俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第18話 強くてニューゲーム





 前も来たが、1階層目に出てくる魔物はコボルトとゴブリンだ。


 だからこそ、今回も歩いていたら見つけたのだが、やはり[生体感知]を切っている以上、違和感は拭えない。


 「グラ。まずは俺が相手していいか?」
 『プル』


 了解と丸を作るグラに俺は一つ頷き、前方に見えたコボルトへと足音を立てずに向かう。


 ゆっくりと、剣を構えて背後から……。


 カチャ。


 『コボ?』
 「チッ!マジかよ!」


 しかし、剣が動いた拍子に音がしてしまい、コボルトがこちらを振り向く。


 やはり今までは[生体遮断]だか[隠密]だかそっち系が役に立っていたらしいなと、改めて思う。


 とは言え、今更無い物ねだりしたところで仕方ないことだ。コボルトが、何故か赤黒い色がついている鈍器を振りかざしてくるので、少し後ろに下がって回避。


 「っ、やっぱり遅くなってるね!」


 歩いている時は気づかなかったが、やはり動きが遅い。それはもう、有り得ないくらいに。


 なんと言うか、思考も反応も速いのに、動きだけが付いてこない。
 それでもコボルトの攻撃を避けるには十分すぎる速度だったらしく、紙一重ではなく十分な余裕を持って回避。


 「そこ!」


 すかさず一瞬の硬直ディレイを狙って頭を一突き。途中で頭蓋骨に当たったのを感触で理解し、すぐに剣を抜いて離脱。流石に剣の突きで骨を折るのは難しい。何故突きを選んでしまったのか。


 ちなみに今使っている剣は中級なので、そこまで切れ味は良くない。
 だが、スキルが無しでもある程度は動けるとは分かった。身体の感覚も大体理解したし、多分行ける。


 『コボコボ!!』
 「小保って、やっぱり小保かよ」


 苦笑混じりに呟き、バカの一つ覚えとまた振りかざされた鈍器を、今度は避けずにコボルトの懐へ入る。


 『コボ!?』
 「お前の速度は見切った」


 低い体勢で潜り込んだ俺は、起き上がる勢いに任せて、コボルトの右脇腹から左肩にかけて逆袈裟斬りをかます。


 斬り裂かれたコボルトの体から血が吹き出る。その時には俺はバックステップで距離を取っており、少しかかったものの、我慢できる範囲だった。


 「ふぅ……何気に剣の扱いは問題ないな」


 俺は自身の手を見て呟く。召喚してすぐに剣術を取得したから、敵と戦う時にはあまり動けないかと思っていたのだが、意外なことにしっかりと動けていた。


 そりゃ、スキルありとはいえ使っていたのだから技術も上昇するだろうが、落差でほとんど使えない可能性も考えていたのだ。


 「ま、使える分にはいいか。次に行こう。グラ」
 『プル』


 俺が振り返って呼ぶと、何気に俊敏に動いて俺の隣に来る。


 (というか、多分この感じはな…….)


 俺は、少しこの後の展開を予測しつつも、次の獲物へと移動した。




 ◆◇◆




 出会ったコボルト。今度は2体


 「グラ。片方を頼む。出来るか?」
 『プルプル!!』


 俺の問いに力こぶを作ってみせるグラ。やる気は満々のようらしいな。
 というか本当に感情豊かだな。もし人間だったら、コミュ力が高いやつのはずだな。


 そう思いつつ、これがグラとの初共闘戦だと思うと少し頬が綻ぶ。しかしすぐにキュッと引き締め、俺は自身の目の前にいるコボルトへと接近。


 今回は相手もこちらを視認しているので不意打ちは不可能。ならば速攻という割と脳筋思考だ。


 『コボ!!』


 俺の速度に合わせて振り下ろされる鈍器。その攻撃はさっき見たぞ。
 一瞬だけ速度をずらし、俺の目の前で振り下ろされる鈍器。ドスンと床を叩き、少し硬直してるところで首を一閃。
 淀みなく動く剣は綺麗にコボルトの首を刈り取り、ボトリと落ちる。


 「やっぱりなっと」


 これは予測が当たりそうだと思いながら、グラの方を見てみると……。


 『コボコボー!! コボー!!』
 『プルプル!』


 喚くコボルトと、どこか楽しそうに身体を揺らすグラ。


 否、触手に身体中を拘束されて喚くコボルトと、それを見てどこか楽しそうに身体を揺らすグラというのが正確か。


 『コボコボ!! コボー!! コボッ───』
 『プルプル!』


 コボルトの喚き声が途中で途切れ、生々しい音を立てながらコボルトの四肢が引きちぎられた。グラが触手で引っ張ったのだ。


 血が滴りながら、まるで飾り物のように触手に掴まれたまま宙に浮く両手両足に胴体と顔は、ホラーである。
 その光景は中々精神的に来そうなものだが、実際にはそこまででは無かった。現在は[グロ耐性]も封印中なのだが、何故だろうかと不気味に思う。


