俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第31話 曖昧な答え





 飛鳥ちゃんのケアは、思ったよりは簡単だった。


 やったことは単純だ。魔法で色とりどりの花火を作っただけなのだが……飛鳥ちゃん、どうやら花火が好きなのか、それに驚いて、すぐに笑顔になったので良かったと思う。
 子供かよ!!と思ってはいけない。今はその純粋さに助けられているのだから、文句など付けるはずがない。


 「トウヤさんトウヤさん、今の私にも教えてください!」
 「わかった、分かったよ」


 今話を戻したらまたぶり返すのだろうか、と少し不安になったので、先に花火を教えることに。
 とはいえ、花火に特に効果があるわけでもないので、見た目を覚えてイメージすればいいという簡単なものだ。
 問題は、そのイメージをどうするのか。詠唱は特にないから補助は無い。花火となると見た目に気を使うというか、繊細なイメージが必要だ。


 ぶっちゃけ魔法で繊細なことをするのは難しいのだ。俺も[完全記憶]と[瞬間連想]あってこそのものだと思うしな。


 「難しいです……」
 「こればっかりは何度も見て記憶するしかないね。まだ見た目だけだから覚えるのも多少は簡単なはずだよ。後は、詠唱つける?」
 「は、恥ずかしいのでやめておきます……」


 取り敢えず何度も何度も花火を見せて飛鳥ちゃんに覚えさせる。そしてやっぱり詠唱は恥ずかしい模様。
 俺も、まだ人が用意したものなら恥ずかしながらも出来なくはない。だが、自分で作るとなると一気に悶絶ものだ。その点、厨二病患者たちは楽に出来ていいよなと思う。
 俺のクラスに厨二病の奴がいたような居なかったような気がするんだが、実際のところ詠唱を恥ずかしげもなく言えるのは大きなアドバンテージだろう。
 ……何かが決定的に違う気がするが、気のせいだ。


 「『花火』! ……ダメです。トウヤさんみたいに上手く行きません……」


 詠唱なしの魔法を放つも、花火はその原型を保っていられず、1秒と経たずに消えてしまう。
 普通の魔法なら特に造形にこだわる必要は無いが、今回花火は鑑賞用として覚えたいはず。
 となると、まず打ち上げるところからやらなければならず、そして打ち上げるのは良くても、その後の大輪が咲く部分が大変らしい。


 その点、[完全記憶]がまじ便利であることを痛感するが、それはおいといて。
 この状況をどうにか打破できないものかと、俺は考える。


 別に花火は必須という訳では無い。戦闘には役に立たないだろう。いや、気を引く程度にはできるかもしれないが、その程度だ。
 だが俺が言いたいのはそこではなく、この先誰かに魔法を教える時に、相手がイメージで詰まってしまうことがあるはず。そんな時、ただひたすら反復練習をして覚えさせるしかないとなると、時間がかかってしまうなと思うのだ。


 反復練習が悪いとは言わないが、手っ取り早く済む方法があるなら誰だってそっちの方がいいはずだ。


 (……よし、これでいこう)


 ということで、考え始めて数秒、早速とばかりに思いつきました。出来るかどうかはわからないが、出来たらメチャクチャ有能な魔法が作れるはず。
 三分クッキングもビックリの素早さだったな。


 「飛鳥さん飛鳥さん、ちょっといいかな?」
 「なんですか?」


 未だ苦戦中の飛鳥ちゃんに俺は声をかける。額から汗を流す姿からして、イメージにだいぶ苦労している様子。


 「いやね、苦戦してるみたいだから、少し手助けしてみようかと思って」
 「手助けですか? でも、どうやって……」
 「うん。俺の手を握ってくれるかな。出来れば両手で」


 新しく作る魔法は人体に直接干渉する魔法だ。それも今回は魔法の構成上接触が必須、魔力の操作云々で済む話じゃないのだ。
 本当はおでこを合わせるのが一番いいと思うが、そっちは抵抗があるかもしれないので手にしてもらう。


 「こう、ですか?」
 「うん。ちょっとビックリするかもだけど……『想像共有イメージシェア』」


 おっかなびっくりという様子で、俺の手を握る飛鳥ちゃん。初心ですねぇ……俺は一体何なんでしょう。


 そんな思考はポイ捨てして、俺は今作った魔法を発動する。飛鳥ちゃんに直接干渉する魔法なので、万全を期してゆっくりと構成を辿っていく。
 まずは、俺の魔力を飛鳥ちゃんと同じ魔力に変化させる。これが必須だから、逆に言えばこれが出来なければこの魔法は使用出来ないということだな。


 そしたら、次は段々と俺の魔力を飛鳥ちゃんに浸透させていく。魔力を糸のように伸ばして、飛鳥ちゃんの魔力と繋いでいくのだ。


 「……あっ……んっ……」
 「あの、変な声出さないで?」
 「す、すみません!ちょっと、変な感じでっ」


 ……まぁ置いておくとして、浸透させた魔力を通して、俺は自身の『イメージ』を飛鳥ちゃんに送り込む。
 魔法がイメージで発動できるのなら、魔力にイメージを乗せることも出来る。そんな原理かは知らないが、成功したようで……


