俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第49話 山積みの課題



 時間も時間なので、区切りのいいところで訓練を切り上げさせた俺は、グラの方の様子も見て、何事もなく帰ってきることを確認した。
 どうやら今日はここまでのようだ。


 「なんか学生生活みたいだな」
 「あぁ、分かるかもしれない。何となく訓練を強いられているところが学生って感じだ」
 「そんなつもりは無いんだけどな……」


 門真君と京極君が話している内容に、少し申し訳ない気持ちを抱く。体育の授業に出ているような気分なのだろうか。
 となると、今の俺の立場は体育の先生ということなのだが、果てさて俺は先生として出来ているのか。


 「そういえばトウヤさんってやっぱりおかしいよな」
 「それは言うまでもなくわかっていたことだ。幹からギルドマスターのステータスを聞いた時は驚いたが、そのギルドマスターが手も足も出なかったんだもんな……」


 んんっ! なんか重大な情報が聞こえてきたぞ?
 言うまでもなく門真君、もしや[鑑定]持ちか? 俺は今離れているから、本人達は聞こえていないと思っているようだが、油断していたのだろうか。


 「ならトウヤさんのステータスはどんななんだ?」
 「トウヤさんのステータスは覗けないんだよ。[鑑定]が機能しないっていうか、発動すらしてくれない」
 「……なぁ、やっぱりトウヤさんってさ」
 「言わずともわかる。まぁ、多分みんな分かってるだろ。それよりギルド前に行こうぜ。そろそろ帰ってくるだろうし、寛二達を迎えに行こう」
 「了解だ」


 ……なんか聞かなかった方が良かったかも知れんな。あれ絶対気づいてるよなぁ。
 訓練場から出ていった門真君達を遠くから見送った俺は、目に手を当てた。敢えて分かるように誘導したのは俺だが、ああいう反応されると少し困る。


 もう少し内に秘めてろよ。仲間内で話すのは構わないが、頼むから本人に聞こえないところで話してくれないかな。


 それと、[鑑定]が機能しなかったって言うのも少し気になるなぁ。俺は確かにステータスに[偽装]をかけているし、ギルドマスターもステータスを見れなかったと言っていたが、発動しないとは言っていなかったし。
 偽装ステータスを覗かれるならまだしも、鑑定が効かないとかになったら、明らかに異常だって気づかれるだろうよ。


 「うーん、やること山積みだな……」


 クロエちゃんの件、御門ちゃんの件、樹達やあっちの勇者達の件、ルサイアの件、魔王の件。
 他にも、問題という訳では無いが、迷宮についてや、結局やっていない[錬金術]やその他生産系なんかもある。


 特に、ギルドマスターから魔王について話を聞いたが、これは早急に動きたいところだ。
 だが、流石に勇者達の訓練を二日目で抜け出すわけにも行かないし、後少しは待たねばなるまい。


 魔王関連は俺も少し心配だし、今よりもレベルを上げる必要がある。
 御門ちゃんについても早い所対応しておかなければならない。


 う~む……。


 『プルプルッ!』


 ふと、そうやって悩んでいると何故か久しぶりに感じるヒンヤリとした感触が足元から伝わってきた。
 既にわかっていたことだが、どうやらグラが帰ってきたようだ。護衛の任務は終わりと判断して、戻ってきたのだろう。


 「お疲れ様だ。今日は色々食わせてやるからな」
 『プル!』


 ヒンヤリとした体を撫でながらそう労うと、グラは嬉しそうに揺れた。
 そして、やはり焦らずゆっくりと進めていくしかないと結論も出た。グラが来たおかげで考えがまとまったというか、思考の沼から抜け出せたようだ。


