俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第32話 考えるだけで長引くってわかる





 飛鳥ちゃんとの訓練は花火を習得したところで終了した。時間が無い訳では無いが、他の4人の様子も見ておきたいからだ。
 とはいえ、肝心な魔法発動時の魔力の意図的な操作、という部分に関しては、既に一度見せているので、後は自力でできないこともない範囲だ。


 去り際、「紫希ちゃんのこと、宜しくお願いしますね」と笑みを残していったことから、飛鳥ちゃんの中では既に御門ちゃんの俺に対する好意は決まったようなものなのだろう。
 本当にそうでないことを願うばかりだが、果たしてと言ったところか。


 「にしても……激しいな」


 今はなんか、全員でバトルロイヤルみたいなのをしてます。最初は4人だったのだが、飛鳥ちゃんも混ざって今は5人になっている。
 訓練場が広いから問題ないが、5人が派手に攻撃し合うさまは、傍から見ていてとても面白い。アニメの戦闘シーンを見ているかのような迫力だ。


 特に派手なのは、魔法を使いつつ槍を巧みに操る陽乃ちゃんだな。相変わらず上手い使い方というか、槍の先を魔法の発動地点として、至近距離で爆発系の魔法を使った時には驚くな。
 とはいえ、相手をしている御門ちゃんもちゃんと避けられているというか、むしろ反撃までしているので、慣れたものなのだろう。お互い、どこまで攻撃していいのかを把握しているというのか。


 ───やっぱり、何故か勇者って攻撃することにためらいがないよな。ルサイアの頃から思ってたが。


 全員が全員武器を握れる武闘家という訳じゃない。にも関わらず、同級生達は、嫌悪を示すなどの違いはあれど、武器を知り合いに振るうことに躊躇いはなかった。
 迷宮でも魔物を普通に倒すことが出来ていたし、何故なのかと考えたことも何度かある。俺は初日、ゴブリンを倒した時に吐いたというのに、だ。


 ……この世界ではそれはどちらかと言えばいい方なのだろう。やられる前にやるというのは最も基本的なことだし、別に無闇矢鱈に武器を振るう殺人マシーンになっているわけでもない。良くいえば、メリハリがついていると言えるのだから。
 しかし、門真君とか京極君とか、ここの男性陣は精神的にも強そうだから特別だろうが、御門ちゃん達は明らかに厳しいはずなのだ。にも関わらず、お互いに攻撃することに何の躊躇いもない。


 やはり、なにか精神に働きかける何かがあるのだろうか……?


 少し調べてみる必要があるかなと、俺は頷く。
 そろそろここの王城の図書館も拝見してみたい。街に図書館があるのか分からんし、あっても王城の方が本の量は多いだろうしな。




 一旦思考を切り、意識を戻してみる。見たところバトルロイヤルは誰かの体力が切れるまで終わらなそうだし、今の内に残り4人の訓練を考えておこうかな。


 御門ちゃんと陽乃ちゃんは、基本的に似てるかな。御門ちゃんは前衛よりだけど、武器を使いながら魔法も使えるし、そこは陽乃ちゃんと似ている。
 剣の扱い、槍の扱いは徐々に慣れてもらうしかないが、そこは俺が同じ武器で戦ってあげればいいだろうか?
 前の実力検査(?)みたいなやつでは試合時間は1分程しか無かったが、今回はたっぷりと時間を使うことと可能だ。


 武器と魔法を同時に扱うのは、意外と難しいことだ。例えば樹なんかは結局1ヶ月では会得出来なかったし、拓磨も剣で攻撃してから魔法を使うことは出来ても、剣で攻撃している最中に魔法を発動するのは難しいらしい。
 御門ちゃんや陽乃ちゃんも、あと一歩というところなのだが、やはり攻撃しながら魔法、というのは見ていて出来なさそうだ。必ず攻撃した後などの、相手に隙ができるタイミングで、自身の意識を武器から魔法の方に動かす感じにしている。


 俺の場合は、[並列思考]、今は[多重思考]だが、それを使うことで出来ていた。思考を二つにして、一つは武器、一つは魔法に専念させるのだ。
 現在は別にスキルを使うまでもなく可能だが、そもそも俺はあまり武器と魔法を同時に使わない。攻撃してから隙を衝くのに使うのはあるがな。


 だから御門ちゃんと陽乃ちゃんも、このスキルを覚えれば楽に出来ると思うのだが、生憎このスキルの取得方法がわからない。俺も気づいたらあったという状況だったからだ。
 何がトリガーなのか。本を同時にたくさん読んでいたからか、複数の事を無理に考えたりしていたからか。ともかく、不確定要素すぎるので、これに全てを頼むのはやめた方がいいな。


 それに、思考を増やすと言ってもそう単純な話ではない。このスキルの効果は恐らくだが、『一つの思考を二つに分割・・する』というものなのだろうから。思考の数は確かに増えているが、判断力や頭の回転力はその分落ちる。
 3つに増やせば3分の1、4つは4分の1。等分ではないかもしれないが、少なくともそういうものだと思う。
 だから俺は基本一つの思考しか使わず、通常時の思考力を鍛える。基礎が強化されれば、分割されてもさほど問題ないという考えだ。


