俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第15話 傷心から抜け出すには、第三者(可愛い子限定)の介入が必須です







 ボフン!! と音が鳴って舞った黒い煙を瞬時に『ちりとり』で収納する。


 「ケホッ、ケホッ……な、何だってんだ───っ!?」


 咳き込みながらも俺は目を開ける。黒い煙が無くなった室内は元の明瞭な視界を取り戻していたが、問題はそこではなかった。


 「お、おお、オリハルコォォン!!!」


 先程まで少しくすみながらも綺麗に光を反射していたオリハルコンの塊。それがいまは黒ずんだゴミに変わってしまっていたのだ。


 「そ、そんな……俺のパラメーターなら絶対に成功するはずなのに……」


 魔力操作に不備はなかった。むしろ完璧過ぎたはず。魔力量も足りていた。確かに最初からオリハルコンという如何にも難易度が高そうなものをやったのはどうかと思うが、それでも何故こんなことに……。


 まさかこれでもパラメーターが足りなかったのか? と思い、新たに手に入れたであろう[錬金術]のスキルを鑑定してみたところ。


 『錬金術が出来るようになる。初めて使用した時は確定で失敗し、レベル5までは必ず1%以上の失敗する確率が伴う』


 …………。


 『初めて使用した時は確定で失敗し』


 ……………………。


 『確定で失敗』


 「そ、そん、な……」


 ガクリ、と俺はその場に膝をつき、項垂れる。それはまさに、俺の痛恨のミスとでも言うべき失態。


 普通、"スキルが無い状態"で錬金術ができるわけがない。そんな簡単なことを見落としていたのだ。


 普段から魔法を使えば何でもできた弊害だろうか。指摘する人物が居なかったせいだろうか。錬金術について豊富な知識と理解があったからだろうか。


 ……いいや、単に先走っていただけの話だ。


 「……今日は寝よう。もうなにかする気分じゃない」


 ゆっくりと立ち上がり、ベッドへと倒れ込む。
 オリハルコンの損失は、俺の心に深い傷をつけて行った。






 ◆◇◆






 「───ということがあったんだ」
 「それは、お気の毒です……」


 翌日。
 昨夜の出来事を、俺はラウラちゃんに話していた。オリハルコンではなく貴重な素材と言ったが、大まかな内容はあっていた。


 「でもでも、トウヤさんならきっとまた手に入りますって!」
 「……そうかな?」


 励ましてくれているのだろうか? だとしたら何と情けないことか。自分より年下の女の子に慰められるなど、あの四人に知られたら。


 『刀哉……そりゃないわ』
 『見損なったぞ刀哉』
 『刀哉君……』
 『情けない。刀哉君には失望したわ』


 と言われるに決まっている。これ以上は俺の株を落とすだけだろう。


 「……いや、うんそうだね。手に入れようと思えば手に入れられる。最初からそういう感じだったし」
 「そうですよ! チョチョイのちょいです!」


 ラウラちゃんは、俺が言っていた素材がオリハルコンだとは勿論知らない。恐らく少し珍しい程度の認識だろう。


 だが、それでも有難かった。やはり傷心から抜け出すには他の人の介入は不可避だと思う。いや、必須要素とも言う。


 それに、あながち間違ってもいない。俺の幸運で俺が欲しいと思えば、あまり時間が経たない内に手に入れられるはずだ。


 「うん。ありがとうラウラちゃん。多少元気が戻ったよ」
 「いえいえ。ご主人様の心のケアをするのも、メイドの務めですから」
 「コラ、そういうことを軽々しく言わない」
 「エヘヘ~」


 軽率に危ない発言をするラウラちゃんの頭を軽く小突いて、俺は食堂の席を立ち上がる。


 「じゃ、また行ってくるとするよ」
 「はい。行ってらっしゃいませご主人様!」
 「ラウラちゃん、今メイドにハマってるの?」
 「最近読んでる小説がそういうのなんです」


 うん。その読んでる小説って官能小説エロいやつじゃないよな? ただの恋愛小説だよな?
 というか、庶民に渡るぐらいには小説は普及しているのか、と今更ながら思う。図書館という存在があるしな。そりゃあるか。