 「御門ちゃん達は……門真君達と合流したのか。よし、じゃあ俺達も一旦帰りますか」
 『プル』


 そう言うと、了承の意を込めてなのか俺の体に張り付くグラ。何となくこの感覚が落ち着くようになった俺は、少しダメになってきているのかもしれない。




 ◆◇◆




 帰る、とは言ったものの、先程別れたばかりでまた門真君達と再開するのも気まずい。
 俺は少し時間を空けてから宿へと帰った。気にしすぎだとは思うが、仕方ないのだ。


 「いらっしゃいませお客様っ!」


 いつもより聞こえてくる声が多いなと思いつつ、宿に入った俺をそう言って迎えくれたのはラウラちゃん……ではなかった。


 「あれ、クロエちゃん……だよね?」
 「あ、えっと……トウヤさん、でしたよね? お帰りなさいませ」


 何やら頑張って声を上げていたのは、朝全然起きないからラウラちゃんに任せて行った、クロエちゃんであった。
 俺の名前を思い出すのに間があったのは、まぁ置いておこう。俺は[完全記憶]と[瞬間連想]があるから忘れないしすぐに思いつくが、ラウラちゃんは違うのだから。
 別に悲しいわけじゃないから。うん。


 「あ、あの……朝は部屋を占領しちゃってすみませんでした。その、私、昨日は疲れてて……」
 「あ、うん大丈夫大丈夫。昨日は遅かったし、今日も別に部屋を使う予定もなかったしね」


 俺を見た途端、喜ぶというよりも、罪悪感からかしょぼんとしてしまったクロエちゃんを慌てて俺はフォローする。この娘もこの娘で大変だなぁ……


 「それより、なんで従業員の仕事を?」
 「あ、これはラウラちゃんに勧められたんです。私、お金を持ってなくて、でもトウヤさんに負担をかけられないのでって相談したら、『従業員として働いてくれれば、タダで泊まっていい』って言われて」
 「なるほど、やるなぁ」


 ラウラちゃん、昨日は少しトゲトゲしてたけど、意外と面倒見がいいらしい。まさか仕事と寝床を提供してあげるとは、なかなか太っ腹だ。
 だがクロエちゃんを従業員にしたのは正解だと思う。今はローブは着てなくて、ラウラちゃんと同じ従業員の制服で、普通に顔も出しているからね。
 要は、美少女が二人いることで集客効果がある。それも飛び切りの。


 「あ、でも部屋は相変わらず満室で、結局今日もトウヤさんの部屋になってしまうんですけど……ご、ご迷惑はおかけしませんのでっ!」
 「そんな畏まらなくても……昨日助けた時点で元々面倒みるつもりではあったから、そんな気にしなくていいよ」


 ……本当は嘘です。女の子だから助けただけです。


 「あ、ありがとうございますっ。その、私は暫くここに滞在させてもらうので、宜しくお願いしますっ!」
 「うん、こちらこそ宜しくね。早速だけど、ご飯を食べたいから席に案内してくれるかな」
 「はいっ、こちらへどうぞ」


 意外にハマっている様子で、クロエちゃんは俺を食堂の空いている席まで連れていってくれた。
 そこは相変わらずの俺の定位置となっている席なのだが……毎回空いていることに関しては突っ込んではいけないと思っているため、聞くに聞けない。


 「では、私は受付の方があるので……」
 「うん、ありがとう」


 すっかり板についている仕草で一礼したクロエちゃんは、食堂から出ていった。
 にしても、中々この状況を楽しんでいるようで良かった。後は厄介事を持ち込まずに居てくれれば最高だ。
 具体的に何が最高なのかについては言及しないでおくけど。




 ◆◇◆






 夕食を摂って、少し部屋で休憩した後、俺は外に出た。
 言わずもがな、迷宮である。


 「こんばんわ。お勤め……ご苦労様です」
 「感謝する……っ、貴方でしたかっ」


 この人、お堅いなぁと思ったら、俺の顔を見て驚く騎士さん。
 昨日もこんな感じだったけど、毎回何に驚いているんだ?
 顔を見たら意外な人だったー、的な感じだろうか。


 「きょ、許可証の提示を」
 「はい」


 少し強ばった声で言ってくる騎士さんに、俺は自身の探索者カードを見せる。
 騎士さんは丁寧にカードを受け取ると、すぐに返してくれる。


 「くれぐれも、ご無理のなさらぬよう」
 「ありがとうございます。大丈夫ですよ」


 自分より明らかに年上の人に敬語のようなものを使われてむず痒い思いをした俺は、礼を告げ、足早に迷宮の内部へと進んで行った。





「俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く