俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第25話 偶然





 「じゃ、俺は床で寝るからお構いなく」
 「そ、それは出来ませんよ!それなら私が床で寝ます!」


 部屋に来てみれば、まずそんなやり取りが繰り広げられている


 まぁどっちがで寝るかというものだ。ちなみに俺の言い分は


 「いや、女の子を床で寝かすわけにはいかないでしょ」


 これに加えて『後君貴族でしょ』である。庶民に近い感覚なんですかね?特に貴族的な意識もないみたいだけど……
 まぁ、ともかく貴族様を床で寝かすのはアレだから


 そんでもってクロエちゃんの言い分が


 「この部屋はトウヤさんが使用している部屋です。押しかけてきたのは私ですから、床で寝るのは私です」


 というもので、確かにそうなんだが……と正論なので続きが出てこない
 だが俺は元々、ルサイアに居た頃は床で寝てたようなもんだし、別に今更ベッドから床に戻ったところでどうということは無い
 一方でクロエちゃんは女の子であるのに加え、恐らくフカフカのベッドで寝てきた可能性があるのだ。その場合、この世界では基本的に靴は脱がないから、お世辞にも綺麗とは言えない床で寝かせるのははばかられるし、何より寝れないだろう。痛くて


 「そこまで言うのなら、俺も力づくで君を眠らせるよ」
 「えぇ!?そ、そんな……」


 いや、まず力づくで眠らせるという言葉に疑問を抱いて欲しいんだけど
 普通聞いてもまず最初に『出来るんですか?』と出てくるだろうが


 「で、でも、私だってこれ以上迷惑をかけるには……あ!」
 「今度は何?」


 なんか嫌な思い付きしたんじゃないだろうなと思いつつ、閃いたとばかりに声を上げたクロエちゃんを見る
 だがしかし、その顔には嬉しさではなく恥じらいが……


 「そ、それなら私とトウヤさんが同じベッドに───」
 「はいはい『寝てくださいねースリープ』」


 とんでもない事を言い放とうとしたクロエちゃんに対し、魔法を発動
 上級闇魔法『闇に沈む意識スリープ』。肉体に直接干渉する魔法は高難易度だから、ゲームでは意外と簡単に使える『スリープ』という呪文も、こっちでは上級……つまり一流じゃないと使えない魔法だ
 ちなみに、闇魔法は特に肉体の内部に干渉する魔法が多いから、上級魔法が意外と多いという情報もあるが……余談である


 そんな魔法を、クロエちゃんの頭に触れて発動。こっちの方が余計な魔力を使わないで済むので好んでいる
 力なく膝から崩れ落ちるクロエちゃんをサッと支えて、ベッドに寝かせる。紳士対応だよね、これ。俺多分、紳士検定とかあったら間違いなく1級どころか段位まで行っちゃうよねぇ
 ちなみにベッドに一緒に寝ること自体は問題ないが、それを女の子から言わせて了承してしまったらもうダメだと思うんだ。主に俺の何かが
 地球の頃は普通に妹と同じベッドとかで寝たりしてたけど、あれは相手が妹だし、例外中の例外


 「全く、手のかかる子というか……あっ」


 そんなに強く寝かせた訳では無いのだが、ベッドに横たわらせた衝撃で、クロエちゃんのローブのフードが取れてしまった
 まぁ勿論今まで伏せられていた顔が見えるのだが……


 「……めっちゃ綺麗だなおい」


 そこから出てきたのは、ふんわりとした金髪。長さはローブの中に隠れてわからないが、多分長い
 そして整った顔立ちに、傷一つない白い肌。この時点で貴族階級なのに裏付けが出来たわけだが……


 とにかく美人なのだ。いや、言動や見た目的に多分年齢は俺と同じぐらいだから、美少女か
 可愛いというより綺麗という言葉の方が似合うような容姿だ


 ───問題は、朝まで何事もなくいられるか、だが……


 「……うん。今日は寝ないでいようかな」


 多分寝起きとか、寝相で体が勝手に動いて~みたいな感じでラッキースケベありそう。俺の【運】が、こんな絶好のタイミングで見逃すとは思わないんだよな
 ならば一層の事寝ないで耐えるしかない!