 しかし、グロくはないと思っていても、その仕打ちには流石に引いた。


 「グラ……そりゃないわ」
 『プル?』


 え? 何? みたいな感じでわざわざハテナを作ってみせるグラは、どこか愛嬌を感じる。
 つまりこいつはあれだ。無邪気さゆえに蝶の羽を引きちぎるような子供と同じ精神だ。


 「グラ、その攻撃の仕方はやめた方がいい。なんと言うか、宜しくない」
 『プル……』


 俺がそう言うと、グラは悲しそうに身体を縮める。その姿はどこか哀愁を感じさせるのだが、流石に許容はできない。


 取り敢えず頻度を減らせと言って、その後にコボルトを食べさせたら元気が出た。お前は頭が良いのに精神は子供なのなとツッコミを入れたのは内緒だ。




 ◆◇◆




 その後、少しして次の階層へと移動することとなった。階段へ一直線だったのだから当たり前だ。


 2階層に出現する魔物も、レベルが高くなったのと数が多くなった以外は変わらない。ゴブリンとコボルトだ。


 現在は4体。しかもコボルトとゴブリンの混成である。


 「フッ!」
 『グギャ!』


 相変わらず、コボルトの声を聞いた後に聞くと安心するなぁと思いつつ、ゴブリンの掴み攻撃をジャンプで避けて、ゴブリンの頭を踏みつけてから背後に着地。


 踏まれた衝撃でよろけているゴブリンに、振り返りながら剣を一閃した後、即座に片足を引いて半身になる。


 俺の鼻先一寸をコボルトの少しだけ重そうに見える鈍器が通り過ぎる。冷や汗が出ることがないのは、既に高レベルの戦闘に慣れているからか。


 地面に叩きつけられた鈍器を振り上げられる前に踏みつけて、武器が上げられなくて動揺したコボルトに頭を掴み、こめかみ部分を剣の柄で思いっきり砕き、脳も同時に破壊。


 正直言って汚そうだからあまり触りたくないのだが、時にはこういう倒し方も必要だと思う。経験は力なり。つまり、様々な倒し方を学習しろということだ。


 鈍器を踏みつけていた足を戻して、俺は覚悟を決めてからグラの方を見る。しかし、そちらは既に戦闘が終わっていたようだ。
 炭化した2体のゴブリンが地面に倒れていることから、恐らく[火魔法]でも使っていたのではなかろうかと予想。


 「よし、オーケーだ」
 『プル!』


 俺が褒めてやると、グラは見るからに機嫌を良くする。ついでに死体も上げることに。


 スライムだけあって、やはり身体の中に入れて食べるらしく、死体を4体も取り込んだグラは少し体が大きくなっていた。中で瞬時に消化されていくのを見ると、『流石は〔暴食〕』と思うな。


 なお、消化されてもグラの体の色は変わらない模様。現在は[色彩変化]で何となく青色にさせているが、濁ったりはしていない様子。


 にしても、今のところ連携する必要が無いのは如何なものか。それに、俺自身にも負荷がかかっているとは言い難いし、これじゃ鍛錬にならん。


 「よし。10階層辺りまで一気に進んでみるか、グラ」
 『プル!』


 今度は丸い体で器用に頷いて見せたグラに俺も頷き返し、歩きから走りへと変えた。






 ◆◇◆






 俺が予測した展開。それは、スキル無しの状態でも、技術が直ぐに上達するのではということだったのだが。
 やはりそれは正しかったようだ。


 現在は8階層。敵のレベルは十幾つで、出てくる敵はホブゴブリンだ。
 対して俺は相変わらずのスキル無し、パラメーターもレベル1の時と変わらないのだが。


 「いっちょまえに剣なんか持ってんじゃねぇよ!」
 『グギャ!』


 叫びながら俺は剣を振り、それに対しホブゴブリンが合わせてくる。
 ガキンと今まで聞いていた音に比べたら軽めの音が響き、押し合い状態になる。


 『ギャ!?』


 そこで、相手の力が一番強まった瞬間にスッと身を引き、ホブゴブリンは体勢を崩す。


 そこからはまるで逆再生のように俺はホブゴブリンへと肉薄し、鳩尾を肘で突き、身体が浮いたところで腕を戻すと同時に剣で一突き。


 『グギャ……』


 身体の中央に剣を刺されたホブゴブリンは、勢いで少しの間宙を待った後、自然に剣の先から抜けていき、地面へ落ちた。


 『ググ……ギ……』
 「止めはしっかりさせってな」


 虫の息ではあるものの、未だ息があったホブゴブリンの首をグサリと刺しておく。別に苦い思い出がある訳じゃないが、今の俺は絶対的な力を持っている訳では無いので、こういう所で少し臆病になってるのかもしれない。


 とは言え、慎重なのはこの世界ではいいことなのではないかと正当化してみたり。


 「グラ……はやっぱり終わってますよね」
 『プル!』


 エッヘンとでも言うかのように体を震わせるグラは、これから食事の様子。今のところ魔物は全て与えているのだが、〔暴食〕の効果も理解出来てきた。


─────────────────────


 グラ 0歳 性別不明
 グラ・イーター


 主『夜栄刀哉』


 レベル3


 【生命力】18200
  【魔力】890
  【筋力】620
  【体力】1400
  【知力】880
  【敏捷】290
  【器用】430
   【運】50


 保有スキル


 武器術
 [剣術Lv.2][棍棒術Lv.2][槌術Lv.2]


