俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第60話 奴隷商店





 夜菜ちゃんとの訓練は終了(言わずもがな飛鳥ちゃんと似たような結果になった)し、本人は魔法が上達したことにとても喜んでいた。
 それはもう、女子高生特有の騒ぎ方で、喜んでいた。


 その後、門真君にも魔法を教えてあげようかと思ったのだが、どちらかと言うと近接戦闘の方を鍛えて欲しいと言われたので、本人が言うならと門真君の訓練に付き合った。
 あの夜菜ちゃんの成長ぶりを見てなお、近接戦闘の方を鍛えるというのは凄いと思う。どうやら、もう少し技術的にレベルアップしたいようで。


 ただ、そこら辺は口で教えてもわからないと思うので、門真君には俺と戦ってもらって、感覚で理解してもらうことにしたのだ。


 技巧派の俺と剣を合わせていれば、自然と上手くなるかなと思ったのだ。
 そこに口を挟みつつ行えば、剣術は初めよりは全然良くなっていた。


 元々門真君は、自分自身が気にしているほど、剣の扱いは悪くなかった。黒澤君が力、天貝君が技術、京極君が速さなら、門真君はそれらをバランスよく兼ね備えていたのだ。
 勿論パラメータの違いもあるだろうが、それを踏まえてみても、門真君はその三つの要素を持っている。


 俺が戦うまでもなかったかな、と、感心の笑を零したのもその時だ。
 本人が苦い顔をしていたのは、成長を実感できなかったからではなく、その逆で、成長を実感できたにも関わらず、俺に一太刀も入れることが出来なかったからだろう。
 そろそろ割り切ってもいい頃合いだと思うが、そこは高校一年生、難しいところなのかな。


 たかが一年しか違わない俺に言われたくはないだろうけど。


 京極君は多少魔法の訓練に興味があったようだが、門真君が近接の訓練をやったからか、京極君も俺との模擬戦を選んだ。
 ただ、京極君は魔法も含めた戦闘だ。基本闇系統の魔法が得意なようだが、やはり影に忍んでからの奇襲を得意とする。


 それだけだと対処は容易だが、京極君はその前に『常闇の城ミッドナイト・プロヴィンス』という魔法を使用してくるので、難度が一気に上昇する。
 魔法範囲内にいる対象の五感全てを封じ、更に光を一切通さない空間を作りあげるこの魔法は、前に俺も使ったことがある。


 京都君の場合は、良くて数メートル程の範囲が限度だが、使われてみるとこの魔法のやっかいさがわかる。


 光は見えず、音は聞こえず、匂いは無く、味は感じず、触覚や痛覚はない。
 更に、範囲内は光が届かない闇なので、影の中を移動する京極君にとっては絶好のフィールドで、まさに四方八方から攻撃される可能性があるのだ。


 その状態だと、流石の俺も魔法無しじゃ厳しいものがあった。足の感覚もないから、立っているのかすら分からず、浮遊感のようなものを錯覚していた。


 それでも俺が一撃も食らうことなく出来たのは、ほとんどが直感で、後は京極君の思考をかろうじて読んだこと、そして『常闇の城』の発動時間が短かったからだな。
 いくらなんでも、感覚が遮断された状態では、さしもの俺もキツかったのだ。


 それでも無傷でいたのだから、京極君が俺に化け物を見るような目を向けるのも理解できた。


 黒澤君と天貝君も似たようなものなのでここでは詳細は省く。俺と試合形式での訓練をすると、成長するのはどうしても対人戦での駆け引きと武器の扱いに偏ってしまうが、レベルアップや魔物との戦闘は迷宮で行うのだから気にしない方針でいくことにした。


 「んじゃお疲れー。明日も似たような訓練で行くからそのつもりでね」
 「明日もこれか……」
 「憂鬱になるな……」


 にこやかに俺がそう告げるが、門真君と京極君はテンションだだ下がり。いや、演技だとは思うのだが、そうもこれ見よがしにため息を吐かれると俺も悲しくなる。


 「ま、まぁほら、俺は色々と特別だし、気にしないの気にしないの」
 「それで割り切れるほど大人じゃないです」


 フォローしてあげるも、ムスッと言い返されてしまう。それを言われると俺も返す言葉がないが、これから先割り切るということを覚えないと苦労するぞ。
 年齢はほぼ変わらない俺からのアドバイスだ。




