俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第41話 隠蔽



 「はぁ、はぁ」


 息遣いが自然と荒くなる。動悸が激しくなり、ガンガンと頭痛がする。
 咄嗟に御門ちゃんから手は離したけど、代わりに襲ってくるのは酷い体調不良。体は倦怠感に支配され、各所が痛む。


 「はぁ、はぁ。くそっ、何やってんだよ俺は」


 今更になって、自身の行いを自覚することができた。なにかに操られていたかのように行動していたのが信じられなかった。
 少なくとも、俺の意識は途中からおかしかった。まるで夢でも見ていたかのような、自分自身を見ているような、おかしな三人称視点。


 先程急に正気に戻ったのは、最後の理性が反発したからだろうか。


 「欲に支配されるとか……危なすぎんだろ」


 一旦御門ちゃんと距離をとって、俺は頭を抱えながらつぶやく。
 今まではラッキースケベだったからいい。ようは不可抗力で、自発的ではなかった。
 だが今回は、傍から見たら疑いようもない痴漢行為だ。少なくとも、やっていいことではない。


 それも相手は御門ちゃん。今までだって、ムラムラしなかったと言えば嘘になるが、実行に移したことはない。
 それが、本人が意識をなくして周りの目が無くなった途端にこれだ。しかも厄介なのは、自分の意思ではなく、ほぼ本能的なものだったということ。
 だが、俺はそこまで短絡的ではなかったはずなのだ。


 「……欠如のスキルが発動したのか」


 思いつく要因としては、それだろう。[倫理観欠如]と[道徳観欠如]。それが理性の箍を外し、行動へと発展した可能性も否めない。
 ただ問題は、そのスキルが俺の理性を削り、意識を奪い、思考に影響してくることだ。意識がない時になにかすれば、それは結局は俺の責任だ。おちおち外も出歩けなくなる。


 もし俺があそこで正気を取り戻さなかった場合、俺はどこまで・・・・行ってしまっていただろうか。
 それを考えると、笑い事では済まないのだ。御門ちゃんの好意が本物だとしても、それでは結局ただの強姦レイプに過ぎない。言うまでもなく犯罪行為で、許されないことだ。


 そしたら俺は晴れて犯罪者。少なくとも周囲の人物からの視線は厳しくなるだろう。


 それに、そんなことをしてしまえば、叶恵達が絶対に悲しむ。まだそちら・・・の件も完全には方がついていないのだから、厄介事は持ち込みたくない。
 御門ちゃん本人も悲しむだろうし、嫌なことだらけだ。


 それを避けるためにも、本格的に対処法が必要になってきた。


 「くっそ勘弁してくれよっ」


 ダンッ! と1度壁を殴る。対処法など、考えつかないのだ。スキルが発動した自覚すらなく、今だって本当に欠如系スキルが発動したのかわかっていない。
 そんな状態で、更にスキルの封印も不可能。発動条件は完全ランダム。発動した結果も分からず、警戒してても恐らく関係ない……


 対処のしようがない。


 「……今は問題を先送りにするしかないか。出来ることといえば、この状態のことを皆に伝えることだけど……」


 しかし俺は、いやと首を振る。もしそうなれば、俺は皆から避けられてしまうのは必然だろう。
 それは嫌だ。今の関係は何が何でも維持をしたい。孤独に耐えられる自信など、今の俺には無いのだ。
 ならば隠し通しながらも、どうにか俺がこのスキルの制御、もしくは封印でもなんでもいい、対処法を見つけるしかないのだ。
 それに、僅か10日程の付き合いなのだ。それが過ぎれば、俺はまた自由に動き出す。それまでの辛抱だ。


 チラッ、と横目で御門ちゃんを見る。今は特に何も感じない。やはり先ほどが異常だったのだろう。
 御門ちゃんには済まないことをした。本当に、手遅れになる前で良かったと思う。


 「さてと……平常心平常心……」


 一旦、心を落ち着かせようと、俺は思考をリセットする。
 ただの先送りでも、少しは気が楽になるというものだ。それに、現状では対処しようがないというのも本当のこと。
 自分の意識に干渉する魔法は作れない訳では無いだろうが、スキルの発動が自覚できないのだから、魔法の発動も難しい。
 [条件発動]もあるが、あれは限定されすぎていて、ある一定の事柄意外では対応出来ないのだ。
 打つ手なし……この結論が変わることは無いな。


