俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第30話 一度見た魔法を再現して使えるってそれなんてチート?





 「鍛錬って……具体的には何をするんですか?」
 「うーん、実を言うと特に決まってるわけじゃないんだよね」


 すぐに質問してきた御門ちゃんに、俺は正直に答える。
 鍛錬、訓練。実力を高めることが目的なのは違いないが、問題は個人個人で極める場所が違うことか。
 単純に戦闘をこなせばいい話ではない。確かに慣れは大切だが、慣れと技術はまた別だと思うのだ。
 勿論俺と戦えば強敵に対する戦闘に慣れることが出来るだろう。如何に強敵に対して策を練れるか、どんな立ち回りができるか、それを学べれば、確実に生存率は高くなる。
 後は、防御に回ってれば受け身も上手くなるはずだ。受け身や受け流しは怪我をしないようにしたり、武器の耐久値を減らさないようにしたりするのにうってつけだしな。


 「取り敢えずアレかな? 一人一人得意な分野の訓練をしていこうか」
 「得意な分野の訓練……ですか?」
 「うん。野村君だったら格闘戦の訓練、御門さんだったら剣術の練習、陽乃さんだったら槍と魔法の両立、雫さんだったら弓の訓練、飛鳥さんだったら魔法の練習って感じで、各々が自由に訓練してみようかってね。昨日は連携の練習をしていたみたいだけど、正直連携に関しては十分だと思うから」


 勿論連携をさらに磨くことも一つの手だろう。だが、ずっとこの5人でパーティーを組む訳では無いのだ。
 ならば、特定の組み合わせでしかできない連携よりも、自身の長所を伸ばすように訓練をして、個々の力を高める方が効果的な気がするのだ。
 まぁ、連携が既に十分な域に達しているということもある。だからこそ、今度は長所を伸ばすのだ。


 「それで、そこに俺が加わる。簡単に言うと、俺が一人一人見ていって指導する。それでどうかな?」
 「俺はそれでいいっす」
 「トウヤ君がそれでいいなら、私も大丈夫です」


 野村君と御門ちゃんが賛成して、雫ちゃん達も頷く。


 「まぁ、俺は基本何でもできる……正確に言うと器用貧乏だから、ある程度のものは教えられるよ」
 「トウヤさんは器用貧乏というか、万能ですよね?」
 「自分の口から『俺万能だから』なんて言ったら、『なんだコイツ?』ってなるでしょ?」
 「あの、それを自分で言うのもどうかと思うんですけど……」


 ……確かに。それじゃ謙遜を認めちゃってるね。


 「まあ細かいことは気にしないで。最初は魔力を消費する飛鳥さんから見ていくから、4人は取り敢えず適当にね。模擬戦やっててもいいよ」
 「はぁ、分かりました。陽乃、ちょっと付き合ってよ」
 「オッケー紫希ちゃん!雫ちゃんはどうする?」
 「離れたところからでいいならやる」
 「ちょ、俺は?」
 「1人でボクシングの稽古でもしてれば?」
 「ひ、酷い!」


 後ろでまさに学生と言うべき会話が繰り広げられているが、気にしない気にしない。


 「さて、あっちのことは気にしないで、飛鳥さんの魔法を上達させる訓練やって行きますか」
 「は、はい。宜しくお願いします」


 ということで、訓練を始めようかね。


 「まずは基礎能力の確認かな。使える属性教えて貰っていい?」
 「えっと、私は全属性使えます。特殊属性も含めた全属性です」
 「……そりゃ凄いね」
 「あ、あはは」


 苦笑いを零す飛鳥ちゃんだが、何となくそうなる予想が出来ていた様子。
 まあ今のところ俺も特殊を含めた全属性持ちなどギルドマスター以外で見たことないしな。
 基本属性だけなら全属性も居るんだけど、特殊はこの世界では基本的に生まれつき、つまり先天性のものという認識があるから、後天的に取得するのは難しいのだろう。


 勇者の中でも全属性なんて居なかっただろうし、珍しがられるのも慣れたものなのかな?


