俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第40話 デザイア





 「も……もう、無理……れす……」
 「おっと……お疲れ様。よく粘りました」


 もはや足もとすら覚束無い御門ちゃんは、それだけ声を出すと、剣を手放し、倒れそうになる。
 それを寸でのところで支えてあげて、多分もう聞こえてないだろうけど、一応労う言葉を耳元で言ってあげる。
 自然と顔が綻び優しい声音になるのは、こんなになるまで頑張っている姿に感化されたからか。
 俺の腕が御門ちゃんの胸の部分にあるのは、俺の欲求からか。『ふよん』とした柔らかい感触が腕に伝わり、その感触から「これは、Bカップ!」と変な事を考えているのは、煩悩からか。
 御門ちゃんの意識が無くなってて本当に良かったと思う。いろんな意味で。


 そんな思考をよそに、俺は訓練中ずっとかけていた『幻影領域イリュージョンフィールド』を解除する。『ミラー』でも問題ないのだが、広範囲にやるならこちらの方が楽だ。
 魔力消費は、俺にとっては誤差みたいなもんだしな。なら効率がいい方を選ぶものだ。


 魔法を消すと、既に回復した様子の陽乃ちゃんが真っ先に気づくも、走る体力はないのかゆっくりと歩いてこちらに来る。
 続いて飛鳥ちゃんと雫ちゃんも気づくき、よってくる。飛鳥ちゃんは御門ちゃんの事が心配なのか、顔色を変えて走って寄ってくる。
 ちかみに野村君は自主練に没頭しているようだが、今はありがたい。


 「紫希ちゃん大丈夫!?」
 「紫希ちゃん!」
 「安心して、疲れてるのと魔力の使いすぎで気絶してるだけ」


 駆け寄ってきた飛鳥ちゃんと、少し遠くから陽乃ちゃんが心配そうに叫ぶが、やんわりと状況説明。


 御門ちゃんの体には無数の切り傷があるが、どれも致命傷には程遠い。
 なお、服の破け方は意図的ではありません。下着が見えるのも全て偶然なのです。それに対し興奮することも……あまり無い!


 魔力に関しては、後半からは油断なしというか本気モードというか、まさにそんな感じで絶え間なく魔法を使用してきたのだ。複数無詠唱は相手に回すと実に厄介で、1度に複数の場所に何の合図もなく魔法が発動されるのだ。
 少しでも離れていると、魔力で覆った手で弾き飛ばすという荒業は使えない。あれは時間との勝負で、魔力が発生してから魔法になるまでの一瞬の間に触れなければならない。今のパラメータや身体能力では、流石に無理がある。
 一応、俺の魔力を御門ちゃんの魔力と同調させて、その魔力で一定範囲内を埋め尽くすという、ほぼチートのような技も使えないことは無い。魔力の性質上、俺の魔力の質を上回らない限りはその中では御門ちゃんは一切魔法を発動できないような感じで。
 まぁ、言うまでもなく勝負にならないので封印してたけど。


 「魔力を回復させてあげたいから、ちょっとあそこまで連れてくね」
 「あ、私が運びますよ」
 「いいよいいよ、元はと言えば俺がやりすぎたのが悪いんだしね」


 申し出る飛鳥ちゃんに、俺はやんわりと断りを入れて御門ちゃんを背負う。腕に伝わる柔らかい感触が消えてしまうが、今は致し方ないことだ。
 それに、今度は代わりに背中にその感触が伝わってくるからな! いや、役得役得。


 「……」


 なんだ雫ちゃん、何で俺のことをジト目で見るんだ!
 言っておくけど、不可抗力だからね? 仕方ないことなのです。


 「トウヤさん、この後は幹君達のことも見るんですか?」
 「ん? あぁ、帰ってきたらね。正直門真君とかは教えることあんまりないんだけど……」
 「そうなんですか……そう言えば、何でトウヤさんは訓練中幻影をかけてたんですか?」
 「あ、気づいた?」
 「正直わからなかったですけど、魔法が解けた瞬間を見てたので」


