俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第12話 自分の力が信じられなくなる……そうならないように気をつけたい





 門真君達を見ていると、成長は早いのだろうが、やはり自身とは違うと思わざるを得ない
 少なくとも、彼らは勇者の中でもトップクラスの実力と、それ以上の潜在能力を持っているはず。それは拓磨や美咲、樹、叶恵に匹敵するか、超えるほど
 無論、俺も今の4人は見ていないので分からないが、少なくとも最後にあった時と比べると、やはり門真君達の方が、戦闘の立ち回り、運び方、意識なんかの練度が高い
 そして今も着々と力をつけ、1戦1戦を経る度に強くなっているのがわかる


 ───それでも、決定的に何かが俺とは違う
 成長速度、成長力、スキル量、レベル、パラメーター……
 何一つ、俺に勝っているものはないように思える。いや、実際無いのだろう
 何が違うのか。同じ勇者であれど、こうも違うのは何故か。俺が特別強い?それはなぜ?
 例えば拓磨や門真君は勇者の中でも突出している。他の勇者と比べても一つ二つ抜きん出ているだろう
 だが、俺と比べるとどうだ?パラメーターをギリギリ戦えるまで下げて、スキルを封印したとしても、俺は拓磨と門真君二人を同時に相手しても遅れを取らない気がする
 つまり、拓磨達が突出しているように、俺も何かが理由で抜きん出ている。地球の頃からのスペックか、それとも別の何かか
 そろそろ偶然じゃ片付けられないような気がしてきたと、さらに思考を深める


 最初は、この世界に移動する際に、特別俺に力が集まったのかと思った。勇者としての力を召喚された全員に授ける際に、何かしらの要因で余ったリソースがたまたま俺に集まり、それが今なのではないかと
 だが、そもそもがおかしいのだ。スキル無しの状態という以上、余ったリソースを分け与えたわけではなさそうだ。にも関わらず、スキルの取得は速すぎる。更に時間が経つにつれ成長速度が上がっていく・・・・・・のだ。おかしいと言わざるを得ないだろう
 初期の頃を思い出してみれば、約1ヶ月間剣を振り続けて、[剣術]はようやくレベル8だった
 それが今はどうだ?取得してすぐにレベルが4から6辺りまで上昇し、僅か1日でレベルが8まで上昇することも珍しくない。明らかに異常であると言いきれる。レベル9から10までの期間が長いぐらいだが、それも今では1日から2日で上がる
 挙句の果てには、戦闘を行うだけで関係ないスキルも全て上がっていくのだ。[交渉]や[速読]なんか、全く戦闘に関わりが無いにもかかわらず、レベルを上げている
 スキルの取得に関しても、どんどん簡略化、緩和されている気がする。いつの間にか知らないスキルが増えているし、更に魔石からもスキルを取得できる


 ……いや、それを思えば、【異能】というもの自体がおかしかったのだろう。少なくとも正常ではない
 異なる能力、異常な能力、異能が何を指しているかは分からないが、どの辺が【能力】と違うのか、何が【異能】なのか。それすらも分からない。少なくとも、正常の勇者ではないだろう。最悪勇者でない可能性・・・・・・・・も否定しきれない
 ユニークスキルにある[因子適応]も、効果はヤバイし、字面も変だ
 因子……ある結果を引き起こす元になる要素。この場合、結果というのは【異能】が増えることだろうか
 ならば、この場合の"因子"とは何の事を言っている?引き起こす元になる要素、それに当てはまるものは何だ?
 適応という言葉から、その"因子"が"適応"していくということなのだろうか?何かが適応していくにつれて、俺は【異能】が増えていく。その"何か"とは何だ?俺は、一体何に適応しているんだ?