 「なるほどね。じゃあ得意な属性は?」
 「一応光が得意だと思います。一番使ってるっていうか……」
 「オッケー。じゃあ光を重点的に鍛えつつ、全体的な魔法技術の向上を目指していこうか」
 「はい。でも、どうやってやるんですか? 一朝一夕にできるようなものじゃないと思うんですが……」


 まぁ確かにこの手のものは、基本的に時間がかかるものばかりである。
 魔法というのは反復練習が大事で、何度も使ってるうちに、無意識で動く魔力操作が効率化されていく。その結果が詠唱破棄なんかだ。


 「取り敢えず、基本的な知識はあるという前提でやるとして、まずは魔法発動時の、魔力の意図的な操作かな」
 「魔力の意図的な、操作?」


 さて、まぁ簡単な話、前にも言ったような『自動組み立てオート』と『手動組み立てマニュアル』という技術の話だ。


 「うん。魔法を発動する時、どうやって魔法が発動しているか知ってる?」
 「えと、魔力を使ってじゃないですか?」
 「まぁそうなんだけどね。俺が言っているのは、魔力をどういう働きをして、魔法を発動しているかってことだよ」
 「え?うーん……」


 唸って考える飛鳥ちゃんだが、正直今の状態で自力で回答に至るのは難しいと思う。
 魔法の知識があって、なおかつ実際に魔力がどんな動きをしているのが捉えられる感知能力が必要だ。プラス頭の回転が早くないと厳しいと思う。


 「あはは、多分わからないと思うんだよね。まぁこの際難しいことは省いて、簡単に必要なことだけ説明するとね……」


 俺は飛鳥ちゃんに、魔法発動時の魔力の働きについて説明していく。


 基本、普通の人は魔法を発動する時に、無意識下で魔力を操作する。この魔力を操作するというのが、実際何をやっているのか。
 簡単に言うと、魔法を発動する時に頭の中でイメージした内容に沿って、魔法の起動式を設定するのだ。ちなみに起動式という言葉が本当にあるのかは知らないが。


 この起動式というのは、大まかに三つの工程にわけられている。
 一つ目が発動地点。魔法の中心点、発動地点となり、基本的にそこから魔法が発動する。
 設定される地点は、恐らく目視した場所だろう。


 二つ目が効果。頭の中のイメージに沿って魔力はその属性を設定する。まぁ簡単に言うと、『火属性の魔力』だったり、『水属性の魔力』だったりに変化するわけだ。
 後は火が暴れるなり水が暴れるなり、効果はイメージ通りに沿うわけだが……漠然としたイメージでは本来の威力を出しにくく、それの補助が詠唱だ。


 そして大事な三つ目、魔法の終了条件だ。これは最も基本的なことであり、最も重要なものでもある。
 魔法の終了条件は、そのまま、魔法がいつ終了するのかを設定するものなのだが……普通意識しない限り、魔法の終了条件は『魔力の供給を終了した時点』ということになっているはずだ。
 魔力を送り続けている限り魔法は維持され、魔力を送るのをやめた途端消える。使い勝手のいいものだ。
 もし終了条件を、万が一にも設定しなかった場合は、術者の魔力が切れるまでずっと魔力を吸い取られることとなる。つまり、某ドラゴンなクエストにあるような、MP全消費魔法『マ〇ンテ』を擬似再現してしまうわけだ。


 だからこそ、これは最も基本的なことであり、最も重要なことなのだ。うっかりで忘れることは無いとは思うが、間違えれば大きなリスクを負うことになるのも事実なのだから。


 ちなみにだが、爆発などの一度魔法が発現したらその後は何も無いという場合は、終了条件等は特にない。つまり、1度きりだ。


 「とまぁ、これが俺の勝手な見解なわけだけど……ついてこれてる?」
 「な、なんとか……」


 飛鳥ちゃんは既に目を回しそうな勢いだった。
 口頭だけだと難しいかな?やっぱり実践しつつ、文字で見せつつなんかが一番いいのだろうが、生憎ここに紙はない。


 おかしいな、同じ高校生のはずなんだけど……知識量の差ですかね。


 「まぁ、つまりは今言ったことを意図的に操作できるようになれば、自分自身に合った魔法を放つことが出来るんだ」
 「自分自身に合った魔法……」
 「ま、百聞は一見にしかず。魔力をしっかり感知するんだよ」


 俺は、わかりやすくするために魔法を実際に発動してみせることに。
 発動する魔法は、飛鳥ちゃんが前に使った『煌熱シリルレイス』という魔法。光属性の熱系統魔法か。それを俺流にアレンジする。


 まずは発動地点。無意識下では目視した場所が発動地点になるが、意識的に発動地点を決める方法は二つある。
 一つは、結構前にルサイアでの魔法の訓練中に編み出した、『頭の中で設定した座標に発動する』というもの。魔法を機械的に捉えた結果がそれだ。
 二つ目は魔力を発動させたい場所に送り込むこと。そこが発動地点となり、発動する。


 正確性を求めるならば前者、スピードを求めるなら後者だが、俺は後者のやり方でいいと思う。なんせ、俺の魔力操作は今や世界最高峰 (のはず)だからな。感覚的とはいえ正確に設定が可能だ。
 魔法を発動する時、魔力が無意識下で動いてるっていうのを認識するまではずっと前者のやり方でやっていたのだが、後者の方が楽だ。感覚的なものになってしまうが、戦闘中はスピードが命だからな。
 ということで、まずは魔力を正面の空中に送り込むことに。


