俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第13話 選手交代





 俺の【運】が他人には作用しないということがわかった現在、長い迷宮の通路を抜けた門真君達は、無事帰還することに成功した
 ───これって、『俺の【運】が作用しませんように』と俺が思ったから、それに対して【運】が働いたとか?とすると、何処か本末転倒な気がするんだが───
 そんな思考が頭をよぎったが、すぐに消え去る。ここは自身の能力をうまく制御できたと思うことにしようと考えたからだ


 「結局護衛をしただけだね、俺は」
 「いえ。それが一番いいんですよ。トウヤさんが何かするってことは、俺らに何か駄目な点があるってことですから。逆にトウヤさんが何もしていないと言うなら、それは俺らもよく出来たってことですし」
 「確かに、見た限りでは十分やっていけそうだったよ。安全に慎重に、かつ進むペースは落とさず」
 「そう言ってもらえると僕達も嬉しいです」


 隣にいる天貝君がはにかんで笑う。実際十分すぎるほど良く出来ていたし、正直俺が教えることは何もないと思う
 戦闘力を更に高めるとかだったら色々と言えるかもしれないが、普通に迷宮攻略をしていればスキルもレベルも自ずと上がっていくし、ギルドマスターに依頼された内容は既に達成されているのではないだろうか


 「護衛が要らなくなるぐらいに鍛える……はっきり言って、もう達成してるよね」
 「はい?えぇと、そうですね。今回だけに限るなら……」


 俺の話の脈絡のない言葉に対する曖昧な肯定は、恐らく唐突なことに戸惑ったのではなく、謙虚さから来るのだろう
 だが実際俺は護衛役の任すら果たすことは無かった。なんせそんなに危険になる場面がないのだ。それも単に門真君の的確な指示、判断によるものが大きいと思う


 「さて、この後門真君達はどうする?」
 「俺達は、そうですね……」
 「一度戻って、装備の確認とかしとく?」
 「そうだな。なんで、俺達は取ってる宿に戻ります」
 「了解。俺は次の5人のところに行ってくるから」
 「……その、色々すみません」
 「構わないよ。受けた以上しっかりこなすのは当たり前だから。それに、パーティー戦は見てるだけでも色々と参考になるからね」
 「そうなんですか。じゃあお言葉に甘えて、これからも宜しくお願いします」
 「りょーかい」


 申し訳なさそうに言ってくる門真君に、俺は笑顔で答える。実際面倒くさいとも退屈だとも思っていないしね。無論少しはあるかもだけど、それ以上にパーティーでの戦い方を傍から見て学べるというのは良いのだ。それに相手は勇者。こんな機会中々無いだろうし、別に良いと思う
 それにより、多少の遠慮はしつつも門真君は俺にお願いしてきたので、快く答えておいた






 ◆◇◆






 「ふぅ、ふぅ、私たちの、番ですか……?」
 「んっ……頑張ります」
 「はぁ、はぁ、連携の、確認は、済んだので、いつでも行けます!」
 「全然行ける様子じゃないんだけど?」


 ギルドの訓練場についた俺を迎えたのは、疲労しきった御門ちゃん、雫ちゃん、陽乃ちゃんと、それを苦笑い気味に見つめる飛鳥ちゃん、そして笑顔でいる野村君だった


 「体力配分は気をつけるようにって言ったのに……」


 苦笑い気味に告げると、飛鳥ちゃんが反応する


 「いえ、最初は普通に連携の確認で、体力が切れないようにちゃんとやってたんですが……途中でギルドマスターがお相手してくれるということで、それに乗りまして……」
 「……あんの空気読まねぇ人はホントにマジでさぁ」


 ギルドマスターはなんなんだ?俺に嫌がらせがしたいのか?勢い余って口調が変わったじゃねぇか
 幸いにして小声だったので、飛鳥ちゃんには聞こえなかったらしく特に反応した様子はなかった


 「まぁ事情は分かったよ。取り敢えず『巻き戻しタイムバック』」


 便利な体力回復───厳密に言うと対象の過去の状態の復元する───魔法を5人を対象に使用する
 全体を戻してしまうと、鍛錬した分の身体の解し具合、ついた筋肉や鍛錬の感を忘れてしまう場合も否めないので、戻すのは肺と心臓の状況、脚の最小限の筋肉疲労のみだ
 はっきり言って、体力スタミナはどうすれば戻せるのか分からんから、こんな感じだろうなという漠然としたものでしかないのだが


 しかし少なくとも効果はあったようで、体力が残っていた二人はともかく、息もたえたえ、喘ぎ声の様にも聞こえていた3人の息遣いがスッと収まる
 ……べ、別に、エロいなんて思ってないんだからねっ!


