俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第39話 訓練 VS御門ちゃん





 「フッ! ヤァ!」
 「息を吐くのはいいけど、動作が連動してるよっと」
 「グッ!?」


 御門ちゃんの振り下ろしを右へいなして、がら空きの脇に蹴りを入れる。
 本気ではないが、御門ちゃんの顔がその痛みからか歪む。蹴りは手加減してても相手にとっちゃ予想外の衝撃で、威力も強い。
 吹っ飛びかけた体を、御門ちゃんはどうにか重心を操作することで地面へと再び戻すが、脇を抑える時間は上げないよ。


 「追撃はすぐ来るからね?」
 「ッ!?」


 そう言いながら、一応敢えて防御しやすい位置に攻撃を入れていく。
 よろめいた直後で力が入っていないためか、防御に出てきた御門ちゃんの剣は俺の攻撃を防ぐには弱かった。
 一気に斬り込んで、御門ちゃんの体ごと奥へと押し込む。


 「っ今!!」
 「それも甘いよ。『次元の壁ディメンションウォール』」


 その直後出現する複数の魔法。無詠唱によって発動の前兆はほぼないが、俺の目は誤魔化せない。
 背後に出現した二つの『ウィンドカッター』は、詠唱破棄のカモフラージュをした『次元の壁ディメンションウォール』で防ぎ、上空から降ってくるであろう落雷に、魔力で覆った左手を突き出す。


 直後、バチバチィ!!! と音を鳴らして、俺の左手に幾条のいかずちが飛来する。
 俺の手と雷が、紫色の火花を散らしながら一瞬だけ拮抗する。しかし、俺がゆっくりと手を握る動作をすると、その瞬間、雷はその姿を跡形も無く消し去り、魔力の残滓となる。
 圧倒的な魔力で魔法を消し去り無効化するこの荒業は、インパクトがとても強いようだ。御門ちゃんの目が驚きに見開かれる。


 「ッ、まだですっ!!」


 御門ちゃんが叫ぶと同時、再び現れる魔力の反応。今度は俺と御門ちゃんの間だ。
 それを一瞬で識別し、魔法が発動する前に左手をその空間に突き入れる。無論、魔力は纏ったままだ。


 "魔法に昇華しようとしている魔力"というややこしい魔力を俺は無理やり消し去る。そして隙が出来ないうちに左手を引き戻そうとするものの、その左手はあろう事か高速で伸ばされてきた御門ちゃんの手に掴まれる。


 「捕まえた!」


 にやっと笑って叫んだ御門ちゃんは、一気に俺の手を思いっきり引っ張りだした。
 左手を突き出すために重心を前に突き出していた俺は、踏ん張ることが出来ずにそのまま引かれる。そして引かれた先に待ち構えているのは、御門ちゃんの剣。その軌道は、俺の首を刈り取るルートである。
 体勢を崩した状態では防御は難しい───俺は即座にそう判断し、御門ちゃんの力に逆らわずに、むしろ自分から倒れ込みに行く。
 姿勢を自分から低く、そうすることで、御門ちゃんの剣が俺の頭上を空振りしていく。


 「ッ外した!?」


 一瞬の攻防での事に戸惑った御門ちゃんの懐に入り込む。まさに、ピンチが一転してチャンスになった瞬間だ。
 右手に構えた剣を下から思いっ切り斬りあげる。鼻先一寸の場所を通過するはずだった俺の剣は、しかし咄嗟のところで戻ってきた御門ちゃんの剣でガードされる。


 「くぅっ……!!」


 とはいえ、崩れた体勢からの防御では完全に防ぐことは無理であったらしく、御門ちゃんの顔がまたしても苦痛に歪み、後ろへよろめく。
 それを好機と見た俺は、一瞬だけスピードのギアをひとつあげて、もう1度御門ちゃんの懐に入り込み、剣を一気に振り抜く。


 「キャアッ!?」


 俺の剣は今度は御門ちゃんの剣の付け根部分にクリーンヒットし、ガイィィィィン!! と金属音を鳴り響かせ、御門ちゃんの手から剣を飛ばすことに成功した。
 御門ちゃんが衝撃で尻餅をつくが、しかし俺は無慈悲に剣を御門ちゃんの目前に突きつける。


