俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第14話 思い立ったが吉日





 「ただいまです」
 「あ、トウヤさんお疲れ様です。もう迷宮帰りですか?」
 「はい。今日は少し用事がありましたので」


 夕方少し前位。俺は迷宮から帰ってきていた。


 少し鍛冶とか生産系のスキルが欲しかったのだ。基本ゲームでも、自分で武器を作れるゲームは最終的に自分で作った武器が一番強いしね。


 「そう言えば100層以下の階層主フロアマスターを倒してきたのですが、魔石の提出って必要ですか?」
 「100層以下ですか? 少々お待ちください……」


 念のため、俺は聞いてみる。現在手元には沢山の魔石があるが、昨日は階層主フロアマスターの魔石は全て提出していたからな


 「えぇと、階層主フロアマスターの魔石の提出はランクアップの証明みたいなものなので、提出義務はありません。勿論高額で買い取らせてはもらいますが」
 「なるほど……いえ、使い道があるので。それとこれ、アルラウネの花です」


 一つ頷き、受けていた依頼の素材を提出。アルラウネの花……どう聞いても卑猥表現のレーティングを落としたものにしか聞こえないのはやはり心が汚れているからか。


 「はい、しっかりお預かりしました。報酬の金貨3枚です」
 「……こう言ってはあれですが、少し少ないですね」


 俺は申し訳ないと思いながらも聞いてみる。80階層は言わずもがな魔物のレベルが高い。俺が3桁の階層に挑んでいるから少し感覚が麻痺しがちだが、一流の探索者でないと突破は不可能な難易度なのだ。
 それを考慮すると、もう少し高くてもいい気がするのだが……。


 「それは、アルラウネは他の所にも生息しているためその分低くなっているのです。迷宮だけの魔物となれば、勿論高額ですよ」
 「あ、そういう事ですか。すみません」
 「いえいえ、私も言い忘れていましたので、こちらこそすみません」


 ペコリと頭を下げると、深々と頭を下げ返される。この謝罪態度の違いよ。


 それよりも、金貨3枚、つまり30万円だ。


 ……あぁ、どうやら少し感覚が麻痺していたようで。日給30万は普通に高額ですね。


 「そう言えば今日はどちらまで進まれたのですか?」
 「迷宮ですよね? 今日は130階層です」


 何気なく言ったつもりだが、やはりというか俺の言葉に対して受付嬢さんは固まってしまった。


 「……あまり言い触らしちゃダメですよ? その話は」
 「言われずともわかってますよ。余計な厄介事は招きたくないので」


 それでも今までで耐性ができたのか、立ち直りも早かった。俺に忠告までする始末だ。つまり、それだけすごいと言うか、驚かれることなのだろう。


 これが130階層の難易度を知識として知ってる人と、余り苦労していない当人の温度差というね。




 ◆◇◆


 探索者ギルドを後にした俺は、以前読んだスキルの本の知識を思い出していた。


 (確か、生産系に分類される主なスキルは[鍛冶][裁縫][木工][魔道具制作][錬金術]……この辺りだったか)


 この中で、今俺が欲しいのは、[鍛冶][魔道具制作][錬金術]の三つだ。


 [鍛冶]は言わずもがな、金属を鍛錬して製品を作成することだ。特殊な金属となると扱いが難しいが、その分強力無比な作品が作れる。


 [魔道具制作]は、その名の通り魔道具マジックアイテムを制作する技術だ。[魔力操作]のスキルが必須で、それに加えて魔法について精通してなければいけなく、更に器用さも必要である。


 最後、[錬金術]は複数の物を合成して一つの完成品を生み出す、素材を最良な状態へと変化させるといった技術のことだ。


 俺の目的は、[錬金術]で金属を鍛冶に適した最良の状態にし、[鍛冶]で金属を鍛錬し、最後に[魔道具制作]で武器に魔法の力を宿すことだ。


 勿論言うほど簡単なものではない。俺が考えるまでもなくやる人はいるだろうし、それでもこのやり方が広まっていない以上、難しいのだろう。


 そもそも[鍛冶]は【筋力】と【器用】、[錬金術]と[魔道具制作]は【知力】と【魔力】と【器用】が必要なのだ。普通の人はバランスよくパラメーターが育たないだろうから、難易度は高いだろう。
 更に言えば、そもそもの話、普通の人なら1つを極めるだけで精一杯だろう。バランス良くやっていたらどれも中途半端になり、結局意味をなさない。


