俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第9話 雑すぎる実力検査4





 「次は僕が行きます」
 「了解。いつでもオーケーだよ」


 やって来たのは天貝君。天然パーマがいい具合に柔らかさを演出している
 演出って言葉は使いませんねはい。何かの役かなにか?


 雫ちゃんと御門ちゃんは、気持ち少し長くやっていたから、天貝君の時間は少々短めに。一体何で来るのやら
 少なくとも手に持っているのは剣らしい


 「行きます!」


 最初は素直に距離を詰めてくる。剣持ちとしてはやはりリーチ内に入れたいのだろう


 俺もいつもの手順で『無限収納インベントリ』から剣を取り出しつつ、相対


 「はぁ!!」


 まずは上段からの振り下ろし、左足を引いて回避
 しかしその直後、地面につく直前で剣が切り返される。それを俺も剣で受け、外へと逸らす


 「ッ!!」
 「へぇ」


 いや、逸らそうと思ったのだが、剣の上で逆戻りをするかのように、天貝君の剣が戻ってくる。それは俺の顔ルートだ
 直前でスウェーで回避。更に追撃がくるが、受け流し、防御


 随分とテクニカルだな


 「もしかして剣術を極めてるのかな?」
 「はい。僕は魔法が、駄目、なんで!!」


 なるほど。魔法が無理だから剣を鍛えたみたいな感じか


 俺が剣を受け流すと、孤を描いて戻ってくる剣。手首のひねりのみで剣の軌道を変えたり、はたまたフェイントが入る
 フェイントにはつられないのだが、何気に上手いと舌を巻かざるを得ない。俺がまともに戦ったことある人はグレイさんだけだが、グレイさんはどちらかというと剛剣という感じで、力強さがあった。当たったら一撃死、防御は悪手
 一方で天貝君は、技を育てている感じで、威力も一撃一撃は低めではあるものの、代わりに素早く多彩な攻撃で翻弄してくる。俺もどちらかと言えば技術タイプで、多彩な攻撃を扱うタイプだからこそ、防御も比較的簡単だけど


 突きを首だけ動かして回避。俺からは攻撃しちゃダメだから、こういう時に自身を危険に晒してでも攻撃してくるとなったら何気に危ないのだが、流石にそれはしてこない様子
 カキン!と音を鳴らして剣を弾く。それは同時に、試合終了の合図でもあった


 「中々良いね。そのまま行けばもっと強くなりそうだ」
 「はぁ、はぁ……いえ、僕もまだまだです。全部の攻撃が受け流されてますし」
 「俺と比べちゃダメだと思うけどなぁ」


 ズルもいいとこなんでね。まるで鍛錬していないし。スキルとか異能の効果?
 天貝君は乱した息を整えて、戻って行った。そして俺は、言っちゃ悪いがそろそろ防御だけだと飽きてくる。何でもありのバトルがしたいなと思いつつ、それが出来る相手がいないのは悲しいことだと気づく
 どっかで時間を取ってさらに下の迷宮に行くしかないかと、ギルドマスターが聞いても驚きそうなことを考えていた








 「あれ?なんで3人?」


 次の相手は……と待っていると、来るのは門真君と京極君と夜菜ちゃんの3人だった。俺が困惑しながら声の聞こえる範囲まで待っていると


 「いえ、トウヤさん、飽きてきてますよね?」


 あれれ?なんでバレてんの?
 唐突に言われたのでビックリ


 「いやいや全然そんなことないよ。うん」
 「いや、欠伸の回数が多いし、何より辺りを見回すのが多くなってましたから」


 ……どうしよう。この中に人間観察得意な奴がいるんじゃないのか?
 だが飽きてきてるのは事実だ。だからどうしろともなるんだが


 「まぁ大丈夫!残り3人ぐらいなら行けるからさ」
 「いえ、これ以上時間を取らせるのもあれなんで、最後は3人で相手してもらおうかと思いまして」


 なるほど、だから三人で来たのね。俺が飽きてきたから早く終わらせる。なら1度に3人やっちゃえと
 単純すぎるが、まぁ妥当なのか?