 「んんっ……あ、なんか……」
 「どう?」
 「えと、花火が頭に浮かんでます」


 お、いい感じかな?……最初のあの声は気にしないでおこう。


 俺が作った魔法はその名の通り、相手と自身のイメージを共有するもの。
 正確には俺のイメージを相手に送る魔法だが、逆のこと、つまり相手のイメージやら思考も俺の意思で覗くことが可能なので共有ということに。そこ、プライバシーの侵害とか言うな。


 魔法はイメージが重要。俺の場合、[完全記憶]でイメージは万全だったが、それを他者と共有することで、擬似的に相手にもそれの効果を発揮することが可能だと思ったのだ。
 ただし、少しでもミスると何かしら体に支障が出るかもしれないから、やる場合は注意が必要だ。万が一が無いとは限らないからな。俺も万全の状態でしかやらないようにしたい。
 自身と相手の意識を繋げるみたいなものだからな。一歩間違えば思考がシェイクされるかもしれん。


 「とりあえずそのイメージでやってみてよ」
 「は、はい。……『花火』!」


 手を繋いだまま、花火のイメージを送り込んであげる。正確性に関してはピカイチのイメージは、はっきりと飛鳥ちゃんに伝わったようだ。
 そうして発動された魔法は、先程俺が発動したのよりは少し規模が小さいが、それでも十分な花火を見せることに成功した。


 パァン!と花火が破裂して、大輪が咲く。赤と青の光が混じり、見事に形を保っていた。


 「あ……やった! やりましたよトウヤさん!」
 「う、うん。分かったから、分かったから手を離して」
 「え?……あ、すみません!」


 ブンブンと手を振ったかと思ったら、バッと俺の手を離す飛鳥ちゃん。可愛ええなぁと思いつつ、笑顔の飛鳥ちゃんに俺も微笑みかける。


 「どうにか出来てよかった。これでいつでも花火を見られるね」
 「はい……ありがとうございます」


 頬を染めて、笑顔でお礼を言ってくる飛鳥ちゃんは、そう、まるで背景に花が見える。
 お淑やかな女の子ってあんまり知り合いにいないからなぁ。少し新鮮だ。
 問題児筆頭はギルドマスター。ラウラちゃんは元気系だしね。
 似た系統だと恐らくクロエちゃんなイメージ。


 「その、お礼という訳では無いんですが……」
 「ん?」


 すると、一転して少し周りの目を伺うような仕草をしながら、小声で飛鳥ちゃんは俺にそう言ってきた。


 「その、紫希ちゃんの事です。気になることがあって……」
 「あぁ、なんか門真君が言ってたなそう言えば……重要なこと?」
 「いえ、一応些細なことですが、当事者のトウヤさんには伝えておいた方が良いかなと……」


 些細なことと言う割には、周りの目を伺うような仕草を未だ続けている。少し挙動不審というか、聞かれるとまずいことなのか?


 でも『消音領域サイレントフィールド』を使用してるし、さらに言えば幻影も使ってるから、御門ちゃん達は俺達のことが、恐らく魔法を取り敢えず打つ訓練をしているようにしか見えていないはずだ。
 だからこそさっきの『煌熱爆破シャイレートイース』を使用しても、御門ちゃん達が何も言ってこなかったのだから。
 もしかしたら陽乃ちゃんあたりは魔法を使用していることに気づいてるかもしれないが、まぁ大丈夫だろう。


 そんな俺の考えを知らない飛鳥ちゃんは、耳元まで近寄ってきて、俺にそっと耳打ちをしてくる。
 ただし、御門ちゃんのようなエロさは無い。話す内容が御門ちゃんのことだと分かりきっているからか。


 「その、私と陽乃ちゃんから見た印象なんですけど、紫希ちゃん、トウヤさんのこと意識してるみたいで……」
 「……意識?」
 「はい。多分、異性として意識してるんだと思います……すみません、もしかしたら私の思い違いかもしれないですが……」


 んー、何?御門ちゃんが、俺のことを異性として意識?
 こりゃ参ったなー、俺ってば罪な男だなー、そんなことになってるなんてーアハハー……


 え?マジ?


 「ち、ちなみに根拠は?」
 「迷宮での帰りのことなんですが、トウヤさんの方を見ては、その都度顔を赤くしてかぶりを振ってて……」
 「単にあの・・出来事を思い出しちゃったから赤くなってたんじゃないの?」
 「それもあると思います。だけど、それだけじゃない気がするんです。こう……言い方が少しアレですけど、多分異性の体に興味が出たっていうか……」
 「………」


 おいおいおい、それってあれか?あのラッキースケベのせいで、御門ちゃんの変なスイッチが入っちゃって、それが続いてて、その原因が俺だから、意識が俺に向いてるってこと?