 戦闘補助
 [集団戦闘Lv.3][体当たりLv.1]


 運動
 [高速移動Lv.1][這いずりLv.1][飛びかかりLv.2]


 魔法
 [火魔法Lv.1][水魔法Lv.1][風魔法Lv.1]
 [土魔法Lv.1][光魔法Lv.1][闇魔法Lv.1]
 [無魔法Lv.1][回復魔法Lv.1][重力魔法Lv.1]
 [時空魔法Lv.1]


 強化
 [肉体強化Lv.3][筋力強化Lv.2]
 [体力強化Lv.1][知力強化Lv.1]
 [火属性耐性Lv.1][水属性耐性Lv.1]
 [風属性耐性Lv.1][土属性耐性Lv.1]
 [光属性耐性Lv.1][闇属性耐性Lv.1]
 [無属性耐性Lv.1][重力属性耐性Lv.1]
 [時空属性耐性Lv.1][回復効果強化Lv.1]


 ユニークスキル
 [粘液操作Lv.-][色彩変化Lv.-][擬態Lv.1]
 [物理攻撃無効Lv.-][物理衝撃完全吸収Lv.-]
 [魔法攻撃半減Lv.-][魔力吸収Lv.1]


 権能
 〔暴食Lv.1〕


 
 称号
 《超越種》《新種》《大罪持ち》《暴食の化身》《従魔》《スライムの頂点》《全属性保持》《全属性耐性保持》


─────────────────────


 恐らくだが、まず食べた相手のスキルの取得はあるだろう。[棍棒術]や[槌術]なんかは一回も使ってないしな。それプラス、重複するとレベルアップに繋がる感じだな。


 そんでもって、パラメーターの方は分からんな。レベルアップと被ってるから、これがレベルアップの上昇量なのか、それとも食べた相手のパラメーターを一部奪っているのか。


 その答えは、グラがホブゴブリンの死体を食べ終えたことで証明された。


─────────────────────


 グラ 0歳 性別不明
 グラ・イーター


 主『夜栄刀哉』


 レベル3


 【生命力】18350
  【魔力】890
  【筋力】640
  【体力】1410
  【知力】890
  【敏捷】320
  【器用】450
   【運】50


 保有スキル


 武器術
 [剣術Lv.3][棍棒術Lv.2][槌術Lv.2]


 戦闘補助
 [集団戦闘Lv.3][体当たりLv.1]


 運動
 [高速移動Lv.1][這いずりLv.1][飛びかかりLv.2]


 魔法
 [火魔法Lv.1][水魔法Lv.1][風魔法Lv.1]
 [土魔法Lv.1][光魔法Lv.1][闇魔法Lv.1]
 [無魔法Lv.1][回復魔法Lv.1][重力魔法Lv.1]
 [時空魔法Lv.1]


 強化
 [肉体強化Lv.3][筋力強化Lv.2]
 [体力強化Lv.1][知力強化Lv.1]
 [火属性耐性Lv.1][水属性耐性Lv.1]
 [風属性耐性Lv.1][土属性耐性Lv.1]
 [光属性耐性Lv.1][闇属性耐性Lv.1]
 [無属性耐性Lv.1][重力属性耐性Lv.1]
 [時空属性耐性Lv.1][回復効果強化Lv.1]


 ユニークスキル
 [粘液操作Lv.-][色彩変化Lv.-][擬態Lv.1]
 [物理攻撃無効Lv.-][物理衝撃完全吸収Lv.-]
 [魔法攻撃半減Lv.-][魔力吸収Lv.1]


 権能
 〔暴食Lv.1〕


 
 称号
 《超越種》《新種》《大罪持ち》《暴食の化身》《従魔》《スライムの頂点》《全属性保持》《全属性耐性保持》


─────────────────────


 ……うん。微々たる量だが増えてますね。スキルもちゃんとレベルアップしてる。


 これ、もしかすると俺よりやばくなるんじゃないのか? ゴブリンのユニークスキルである[繁殖]を取得できていないのを見ると、ユニークスキルは取得できない可能性があるし、それで釣り合いを取っているのか。


 そもそも、誰が管理してるかも知らないスキルに釣り合いとかがあるのかも知らんが。


 スキルはともかく、パラメーターまで上げるとなると、俺もうかうかしてられないな。


 「まあ、今は進むに限るか」
 『プルプル』


 俺の言葉に反応したのか、グラは一度体を震わせるとその後天井に張り付いて移動し始めた。


 「お前……とうとう奇襲を覚えたのか」
 『プルプル!』


 なんだろう。こいつめっちゃ頭いいというか……いや、言葉の細部まで理解出来ているのだから、頭いいのは当たり前か。


 その後天井をズリズリと這うグラを見て、「上から降ってきて息が出来なくなるのでは?」と少し危機を感じた俺は、グラよりも前に移動した。









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