俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第24話 多分そのうち後ろから刺されるかも





 「取り敢えず俺が取ってる宿に行こうか。行くあてがないんじゃ、どうしようもないからね」
 「は、はい……」


 頼む、頼むからもう少し疑って!
 男が宿に女の子を連れてくんだぞ?そこに疑いを持つんだ。助けてくれた相手だからって、下心が無いわけじゃないんだからさ
 まぁチキンなので実際に手は出しませんがね


 「そのローブを着てるのは?」


 取り敢えず先導しつつ、会話のため一応それらしいことを聞いておく。未だにどんな顔なのか体なのか(変な意味じゃない方で)見ていないので、少し気になったのもあるが


 「これですか?その、少し顔を隠しているので……」


 顔を隠す必要がある……頼むから指名手配犯とかやめろよ?普通に貴族ぐらいにしとけよマジで
 こう、ほかの理由で濁して欲しい。絶対事情を知ったら巻き込まれるタイプだから
 ゲームで言うなら、事情を何らかの形で知った途端クエストが始まっちゃうタイプだから


 まぁ、少なくとも今は顔も体も見れないということね。声は澄んでて、勝手に脳内イメージは美少女に仕立てあげている
 まぁ、この世界の女性って、地球で言う美少女やら美人やらが多いから、実際可能性は高いぞ


 結局話は途切れてしまったので、別の話題を出すことに


 「この辺に来たことはあるの?」
 「えと、はい。前に数度だけ……その時は何れも昼間でしたから、夜はこれが初めてですが」


 初めてなんですかそうですか。裏路地には入らない方がいいよ、うん
 もしあそこで俺が駆けつけていなかったら、この女の子はどうなっていただろうか?18禁展開になる可能性もあったが、実は意外と強くてっていうことが無いだろうか
 もし仮に、というか確定しちゃってるが、この娘が貴族だった場合、この国は知らんがルサイアでは英才教育みたいな感じで、基本的に弱い魔物を倒せるぐらいの魔法を、高位の魔法使いを家庭教師として雇って子供に教えさせるらしい
 つまりこの娘も魔法を覚えている可能性は高く、自力で脱出できた可能性もあるのだ


 ……まぁ、あの感じだと、例え魔法を使えても使う余裕までは無かったっぽいがな


 「夜に裏路地には入らない方がいいよ。それなら普通にこの人通りの多いメインストリートで、目的の方向に歩き続けた方が安全だし」
 「そうですね。今は反省しています……」


 しょぼんと隣を歩く姿は、哀れみを誘うというか、背中がとても小さく見えます
 ちなみに本来の身長は恐らく160ぐらいだろうか。そのぐらいの身長の女子って多いよな
 年齢の方は如何程なのか。流石にそれは聞けないがね


 「あ、そう言えば名前を聞いてなかったね」


 そこで、ふと話題転換を考えていたら当たり前のことを聞いてないと思い当たる
 今更ながらまだ聞いてなかったなーと気づいたんだが、心の中では『女の子』で完結してたからな


 「俺は刀哉だ、探索者をやってる。」
 「トウヤさんですか。えっと、私の名前はクロエ……クロエです」


 一瞬続きを言いそうになったのか、はっと口をつぐんだ後、女の子改めクロエちゃんはそのまま名前を名乗った
 クロエ……まぁ続きに言いそうになったのは、十中八九家名だろ。聞かなくてよかった。聞いてたら俺の【運】がまた良からぬことをする可能性があったからな


 この世界では、一般市民には家名が無く、あるのは貴族なんかだけ。だからこそ、相対的に同じ家名になる確率は低くなる。皆無と言ってもいい
 逆に言えば、家名を言えば家なんかはすぐに特定されるのだ。日本なら『鈴木〇〇です』と言ったところで、どこの家なのかは数が多すぎて分からんが、この世界では一つしかないから特定も容易
 名前さえわかれば誰にでも簡単にできてしまうのだ


 そんな考えは顔に出さず、俺は再び途切れた会話をどうにかして紡ぐことに専念した




 ◆◇◆




 世間話や、クロエちゃんの方からの話を聞いたりしていると、ようやく宿に戻ることが出来た
 何気に迷宮から宿までゆっくりと歩いて移動したのは初めてで、少々新鮮な気分だったのだが、クロエちゃんの方も割と楽しんでくれたみたいで、話している最中は終始口元が笑っていた
 愛想笑いじゃないことを願う


 宿の扉を開けると、もう深夜もいい時間帯なのに、ガヤガヤと話し声は聞こえる。帰還した探索者達だろうか?いや、一般の人も混ざってるかもしれない


 「あ、おかえりなさいトウヤさん!って……そちらはどちら様ですか?」


 早速俺たちを迎えてくれたラウラちゃんは、隣にいるクロエちゃんが気になった様子


 「あぁ、こっちはクロエ。実はね……」


 俺は、クロエちゃんが不良に襲われてて、丁度それを俺が助けたこと、行くあてが無いから宿を紹介したことを伝える
 ちなみに貴族かどうかは勿論伏せている。ラウラちゃん一般市民だしね。ギルドマスターなら遠慮なく巻き込むけど