 「私も恋愛については分からないですし、絶対とは言えないんですが……少なくとも、トウヤさんのことをそっち方面で気にしてるのは本当だと思います。今日も朝、トウヤさんと会ったみたいですが、その後顔がずっと真っ赤で、私が『何かあったの?』って聞いたら、さらに顔を赤くしちゃって。本当に、もう湯気が出る勢いで……」


 うん、ごめんそれ違う。多分あの耳元での囁きのせいだから。俺の卑猥発言のせいだから。


 それにしても、御門ちゃんがね……いやまぁ高校生だから、そんなちょっとしたハプニングで興味が出るってのはあるかもしれないけどさ……
 今まで一緒にいたはずの門真君やら京極君やらその変の男達とは何も無かったの? だって俺会ってまだ二日目だよ?


 それを聞いてみれば、御門ちゃんはどうやら意外と初心うぶらしく、男と手を繋いだことも無いのだとか。
 恥ずかしいからか、先に手が出るらしい。この前の半裸になった時に野村君に回し蹴りを食らわしたように。いや、あれは特殊パターンだ。
 とにかく、門真君や京極君は紳士だから自分からそういうのはやらないし、野村君と御門ちゃんは毎回あんな感じで野村君がノックアウトされる。黒澤君は論外。天貝君は女子ウケが良さそうだけど、御門ちゃんはショタには興味が無いので、やはり手を繋ぐのは無理と。


 天貝君、飛鳥ちゃんにショタ認定されてるぞ……


 とまぁ、だからこそ、いつもは回し蹴りやら殴り飛ばすやら蹴り飛ばすやらで、まともに男と接触したことが無かったのだが、それを俺が呆気なく破ってしまったと。


 ……意外と初心って、飛鳥ちゃんから見て御門ちゃんはどう見えてるんだろうか。俺から見れば飛鳥ちゃんも初心だけどね。さっきも手を繋ぐ時はおっかなびっくりだったしさ。


 そんな感じで、飛鳥ちゃん曰く、御門ちゃんは初めてまともに触れた……というかイケナイところまで行った俺の事を否応なしに意識してしまってるのだとか。


 「……困ったなぁ」
 「紫希ちゃんのこと、嫌いなんですか?」
 「いや、別に御門さんが嫌いなわけじゃないんだけど、御門さんが本当に俺のことを好きなのかは分からないわけだし、どう接したらいいかなと……」
 「女の子はちょっとしたきっかけでもそうなるんですよ。それに、トウヤさんは見た目もカッコイイですし、強いですし、優しいですから。彼女さんとかはいないんですか?」
 「居ないよ。そう言ってくれるのは有難いけど、生まれてこの方告白されたこともない」
 「トウヤさんなら引く手数多だと思うんですけど……あ、だからって、紫希ちゃんに変なことしちゃダメですよ?」
 「いやしないって。俺をなんだと思ってるんだい?」
 「……変態紳士さん?」
 「俺がいつそんな行動したかなぁ……」


 少なくとも飛鳥ちゃんにはそう言ったことは何一つしてない気がするんだけど。


 それにしても、当分は御門ちゃんは気をつけた方がいいかな。飛鳥ちゃんはああ言ってるけど、御門ちゃんは多分本当に少しの気持ちの変化で変わるはずだ。たまたま最初に触れたのが俺だからああなったのであって、俺じゃなかったら別の人のはずなのだ。
 いっときの気の迷い。恐らくそんな感じだと思われる。少し他の男子、特に門真君や京極君なんかと触れ合えば、そっちに意識が行くはず。


 ───そう、そうでなきゃ困るのだ。なぜなら、俺のことを好きになられても、俺は……


 「後で私が直接聞いておきます。そっちの方が、トウヤさんもスッキリしますよね」
 「いやまぁ、確かにそうだけど……」
 「もし本当にそうだった場合は、トウヤさん、しっかりと責任を取らなくちゃダメですよ? 紫希ちゃんの初恋かもしれないんですから」
 「……そう、だね。善処するよ」


 どこか嬉しそうな飛鳥ちゃんに、俺は歯切れの悪い返答をする。その言葉にしっかりと頷けるほど、俺は甲斐性もなければ、度胸も器量もない。
 自意識過剰なら良いけど、そう出ない場合は困る。御門ちゃんが俺のことを好きになっている可能性は低いし、例え好きになっていても、それはすぐに過ぎ去るものだろう。


 だから俺は、『善処する』という言葉を選んだ。俺が何をしたところで、御門ちゃんは違う人を好きになるだろうと。
 確かに、御門ちゃんが本当に俺のことを好きなのだとして、それは俺も嬉しいし、本当なら俺もそれに応えてあげるべきなのだろう。
 だが、今の俺には、頷くことが出来なくて、しかし、否定して今の関係が壊れるのも怖い。
 曖昧にするというのは、そういう事なのだ。




 飛鳥ちゃんは魔法で花火を作れるようになったのと、俺と恋バナのような話をしたことで、御機嫌だった。
 そして、おそらく俺との距離も縮まったと思う。今はどこか気安さが見え、飛鳥ちゃんも冗談を言いそうな雰囲気だ。


 そう、こうやってみんなと親睦を深めるだけでいいのだ。それ以上の関係は望まない。


 ───じゃなければ恐らく傷つくのは、当人である御門ちゃんの方なのだから。
 

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