俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第64話 中身が致命的





 やぁ皆さん。俺です。刀哉です。


 背景は知らないけど、取り敢えず在り来りな言葉を言ってみたらなんか泣き付かれちゃって困ってます。
 いや、困ってるという表現はおかしい。俺も最初は雰囲気に流されていたのだから。


 最初は抱き締めたんだよ。泣いてたから、こういう時はって思って。
 んで、こう、安心させるつもりで『大丈夫だよ』って言ったら泣かれちゃって、調子に乗って共感もしてあげたら、もうね……。


 もしこれが、なんの意識もなくペラペラと言葉として出てくるのなら、多分そいつは物語の主人公なんだろう。
 でも俺は、内心では下心があったり、アニメとかでのこういうシーンを連想しで真似たりと、自分で言うのもなんだけどちょっと……いや、かなり中身が残念なんだよなぁ。


 俺もこんなことを考えていて、自分のことだけどとても悲しい。
 でも、調子に乗っていたとはいえ、俺はこの娘───ルナの気持ちをしっかりと汲んでいた。
 そもそも、精神状態からして異常だったのだ。辛い体験をしたのは想像に難くないが、その状態で自分の妹を守ろうとするのに精一杯でいた。
 だからこそ、少しは泣かせて、気持ちを吐露させて、スッキリさせた方がいいと考えた。


 打算ありきだけど、もちろん同情もしてた。魔力を同調させた時に、断片的とはいえ、怪我を負った時の情報が流れ込んできていたので、経緯はともかく、何故怪我をしたのかはわかっていた。
 だからこそ、俺は共感することが出来たのだ。


 まぁ、言ってしまえば月並みで、情報でしか知らない俺は、他人でしかないのだけど。


 「……」
 「……」


 泣き止んではくれたが、今度は無言の時間が苦しい。
 俺も色々と気になっていることがあるから、早いところそれを確認したいのだが、ルナは俺の事をガッシリとホールドしたまま離してくれない。


 年齢13歳。中学1年だ。まだまだ幼いとはいえ、身長は155程ありそう。服装が布1枚と粗末なのなのも相まって、体にダイレクトに感触が伝わってくる。


 それでも相手は歳下で、俺は紳士で、今はそういう思考状態ではないから、変な気分にはならない。
 背徳感というものが無い訳では無いが、シリアスな空気に飲まれたと言っていい。




 だが、さらに時間が経過すると、流石の俺も耐えられなくなってきた。
 それは、気まずいとかそういうもので、俺はポンポンとしがみつくルナの肩を叩いた。


 この娘の精神年齢〃〃〃〃がいくつかを考えると、この状態は少々キツイものがある。早い解放を俺は望んだ。


 幸いにして、ルナは直ぐに反応してくれた。


 「ご、ゴメンなさい……」
 「……いいよ、別に」


 スっと身を引いたルナは、しおらしく俺に謝った。何に対して謝ったのかは分からなかったが、取り敢えず俺は頷いておいた。
 すっかりと髪も体も、一応服も綺麗になったルナの容姿を、俺は改めて見た。もちろんジロジロと見るのではなく、一瞥するのみだ。


 赤色という実にファンタジーな髪に、チョンと跳ねたくせっ毛……って、ここまでしっかりと跳ねてるのって現実で見るのは初めてだな。
 顔は、13歳ということから、俺たち高校生と比べるとやはり幼い。俺が中学の頃はそんなこと思わなかったのになぁと、何となく不思議に思う。
 だが対照的に、目は切れ長の一重で、鋭い印象を受ける。赤髪ということからも活発そうな印象だが、今のしおらしさはむしろ真逆のイメージだった。


 ちなみにルナという名前や13歳というのは[禁忌眼]で得た情報で、もう1人のミレディという娘と姉妹であるのも、それで得た情報である。


 「って、そっちは大丈夫?」
 「あ、ミレディ大丈夫!?」


 俺が思い出すように呟きながらベッドへ目を向けると、ルナもハッとなったようにして駆け寄る。


 ルナと血の繋がった妹であるミレディという娘は、勿論怪我は完全に治っている。
 脚以外も至る所に細かな傷があった(これはルナも同じだ)が、それらも含めて全て治した。
 再生する時に、ついでに服の時間も[時空魔法]で巻き戻してしまったが、必要措置だろう。


 両脚の部分の布は、脚が失くなった際に一緒に持ってかれたようで無かったので、もし服を直さないで脚だけを治した場合、非常に際どい部分まで脚を露出していたと思う。
 それを考えると、俺の選択は正解だったとえよう。