 部屋に備え付けられている椅子に腰をかけつつ、俺は自身に『眠くならない』という暗示をかけた
 他人へはともかく、自己暗示自体は俺は得意だ。思い込みが激しい訳では無いが、暗示というものをそう捉えて受け入れることが出来る
 こっちに来てからは魔法というものや、肉体がこちらに適応して強化されたこともあってか、地球ではありえないほどスムーズに行くようになっている


 だからこそ、この世界に来て初日の暗示は驚くほど効いた。心の底から思うことも出来たし、暗示もしやすかったから
 その結果が、ゴブリンとかを倒しても何も感じなくなったとは、考えたくないが


 スッと眠気が飛んだ思考と共に、俺は暇なので服の中からグラを呼んだ
 夜ももう短い。グラと遊んでいればすぐに経つだろう






 ◆◇◆






 翌日、特に何事もなく朝を迎えることが出来た俺は、早々に庭へと移動した
 グラと遊んでいるのも悪くは無いのだが、少し体を動かしたくなったのだ
 後は、女の子と一緒の部屋にいるのが落ち着かなかったからというのもある


 「ヤァ!ハッ!」
 「セイッ!シッ!」


 いざ庭へ出ようとすると、先客が居たのか声が聞こえてくる
 女と男の声。庭で試合でもしているのか、たまにキンッ!と剣を合わせたような音が聞こえてくる
 それもどうやら速い速度で行われているらしく、音の頻度は多いくせに、出どころがしょっちゅう変わる 


 「ちょっと覗いてみるかな」


 恐らく結構な実力者が戦っているだろうと見当をつけ、少し覗いていくことに
 庭へと続く扉を開けると、案の定そこでは2人の男女が戦っていた
 ただ、その2人は知り合いだったが


 「なんだ、門真君に御門さんか。道理ですごい速さなわけだ」
 「えっ!?」
 「っと。あ、トウヤさん、どうも。奇遇ですね」


 そこで庭を走り回りながら剣を合わせていたのは勇者の門真君と御門ちゃんだった
 十中八九、ラウラちゃんが超VIPと言っていたのは門真君たちのことだろう。薄々予感はしていたが、的中したか


 「俺もこの宿に泊まってたからね。従業員から『超VIPさんが泊まってる』って昨日聞いた時はもしかしてと思ったけど、やっぱり門真君達だったか」
 「へぇ、そんな偶然もあるものなんですね」
 「だね。今は朝の鍛錬か何か?」
 「えぇまぁ、そんなところです」


 少し濁したのは、普段はこんな感じではないからか
 少なくとも少々目をそらしたりしている御門ちゃんを見るに、昨日の鬱憤を発散していたってところだろうか
 それで白羽の矢が立ったのが門真君だったと……まぁ妥当だな。気にかけてくれるだろうし


 単純に鍛錬だった可能性もあるが


 「御門さんは……大丈夫?」
 「え?あ、はい。大丈夫です。昨日のことはそもそもトウヤ君が悪い訳じゃないですから……ちょっと、アレでしたけど」


 一応気をつかったのだが、少なくとも表面上は問題なさそう。少し大人しいというか、そうう印象は受けるが、ただの反動だろう
 最後につけられた言葉に関しては黙秘する。確かにアレだったが、まじでラノベか!
 後は内心でどう思っているかだが、頼むから敵意なんかは向けないでほしい