 あぁなるほど。もし俺の魔法に普通に気づいていたらビックリしていたところだ。スキル無しとはいえ、『幻影領域イリュージョンフィールド』は結構本気で隠蔽していた。というのも、訓練中に意識が逸れる可能性を考慮してだが……魔法を切った瞬間を見たのね。
 陽乃ちゃんはどうやら感覚でわかったみたいだけど。魔法を使ってるのはわからなかったけど、切れた瞬間にこちらに気づいたから、恐らく何かしらのものを感知したのだろう。末恐ろしいな。


 「単純に、どんな訓練をしているか分からないようにだよ」
 「でも、幻影だと普通に訓練してましたよね。あんな精密に違和感なく。あれってどうやってやってるんですか?」
 「あれはね……企業秘密」
 「えー?」
 「流石に教えないよ」


 笑って俺は飛鳥ちゃんと陽乃ちゃんの追求から逃げる。単純に[多重思考]と[完全記憶]のコンボで俺やっているだけだが、自分の手のうちをそうポンポンとは教えない。
 教えるものと教えないものの区別ぐらいはつけておかなきゃな。


 取り敢えず訓練場にある長椅子に御門ちゃんを横にさせて、俺は3人の方に向く。


 「3人は野村君を連れて、受付嬢さんの所に行ってクエストを受けてきてくれないかな。プラチナブロンドの髪の人」
 「あ、朝に幹に言ってたヤツ?」
 「そうそう。そのクエストを完了させてくるのが今日の課題ね。取ってきてくれないかな?」
 「分かりました! 紫希ちゃんをお願いしますね!」
 「りょーかいりょーかい」
 「エッチなことしちゃダメですよ?」
 「しないからね?」


 エッチなことをするんじゃなくて、エッチな声を聞くだけだから。
 意識ないから声出さない気もするけどね。


 「さて……と」


 3人が野村君を連れて行くのを見送って、俺は御門ちゃんの手を握る。魔力の讓渡は接触が不可避だ。


 その瞬間、頭がクラっとした。なにかにあてられたような、卒倒ではなく、身を委ねるような感覚。
 誰もいない訓練場。さっきまでは何かしらの音が響いていたのに、今は静寂に包まれている。


 そんな中で、意識のない美少女と2人っきりというのは───俺も少し気分が妖しくなってくるのだろう。


 ゆっくりと、意識がない御門ちゃんに魔力を入れていく。念入りに、それでいて深くまで魔力を浸透させる。


 「んっ……ふぅ……」


 御門ちゃんの口から微かに息が漏れる。それに構わずに、更に魔力を流し込む。
 魔力が手から入り、腕を伝って、心臓のある胸に行き届く。魔力の感覚を通して、御門ちゃんの鼓動が聞こえてくる。
 そして心臓に魔力が届いた途端、御門ちゃんの体が少しだけピクッと跳ね、少しだけ開いた口から甘い息が漏れる。


 「あっ……んんっ……」
 「……」


 まだ魔力は十分に回復はしていない。だから、それでもお構い無しに魔力を注ぎ込む。
 心臓だけではない。体全体、頭から足の先まで、御門ちゃんの体の中に魔力を行き渡らせる。
 御門ちゃんの魔力はほぼゼロの状態。それを全て俺の魔力で置換するのだ。時間がかかるに決まっている。


 ───長引けば長引くほど、俺の理性がやばいのは分かっている。なのに、ここで止めることが出来ない。
 もしかしたら、既に理性なんて崩れ去った後なのかもしれない。そうだとしたら、もう止まれないのだ。


 一瞬だけ強く流した魔力に、御門ちゃんの体がビクンっと跳ねる。先程よりも大きく反応・・しているのは明らかだ。


 「はぁ……はぁ……」


 御門ちゃんの息遣いが少し激しくなる。それに伴い、小刻みに御門ちゃんの胸が動く。


 ───誰も見てないし、御門ちゃんも意識無いし、少しぐらいなら……


 俺の手が、御門ちゃんの腕を這っていく。それに合わせて御門ちゃんが身をよじるが、構わず動かす。
 依然魔力は供給しているままだから、魔力の流し込む場所が変わる事に御門ちゃんが反応するのだ。
 手、手首、前腕、上腕……体の中心に近づくにつれて、御門ちゃんの息遣いや声も激しくなる。そして御門ちゃんの服に手をかけようとして───


 「っ!?」


 俺はハッと意識を取り戻した。


 

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