 思考が定まらずにいれば、ハッとして意識を取り戻した。どの程度思考に耽っていたのか確認すれば、まだ門真君達が戦い始めて数秒も経っていない
 無意識に思考速度を速めてしまうほど、俺は自身の強さの根元ルーツを知りたくなっているらしいなと、少し認識を改める。棚ぼたの力というのはやはり可能性が無い訳では無いが低く、俺自身に何が特異性があるのではないかと
 つまり、他の勇者に俺と同じようなものは認められないというわけで、やはりこの力、成長力は異常であると、もう何度目か改めて思い知らされる


 この世界で強いことは良いことなのだろうが、それがどこから来たものなのか分からないのは不安で仕方がない。だからこそ、俺は知りたいのだろうが


 「───っと」


 またしても思考の沼にハマりかけたのをかぶりを振って回避し、そろそろかと時間を確認してから気配を戻す


 「門真君、そろそろ時間───」
 「敵か!?すぐ後ろだ!!」
 「ッ『炎燃拡散フレイムボム』!!」


 まさかの詠唱破棄!?しかも『フレイムボム』かよ殺す気か!?
 思いっきり投げたけられた『フレイムボム』の、熱量が圧縮された玉が俺に向かっている。[危険予知]が何も言わないから怪我には程遠いのだろうが、それでも危ないったらありゃしない


 「『審判の右手』」


 こんな時のために作ってあってよかった『審判の右手』!当て字をつけるなら『審判の右手ジャッジメント・ライト』!安直過ぎる!!
 『フレイムボム』をゲートの内側へとご案内。ストックが増えたのだが、間違えて暴発しないようにしよう


 「───落ち着いて、俺だから」
 「っ、トウヤさん!?」
 「何でここにっ!?」
 「私の魔法ぅ~!!」


 うん。夜菜ちゃんは自分の魔法が呆気なく防がれたことに酷く悲しんでいるらしい。でも確認もせず上級魔法を撃ってきた夜菜ちゃんも悪いと思うんだ。下手したら死ぬからね、上級魔法とか
 まぁ急に自分たちのすぐ背後に気配が出現したら驚くだろうけどさ
 そして黒澤君。その言い方はとても失礼なのだが。あれか、[生体遮断]で俺に対する注意を逸らしてたから、俺が護衛しているという事実を覚えていないという


 「そろそろ時間だよって伝えに来たんだけど……」
 「イヤァ!!そんな何でもないように伝えないでください!ウチの心が折れてしまいますぅ!」
 「夜菜落ち着けって」


 どうやらよほどこらえている様子。崩れこみながら『私の渾身の魔法が~!』と叫んでいる姿は、少々憐れみを誘う
 キャラが固まってきましたね。悲壮感を露にするとこうなると


 「えっと、門真君。そろそろ時間だから戻るよ」
 「あ、はい。それと、夜菜の事は気にしないであげてください。あぁ見えて、結構自分に実力を持っているふしがあって」
 「あぁなるほど。それでね……まぁ分かったよ。元々スルーは得意だからね」
 「後、これは俺からなんですが、その気配はどうにかしてもらえませんか?正直ビックリします」
 「……それも善処します」


 スキルを使用しない方がやはりいいのかもしれない。魔物の中には気配を掴むのに長けているやつが居るかもしれないから気をつけんといかんが
 後は、気配を戻す時は少し遠くでというぐらいだな。こればっかりはどうしようもない


 「さぁ、このまま進んでボスを倒して転移をするか、戻って転移をするか」
 「戻りますよ。先に進むと予想外のことが起こるかもしれないですし」
 「それがいいかもね」


 パーティーでは、それだけ歩みが遅くなる。無論慎重といえばそこまでだが、今回の場合は時間までに帰らなければならない
 そんな事態が、勇者である以上これからあるかもしれないのだ。そう考えると、こういう時の判断というのは割と重要になってくる
 つまり、突っ切って進むか、一度戻るか


 門真君の判断に任せた俺は、また影で護衛に徹することに
 夜菜ちゃんに対しては……一言、「今度練習に付き合ってあげる」と少々自身を買いかぶりすぎな発言をしてみたが、意外と効いたらしく、「本当ですか!?」と言われたので頷いてしまった
 うむぅ、自意識過剰じゃなかったのは嬉しいのだが、問題は容易にそんなこと言っておいてちゃんと教えられるかだよなぁ


 一先ず夜菜ちゃんへの対応は少々意識するものとして、次の5人組の方も無事に乗り切れることを祈るばかりだった







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