 「成程……つまり、そちらのローブを着た人は女の人ってことですか?」
 「うん、そうだけど」
 「……ふーん、そうですかそうですか」


 なんだろう。何かやたら不吉な笑みなんですが。てか不良から助けたとかの話より女か気になってるんですかい


 「えっと、何か?」
 「クロエさんと言いましたね。私はこの宿でトウヤさんの・・・・・・お世話をしているラウラと言います。よろしくお願いしますね」
 「は、はい。こちらこそ……」


 いや、君は従業員であって俺の専属ではないだろうが。その言い方は間違ってないけど間違ってる
 やたら威圧的な態度で迫るラウラちゃんに、クロエちゃんも若干引き気味の様子。彼女はこの娘が客だってことをホントに理解してるんだろうか


 「……と、言いたいところなんですが、実はもう宿の部屋がいっぱいなんです。どうしてもとなると、ツインルームを1人で使用している誰かと相部屋になってしまいますが……」
 「あー、そうなのか。相部屋って、この宿に泊まってるのって基本男だよね?」
 「はい。今日はほとんど男性ですね。一応女性も居るんですが、ちょうどその人たちがVIPの方で……」


 いや、タイミング悪いな……VIPとは一緒に出来ないしな


 「うーん、だからといってさっきの今で男との相部屋は無理か……ラウラちゃんの部屋は?勿論お金は払うから」
 「私の部屋は母と父も居ますので、流石に四人となると……」
 「となるとホントにどうするか……」


 俺とラウラちゃんは二人して悩む。俺の部屋はシングルだからそもそも除外しているし、一番頼みのラウラちゃんの部屋は無理だ


 「……一層の事俺の部屋使う?俺今日は別のところ行くからさ」
 「えぇ!?トウヤさん違うところ行っちゃうんですか!?」
 「何で君が驚くよ」


 客足は変わらんじゃないか。結局空いた枠にクロエちゃんが入るだけなんだから


 「い、いえ、私の方が別の場所に行きますから、そんな事しなくても」
 「いや、あんなことがあった後に女の子を外に出せるわけないだろ。俺なら基本どこでも行けるし、最悪迷宮で一泊過ごすことも出来る」
 「それは危ないです!」


 いや探索者は迷宮で一泊することもあるんじゃないのかよ。俺ってそんなに弱く見えるか?
 1回勇者達と戦っているところを見せてやろうか?そしたらきっと『トウヤさんなら大丈夫かー』となるはず
 勇者をいじめてるとかで俺の評判下がりそう


 「……な、なら、トウヤさんの部屋で構いませんっ」
 「いや、俺の部屋シングルなんだけど」
 「それでも構いませんっ!」


 ありゃりゃ、変な方向にがんばってるぞ?


 「ちょ、それは流石に無理ですよ!年頃の男女を同じ部屋にするなんて!しかもシングルですよ!?」
 「じゃあ私はほかの場所に行きます。これ以上ご迷惑をおかけするわけにも行かないので」
 「そんな滅茶苦茶な!」


 厄介すぎるだろこの娘


 「……まぁ、俺はクロエちゃんが構わないのなら別に良いのだけど」
 「トウヤさん!?」
 「いやいや、勿論手は出さないし、同じベッドでも寝ないから」


 ベッドで寝るのはともかく、手は絶対に出さない自信があります
 ラッキースケベは防げないものとしても、自発的な行いは全て自戒できるのですよ。何せ、地球の頃は妹達に散々弄ばれた経験があるからな
 それに比べれば難易度はイージーだ


 しかしそれでもラウラちゃんは納得がいかないらしいな


 「そういう問題じゃありません!どうしてもと言うなら私も───」
 「ラウラちゃん、ここは俺を信じてくれないかな?」


 ちょっと話がややこしくなりそうな予感がしたので遮る。というか、もうこれしかない
 ラノベとかでよくある、相手の目を真正面から見て、真面目な顔で『俺のことを信じてくれないか?』というやつだ。今回は相手はヒロインじゃないけど、多少なりとも好感度があれば───


 「……その言い方は、ズルイです。トウヤさん……」


 ハイ行きましたー!ありがとうラウラちゃん!騙されてくれて!お礼にこの国にいる間はずっとこの宿使わせてもらうよ!
 若干赤い顔で目をそらす姿はホントに可愛いですありがとうございます。純粋なのはホントに素晴らしい


 「大丈夫、何も問題は起こさないから」
 「もう……今回は騙されてあげます」


 あぁ、その一言は『俺的女の子に行ってほしい言葉ランキング』の上位に位置してる言葉じゃん……
 もうね、[完全記憶]で保存したから。いつでも脳内再生できるから(ヤバめ思考)


 ということで結局俺はクロエちゃんと一緒の部屋になることになった
 ラッキースケベだけは気をつければ、ようやく今日は眠れますね!


 後ろから複雑な表情で見送るラウラちゃんに『これ、嫉妬してるルートないかな』と心底最低なことを考えつつ、俺はクロエちゃんと共に一緒の部屋に向かった
 ちなみに状況を見守るのに徹していた当事者であるクロエちゃんには、『さっきの俺とラウラちゃんのやり取りを羨んでいるのでは?』とホントに自意識過剰なことを考えたのは内緒


 

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コメント

  • 空白

    言ってほしいが行ってほしいになってますよ
    意図だったらごめんなさい

    1
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