 次は効果の設定。ここは意図的にやるといっても、あまり変わらない。
 魔法の構成を変更ということは出来たりするのだが、正直これは魔法について精通していないと難しいと思う。
 基本的にみんなはオリジナルではなく既存の魔法を使うが、その既存の魔法をアレンジするのがこれだな。
 全くの新規で、一から作らなければならないオリジナルとは別で、アレンジ程度なら即興で作れないこともないからな。
 俺はわざわざそんなことをするぐらいなら、普通に新しい魔法を作るが。


 ただ、今回は手本としてなので、『煌熱シリルレイス』の構成を少しいじらせてもらって、ここに小規模な爆発と、炎を追加させてもらう。


 そして最後、終了条件だが……これは『内部魔力が尽きるまで』ということにしよう。
 ここに限り魔力とは直接的に関係ないのだが、まぁ強く念じることが重要だな。


 ここまでの工程を解説しつつ、時間をかけて魔力を操作している様を見せる。今は特に隠蔽もしていないから、飛鳥ちゃんでも魔力を感知できるはずだ。


 「あの……『煌熱シリルレイス』は私のオリジナルですから、そう簡単には使えないと思うんですけど……」
 「あ、やっぱりオリジナルだったんだね。まぁ見てなって。うーんと……『煌熱爆破シャイレートイース』」


 困惑する飛鳥ちゃんに一言。やっぱりオリジナルだったらしい。
 オリジナル魔法は……まぁ色々あって他の人が発動するには難しいものがあるのだが、そこは俺だ。魔法に関しては右に出る者はいないと思う。一度見ただけでの魔法の完全模倣ぐらいやってみせるさ。


 そして爆発と火のアレンジを加えたのだからもはや別の魔法では?ということで少し名前を考えてから、発動。基本的に魔法の名前なんざ割と適当だが、何回も使うような魔法の時はやはりカッコイイほうがいい。ま、意味も当て字も適当だ。語感だけで決めてます。


 先ほどの魔力工程にそって魔法が発動する。そして発動する魔法は、前回見た『煌熱シリルレイス』のように、まずは光が輝き、熱せられたような、焦げたような臭いが充満する。


 「嘘……私のオリジナルなのに……」
 「ここからだよ」


 少し残念がっているところ悪いけど、この魔法はまだある。
 多分俺も、自分が凄いんだって見せつけたいんだろうな。性格悪いね。


 煌めく光は収まるところを知らず、同時に熱も増していく。そして訪れるのは、まるで何かをひっかくような甲高い音。
 その直後、煌々と放たれていた光は、周囲への干渉をやめて段々と丸く収まっていく。そして作り上げられるのは、周囲の風景を熱で歪ませる、極小の太陽だ。


 「『弾けろ』」


 途端、極小の太陽が内側から弾け飛び───ドゴオォォォォン!!と、想定したよりも大きい爆発が起こった。
 熱波が肌を撫でる前に『次元の壁ディメンションウォール』を、『煌熱爆破シャイレートイース』を囲むように展開する。


 空間を隔てて未だに音が鳴り響く。展開した『次元の壁ディメンションウォール』の内側で起こる爆発は、もはや光魔法の原型をとどめていない。その様子はまるで『炎燃拡散フレイムボム』や『十字爆発クロスプロージョン』を彷彿とさせる程である。
 それでもれっきとした光魔法なのには変わりなく、また、光が弱点の魔物には確かに効くはずなので有用だ。


 「……」
 「言いたいことは山ほどあると思うけどさ、まずはこれができるかどうかだけ確かめようか」


 無言のままの飛鳥ちゃんに、俺はそう促す。
 その顔は呆然としており、目の前で起こったことが信じられない様子だった。


 「……トウヤさんって、性格悪いって言われませんか?」
 「どう思う?」
 「私は……ちょっと自信を無くしそうですよ。フフフ……」


 力なく笑うその姿は、流石の俺も少し引くこととなった。
 お淑やかというイメージが強かった飛鳥ちゃんだが、今ここに至っては完全に自暴自棄担っている。そりゃ、自分のオリジナル魔法が簡単に模倣されて、更にアレンジも加えられたんだ。自信も無くすか……


 少し考えればそこまでわかったはずなのだが、どうにも先走ってしまう傾向にある。反省しつつ、飛鳥ちゃんのケアに務めることに。


 そう言えば前の実力測った時もこんな感じだったし、この娘も割と自信があったのかね。
 多分、上には上がいるって思った方がいいよ。じゃないとやっていけない。







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