 「わっ!すごっ!!」
 「元気が戻った」
 「これ、トウヤさんの魔法!?」
 「そんなところ」


 3人にそう言って、すると飛鳥ちゃんからトントンと肩を叩かれる


 「ん?」
 「その、今の魔法後で教えてもらえないでしょうか?」


 今の魔法というと、『巻き戻し』か?飛鳥ちゃんは多分[時空魔法]に適性があるから教えられると思うし、別にいいかな?
 どう返答するか悩んでいると、飛鳥ちゃんがあわあわとしだす


 「す、すみません!人の魔法を聞くのはマナー違反ですよね!」
 「……あぁ、別にそれで悩んでいた訳では無いよ。教えることは構わないんだけど、[時空魔法]を持ってるのかなって思って」
 「あ、そういうことでしたか……すみません取り乱したりして。ちゃんと持ってますよ。もしかして、教えていただけるのですか?」
 「うん。今度時間がある時に教えてあげるよ」
 「ホントですか!ありがとうございます!!」


 喜びからか、飛鳥ちゃんは俺の手を両手で掴んで胸の前まで運んでいった。無論そのままタッチなどあるはずも無く、嬉しすぎてついつい手を掴んでしまったという感じだろう
 まぁ美少女の柔らかでスベスベな手で握られるというのは中々に良いものなので別に不服はないが


 「───あっ、その、ご、ごめんなさい」


 すると自身の行動に気づいた飛鳥ちゃんは、喜色に染まった顔を一転、恥ずかしかったのか紅へと染めて、パッと手を離した
 ちょっと情緒不安定なのかな?そこがまた可愛いというか、良いという───
 はい。変質者となりかけた思考はしまっちゃおうねぇ


 「いいよ。喜んでくれたのは伝わったから」


 ただ問題は、教えたところで使えるかというものなんだよなぁ
 実力を測った後に言われた言葉通りだと、飛鳥ちゃんや夜菜ちゃんの知る[時空魔法]は、時の進みを遅くする、もしくは速くするといったもので、『時間を止める』『時間を戻す』と言ったことは出来ないのだとか
 やはり高レベルな魔力操作技術や、魔法への技術的な理解度とかも関係しているのだろうか
 それとも、俺が特異なだけなのか
 今回確認するにはちょうどいいのかもしれない


 「さぁ、準備して。門真君達は何事もなく無事に終われたから、多分御門さんたちも大丈夫だとは思うけど」
 「うっわプレッシャーだなぁ」
 「そんなんじゃないって」


 実際大丈夫だとは思うんだが、よく考えればこっちは指揮官が居なくないか?
 いや、でもまぁ連携確認をして大丈夫みたいだったし、うん。見てから決めよう






 ◆◇◆






 迷宮に入れば、そこからは俺は居ないものとして扱う
 今回はスキル無しの、自力で気配を消してみたのだが、それでも御門ちゃん達には感知できなかった様子
 前にやったやり取りをもう一度行い、現在は気配を消して付いて行っている


 それでも何故か雫ちゃんの視線を気にする俺。たまに目が合うんだが、これ俺のこと見えてるんですかね?いや、俺は気配やらなんやらを消してるだけであって、別に透明人間でも幽霊でもないんだが
 それでも極限まで注意を逸らし、多分色々と焦点が合わせられないようにしているのだろうが、雫ちゃんのあのキラッキラした目は逸らせないらしい
 まぁ無表情っ娘のキラキラ目は可愛いので良しとしよう
 ジト目と並んで萌えるからね
 

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