俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第26話 鍛錬の後は……





 いきなり仕掛けてくる門真君は、一番俺の実力を理解していると思っていいだろう
 普段は誠実で優しく、気配りもできるのに、戦闘になるとこの切り替え様。彼は、俺が会った勇者の中で一番この世界に馴染んでいるのかもしれない


 変に優しくて誰も殺せないとかいう、少しイライラしてくるご都合解釈勇者よりは全然いいし、むしろ好ましい
 いわば、メリハリがしっかりしているのだ


 「純粋な剣術勝負か。いいね」
 「ちょ、幹!!もうっ!」


 突然仕掛けた門真君に対し、御門ちゃんが声を上げるも、仕方ないとばかりに追撃してくる


 「セイッ!」


 今回は足を離すことは出来ないから、半身になったりという方法では避けられない。だから全て受けるか流すしかない
 だが、勢いを乗せた突きなら首をほんの少し動かせば避けられる


 「最小限の動きでですか!」
 「まぁね」


 引き戻された剣がバネのように戻ってきて、間髪入れずに斬り上げるような一撃
 ───速い。前の試合では、まだ全力じゃなかったらしいと少し感心する。いや、もしかしたらこの前の迷宮で更に強くなったのかもしれない。


 俺はそれを剣で受け、斬り払う
 門真君が一歩後ろに下がる。しかしそれは追撃を恐れて距離をとったというより、敢えて間に空間を開けたようにも見える
 そして、答え合わせというようにピッタリなタイミングで、俺と門真君の間に御門ちゃんが横から入り込んでくる


 まさに阿吽の呼吸。門真君の連携は京極君や夜菜ちゃんだけではないらしい。敵にまわしたら厄介だろう


 「覚悟!」
 「いや怖いな」


 実は俺を殺すつもりなんじゃないだろうな?お嫁に行けないとか言ってたし、割と根に持ってるのか?


 まぁ年頃の女子が半裸を見られ、しかもその後紆余曲折あったのだ。そりゃ根に持つというか、恨んでも仕方ないというか
 俺も年頃の男子なのは置いておこう。年頃だけど紳士的ジェントルマンな対応ができる……つもりだ
 大人っぽいとでも言ってくれ


 そんな思考とは裏腹に、手は御門ちゃんの攻撃を受け流すべく剣を動かし続けている
 常に肉薄しつつ、絶妙なタイミングで距離を取る。俺が普通に動いて良かったのなら変わっていただろうが、今の状態では中々どうして厄介だ
 無論相手の攻撃を全部完璧に防いで、見えないような攻撃をすることも可能だ。だがそれでは結局意味がない
 実力の一端を見せても、俺すら出したことのない全力、その欠片を見せるつもりは毛頭ない


 御門ちゃんの攻撃を防いで、剣を弾き返す。今まで受け流すか防ぐかのどちらかしかしていなかったため、急に剣を弾かれた御門ちゃんは驚いて目を見開く
 その隙に自身の剣を背中に持っていくと、丁度門真君の剣を防ぐ形になる


 「後ろに目でも、ついてるんですかっ!」
 「俺は一応人間だからね?」


 視界を飛ばすことは出来ても、後ろに目がつくことはないから
 だがしかし、足を離せないというのは存外きつい。何せ反転することも出来ないのだから


 「スキありっ!」


 門真君の剣を防いでいるために、がら空きとなった前面を、御門ちゃんが攻撃しようとしてくる


 剣を無理やりこちらに持ってくれば、まず間違いなく門真君は俺の背中に攻撃を入れることが出来てしまう


 ───ならばこうだ


 「『真剣白刃取り』ってね」
 「っ!?」


 空いている左手、その指先で御門ちゃんの剣を掴む
 俺に攻撃を当てるためには、まず俺が対応出来ない数の攻撃か、俺の知覚できない速度で攻撃するかのどちらかが必要だ
 そして、二人同時の攻撃では、俺の対応出来ない攻撃にはならない


 と思っていたが


 「『炎刃フレイムエッジ』!」
 「『ギガブレイク』!」
 「っ!?」


 突如として2人が示し合わせたように魔法を発動した
 御門ちゃんの剣を魔力が覆い、門真君が技を発動する。それは割とピンチで、はてさてどうしたものか


 『炎刃フレイムエッジ』は刃に炎を纏う魔法だ。つまり、素手で掴んでいる俺はダメージを負う
 『ギガブレイク』は一度しかまだ見ていないが、強力な雷みたいなのを纏った一撃と考えていいだろう
 単純にやれば剣を伝って雷撃を食らうかもしれない。魔力で相殺すればいいが、問題はそれは魔法に入らないのかということ


 まぁ魔法とは魔力を使用して起こった現象のことなので、現象ではない魔力をそのまま操作したところで魔法ではないだろう
 だがそれはただの言葉遊びだ。俺としてはどうか。ほぼ反則みたいなものだが、それでいいのか


 否、魔力で相殺なんてつまらない。それは既に何度もやったのだから


 それなら、単純な剣術のみで防ぎ切る


 発動される『ギガブレイク』。バチバチと剣に纏う雷。そして、掴んでいる御門ちゃんの剣には炎が纏い始め、後少しで俺の手へと届く


 というか、割と容赦ないよね君達。下手したら怪我じゃ済まないよ。特に門真君
 まぁ前に使われたことのある『神気一閃しんきいっせん』を使わないだけいいのだろう。あれ使ったら俺も魔法使わんと、宿に被害が出る


 ───よしっ、やるか!


