俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第19話 何か元より強くなってない?







 「10層までようやく来たか」
 『プルプル』


 階段を上り切った後に呟くと、同意するようにグラが体を揺らした。
 段々、というかグラは凄い感情豊かだから何を言いたいのかも分かるようになってきた。


 分かるようになってきたとは言っても、確認の取りようはないのだが。


 しかし、と俺は自身の足を揉む。


 結構ハイスピードでここまで来てみたのだが、やはりというか、少し疲れてきた気がする。
 今までは精神的な疲れしか感じたことがなかったのだが、ステータスが弱体化した今、久しぶりの肉体的疲れを感じているのが現状だ。


 相手のパラメーターもレベルの関係で高くなっているし、初期のステータスじゃ力負けすることもありそうで怖い。
 それでも何故か苦戦せず倒せてしまうあたり、どれだけ俺は技術や戦闘が得意なのかと不思議に思う。


 まぁそれを言うなら、初期より格段に早くなったり強くなっている気がするのだが、これはパラメーターではなく、ちゃんとした筋力とかが鍛えられているということだろうか?




 そんなことを考えていると、敵と遭遇エンカウントする。


 ちなみに、ここの敵はホブゴブリンとコボルトの混成パーティー(およそ合計10体ほど)である。レベルは15辺り。


 こうなってくると、流石の俺もキツイ……となることは、意外なことにない。


 敵は既にこちらを見つけているために不意打ちは不可能。しかし、俺は構うことなく肉薄する。


 相手はパーティーとは言うものの、連携や陣形はお粗末。遠距離攻撃役もいないため、全員が前に出ることとなる。


 しかし、この迷宮の幅は戦う分には問題ないが、横に10体並んで、なおかつ武器を触れるほどのスペースまでは存在しない。だからこそ、必然的に前に5体、後ろに5体となり、分けられる。


 剣と鈍器を構える、前面に居るホブゴブリン達だが、こいつらはまだ気づいていない。


 音を立てずに天井を這っていたグラが、後ろにいた残りの敵を既に無力化していることに。


 だからこそ、俺も気兼ねなく戦えるものだ。


 「フッ!」


 まずはダッシュで近づき、剣を交えることなく一振り。
 だが、一発では倒せず即座に反撃をしてきたホブゴブリンの攻撃を、剣を並行にすることで後方へ受け流す。


 呆気に取られている一瞬の硬直をついて攻撃。脇腹を深く斬り付ける。おそらく致命傷となったはず。
 ───ここまでの動作が、数秒である。


 その時には残りの奴らも、仲間が死んだことに怒りを覚えたのか力強い攻撃を放ってくる。


 片方は剣で、もう片方は鈍器で俺に攻撃してくるので、攻撃後の隙が大きい鈍器を持ったコボルトの方へと、脇腹を斬ったホブゴブリンを蹴って勢いよく移動を行う。


 自ら死地へ飛び込むように行き、間合いに入った途端、鈍器が振り下ろされる直前で足払い。振り上げ動作中のために腰が入っておらず、簡単に転ばせることに成功する。
 立ち上がる時に、振り返りつつ剣を横に振り抜く。すると、丁度俺への追撃態勢に入っていたホブゴブリンの腹に一文字を刻むこととなった。


 しかしそれでは浅いので、瞬時に剣を持つ手を手首の返しだけで逆手持ちへと変更し、再度、今度はより深く斬り付ける。


 「これで2体目」


 厳密にはまだ死んでいないのだが、虫の息であることに変わりはない。


 ここで、転ばせたコボルトが急いで起き上がろうと動作を起こし始め、一歩奥にいた4体目と5体目のホブゴブリンも俺をそれぞれの獲物の間合いへと入れた。
 しかし、それはこちらも同じこと。


 「セイッ!」


 逆手持ちから再度通常の持ち方へ戻し、まずは振り返ってその勢いごと袈裟斬りに。コボルトの肩から脇腹にかけて剣が入る
 そいつを蹴飛ばして間合いの外へと飛ばし、俺はサイドステップ。上段から振り下ろされるホブゴブリンの剣が、先程まで俺の居た場所を叩く。