 ───実を言うと、治療の際に身体の情報を魔力から解析しているため、俺は彼女達の肉体を恐らく本人以上に知り尽くしているのだが、気持ち悪がられそうなので言わないでおく。
 まぁ情報として叩き込んでいるだけなので、特に興奮とか背徳感とかそういうのもないです。


 取り敢えずミレディは意識がないだけのようで、俺は安堵の息を吐いた。


 「気を失ってるだけみたいだし、今は寝かせておこうか」
 「あ、は、はひっ……」


 今にもミレディの体を揺らしそうなほど心配しているルナに俺がそっと声をかけると、上擦った声が返ってくる。
 上擦っているのは緊張からだろうし、それを抜けば特に声帯に異常はないようだ。


 ルナがそっとミレディから離れる。俺の言葉をしっかりと聞いたのだろう。


 失った四肢を再生するにあたり、再生時に刺激を与えないように、2人の意識を、本当に気づかない刹那の時間だけ飛ばしていた。
 流石になんの違和感も無く再生するのは今の俺では不可能だ。だからこそ、意識を一瞬だけ失わせ、感覚による刺激などを強制的にシャットさせたのだ。


 もしかしたら、その時に意識がそのまま戻らなくなっているのかもしれない。一種の気絶状態なので、このまま意識が戻らないということは無いから、俺も心配はしていなかった。
 その程度には、俺も自分の実力を信頼していた。


 「さて、少し遅くなったけど、自己紹介といこうか」


 ようやく確認したいことは落ち着き、俺はそわそわとしているルナにそう声をかけた。


 「あ、アタシはルナ、です」
 「うん。俺は夜栄〃〃刀哉〃〃。色々と話さなきゃいけないことがあるから、簡潔に行くよ? あと、敬語はいいかな」
 「やさかとうや……? あ、はいっ」


 恐らくニュアンスを確かめていたのであろう。驚いたような顔をするルナだが、色々と話さなければいけないことがある。


 「早速だけどルナ、俺は日本人なんだ」
 「……え?」


 ルナの反応が遅れる。なにせ、俺は特にもったいぶることなく、サラリとその事実を告げたのだから。
 別に俺は隠すつもりなど一切ないので、まずは本題を一気に切り出すことにした。


 「そして……君は前世の記憶がある、転生者〃〃〃だね?」
 「え!? な、なんで……!?」


 次の発言には、流石にしっかりと驚いた。ルナは目を大きく見開いて、驚愕していた。


 「さて、もう一度言うけど、色々と話さなければいけないことがある。簡潔に行くよ、ルナ」




 ◆◇◆






 この2人を奴隷にした理由の一つ。それが、ルナが転生者〃〃〃であるという事実だ。


 「俺は人のステータスを見ることが出来るスキルを持っている。それは、ステータス以上の、個人の情報もある程度見ることが出来るんだ」
 「……」


 驚いて声が出ていないルナに、しかし待つことも無く俺は次の言葉を続ける。


 「それで君を転生者だと知ったわけだけど、どうやら本当だったようだね」
 「……はい」


 躊躇いがちに頷いたのは、隠していた事実だからだろうか。


 「そして、気づいたかもしれないけど、俺は日本人だ。あ、金髪碧眼コレは変装だから気にしないでね。で、端的に言うと、日本から異世界こっちに召喚されたんだ」
 「それって……勇者としてってこと?」
 「そう」


 どうやら、勇者召喚については知識があるようだ。
 俺は少し饒舌に、話を続けていく。


 「だから転生者である君を放っておけなかった。奴隷にしたのはそんな理由だ」


 それだけという訳では無いが、理由の1つであることは嘘ではない。


 「勿論、日本人だから道徳は弁えてるつもりだ。君を奴隷にしたからと言って、無闇に命令したりはしないし、酷いこともしない。さっきも言ったように、放っておけなかったから奴隷にしただけだから」


 ルナは、今度はしっかりと頷いた。これは、もしかして俺の事を信頼しているのだろうか。
 どこで信頼されたのかは分からなかったが、今聞くことではなかった。
 命の恩人を無条件で信じる人は居るだろうし、ルナもそのタイプということもある。


 「ところで、君は一体何歳で転生したんだ? あぁ、勿論嫌なら答えなくていいけど」
 「……アタシがこっちに来たのは、19の時よ。アルバイト先からの帰りに、白線内を歩いていたにも関わらず、いきなり正面からトラックに跳ねられて……」