 「さ、どうする?」
 「くっ……まだこれからですっ!!」


 言外に『降参するか?』と聞けば、返ってきたのはそんな言葉。
 まだ続ける心意気はいい。だがそれで武器を拾うのを待つほど、今回俺は優しくない。
 返事を聞いた瞬間、容赦なく俺は剣を突き出す。


 御門ちゃんは素早く立ち上がって回避するが、それも折り込んでのことだ。
 地面に付く直前で剣の軌道を変えて御門ちゃんの頬を狙っていくが、それも寸でのところで避けられる。
 まぁ、一応避けられるようにしているのだから当たり前なのだが。避けないとちゃんと当たりますから、ある意味で本気だな。


 更に俺は追撃しようとするが、それはまたしても発動される魔法によって、中断を余儀なくされた。
 四方から迫る『ウィンドカッター』。それらを魔力を纏った剣でその場で回転切りを行って、消滅させる。


 その間に御門ちゃんは落とした剣を拾っており、油断なくこちらを見ながら武器を構えている。まんまと時間稼ぎをされてしまったらしいな。
 分かってて乗った節もあるが、それは些細なことだ。今は武器を拾われたという結果が大事なのだから。


 すると、こんな状況の中で御門ちゃんが俺に向けて口を開いた。その間も剣は油断無く構えたままだ。


 「トウヤ君、もし私がトウヤ君に一撃でも有効打を入れられたら、私のお願いを一つだけ聞いてもらってもいいですか?」


 御門ちゃんからの提案は、そんな事だった。
 さて、別に元々ご褒美をあげるつもりではあったし、そのぐらいなら構わないのだが、問題はそれを御門ちゃんの方から言い出してきたというのと、相手が御門ちゃんということだな。
 良くない予感がするのだ。つまり、悪い予感。


 いやまぁ気の所為の可能性も否めないが、少なくとも御門ちゃんのお願いがなんなのか分からないことにはどうしようもない。


 だからといってこの提案を断るわけにもいかないんだよな。これでモチベーションが上がるのは確実だし、逆に断れば下がる。なら受け入れるしかないわけだ。
 ……仕方ない。ここは腹をくくるしかないか。


 「わかった、別に構わないよ」
 「ホントですか! やった! トウヤ君ありがとうござ───」
 「ただし」


 喜ぶ御門ちゃんの言葉を遮って、俺は言葉を続ける。


 「条件追加だ。もし俺に攻撃を当てられなかったら、その時は代わりに俺のお願いをなんでもひとつだけ聞いてもらうよ」
 「えぇ!? ま、まさかトウヤ君、私に勝ってエッチなお願いするつもりじゃ!?」
 「いや、する訳ないでしょうが」


 冷静に返しつつ、しかし心の中では『それもいいかも』といやらしい顔をしていたり。
 ……いや、本当にするつもりは無いよ? あくまで冗談だから。
 でも実際のところ、お願いしたらエロいことをしても許されるだろうか? 御門ちゃんの好感度がどの辺なのかは分からない。
 手を繋ぐまではいいだろう。おでこを合わせるぐらいだしね。
 でも体触ったりとかはダメだろう。初心なこの娘には難しそう。
 ……意外と範囲狭いぞ。ハグがギリギリ許されるかもしれないが。


 「別に変なお願いはするつもりは無いよ。とは言っても特に考えているわけじゃないけど」
 「え、エッチなお願いはダメですよっ!」
 「君もエロいお願いは止めてね」
 「わ、私をなんだと思ってるんですかっ!」


 初心な痴女? 初心な淫乱娘? そんな感じじゃないですかね。
 口を開けばエロい言葉が。顔を見れば真っ赤っか。挙句の果てには誘ってるのかと思うような発言。
 これはもう、初心な痴女としかいいようがない。


 「でもそうなったからには、言っとくけど簡単には攻撃させないから」
 「分かってますよ! トウヤ君こそ、今までの私が本気では無かったことを思い知らせてあげます!」
 「ハッタリじゃないと良いけど……」


 テンションが空回りしそうな御門ちゃんに苦笑いをこぼして、俺は武器を構えた。
 さてと、少しギアを上げていきますかね。



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