていってやれば? 見せる相手がいる方が良いだろうし。俺は美咲の水着探しに付き合うからさ」
 「お、おう! 叶恵さん、行こうか」
 「オッケー!」


 叶恵に試着を促し、最もな理由で樹の動向を提案すれば、樹はわかりやすく反応を示し、笑顔で叶恵について行った。
 試着室へ行く時に、こちらへ振り返った時の笑顔には『ありがとう、マジありがとう!』というような意味が込められていた気がする。


 友人の恋の手助けをするのも一苦労だな。



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