 更にもう一体のホブゴブリンが追撃しようとしてくるが、先に懐へと潜り込み、したから突き上げるように、顎に対し掌底を喰らわせる。


 『ガッ!?』


 そんな鈍い音がホブゴブリンの口から漏れる。身体が持ち上がるほどの勢いで顔が上を向き、倒れる。
 すぐに剣を構え直し、ガードの態勢になる。


 ホブゴブリンの剣が俺の剣に当たり、辺りに金属音が響き渡る。


 俺は更に、ホブゴブリンの剣を下から掬い上げるように、自身の剣を起こし、上へと突き出す。
 見事絡めとった相手の剣は、俺の剣が上に伸び切ると同時に、ホブゴブリンの頭上を舞った。


 「シッ!」


 素早く剣を手首の返しで翻し、無手の状態のホブゴブリンを斬り捨てる。


 『グギャ……』


 倒れていくホブゴブリンを最後まで見届けず、蹴り飛ばした方のコボルトを見てみる。


 先程までの攻防の時間では死ななかったようだが、それも時間の問題ではある
 しかし、俺はわざわざトドメを刺した。というのも、瀕死の状態の敵が一番怖いからだ。何をしでかすかわからない。


 「グラ。もういいよ」
 『プルプル!』


 俺が振り返りながら言うと、上からドサドサと何かが落ちてくる。
 それらは、残りのホブゴブリン達だった。今の今まで、グラに天井付近で拘束され無力化されていたのだ。


 「んじゃ、第2ラウンドと行こうか」
 『グ、グギャャ』


 体
が痛むのか、少しよろめきながら声を出すホブゴブリン。グラは触手で四肢を絡めとっていただけのはずだが、空中で支えられていることが地味に疲れたのだろうか。


 とは言え、それはこちらにとってはあまり宜しくない。負荷はかけるほど良く、敵が弱っていればそれだけ負荷は少なくなる。
 今回は全体的に弱ってるっぽいので、もう連携で倒してしまおう。


 「氷!」
 『プル!』


 俺の声に反応したグラが、魔法を発動する
 辺り一面を薄氷が覆い、コボルト達の行動を制限する。
 それらは無論俺にも効果があるのだが、俺はものともせずに駆ける。


 氷の上での移動は大変だが、事前に練習はしてある。ほんの数分だけの練習だっだが、俺にはその時間だけで十分だ。


 まともに歩くことも叶わないホブゴブリン達は、転んで起き上がるという動作を繰り返している。目の前に俺という敵が存在しているために、焦って立ち上がることすら出来なかったりしている。


 「ま、慈悲はないけどね」


 相手は魔物。理由はそれだけで十分と、俺は走って移動しつつ、鎧袖一触で切り伏せていく。


 連携とは言ったものの、お粗末にも連携とは言えないものではあった。結局グラは魔法を放っただけだし、俺も合計で剣を五回振っただけだ。


 「ま、取り敢えず完了かね」
 『プルプル!』


 上から落ちてきたグラが、俺に肯定の意味を込めたであろう頷きをしたあと、何かを求めるように体を揺らす。


 「どうぞ」
 『プルプル!』


 案の定食事のことで合っていたらしく、俺の許可で1度に10体纏めて身体の中に放り込む。


 こう、ちゃんと律儀に許可をとるところがまた礼儀正しいというか。下手したら人間より礼儀正しいんじゃあるまいか? どこぞの筋肉に見習わせてやりたいな。


 ちなみに〔暴食〕の効果では、どうやら食べた相手の1割ほどのパラメーターを自身に加算するらしいな。つまり、10体で元と同じになると。無論個体差はあるから必ずしも同じになるとは限らんが。


 ものの数秒でグラは死体を消化し、満足そうにブルッと震える。


 「じゃ行くか。この先がボスだし」
 『プルプル』


 またしても天井へと向かったグラ。どうやら気に入ったというか、奇襲戦法が有効だと分かってからはずっと天井を移動しているのだ。


 こう、理不尽なことを言ってるのはわかるのだが、いつ落ちてくるのかとドキドキしているのをわかってほしいと思う。


 だからこそ、俺はグラよりも前へと行くのだ。







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