 すっかり立ち直った俺は、今日もまた迷宮へと挑むのであった。






 ◆◇◆






 所変わって迷宮131階層。
 俺は目の前の生命体に感激を覚えていた。


 『プルプル!』
 「おぉ、スライムか……」


 俺の目の前にいるのは、プルプルとゼリー状の身体を震わせる青色のスライムだった。
 スライム……ドラゴンのクエストのゲームでは愛らしい顔をした最初のモンスターだが、無論現実世界では目や口がついている訳では無い。


 形もあんなピンと張った角(?)は無く、若干地面に広がりかけのベチャッとした感じだが、こう、プルプルと身体を震わせるのが凄い可愛らしいというかなんというか。


 「俺がテイムのスキルでも持ってたらなぁ」


 一応、[テイム]というスキルがあるのだが、あいにく俺は現時点では持っていない。
 それでも、やはりスライムが欲しいと思ってしまう俺。


 「おっと」


 そうやって眺めていると、プシュン!! と物凄い勢いで突進してくるスライム。俺はそれを躱し、やはり魔物は敵対してしまうのかと嘆息する。


 「取り敢えず、『ファイアボール』」


 仕方ないので、メラメラと燃える炎の玉をスライムにぶつける。無論速度は言うまでもなく、威力に関してもおよそ初級魔法とは思えないものだ。軽くオーガも倒せるだろう。


 特に何か声を上げるでもなく燃え尽きていくスライム。[物理攻撃無効]や[〇〇属性耐性]なんかを持っているスライムだが、勿論弱点がある。


 スライムは属性で色分けされており、ブルースライム、レッドスライム、グリーンスライム、イエロースライムの四種が基本だろう。それぞれ水・火・風・土の属性耐性を持っており、逆に火・水・土・風が弱点である。


 今回の場合ブルースライムだったために、火魔法で倒したというわけだ。


 「スライムの粘液は消えるのか……ん?」


 倒したスライムの粘液は消えてしまった。これは燃やしたからではないと思うが、その可能性も否定出来ないから今度は普通に倒そう。
 しかし、俺が気になったのはそれではなく、ドロップしたアイテムだった。


 「魔石は言いとして、これなんだ?」


 ひし形の魔石が落ちているのはいいのだが、その隣に丸い玉が落ちていた。


 「これは……『ブルースライムの核』?」


 そこで、なるほどと俺は合点がいった。


 通常ゲームや小説に出てくるスライムというのは、『物理攻撃に強く魔法攻撃に弱い』、または『物理攻撃に強く魔法攻撃も弱点属性以外は強い』というのが存在する。


 他にもゲームによって様々だろうが、その中に『核を壊さない限り無敵』というのもあったはずだ。


 今回の場合、核を壊さない限り無敵という訳では無いが、心臓のようなものなのだろう。それより先に耐久力が尽きただけで、恐らく核を一突きすれば一発で倒せたはず。


 「つーかこれ何に使う………なっ!?」


 一体こんなものがドロップしたところで何に使えというのか、と俺がそれに鑑定をかけたところ、驚くべき事実が発覚した。


 「『核を集めて錬成すると、スライムが作れる』……だと!?」


 核を集めて錬成するとスライムが作れる。それはつまり、錬金術で生命が作れるということに!!


 いや、俺が驚いたのはそこではなく、スライムが作れるという事実であり、それに対し歓喜した。


 [テイム]が無くてもスライムが手に入れられるということは、それを俺の仲間にすることも可能なのだ。
 もし作っても敵対してしまう場合は、隔離した上で[テイム]を覚えてくればいい。


 効率的には普通に[テイム]を覚えてからさっさとスライムを仲間にした方がいいに決まっているが、やはり自分の手で作り出したという事実が欲しい。


 「ふふふ、これは核を集めるしかないであろう!!」


 今の俺は、まさに生きる殺戮マシーンと化していた。


 その後、およそ数時間にわたり俺はスライムを倒して回ったのであった。


 





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