 ……話が逸れたな。まぁ、一つの思考だけでどうにかするには、やはりパターン化するしかないのだろう。ピアニストが両手で別々に弾けるのなら、一つの思考で二つの物事を並列してやることも可能なのだ。
 ま、俺が介入する余地はあまり無さそうだな。




 残りの雫ちゃんと野村君だが……野村君の方はまぁ格闘戦主体だろうから、攻撃方法を増やすか格闘戦をさらに極めるか……後者を選ぶだろうな。
 ボクシングが好きなのか、今も素早い攻撃を行っているが、足を使う気配やら、攻撃を避けるためにしゃがむ行為はなく、やはりボクシングのルールに囚われているというのは行けない。そんなことを気にしていて生きれるかどうかと聞かれたら、正直難しいところなのだから。
 とはいえ、逆にとても強くなれば、そういう戦い方も悪くないのかなと思う。死んだら元も子もないが、死なない限りは戦い方に関しては別に何を求めるわけでもない。
 私闘なんかの場合は、ある意味公平性のある戦いになる……のか?縛りプレイは舐めプとも取れるし、やっぱり普通に戦うのが一番なのか。


 こればっかりは野村君次第だが、俺はまずボクシングのルールを知らなければ。
 本人にボクシングが好きなのか、聞いたわけじゃないけどね!




 最後の雫ちゃんは俺の持ってない武器である弓だが、後で買ってこなくちゃなと思いつつ、今は魔法で対抗してあげるしかないかな。
 弓の装填速度を上げる訓練?俺の魔法に付いてこれれば十分早いだろう


 そもそもの話、弓の扱いに関しては俺は何も言えないからな。野村君みたいに特にルールに縛られているわけでもなさそうだし、ただひたすら黙々と戦い続けられそうだ。
 雫ちゃんは俺からじゃどうしようもないから、魔法で対抗して装填速度の向上を図るのとってところか。俺が弓を手に入れたら付き合うから、それまでは魔法で我慢してくれ。




 そうやって俺が訓練の内容を考えている間にも、五人の試合は続く。
 傍から見ている分には全然いいが、何度かヒヤッとさせられる場面がある。攻撃が当たりそうになるのだ。
 当たりそうで当たらない。それは当人達も理解しているのか、それともたまたまなのか。どちらにせよ[快復魔法]を使う事態が起こらないことを願うばかりだ


 せっかくだから実況というか、戦闘の解説でもしてみようかな。暇だから。


 野村君と御門ちゃんと陽乃ちゃんが前線で戦い、雫ちゃんは狙いやすいからか飛鳥ちゃんを狙う。飛鳥ちゃんはフィールドを走りつつ、詠唱破棄で全体に当たるような範囲の魔法を発動させる。
 雫ちゃんの弓は的確だが、飛鳥ちゃんも流石は勇者というだけあってか、運動が下手ということはなく、見事に避けていく。そして当たりそうになった魔法は、無魔法の『魔盾マジックシールド』で的確に防ぐ。
 とはいえ、雫ちゃんも負けてはいない。弓を放ちながら前衛組に的確に『ファイアアロー』を放って牽制しているし、まだ一本の矢でしか射っていない。


 やつはまだ、本気を出していないのだ……!


 おっと、少しずつ戦況が変わり始めたか?
 三人で戦っていた前衛だが、野村君が後頭部に回し蹴りを喰らっている。どうやら御門ちゃんのようだ。
 今回は単純に攻撃手段として回し蹴りを放ったようだが……容赦ないね。野村君死ぬんじゃないか?少し心配だ。


 ……ま、野村君頑丈そうだし放置でいいか。熱を増しているバトルロイヤルに水を差すのも悪いしね。


 「っとと、少し門真君達の方を確認しておくか」


 途端、そう言えばあっちの状況を確認してないということにハッと気づく。
 まずは魔力を感知するように、感覚の範囲を広げていく。街の沢山の人の魔力が感じられるが、それを全てスルーして下へと感覚を向ける。


 数秒後、ここからじゃ一体どのぐらい離れているか見当もつかないような場所にグラの魔力を発見する。予め俺の魔力をグラの中に埋め込んでおいたので、多少なら離れていても感知が可能なのだ。
 流石にステータスを封印した状態じゃ感知できなかったんだよなぁ。少し落胆したが、まぁ仕方ない。これから訓練で磨いていけばいいのだから。


 そしてそのグラの場所めがけて、一時的に[千里眼]を発動する。グラの視界を一時的に借りるという方法もできなくはないんだが、こっちの方が楽だ。


 ……どうやら現在は移動中の様子。特に消耗具合も問題なさそうで、グラがなにかした様子もない。つまり、危うげなく進んでいるということか。


 この後からは定期的に見ていくことにして、俺は一旦視界を切る。


 さて、いつになったらバトルロイヤルは終わるだろうか



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