俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第36話 純魔法使いを超える弓使い



 「ここの魔力が偏ってるから、少し意識してみて」
 「分かりました」


 「魔法のイメージは何度も同じように思い描くこと。発動する度にイメージの仕方が変わるのは良くないから、寸分違わず、見本の絵を見ながら」
 「はい」


 「最初から複数の魔力を扱うのは難しいから、まずは一つの管から段々と切り離してみよう。こう、割くようにね。そうすると、難しいは難しいけど、割と楽にできるかもしれないから」
 「は、はい」


 「魔力が無くなってきたね。ちょっと失礼して……どう?」
 「あ、んっ、はぁ……なんか、入ってきます」
 「(ゴクリ)……ま、まぁ、今ので多分魔力補充できたから」
 「そんなことも出来るんですね」
 「うん、まあね」


 「いい? ここを、こう動かす感じ」
 「こうですか?」
 「そうそう上手。でもそうするとこっちが疎かになるから、意識を満遍なく巡らせて……」


 「魔法を発動する時に、目視することは重要だけど、見ないでできれば、なお良い。目じゃなくて、魔力で周りを把握するのもやってみて」
 「わ、分かりました」




 ◆◇◆






 今教えられることは教え尽くした。魔力を意識しながらの魔法発動も、二つだけだが、魔法のイメージの固定化も、同時に複数の魔力を操作する技術も。
 どれもこれも、本人の資質があってこそのものではあるが、それを引き出したのは、少し自画自賛気味になるが、間違いなく俺だろう。


 俺は今回、一時的に封じていたスキルのいくつかを解放していた。それは、[魔力支配][多重思考][思考速度超上昇][目利き]に[観察]、そしていつの間にか取得していた[指導]というスキル。


 言わば、俺は本気・・で雫ちゃんに魔法を教え込んだのだ。[魔力支配]によって俺の魔力を雫ちゃんの魔力に合わせ、繊細な調整を施し、[多重思考]と[思考速度超上昇]で頭の中で何を教えたらいいかを整理しつつ、[目利き]と[観察]で、雫ちゃんの魔力の癖や得意な部分を把握し、[指導]をもって教える。


 感覚的な部分は『想像共有イメージシェア』の魔法をも使用してイメージを何度も植え付け(その度に手を繋ぐことになるのは仕方ない)、魔力が無くなる度に、雫ちゃんと同じにした魔力を送り込んで回復させるという荒業を繰り返す。


 そして、ようやく指導を終えたのだ


 「よし、じゃあやってみようか!」
 「はい。『零度拡散フリーズボム』」


 最後の確認をするために、魔法の的を『大地魔法』で作り出してあげて、早速開始。


 雫ちゃんは詠唱破棄で、もうお馴染みとなってきている、上級水魔法『零度拡散フリーズボム』を発動する。その数、ざっと7つ・・
 訓練前が初級のアロー系統がようやく3つだったのを考えると、上級魔法7つというのは凄まじい変化というか、もはや進化だ。
 とはいえ、これはあくまでこの魔法を重点的に鍛えたからであって、他の魔法でも同じようにできるかと言われたら首を振るが、それでも少なくとも2つならば簡単に発動することが出来るだろう。
 俺の予想、既に純魔法使いである飛鳥ちゃんや夜菜ちゃんを超えてしまったのではないかという一抹の不安というか、もはや確信がある。二人共、詠唱破棄で七つも上級魔法は撃てないだろう


 そして、ここからが魔法の操作だ。


 敢えて直進ではなく、複雑な軌道を描いて飛翔する冷気の塊。その動きは七つそれぞれが全くのバラバラなのにも関わらず、一切のラグがない。
 間違いなく、[並列思考]、またはそれに準ずるスキルを取得しているに違いないと俺に思わせるには十分だった。


 的に魔法が着弾する。そこから起こるのは、シャアァァン! と音を立てて巨大な氷山が発生し、それらは俺が作り出した的を、体諸共一気に崩れさせる。
 自身の意識で魔法を終了させる……間違いなく、この魔法を掌握している証拠だ。


 魔力の残滓が俺の目に映る。残っているのは比較的最小限であり、魔力制御も問題なかいと見える。


 「……うん、文句無しの完璧だね」
 「や、やった!」


 珍しく言葉に抑揚を出しながら喜ぶ雫ちゃんは、簡潔な感想ながらも、とても嬉しそうにしている。


 「でもまずったな……飛鳥さんと夜菜さんにも同じ訓練しなきゃか」
 「あ……そうですよね。2人の方が、魔法はうまいですし……」
 「雫ちゃんはあくまで弓がメインだからね。2人が抜かされたと思ってガッカリするかもだからさ。飛鳥ちゃんは明日になりそうだけど」
 「……」


 んん、なんか返答間違ったかな。雫ちゃんが目に見えて落ち込んだ。
 こう、無表情でも感情の落差がわかるね以外と。無表情キャラって俺の近くには居なかった気がするから、少し新鮮な感じだ。
 まぁ、確かにこんな劇的に強くなるような指導をほかの2人にもするってなると、少し嫉妬があっても仕方ないのかな。やることには変わりないけど、少し譲歩した方がいいか。


 「今度は弓の訓練しっかり付き合ってあげるからさ。元気だしてよ」
 「……」
 「俺も弓使って、一緒に訓練するから」
 「……分かりました。なら、仕方ありません」


 2度の言葉で、雫ちゃんは機嫌を戻してくれた。喜んで悲しんではにかんでと忙しいですね。
 でもそんな喜怒哀楽……いやまぁ怒りは無かったけど、それを見てると和むな。こう、青春の一ページって感じがする。
 別にリアルが充実してないかと言われれば首を振るが、色恋沙汰は全く・・無かったからなぁ。


 「……ねぇ、トウヤさん」
 「ん?」
 「えっと、私、敬語じゃなくていい?」


 そんなことを考えながら、次は御門ちゃんかとそちらに行こうとすると、服の裾を掴まれて雫ちゃんからそんなことを聞かれる。
 取り敢えず質問の前に、その行動すごい萌えるからもっかいやってもらっていい? あ、ダメ。


 「タメ口ってこと? 俺は別にいいけど……急にどうしたの?」
 「……少し、リード」


 リード? 何にリードしてるんだ?
 そんな俺の問いが口から出る前に、雫ちゃんはトテトテっと走り去ってしまう。
 追えないことは無い。だけど、俺は雫ちゃんを追わなかった。


 ……いや、こういうさ、女の子が何か言って走り去っていく場面って、少し憧れだったからさ。感動してたわけよ。リアルで遭遇するなんてって。


 そう。追いかけなかったことに、別に深い理由ががあったわけじゃないんだよ。





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