 ならば、1つの分野を極めた方が効率的だろうし。


 「まぁ、やる前から諦めるのは性にあわないし、一度やるだけやっては見るが」


 オリハルコンを『無限収納インベントリ』の肥やしにするつもりは無い。それに、俺の成長速度とパラメーターならば、上手く行けば、そのうち聖剣をも超える武器を作れるはず……。


 まさにゲーム感覚。そう自覚しながらも、俺はやはり心のどこかで期待せずにはいられなかった。






 とは言ったものの、[鍛冶]に関してはそれ相応の設備が必要だ。だから、今出来るのは[錬金術]と[魔道具制作]となる。
 この二つならば材料とちょっとしたもので行けるはず。


 だからこそ、俺はハルマン商会に来ていた。確かハルマンさんは道具屋の方をメインに経営していたはずだ。
 あの時馬車で見た、豪華な建物へと移動する。が、なんとなく緊張。


 (ここ、俺が入って大丈夫なんだよな?)


 見るからに華美な装飾。ハルマンさんはここの探索者の殆どがこの道具屋で買い物をしていくと言っていたから大丈夫だと思いたいが。
 そう考えているうちに、早速1人の探索者な風貌の男が臆することなく中に入って行ったので、俺も意を決して中へ入る。


 豪華な扉を開けると、扉につけられている鈴が鳴る。それと同時に店内に居た人がこちらを向くが、俺は堂々としたままだ。
 動揺を表に出さないようにするのは得意というか。ポーカーフェイスは元々俺が得意としていた分野だからな。


 中は外ほど華美な装飾は施されていない。どちらかと言うと、落ち着きのある上品さというのか。
 一応店内を一瞥するも、ここには迷宮に必要な道具が置いてあるだけらしく、生産系に必要な道具は置いていなかった。


 「すいません」


 俺はそんな中、店員と思われる人に声をかける。1階には意外にも探索者が多く、思っていた雰囲気ではなかったからこそできた行動だ。
 無法地帯という程ではないが、割とガヤガヤと音が出ているので、一度入ってしまえば二度目以降は入りやすい店だと思います。


 「はい、何でしょうか?」
 「魔道具制作に必要なものが売っているのは何処ですか?」


 とても丁寧な対応をする店員さん。ハルマンさんの教育が行き届いているというか、見る目があるというか。


 「魔道具制作ですか? 制作セットなら2階で売られていますよ」
 「2階ですね? ありがとうございます」


 頭を少し下げて、階段から2階へと上がる。今の感じだと恐らく2階には生産系の道具があると予想。
 階段をのぼると、やはり予想的中。探索者というよりは、職人というような人達が居るフロアでした。


 (魔道具制作に必要なのは、『魔法銀』だけか。後はどうとでもなるな)


 思考し、魔法銀を購入。名前からして高いと思ったが、少しだけ高かった。とは言え、稼ぎようはいくらでもあるので、お金を惜しむ理由もないが。






 ◆◇◆




 「あ、トウヤさん、おかえりなさい!」


 宿に帰った俺を、にっこり笑顔のラウラちゃんが出迎えてくれる。こう、癒されるなぁ。わざわざ食堂から出てきてくれるところとか特に。


 これ、来る客全員にやってたら大変だろうに、本当に健気な子だと何度も思う。妹を思い出すな。


 「ただいま。もう夕食を摂れる時間かな?」
 「はい。まだ席も空いている時間帯なので、どうぞ」


 勧められるように食堂へと移動し、そこでいつも通り食事を摂る。
 いつも通り、家庭的な味で美味しい夕食を食べ終え、今日は部屋に戻る。


 「ふぅ」


 息を吐きつつ、バサッとベッドへ倒れ込む。しかしすぐに起き上がり、当初の目的を果たすことに。


 「取り敢えず、『消音領域サイレントフィールド』」


 部屋全体に魔法をかけ、外の音が聞こえないように、こちらの音が漏れないようにする。


 「さぁてと、まずは錬金術から行きますかぁ」


 頭の中から[錬金術]に関する知識を引っ張り出しながら、俺は呟く。


 [錬金術]は先程言った通り、複数の物を合成して一つの完成品を生み出す、素材を最良な状態へと変化させる技術だ。


 原理までは、本の知識を引っ張っているだけの俺には分からないが、錬金術において重要なキーワードは『等価交換』だ。


 複数のアイテム。それらを一つにする場合、必ず等価交換となる。例えばそれぞれのアイテムに価値がつけられている場合、『価値が1のアイテム三つ』を錬成した場合、錬成結果は必ず『価値が3のアイテム一つ』となる感じだな。