 「別に構わないけど、3人の立ち位置は?前衛三人ってなったら一人の敵を相手するには邪魔じゃないかい?」
 「いえ。俺は遊撃、塗々木が前衛、夜菜が後衛と丁度分かれてますから大丈夫ですよ」


 なんだそのご都合主義!最後の3人が丁度バラバラってビックリなんだが
 だがその提案はこちらにとっても嬉しいので、結局やることになった


 「パーティーで戦闘したこともあると思うけど、一応フレンドリーファイアーに気をつけてね」
 「はい。大丈夫です。いつ行っても?」
 「構わないよ」
 「じゃあ……行くぞ!」


 門真君が掛け声。それと同時に夜菜ちゃんが持っている杖を構え、京極君が接近してくる


 「『ロックバインド』!」


 うおっ!いきなり妨害系!しかも土系統!
 訓練場の土が俺の体を拘束する。それはもう、ガッチリと足と腕が拘束されている
 目の前に迫るのは京極君。更にその背後には門真君が待機している


 「いい連携してるじゃん」
 「まずは1本貰います!」


 無防備な俺の脇腹あたりを狙って、京極君が手に持った小太刀のようなもので攻撃を入れてくる
 流石に首は狙わないんだと思いつつ、まずは仕方ないと魔法を発動


 「『転移テレポート』」
 「転移魔法!?」


 突如として消えた俺に、京極君が驚く。転移魔法というか、時空魔法の転移なんだがまぁそれはどうでもいいだろう
 ただ俺が出現したのはそのすぐ後ろにだ。あんまり遠くに行くと逃げてるみたいな感じだからな


 「うーん一回使わされたかぁ。避け無かったとはいえ、何気にガッカリだ」


 『ロックバインド』が発動するのは分かっていたが、敢えて食らったのは失敗だったかもしれん。だが少なくとも今ので魔法を使えない俺だったら、力技に出るしかなかっただろう


 「さぁ次いいよ。少し時間は長めにとるから」
 「楽しませられるように、頑張りますよ」


 すると、京極君の姿が消えていく……いや、自身の影に飲み込まれた?


 「『影縫い』」


 すると、俺の背後の地面から・・・・・・・・・京極君の声が聞こえた
 即座に反転し、一瞬で取り出した剣で攻撃予測地点で防御


 金属音が響く。俺の剣が、俺の影から出てきた・・・・・・・・・小太刀を防いだのだ


 「今のも防ぐんですか」


 次いで、ニヤリと笑みを浮かべた京極君が影から出てくる
 直後、背後から殺気・・が飛んでくる


 「ハァ!!『神気一閃しんきいっせん』!!」


 門真君が、いつの間にか手に持っていた存在感の激しい剣を振るうと同時、魔力が吹き荒れる
 振るった剣から白色の衝撃波が出現し、扇状に広がる。そして、アレは危険だと、珍しく俺の[危険予知]が警報を鳴らした


 「『次元の壁ディメンションウォール』」


 警報に従って、俺は魔法で防御する。あの攻撃は少なくとも俺にダメージを与えられるだけの威力を秘めていたと、[危険予知]が伝えたからだ


 ドスン!!と鈍い音がすると同時、門真君の攻撃と俺の『次元の壁』が衝突した
 拮抗は一瞬。俺の魔法は耐え切り、門真君の攻撃は霧散した


 「嘘でしょ!?」
 「幹の攻撃が効かないのか!?」


 それを防いだことにより、京極君と夜菜ちゃんが驚愕に顔を染める。そのことから、やはり強力な攻撃だったことが予測できる
 そして、それは門真君も同じようだ


 「……驚きました。『神気一閃』が簡単に防がれるなんて」
 「そっちこそ。まさか殺す気・・・で放たれるとは思わなかった」


 俺は苦笑いとともに告げる。まさか殺気を飛ばほどの攻撃をしてくるなんざ思ってもいなかった


 (門真君はもうそこまで踏み切ってるってことか。それに今回は恐らく……)


 「トウヤさんなら避けると思っていましたから。防がれるとは思いませんでしたが」
 「……やっぱりね」


 門真君は俺が避けると・・・・確信して、殺気すら伴うあの攻撃を放ったのだ。それはつまり、俺の実力を信頼してのこと
 彼は俺が他の7人と戦っているのを見て、恐らく俺の実力がどの程度なのか予測したのではないか。それから、自身の実力を見せるために全力でやっても大丈夫か測ったということか
 まぁ、俺も全力を出したことがない以上、自分がどの程度の実力なのか分からないんだけどな。そのせいで彼も俺の実力を完全には把握出来なかったんだろう


 それにしてもあの剣……もしや聖剣じゃあるまいな?さっきの攻撃も、門真君の魔力ではなく剣に込められた魔力を使用したっぽいんだが
 普通の剣であんな技が放てるとは思えないし、少なくとも何か特殊であるのは確定だろう


 「塗々木!夜菜!全力殺すつもりで行くぞ!」
 「えぇ!?ウチはそんなの無理!!普通に全力出すだけでいい!?」
 「分かった!トウヤさんは化物だから、否はない!どうせ死なないだろうし!」