 ◆◇◆






 門真君達を帰らせた後、俺は久しぶりにこの場所に来ていた。


 「いらっしゃいませ───おや?」
 「お久しぶりです、ハルマンさん」


 そう、俺はハルマンさんの奴隷商店に来ていたのだ。


 「これはこれはトウヤ君……いえ、トウヤ様。お久しぶりでごさいます」
 「えぇ、そろそろ新しい奴隷が来たかなと思いまして、足を運ばせてもらいました」
 「おお、それなら丁度ですよ。ささ、ここで話すのもなんですし、こちらへ」


 ハルマンさんの反応だと、どうやら本当に新しい奴隷が入ってきているようだ。
 奴隷奴隷言うとアレだが、他に呼び方がないので仕方ない。


 ハルマンさんが俺を応接室に案内してくれる。久しぶりとは言っても一週間と少し程度なので、この応接室も思い出すようなものでは無い。
 一つ違うのは、傍にもう一人従業員がいるくらいか。


 「それで、今回はどのような奴隷をお求めですか?」
 「取り敢えず、新しく入ってきたのを全員見せてくれませんか? それで決めます」
 「かしこまりました。ノルン、新しく入った奴隷を全員連れてきてくれ」
 「はい、ただいま」


 ハルマンさんがそばにいた従業員に声をかけると、ノルンと呼ばれた人はうやうやしく俺に頭を下げて、応接室から出ていった。


 「さて……奴隷が来るまでの間、少しお話でもいかがですか?」


 それと同じくして、ハルマンさんが俺の目の前に飲み物を置いた。中身は何かわからないが、匂いからしてお茶系統か。
 断る理由もないので、俺は軽快に頷いてみせた。


 「ありがとうございます。実は、先程から気になっていたのですが、そのお姿はどうたのですか?」
 「姿……?」


 俺は初っ端から言葉に詰まってしまった。一度首をかしげてから、俺は直ぐに気がついた。
 [偽装]をかけたままで、金髪碧眼であったことに。


 「あぁ、これですか。どこから説明したらいいものか……ハルマンさん、勇者について話は聞いていますか?」
 「はい、この国の勇者限定ですが、ある程度は。最近は迷宮で力をつけているのだとか」
 「実は、俺は第一階級アインス探索者の刀哉として、勇者の育成係に選ばれているんですよ」


 俺がそう言うと、ハルマンさんが自分のコップを口に運ぶ動作を途中で止めた。


 「……いやはやなるほど、まさか、この僅かな期間で、既にそこまででいらっしゃったとは」
 「あれ、思っていたより驚かないんですね」


 だが動作に出たのはそれだけで、少しの間とともに、ハルマンさんは深く頷いて見せた。


 「初めて会った時から、貴方が只者ではないことは分かっていましたから。考えてみれば、あのような高度な回復魔法を使えて、一瞬で盗賊を倒してみせるのだから、納得するしかありません」
 「そんなものなのですか」


 少し面白くなく感じたが、予め俺の強さの一端を目の当たりのしていたハルマンさんだからこそだろう。
 それに、大袈裟に驚かれるよりは、そっちの方が信頼されている感じはするしな。考えようによるだろう。


 「ということは、トウヤ様は今伯爵と同等の地位を得ているということですか……」
 「そう言えばそんな話もありましたね。貴族扱いされるって聞いただけで、具体的には知りませんでしたが……」


 伯爵は王族を除いて上から三番目。微妙なところだが、無いよりはマシか。


 「あ、別に俺の事は貴族扱いじゃなくて構いませんよ。どちらかと言うと、友人のような接し方でお願いします」
 「いえ、私にとってはトウヤ様は友人ではなく、命の恩人ですから。優先度は更に上ですよ」


 ハッハッハと笑うハルマンさんは、気さくで、安心して付き合える仲だよな、ホント。
 ただ、恩人ではなく友人の方が俺的にはいいのだが、そこは本人の意思が許さないだろうなと。
 もう少し馴れ馴れしくてもいいんだけど、俺から言うのもあれだし、今以上に打ち解けるにはまだ時間が必要か。





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