 「……昨日のこと、俺は具体的には聞いていませんが、迷宮でハプニングがあったとか。少なくとも飛鳥の話ではほとんど・・・・問題ないみたいです」


 隣まで来て、小声でそういう門真君は、「ただ……」と続きを告げる


 「飛鳥や陽乃が言うには、少し気になるところがあるみたいで。俺はよく分からないんで、後で飛鳥達に聞いてみてください」
 「オーケー」


 気になるところね……多分そういう言い方にするからには、恐らく重大なことではないのだろう
 問題も基本的にはないみたいだし、取り敢えず普通にする分には問題ないのか


 「そう言えば、トウヤさんもここに用ですか?」
 「あぁ、俺は朝の素振りに」
 「なるほど」


 日頃の鍛錬は大事ですよ。そこまで熱心にやってるわけじゃなく、ただ単に作業としてこなしている感じだが


 すると、門真君があっと声を上げる


 「ん?」
 「いえ、良ければトウヤさんも一緒に混ざりませんか?こちらの試合に」
 「ちょ、幹。流石にそんなことしたら私達勝てないって」
 「勿論トウヤさんにはハンデをつけさせてもらいます。『その場から足を動かさない』『魔法を使わない』『自分から攻撃を仕掛けない』この三つがあれば丁度いいのではないでしょうか?」


 ふむふむ、門真君はなかなか言うね。昨日の今日でハンデをつけてくるか
 まぁ本音を言えばその程度・・・・のハンデじゃ俺を倒せないとは思うが、確かに良いのではないか
 俺と対等に戦うには、俺をどうこうするよりも自身を鍛えるしかないと思うからな


 「ま、まぁそれなら……ちょっと昨日のこともモヤモヤしてるので、それも込みでいいのなら」
 「俺はていのいい憂さ晴らし相手か」
 「あ、いえ、そういう訳じゃなくて───」
 「わかってる分かってる。その条件でいいよ、門真君」


 やっぱり本人自身も気になるところがあるのか。当事者の俺に多少なりともぶつければスッキリするだろうが、果たして


 「それと、勝負は2対1でお願いします。正直、これだけハンデをつけても1対1じゃまるで勝てる気がしないので。でも2対1なら」
 「いいよ。ただしここは宿だから、宿に被害が及ぶのだけは勘弁してね」
 「それは勿論です。勇者としてお披露目されて2日目にそんな事件を起こすわけには行かないですからね。それに、これでトウヤさんの全力を見れるってもんですよ」


 それもそうだ、と軽く同意すれば、笑みが帰ってくる。どうやら門真君は俺の全力を見たいようだ
 そして、その笑みが何となくの合図だったのだろう。音もなく門真君は仕掛けてきた


 
 

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コメント

  • キャベツ太郎

    イミティ まぁ、一応庇ってくれてる(庇ってるつもりなどないと思うが)んだからほっとけばいいんじゃねーの?
    別に喧嘩してる訳でもないし。
    279325だってアンチじゃなく、意見を言ってるだけだしさ、一文目でも分かる通り面白いとは思ってるみたいだからさ。

    1
  • イミティ

    >>Ashley
    ありがとうございます。とはいえ、そんな対抗的にならなくても……
    変に長くすると、やっぱり蛇足と思われてしまうこともありますから。仕方の無いことなんですよ

    ただまぁ、直そうと思って直せるものでもないので難しいところですが。"キャラクターの心情がわかりやすくなる"、と言って貰えると、ありがたいです。

    1
  • イミティ

    >>ノベルバユーザー279325
    えっと、この小説は書きたいことだけを書くスタイルと最初にも明言していますし、別にいいかなと。
    あと、どこの部分を言われているのか全く分からないというのもあります……無駄かなと思いながら書くことはあまり無いので

    3
  • Ashley

    どうでもいいことに文字を使ってもいいです!面白みも深まります。

    100文字の話を200文字にする事でキャラクターの心情がわかりやすい!ここ重要!

    4
  • ノベルバユーザー279325

    どうでもいいことに文字使うな、面白みが薄くなる。
    100文字の無駄話が、200文字の努力を無駄にする、ここ重要!

    0
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