 「フッ!」


 一息で俺は剣を振る。その速度は、グレイさんを優に越えているだろう
 恐らく2人の目には、俺が腕を振りかぶってから先は一切見えなかったはずだ


 「いっつ!」
 「痛っ!?」


 そして全く同じタイミングで、2人は手に持った剣を落とす。二人共に共通しているのは、右手を抑えている事だ


 「ふぅ、危なかったな」


 ホッと、自身の攻撃が成功したことに安堵の息を吐く。まさに胸をなで下ろす思いで、割と緊張した


 「いてて、一体何が……」
 「……トウヤ君、何したんですか?」
 「知りたいかい?」
 「知りたいです!」
 「勿論、自分が何でやられたのか、本人から直接お聞きしたいです」


 ふふん、そうかそうか、そこまで言うなら仕方ないなぁ
 俺はさっきやったことを簡単に説明する


 「この剣身……剣の腹があるでしょ?それを、2人の剣じゃなくて、持っている手の方に強く当てただけ」
 「……え?それだけですか?」
 「うん。それだけ」


 二人共手ががら空きなんだもの。いやまぁプロテクターをつけろって意味じゃなくてね?意識を配れって意味で


 「なんか、釈然としないです」
 「でも見えなかったでしょ?」
 「それはまぁ、確かに……」
 「それにね、これって当てる場所が重要なんだよ」


 地球の頃ならともかく、この世界の肉体じゃ、恐らく剣の腹をぶつけた程度じゃそこまで痛くない
 いくら強めにやっても、衝撃が走るだけで、恐らく剣を落とすまでには行かないだろう。そして痛くなるぐらい強く叩けば、先に剣が折れる可能性もある


 だから、まず振りかぶる直前という、意識が『俺に攻撃を当てる』というのに向いている時を狙う。少しでも意識外からの攻撃ならば、多少は意表をつけるからだ
 そんでもって狙うのは、小手ではなく手の甲。衝撃が突き抜けてくれればいいが、これはハッキリ言って感覚的なものでしか俺は知らないので、実際のところはわからない
 さらに言えば、実際は手の甲の一部を狙っているのだが、それも感覚的なものでわからない。前に[快復魔法]がどれだけ効くかで試している時に、個人的に一番痛かった場所を狙っているのだ
 一種のツボだろうか?剣の腹でも行けたようで、安心している


 「そうなんですか……あの一瞬でそこまで」
 「というか俺と紫希に当てたタイミングがほぼ同じだったのは……」
 「単純に、腕の振り方やら体の動きやら、そういうので速度をブーストしてるだけ。まぁそれにパラメーターを加えてる感じかな」


 ……会話とは関係なく、とてもどうでもいいことだが、こっちの世界に来てから痛みには多少なりとも慣れる。だが、タンスの角に小指をぶつけるとかの痛みは何故か地球の頃のまま、悶絶する痛みなんだよなぁ


 そんな、クソどうでもいい考えをしていることはおくびにも出さないが。俺の口、実は違う人が操ってるんじゃあるまいか


 「それにしても御門さん、本当に問題ないみたいだね」
 「え?」
 「昨日のことだよ」
 「あ、えと、はい。昨日のことは、まぁ確かに多少驚いたしちょっと恥ずかしかったですが、それだけです。トウヤ君こそ、私を気にかけているみたいですが、実際は心の中で役得とか思ってたんじゃないですか?」
 「ハハハ、そんな訳ないだろ」
 「目を逸らさないでください」


 嫌どす。絶対に合わせないわ
 ピンポイントで当ててくるのは本当にどうにかなんないの?惚けるのも難しい


 「なぁ、本当に昨日は何が───」
 「これは私達の問題だから、幹には教えなーい」
 「……へいへい」


 気になった門真君が聞こうとするが、御門ちゃんは教えてあげる気は無いみたいだ。門真君も渋々諦める
 まぁそりゃ自分の恥ずかしい話など、男には聞かせないよな。俺も御門ちゃんの恥ずかしい姿を教えるつもりは無い
 可愛い子に対して独占欲が芽生えるのは至極当然の事だと思います。だから俺が変態なわけでも何でもない。いいね?