 それまた、随分とテンプレな死因だな。
 だが、そんなことはおくびにも出さない。なにせ、本人にとっては衝撃的だったはずだからだ。
 流石にこの思考は失礼を通り越して侮辱している。俺はすぐに隅においやった。


 「うん、もういいよ。ということは、君は俺より歳上な訳か……」
 「……あの、それだと、ご主人様〃〃〃〃はいくつなの?」
 「俺? 俺は17だよ。敬語にした方がいいかな?」
 「17!? え、てっきり成人してるのかと……あ、その、敬語は良いよ。見た目通りで扱って。精神年齢は、この際関係ないと思うし」


 ふぅーんと何気ない返事をしつつ、俺には今のルナの思考が見えていた。
 精神年齢の方を重視してしまうと、前世19+今世13の32歳という扱いになってしまう。
 女性として、それは嫌だったのだろう。それなら、肉体年齢の方が良いと思ったのも簡単に想像がつく。
 現にルナの顔には、冷や汗が一筋垂れている。
 俺も見た目通りの年齢として扱った方が楽なので、あえて見なかったふりをした。


 「……って、別に俺は主従関係なんて気にしないから、『ご主人様』って呼び方は勘弁して欲しいんだけど」
 「あ、ゴメンなさい。その、無意識で……ご主人様じゃ、ダメ? アタシはそっちの方が、しっくりくるし」
 「ダメだ……頼むから、そんな目で見ないで。わかった、別に構わないよ」


 倫理的道徳的に考えて否定をしたのだが、目を潤ませて懇願してくるルナに、俺はそう返すことしか出来なかった。


 子供のお願いを断れないというのは、恐らく見た目に由来するものなのだろうとこの瞬間悟った。


 とはいえ、歳下の子にご主人様と呼ばせるのは色々とダメな気がするのだが……本人が望んでいるのだから否はないか。
 今からでも改めて欲しいとは考えているが。


 奴隷ってあくまで強制されてご主人様と呼ぶようになるものだと思うのだが、どうなのだろうか。普通に生きてたら、ご主人様なんて言葉がすんなりと口から出てこないと思うし。
 前世日本人なら、尚更な。


 凄い失礼なことに、ルナは実は潜在的なドMの気質があるのかと俺は考えたが、勿論言葉に発することは無い。
 前のところでそういうふうに調教されていたのかもしれないが、その可能性は正直考えたくなかった。


 「さて、自己紹介はこのくらいだけど……正直君達を買ったと言っても、何をしたらいいかわからないな」
 「え!? そ、それは流石に酷いと思うの! 役立たず宣言はキツイって!」
 「あぁ、ゴメンゴメン。でも実際ほとんどのことは俺1人で出来るからなぁ」


 自己紹介が終わったので次の話をと思って行ったのだが、予想以上にルナはショックを受けていた。


 しかし、お金は稼げる。料理は作れる。交友関係は問題ない。魔法である程度のことはどうにかなる。
 つまり、嘘偽りなく、ルナ達にやってもらうことが無いのだ。


 「うぅむ、困った。何か特技とかない?」
 「そんな急に言われても……アタシこっちの世界に転生しても、特にチートとか持ってないし……」


 うん、チートねぇ……。


 「………ねぇ、さっきから思ってたんだけど、もしかしてルナは異世界物の小説を読んだりしてたの?」
 「え? あ、うんそうそう! アタシ、隠れオタクってやつだったから」


 ルナは一瞬焦ったような顔をして、だが直ぐにうんうんと頷いた。
 隠れオタクということは、周りにはそういう趣味を隠していたのだろうし、ズバリと言われたのが嫌だったのか。


 開き直ったのは、ここがそういう世界だからだろうか。


 「チートとか異世界とかそういう言葉がすんなりと出てからもしかしてと思ったけど……まぁ、女の子もそういうの読むよね」
 「そうなの。だから、別に変ってわけじゃ、ないよ?」


 言い聞かせるように言うルナは、少し恥ずかしそうだ。ただ、俺からしたら俺もそういう趣味を持っているのであって、仲間意識はある。
 同じ趣味を持つ異性って言うのは、結構心地がよかったりするものだから。


 俗に言うイキリオタクとかだと、自分の知ってる話になった途端捲し立てるように喋る奴が多いから、そこだけは気をつけたいな。
 隠れオタクである以上、ルナがそういう性格だとは思わないけど……もしそうなった時は、やんわりと指摘してあげるか。


 少し、俺の中でルナへの仲間意識が高まった瞬間である。





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