 そして、素材を最良にするというのは、『価値が3のアイテム(低品質)』を『価値が3のアイテム(高品質)』に変えるということなのだが、ここで重要なのは、錬金術の等価交換では、品質は度外視されることだ。
 つまり、上の式では、低品質と高品質はイコールで繋がるからこそ、素材を最良な状態に持っていける。


 同じようなことで、俺が持っているオリハルコンの塊。これは現在丸い塊なのだが、錬金術によって四角い綺麗な状態にすることも可能だ。


 これも、形を変えるだけならば同価値であるという理由だ。どんなに形を変えたところで、体積が変わらなければそれは同価値であると見なされる。


 意外に融通が効くのが[錬金術]な訳だ。


 そんな[錬金術]だが、等価交換と言っても、『価値が1のアイテム1000個』を『価値が1000のアイテム1個』にすることは不可能だ。錬金術にはちゃんとした法則が存在する。


 まず、系統を無視しては作れない。薬草三つから錬成できるものは薬草であり、ポーションが作れるわけでも、武器が作れるわけでもない。


 とは言え、薬草とポーション用の瓶があれば、ポーションは作れる。要は素材が揃っていればいいわけだ。


 ただし、[錬金術]の場合作成した物の品質は【知力】と【器用】とスキルレベル依存であるが……これは恐らく心配するまでもないだろう。


 まぁ[錬金術]は、素材と魔力さえあれば、過程をすっ飛ばしてアイテムが作れるという便利なものだと言う解釈が一番近いか。素材を最良な状態へ持っていくという技術も有用だ。


 『あれ? なら錬金術師が居れば鍛冶師は要らないんじゃないのか?』


 皆さん、そうお考えではないでしょうか。


 そういうわけにも行かない。上のメリットを消す勢いで、[錬金術]は難度が高いのだ。
 [錬金術]には魔力が必要だが、これはただ消費するという訳では無い。超精密な魔力操作が必要なのである。


 [錬金術]を修めているのは、全員が一流の魔法使い達。その[魔力操作]のレベルは全力疾走しながら針の穴に糸を通すという程で、俺も初めて錬金術の説明を見た時は『これマジのヤツや』と思ったほどだ。
 ゲームとかの錬金術ではなく、正しく現実の錬金術である。シビアという話ではない。


 だからこそ、[錬金術]を修めることが出来る者は少ない。更にそこから細分化され、『薬草関連の錬金術師』『金属素材関連の錬金術師』と分類される。
 素材それぞれ、魔力の通し方の癖が違うため、難度と言うよりかは分類が分かれているのだ。


 だからこそ、鍛冶師や調薬師といった職業が無くならない。良くて、『錬金術師が素材を最良化し、鍛冶師や調薬師が製品を作る』という構図ができるかできないかだろう……。








 長々と話したが、実を言うと難易度や癖については俺とは無縁の話である。


 なんせ魔力の操作という点で見れば、俺は既に世界最高峰と言っても過言ではない……はずだ。
 [魔力操作](と[魔力感知]と[魔力隠蔽])スキルが進化し[魔力支配]となった今、魔力操作という単語はもはや俺にとっては取るに足らないものであり、魔力操作が必要な作業をこなすことは楽勝なのである。


 ということで、試しにと俺は早速オリハルコンの塊を『無限収納インベントリ』から取り出し錬成することに。


 「ふぅ………『錬成』!!」


 手をパン! と叩き、俺はオリハルコンに魔力を通す。
 複雑な回路に一切の淀みなく魔力を走らせ、オリハルコンの形状を変化させようとした時。


 突然、オリハルコンから爆発するように出た黒い煙が、室内を包み込んだ。







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