 「そ、それにトウヤ君、あ、アレ・・を、あんなに大きく・・・してたじゃないですか……絶対役得とか思ってましたよね?」


 門真君の方から一転して俺の方を向いて、耳元で小声でそんなことを聞いてくる御門ちゃん。息がかかってですね……色っぽい
 ていうかそんなに知りたい?流してくれないの?それに恥ずかしいなら言わなければいいのに
 『アレが大きく』なんて、顔を赤くして言うんじゃありません。エロいから。いや、話してる内容は実際エロいんだが


 「そんなことないって」
 「身体は正直でしたよ」


 エロいよ。そこまで言うんなら、俺もちょっと仕返ししてやろうか?これ以上話を長引かせると門真君にも聞こえそうだし


 「御門さんこそ、昨日は顔が赤くて微妙にを動かしてたみたいだけど、あれ、どんな感じ・・だったの?」
 「えっ」
 「ねぇ、本人の口から直接聞かせて欲しいな?一体何を一心にあんな腰を振って・・・たの?ん?」
 「と、トウヤ君何言って……べ、別に私、そんなことした記憶は……」
 「俺は御門さんのアレ・・の柔らか~い感触までしっかりと覚えてるんだけどなぁ~?」
 「っ~~~~!?」


 アハハ、顔が真っ赤ですぞ御門ちゃん
 ……割と言いすぎた。反省。多分御門ちゃんの中で既に俺は変態にランク付けされてると思う
 そりゃ耳元でそんなことを言われたらそうなるよな。しかもあれだから、敢えて要所要所を強調して、俺なりにエロくしてます


 いやでも、何か言いたくても言い返せないみたいなこの表情は良いですよ?上目遣いも良い


 お礼にこれ以上の事は許してあげよう


 「おい紫希、どうし───」
 「な、何でもない!トウヤ君ありがとうございましたっ!今日もよろしくお願いしますねっ!」


 門真君が声をかけたおかげで、ハッと意識を取り戻した御門ちゃんは、俺にお礼を言ってから宿の中へと戻って言った
 とはいえ、純粋なお礼ではない。語尾を強めてたし、宿に入る時にこちらにあっかんべーをしてたから、多分イライラしてたのだろう。でも悪い方向じゃないと思う。ホントに怒った時はそんなことすらしないからな
 ちなみにあっかんべーは様になってました。美少女がやると絵になりますね


 「おい紫希っ!?あいつ……すみませんトウヤさん」
 「いや別にいいって。今のは俺も悪かったしね」
 「はあ。紫希の奴に何言ったんです?顔真っ赤にしてましたけど」
 「想像力に働きかけるような言葉をね」
 「それは具体的にはなんです?」
 「エロいことだよ」
 「……何やってるんですか」
 「イタズラ心ってやつだよ」


 堅苦しいのはアレだからね。多少なりとも打ち解けるためには、男なら猥談に限る
 勿論イメージを崩さないために、冗談混じりでなきゃダメだ。本気で言ったりしたら、それこそ俺のイメージは一気にエロいやつにまで落ちるからな
 とはいえ、時には本気で言わなきゃいけないこともある。ようは時と場合である


 門真君もその手の話は、積極的に参加はせずとも、話を聞くぐらいはするのだろう。呆れたような顔はされたが、それは心底というよりは、単純に「何言ってるんですか」という感じだった
 つまり、気安いってことだ。それは、関係が比較的良好な方である証拠でもあるはずだ


 「そうだ門真君。みんなに伝えておいてほしいんだけど」
 「はい?」


 ふと、そこで俺は門真君に、今日の予定のことを告げる
 片方が迷宮に行っている間、もう片方は俺と鍛錬、ということを伝える。勿論、護衛もしっかりすると
 そして肝心の護衛だが……最も単純な方法を忘れていたのだ


 「護衛の方は、俺の使い魔が居るから、そいつに任せる。強さは……後で実際に見て。何かあったらその使い魔が助けるか、もしくは転移で駆けつけるから」
 「は、はぁ……トウヤさん使い魔持ってたんですか」
 「まぁね。疑問があったらその都度聞くから、取り敢えずみんなに伝えておいて」
 「了解です」


 そう言って宿の中に戻る門真君。取り敢えずこれでひと段落か
 にしても、グラを護衛に任せるという方法を完全に忘れていた。グラを目印にすれば問題なく行けるし、視界も借りることが可能だろう。何かあった場合も、グラならば自分で対応ができるだろうし、腕っ節の問題なら間違いなくグラなら全員を守りつつ戦える
 タンクとしては最高だからな、あいつは


 さて、問題は鍛錬と言っても何をやるかだよなぁ
 普通に戦闘するだけじゃ、基本的に5対1になってしまう。そうなると、多対一戦法に慣れてしまうんだよな


 まぁ、一人一人個別に長所を伸ばしてみるのも、いいかもしれないね



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