 だが状況を整理したことで、幾らか思考はまとまり、体調も治ってきたように思える。


 「ん~……むにゃ……」


 ふと、御門ちゃんが身動ぎをすると同時に声が漏れているのに気がついた。息遣いからしても、もう少しで起きそうな雰囲気だ。
 そして俺の予想は外れず、御門ちゃんは手を顔のあたりに持ってくると、ゴシゴシと擦り、そして上体を持ち上げた。


 「んむぅ~……あれ、私、どうして……?」
 「おはよう、御門さん」


 寝起きで状況を把握できていないらしい御門ちゃんに、俺は平然として隣から声をかけた。
 今の時間帯では『おはよう』ではなく『こんにちは』だが、目が覚めた時の挨拶は『おはよう』だと思うのだ。


 「あ、トウヤさん……もしかして私、寝ちゃってました?」
 「うん、そんな感じ。訓練で魔力を使い果たしたみたいだからね……一応、回復はさせておいたよ」
 「そう、なんですか……ありがとうござ───ッ!?」


 途端、御門ちゃんがブワッと顔を真っ赤にして、何故か腕を股の間に持っていった。
 どちらかと言うと、『寝てる間に私のエッチな声聞いたんじゃ!?』みたいなことを言われると思っていたので、この反応は予想外というか。
 状況が理解できないです。


 「御門さん、どうした───」
 「~~~っ! なな、何でもないですからっ! だから、だからちょっと待ってくださいっ!」


 いや、別に何も急かしてはいないのだけど……
 そう思うも、その必死の形相に俺は何も言えず、ただ頷くことにした。


 「……ど、どうし……れてるの……?」


 何かボソボソと言っているが、肝心の部分は聞き取れない。
 いやまぁ自分から聞かないようにしているんですが。小声で言っている以上聞かれたくないことなのだろうし、俺も変に聞いて嫌な思いはしたくないからな。
 御門ちゃんは呟きながら何度か目を下辺りにやり、その後俺の方を見てまた顔を赤くし、何かに耐えているような顔をする。


 「……エッチ」
 「いやまぁ確かに魔力の回復はしたけど、あまり声は出てなかったよ?」
 「……そーですか」


 なんだろう、どうやら御門ちゃんの中で何かと俺が結びついたようだ。エロ方面で。
 サラリと嘘をつくも、全く信用していない様子の御門ちゃん。もはや通用しなくなってきているし、あまり見栄を張る必要も無いのかもしれないな。


 「今飛鳥さん達がクエストを受注しに行ってるよ。もう少しで門真君達も帰ってくるから、そしたら迷宮に行っておいで」
 「……その前に、少し宿に寄って行きたいんですけど」
 「そこは飛鳥さん達と話し合いなよ」


 パーティーメンバーにしっかりと話して移動すべきだ。チームワークやコミュニケーションは大事だよなぁ。
 一体さっきと言い、どうしたのか気になるものだが、本人が言わない以上気にはしない。
 別に言わないということは大したことじゃないだろうしな。どうしても知りたくなったら探りを入れたりすればいいし。
 探偵の真似事は好きだけど、精度は知らん!


 「私が寝てる間、変なことしてませんか?」
 「してないしてない。ホントだから」
 「……エッチなことしようとしましたか?」
 「………」
 「目を合わせてくださいよ、トウヤさん」
 「嫌だね」


 ぐいっと顔を近づけてくる御門ちゃんから精一杯視線をそらす。
 最終的に未遂ですんだが、エロいことをしようとしたのは事実ですはい。


 「まさか本当になにかしようとしたんじゃ───」
 「安心して、俺は何もしてないから」
 「なにかしようと考えはしたんですね!」
 「ソンナワケナイダロ」
 「トウヤさん、せめてカタコトではなく普通に言ってくださいよ! 私になにしようとしたんですか!?」


 最大限の誤魔化しは一切通用しない。何しようとしたって、ねぇ。


 「ノーコメントで」
 「それはやっぱり何かある時の言葉ですから!」
 「黙秘権を行使する!」
 「ふざけないで下さい!」


 なんだろう、このやりとり楽しいわ。しょうもない事だからかな。
 言ってることは痴漢行為の確認作業だけども。


 「……エロいことをしようとはした。だけど未遂だから安心して」
 「未遂でもダメですよ! もう、本当に、やめてくださいね。……そういうのは、しっかりと面向かって言ってくれれば……」


 うん、正直に話したのは我ながら英断だとは思うけど、後半の言葉の真偽を俺はしっかりとしたいんだが?
 俺的女の子に言わせたいランキングの上位にくい込む言葉をこうもナチュラルに発言してくるとは……やはり御門ちゃん恐るべし!



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