 おい京極君、何気に失礼なこと口走ってないか?
 そうツッコミを入れたいが、割と真面目な表情だから出来ない
 夜菜ちゃんは無理とは言っているが、杖を構えて詠唱に入ってるし、全力でやるみたいだ
 みんながみんな、この世界に馴染みすぎだっつーの


 「『影縫い』」


 再び京極君が影に消え、そして背後から攻撃


 「それはさっき見たよ」
 「えぇ、分かってますとも!『フラッシュ』!」


 途端影から顔を出した京極君が魔法を発動し、俺と京極君の間に強烈な閃光が生まれる


 「それもさっき見た───っ」


 陽乃ちゃんとやった時のように、無詠唱で発動した『ダークネス』で目を保護したが、その直後、閃光の中に別の魔法の魔力を感知した


 「『十字爆発クロスプロージョン』!」


 遠くで夜菜ちゃんが魔法を発動したのが聞こえる。京極君の『フラッシュ』に隠れさせた完璧なタイミング
 上級火魔法『十字爆発クロスプロージョン』が距離1m未満で発動。爆発が起こる兆候である十字の閃光が煌めき、ミサイルと思わせるほどの爆発が炸裂する


 ドォォォォォン!!と、俺が前に発動した『炎燃拡散フレイムボム』を彷彿とさせる爆発が起こる。魔法の威力的には『十字爆発』の方が断然上だから、俺の魔法に近づくほどの威力を誇っていた───が


 「『審判の右手』」
 「っ!?」


 完全に爆発する間に、俺は『審判の右手』を発動し『十字爆発』をまるごと収納。爆発は全方位だったが、『審判の右手』はその実効果範囲に決まりはない。無論、範囲も増えればその分魔力も乗算的に多くなるのだが
 早くも役に立ってくれたよ。難度が高いけど、俺にとってはどれも誤差みたいなもんだ


 「厄介な!」
 「そう言われてもね」


 『断罪の左手』は使わない。別に必ずセットで使わなければいけない理由はないので、このままストックしておこう
 そしてその間にも攻撃の手が休まる気配らない。いや、むしろ更に強めた?


 「『ギガスラッシュ』!!」


 先程よりは幾分か弱めな、しかし恐らくハイオーガ程度なら倒せそうな威力を秘めた攻撃が俺へと放たれる
 なお、さっきの攻撃は鬼神すら倒しそうな威力だった


 というかその技ってドラゴンなクエストになかったっけ?気のせいかな


 ビリビリと電気のようなものを纏いながら振るわれた剣を、俺も剣で受ける
 相手の剣は少なくともこちらより上。だからこそ、威力を完全に受け流す!!


 「ッ!?嘘だろおい!」
 「まだまだ」


 技の方は魔力を伴っているので、こちらも魔力で相対して対応。剣の方は受け流し、無傷でやり過ごす


 「『幻痛ファントムペイン』!」 


 門真君から距離を取った瞬間、絶妙なタイミングで夜菜ちゃんの魔法が俺に対して発動した
 聞いたことのない魔法だが、恐らく名前からして、怪我はさせずに痛みだけを感じさせる効果だろう。予め座標指定をしておいて、俺が回避する場所に直接発動したようだ
 右足に痛みが走る。まるで足を焼かれたような、切り裂かれたような、千切られたような痛みが


 「『神気一閃』!」
 「『影縫い』!」


 合わせるように前からは門真君が、今度は自身の魔力を剣へと送り、京極君が自身の影に小太刀を突き刺す
 技が発動。[危険予知]が目の前に対し警報を鳴らし、俺の足裏に小太刀の感触が
 ───その程度で俺を倒せるとでも?


 「『魔刀』」


 魔力を剣に這わせる。薄く、それでいて強固に固定し、絶対に折れない剣へと変貌させる


 「『錬成』」


 足裏の小太刀に対して[錬金術]を発動し、触れたそばから素粒子レベルに変換。


 「『次元断絶ディメンションスラスト』」


 更に剣に時空属性を纏わせ、空間を直接切り裂く魔法として発動する
 剣を下から上へと切り上げ、門真君の攻撃を空間ごと切り裂き、霧散させる
 痛みには慣れた。自身の四肢を自分で切り落としたことがあるのだ。恐れてなんかいられないし、思考の停止もしない。それは[痛覚制御]で痛覚を切るまでもないことだ


 「嘘だろ!?」
 「僕の武器が……」
 「なんであの痛みで動けるの!?」


 ……三者三様の驚きをするところあれだが、まずひとつ謝らせてくれ


 「スマン京極君!君の武器素粒子に分解しちゃった!」


 本当にスマン!そこまで考えてなかった!


 何となく、勇者達の中で俺のドジっ子属性が追加されたような気がした







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